迷宮戦争・パンデモニウム

生ハムロース

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第2話　状況確認

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　「……て！　…きて‼」

　体が揺さぶられるような感覚に再び意識が浮上する。
　聞こえてくる大きな声は、先ほどの少女だろうか。
　震えたような声で呼びかけながら、必死にオレを起こそうとしているようだ。

　「起きない……もしかして死んじゃったのかな……」

　『死んでねーよ』

　「ひゃう‼」

　返事を返しながら彼は起き上がる。
　なにか変な声が聞こえたが、気のせいだろう。
　彼は変な体勢で転がっている少女を傍目に、先ほど痛みが走った個所を確認する。

　——それにしても痛え、ビンタのようだが……まともな威力じゃないな。

　ただのビンタなら頬がヒリヒリとする程度だろう。
　しかし先ほどビンタを食らった彼は、その威力の大きさに軽く宙を飛んだ。
　おかげでビンタされた箇所は言わずとも、床で跳ねた体のあちこちに痛みが走っている。
　端から見ていたら骨折ではすまないような怪我のはずだが、幸いなことにどこも負傷はしていないらしい。

　『おい、何をしているんだお前は？』

　
　彼は驚いて転がっている少女に声をかける。
　見た目は中学生に達していないと確信できるほど幼いが、その大きさは彼の三倍を優に超す少女。
　本来なら誰もが警戒して話しかけはしないところ、しかし彼の中でその脅威に対する警戒を状況の確認する必要性が上回っていた。

　
　「ごめんなさい、その、……驚いちゃって」

　少女は大きな体を起こし、申し訳なさそうな顔をする。
　そんな様子に彼は再び目を見開いた。

　ーーこの少女……日本人だな。

　彼は二度目の意識が浮上した際、考えられる状況を一つに絞っていた。
　
　ーー認めたくはないが、異世界転生に似た状況だ。だからこそ目の前の少女は現地人か何かと思ったが……

　目の前に座る少女は彼の知識の日本人と特徴が一致していた。
　その服装も、話す言語も、容姿といったすべてがだ。確認することも馬鹿らしく思えるほど、完全な日本人。
　そんな少女に戸惑いながらも彼は状況の確認にはいる。

　『すまないがオレは今、無いもしらない状態だ。
　　できればお前の名前や憶えていることを教えてくれないか？』

　少女も彼と同じ状況下なら、かなり身勝手な質問だ。
　彼自身も、答えてくれない可能性が高いと考えていたが……少女は嬉しそうに頷きながら語りだす。

　「えっと、私は秋野　紅あきの　こうっていいます。小学6年生です。
　　紅、皆と学校に通学中に車に轢かれちゃって……死んじゃったらしんです。
　　それで……『ちょっと待て』」

　『お前、頭は大丈夫か？』

　おそらく彼は悪くない。
　誰だって今の話を聞いたらそう思うはずだ。

　「えっと、その、あの……頭は轢かれて無いから大丈夫だよ？」

　『ああ、いや、そうだな。話を遮ってすまない、敬語も無理に使おうとしないでいいぞ』

　的外れな答えに彼は苦笑しながら話を促す。
　考えてみれば彼も先ほど、異世界転生と仮定したのだ。話自体に問題は無い。

　「うん、わかった。
　　それで紅は死んじゃったはずなんだけど、目の前にいた神様に『君たち100人に異世界でダンジョンを運営してもらう』って言われてここに来ちゃった」

　『その、神様の辺り。そこを詳しく説明してくれ』

　何気に軽く飛ばされた説明に詳細を求める。
　彼が知りたい情報はその部分にあるのだから。

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