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第2話 人見知りのクラスメイト

勘違いな修羅場

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「アクセサリー店にあったんだけど、紗英さんに似合うかなって思って・・・・・・」
「ありがとうございます・・・・・・。このネックレス・・・・・・一生大切にしますね・・・・・・」

 直哉がプレゼントしたのは、可愛い猫のネックレスであった。余程気に入ったらしく、手に取ると暫く眺めてから身につけたのだ。そして、直哉の両手を取りながら顔を近づけて、改めてお礼を言ったのだ。

 その様子が、二人を監視していた優子からは、まるでキスをしようとしているかに見えたのだ。そして、こっそりつけてることも忘れた優子が、亜子が制止する間もなく大声を上げたのだった。

「ちょっとおおおお、こんな場所で何をしようとしてるのよおおおおお」

 あまりにも大きな声に、店内の視線が優子に集まってしまった。聞き覚えのある声に、直哉は声の方を振り向いたのだ。

「優子・・・・・・? 大声なんか出してどうしたの・・・・・・?」
「どうしたの? じゃないわよ! い、今キスしようとしてたよね? ねぇ、やっぱり・・・・・・二人はそ、そんな関係だったのおおおお」

 直哉が座っているテーブルまで行くと、優子は直哉の襟元を掴み揺すりながら問い詰めたのだ。その行動の早さに、亜子はただ呆然としていたのだ。我に返った亜子が優子をなだめに行ったのは、店員から注意を受けていた時であった。

「優子、落ち着いて・・・・・・ね? とりあえず、直哉君の話を聞こうよ」
「わ、分かったわよ。直哉! 隣座るわよ」

 優子が半ば強引に直哉の隣に座ったのだ。亜子も申し訳なさそうに、紗英の隣に座るとテーブルに張り詰めた空気が流れていた。

「それで・・・・・・二人は何をしていたのかな? 怒らないから、ちゃんと説明してね」

 優しそうな言葉とは裏腹に、優子の冷たい視線が直哉に突き刺さっていた。何も悪い事はしていない直哉だが、その冷たい目線に心が痛み出していた。

「いや、その・・・・・・紗英さんと・・・・・・たまたま帰りに会ったから寄り道してただけだよ」
「へぇ~、たまたまねぇ。直哉のたまたまって言うのは、学校の校門からずっと一緒にいるのがたまたまって言うのね。そっかぁ、そうだったのねぇ」
「いや、そうじゃなくて・・・・・・、優子・・・・・・ひょっとして・・・・・・ずっとつけてたのか?」

 直哉のカウンターに思わずコーヒーを吹きこぼしそうになり、優子は慌てて弁明をし始めたのだ。
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