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第1話 恋する幼なじみ

幼なじみの訪問 その二

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 優子がお皿を洗い、直哉がそのお皿を拭いて食器棚にしまう。その光景は、まるで新婚生活を送っているかの様で優子は少し照れていた。

 二人が洗い物を終えテーブルで一息ついていると、窓が濡れているのが見えたのだ。

「ねぇ、ひょっとして雨・・・・・・? しかもかなり降ってたりするのかな・・・・・・」
「え?あっ、本当だ・・・・・・。しかも雷も鳴ってるね」
「えええ、そんなぁ。傘なんて持ってないよぉ。それにこの雨・・・・・・かなり本降りだよね、風も強そうだし」
「この雨の中を一人で帰すのも・・・・・・危ないし。う~ん、おじさんかおばさんに迎えに来てもらうとかは?」

「今日に限って日を跨いで帰るんだよねぇ。困ったなぁ。・・・・・・ねぇ、直哉・・・・・・お願いがあるんだけれど・・・・・・」

 優子の態度が突然変わり、少し話しにくそうに下を向きモジモジしていた。この雨風の中を一人で帰るのが危険だと分かっており、優子は意を決して直哉にお願いをしたのだ。

「あのね・・・・・・あの・・・・・・。この雨風の中を帰るのは危険だと思うんだ・・・・・・。それでね・・・・・・あの・・・・・・その・・・・・・」
「・・・・・・・・・? 優子どうしたの? らしくないじゃないか。相談事なら何でも乗るよ」
「本当・・・・・・に? うんとね・・・・・・直哉が迷惑じゃなければ・・・・・・今日・・・・・・泊めて欲しいんだけど・・・・・・。あっ、ちゃんと親には連絡するよ。うん、ちゃんとね。だから・・・・・・ダメ・・・・・・かな?」

 優子の持てる勇気を全て出し切り、直哉に朝まで泊めて貰えないかお願いをしたのだ。優子の顔は真っ赤に染まり、体が小刻みに震えているのが分かった。

 うら若き乙女が、幼なじみとはいえ二人っきりで泊まるのは流石に恥ずかしいのだ。

「ん~、掃除や料理も作ってくれたし、こんな雨の中を一人で帰す程、僕は薄情じゃないよ。だから、安心していいよ」
 とは言ったものの、ベッドは当然シングルで二人一緒に寝るのは狭すぎる。仮にダブルでも、年頃の男女が二人一緒に寝るのは何かと問題がある。そこで直哉はベッドを優子に貸して、自分は床で寝る事にしたのだ。

「ありがと・・・・・・」
「それじゃ、お風呂でも入ってさっぱりしてきなよ。部屋着は・・・・・・少し大きいけど僕のを貸してあげるからさ」
「うん・・・・・・、でも・・・・・・ぜーたいに覗かないでよねっ。覗いたら絶対に許さないから!」
「覗くわけないだろ・・・・・・。少しは信用してくれてもいいと思うんだよね」
「・・・・・・女性の胸を凝視して、その上、巨乳水着雑誌を隠し持っている人を信用しろって・・・・・・? あぁ、そうでしたね、私の胸は小さいですよーだっ」

 地雷を踏んだらしく、言い訳をする暇もないまま、優子は半分怒りながら脱衣所の扉を閉めてしまう。

 優子がお風呂に入っている間、直哉は部屋着を出す為にクローゼットを漁っていた。優子に似合いそうな部屋着を探す事数分、グレーの部屋着があったのでそれにする事にした。

 大きくはあるが、腕とかまくれば大丈夫だろうと思い、脱衣所に部屋着を持っていったのだ。
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