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第3話 迷宮戦争
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あれから紅の話は長かった……と言っても彼が根掘り葉掘り聞いたからなのではあるが。
体感的に約3時間、紅が小学生として優秀な娘だったこともあり、かなり詳細に現状を知ることが出来ていた。
最も、状況を知った彼は難しい顔で唸っているのだが……。
一言で今の状況を説明するとするならば、「このままでは死ぬ」……だ。
それほどに緊迫した状況に陥っていた。
紅が言ったように神を名乗る人物は、100人の死んだ人間をこの『アトラス』の世界に【ダンジョンマスター】として送り込んだ。
しかし【ダンジョンマスター】はダンジョンを運営する能力を持つだけで、基本的には普通の人間と変わらない。
そこで神はこう言ったらしい。
『一人につき一つ、ダンジョン自体に対して一つ。計二つの固有能力を君たちに渡そうではないか』
『アトラス』においてタレントと呼ばれる固有能力をランダムで与えられてた人々。
一部では「俺tueeeeしてやるぜ‼」や「ハーレム……チートきたぁぁあ‼」などと叫ぶ特殊な人物も居たらしいが100人全員がある程度、現状を納得し受け入れていたらしい。
一度死んでしまった人生なのだ、未知の世界とは言え新たな人生を得られることに反論などありはしなかった。
しかし、問題はここから起きた。
一つは『アトラス』における【ダンジョンマスター】の説明。
何でもダンジョンは人を飲み込み殺す化け物で、【ダンジョンマスター】は邪神の手先として抹殺対象であると認識されていること。
そして基本的には『アトラス』における人間との交流は不可能であること。
この説明を聞いた2割の人は怒り、泣き、そして喚きだした。
自身が抹殺対象であることに様々な感情を抱く、これが普通の人の反応だろう。
しかしこれが切っ掛けで、一つに纏まっていた100人の心に罅が入った。
ただ生き残るという目的だったものがそれぞれに分かれてしまったのだ。
そしてもう一つ、神は爆弾となるものを落とした。
それは【ダンジョンマスター】同士による、殺し合いの推奨。
『アトラス』に存在する様々な国々、それに対して産まれたてであるダンジョンは非常に非力だ。
ならばどうするか、答えは簡単である。
ダンジョンらしく生物をダンジョン内で殺し、成長させていけばよいのだ。
そのためのもっとも簡単な手段が、『迷宮戦争』。
【ダンジョンマスター】が互いのダンジョンコアをかけて戦い、相手のダンジョンコアを奪う戦争。
それによって敵のダンジョンコアを吸収したダンジョンは、敵のダンジョンのDP、モンスター、タレントを奪うことが出来る。
これによって、100人の【ダンジョンマスター】の一致団結していた心は完全に砕け散った。
そう、これが紅が体験した死後の世界での出来事。
では、それぞれのダンジョンに送り込まれた紅は何をしたか。
”ダンジョンポイント”、通称DPと呼ばれる【ダンジョンマスター】にとって生命線でもあるポイント。
そしてゲームさながらなモンスターを召喚するための【通常召喚】……ではないDPの大量消費で行うことが出来る特殊な召喚、【叙事詩召喚】。
追い打ちとばかりに、神より【ダンジョンマスター】に送られた【召喚】などで呼び出したモンスターにタレントを付与させることが出来る超希少アイテム、『アトラス・アルカナ』の三枚。
【ダンジョンマスター】である少女に与えられた一度きりのタレント、【黄金林檎】。
初期資金であろうDP全てを使用し、【叙事詩召喚】に三枚の『アトラス・アルカナ』と【黄金林檎】が使用され召喚されたモンスター。
それこそが【レッサーデーモン】であり、積み重なる『アトラス・アルカナ』のせいで逆に弱体化を受けている少女に対して三分の一ほどしかない小悪魔。
言わずもがな、頭を抱え悩み続ける彼である。
資源という資源を使い切ったダンジョンとタレントを失った【ダンジョンマスター】、そして呼び出された転生小悪魔。
あえてもう一度言おう、『このままでは死ぬ』と。
体感的に約3時間、紅が小学生として優秀な娘だったこともあり、かなり詳細に現状を知ることが出来ていた。
最も、状況を知った彼は難しい顔で唸っているのだが……。
一言で今の状況を説明するとするならば、「このままでは死ぬ」……だ。
それほどに緊迫した状況に陥っていた。
紅が言ったように神を名乗る人物は、100人の死んだ人間をこの『アトラス』の世界に【ダンジョンマスター】として送り込んだ。
しかし【ダンジョンマスター】はダンジョンを運営する能力を持つだけで、基本的には普通の人間と変わらない。
そこで神はこう言ったらしい。
『一人につき一つ、ダンジョン自体に対して一つ。計二つの固有能力を君たちに渡そうではないか』
『アトラス』においてタレントと呼ばれる固有能力をランダムで与えられてた人々。
一部では「俺tueeeeしてやるぜ‼」や「ハーレム……チートきたぁぁあ‼」などと叫ぶ特殊な人物も居たらしいが100人全員がある程度、現状を納得し受け入れていたらしい。
一度死んでしまった人生なのだ、未知の世界とは言え新たな人生を得られることに反論などありはしなかった。
しかし、問題はここから起きた。
一つは『アトラス』における【ダンジョンマスター】の説明。
何でもダンジョンは人を飲み込み殺す化け物で、【ダンジョンマスター】は邪神の手先として抹殺対象であると認識されていること。
そして基本的には『アトラス』における人間との交流は不可能であること。
この説明を聞いた2割の人は怒り、泣き、そして喚きだした。
自身が抹殺対象であることに様々な感情を抱く、これが普通の人の反応だろう。
しかしこれが切っ掛けで、一つに纏まっていた100人の心に罅が入った。
ただ生き残るという目的だったものがそれぞれに分かれてしまったのだ。
そしてもう一つ、神は爆弾となるものを落とした。
それは【ダンジョンマスター】同士による、殺し合いの推奨。
『アトラス』に存在する様々な国々、それに対して産まれたてであるダンジョンは非常に非力だ。
ならばどうするか、答えは簡単である。
ダンジョンらしく生物をダンジョン内で殺し、成長させていけばよいのだ。
そのためのもっとも簡単な手段が、『迷宮戦争』。
【ダンジョンマスター】が互いのダンジョンコアをかけて戦い、相手のダンジョンコアを奪う戦争。
それによって敵のダンジョンコアを吸収したダンジョンは、敵のダンジョンのDP、モンスター、タレントを奪うことが出来る。
これによって、100人の【ダンジョンマスター】の一致団結していた心は完全に砕け散った。
そう、これが紅が体験した死後の世界での出来事。
では、それぞれのダンジョンに送り込まれた紅は何をしたか。
”ダンジョンポイント”、通称DPと呼ばれる【ダンジョンマスター】にとって生命線でもあるポイント。
そしてゲームさながらなモンスターを召喚するための【通常召喚】……ではないDPの大量消費で行うことが出来る特殊な召喚、【叙事詩召喚】。
追い打ちとばかりに、神より【ダンジョンマスター】に送られた【召喚】などで呼び出したモンスターにタレントを付与させることが出来る超希少アイテム、『アトラス・アルカナ』の三枚。
【ダンジョンマスター】である少女に与えられた一度きりのタレント、【黄金林檎】。
初期資金であろうDP全てを使用し、【叙事詩召喚】に三枚の『アトラス・アルカナ』と【黄金林檎】が使用され召喚されたモンスター。
それこそが【レッサーデーモン】であり、積み重なる『アトラス・アルカナ』のせいで逆に弱体化を受けている少女に対して三分の一ほどしかない小悪魔。
言わずもがな、頭を抱え悩み続ける彼である。
資源という資源を使い切ったダンジョンとタレントを失った【ダンジョンマスター】、そして呼び出された転生小悪魔。
あえてもう一度言おう、『このままでは死ぬ』と。
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