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第2話 人見知りのクラスメイト

特別な関係

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「あのですね、神崎君って女性の扱いに慣れているでしょ? 三嶋さんと仲良しですし、それに井上さんとも。なので、お優しい方だと思ってずっと観察していたの」
「それって・・・・・・いつからですか・・・・・・」

「入学式の日からずっと・・・・・・あのラブラブ遅刻で登場し、みんなの注目を浴びても穏やかな神崎君なら、ひょっとして私の人見知りを治してくれるんではないかと」
「つまり・・・・・・入学式の日からずっと・・・・・・僕を観察していたと。というか、ラブラブ登校なんてしてないかやね? それはみんなの誤解だから」

「はい、その通りです。そして、観察している内に分かったのです。神崎君は、私にとって特別な人だって事が。それと、入学式の日はラブラブ登校ではないのですね。あんな親密な関係に見えたのに・・・・・・」
「一応・・・・・・聞くけど・・・・・・『特別』って人見知りしないという意味だよね?」

「もちろんです。何故か分かりませんが、本能的に神崎君となら上手くやって行けそうな気がしたのです。でも、せっかくの高校生活なので、『特別な』神崎君に人見知りな私を治してもらい、素晴らしい友人を沢山作りたいのです」

 両手を掲げ、まるで教祖が語るような仕草をする紗英に、直哉は急に頭痛がしてきたのだ。

 直哉の前では人見知りには全く見えず、でも学校で他の生徒と話している所を見た事がない。嘘は言ってないようであるが、言葉の所々に違和感があった。

「えっと・・・・・・その『特別な』ってわざわざつけなくても・・・・・・」
「それはダメです。だって、人見知りな私が話せる唯一の人なのですから『特別』なのです」
「・・・・・・頼むから人前でその『特別』というのをはやめて欲しいかな。色々と誤解されて、紗英さんに迷惑をかけそうだからね」
「そうですか・・・・・・神崎君がそう言うのでしたら分かりました。それと・・・・・・神崎君の事・・・・・・直哉君とお呼びして宜しいですか?」

 先程とは別人の様に汐らしくなる紗英に、直哉はコーヒーを吹き出しそうになってしまった。演技なのか・・・・・・それとも天然なのか、紗英の本心が全く見えなかった。

「好きに呼んでくれて構わないよ」
「ありがとうございます。『特別な』直哉君はやはり、思った通りお優しいのですね」

 名前の前に『特別』をつけられると、中々恥ずかしいものであった。
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