『「稀世&三朗」のデートを尾行せよ!」謎の追跡者の極秘ミッション~偽りのチャンピオン・アナザーストーリー』

M‐赤井翼

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「東海道57次デート編」

「東海道56次目 枚方宿②「ひらかたパーク①」」

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「東海道56次目 枚方宿②「ひらかたパーク①」」

 怒って左の窓の外に顔を向けたままの稀世に三朗がやさしくフォローした。
「稀世さん、笑ってすみません。まず、「重力3倍デー」って何ですか?「ポイント3倍デー」は聞いたことありますけど…。
 次は、「ゼロ磁場」ですけど、稀世さんが磁石でできてたら何か変化はあるでしょうけど、「重力」は関係ないんじゃないですか?サンドラ・ブロックさんの映画「ゼロ・グラビティ」なら「無重力」ってことなんでしょうけど、「磁場」は体重と関係ないですよ。
 あと、僕は稀世さんの「59.8キロ」へのこだわりがよくわかりません。変わった知識をひけらかす女子高生が主人公のマンガで「Gカップの胸は一つでスイカ一個分」って言ってましたから、ひとつ5キロで両胸で10キロでしょ?そう考えたら稀世さんの体重はやせ型の女の子の49.8キロと一緒でじゃないですか?
 まあ、僕は稀世さんが何キロであろうと全然そこは気にしないですけどね。少なくとも「健康的」な「ポチャムキ」の稀世さんはとても魅力的だと思いますよ。」

 そのフォローに稀世は順に返答した。
「うーん、確かに「重力3倍デー」の例えは「体重を気にしない」サブちゃんにはピンとこんわなぁ…。「ゼロ磁場」と「重力」は無関係っていうのは分かった。
 でも「Gカップ」が一つ5キロは間違いやで。優しくフォローしてくれたんは嬉しいけど実際のところ両胸で2.2キロがええとこやねんよ。10キロはさすがに大げさすぎるで…。けど、「ポチャムキ」は魅力的っていうサブちゃんの言葉には救われたかな。ねてごめんね…。」
 三朗が優しく微笑みかけると渋滞が解け、車は一気に流れだし、ひらかたパークの観覧車がどんどんと近づいて来た。

 午後2時45分。稀世と三朗は直が用意してくれた「京阪電車株主優待券」で「過去一度も取り壊されること無く現存する最古の遊園地」である「ひらかたパーク」、通称「ひらパー」に入場した。
 夏の人気アトラクションの「THE BOONザ・ブーン」、冬の「ウインターフェスティバル」の谷間期間の秋の平日という事もあり、パスポートを購入すると次々と並ぶことなくアトラクションにチャレンジしていった。
 三朗の希望で手を繋ぎ、園内をまわっていくうち三朗はふとくずはモールで買ったデジカメの事を思い出した。
「稀世さん、良かったら一緒に写真に写ってもらえないでしょうか?実は、稀世さんとツーショット撮影したくて、くずはモールでデジカメと三脚を買ったんですよ。」
とカメラを見せると稀世が声を上げた。
「あー、これ最新型で最高級のコンパクトデジカメやん!広角、望遠、ポートレート、遠景モードからナイトショット機能までついてる奴やん。この間、仕事で使いたいって太田さんに稟議書まわしたら「けっちん」喰らったカメラやわ!」

 三朗よりカメラに詳しい稀世リードで、まずは「外国の雰囲気」が味わえるとひらパーの人気写真スポットの「マジカルラグーン」の前で写真撮影を提案した。
 三脚を立て、自動シャッターモードにして稀世が「10秒後シャッターやから笑ってや!」と言い最初のツーショットを撮った。すぐに画像をチェックすると三朗の笑顔は固く、直立不動の姿勢はいただけなかったため、稀世は
「うーん、サブちゃん、証明写真やないねんからもうちょっとはっちゃけようや。次は連写モードで行くから最初のフラッシュの後0.3秒間隔で10枚連続でシャッターがおりるからね!」
と言ってシャッターを押すと、カメラレンズの先の三朗にいきなり抱きついた。
 驚く三朗に「3秒の間はカメラに向かって微笑んで!」と囁くと、三朗もカメラのレンズに向かって笑顔を向けた。10カットの中で稀世は三朗の首に両手をまわしたり、腕を組んだり、頬を寄せたり自由に振舞った。

 10カット目のフラッシュが瞬き終わると、三朗の腕を引いて稀世は三脚の上のデジカメを再生モードに切り替えた。
「きゃーっ!このサブちゃんの慌てた顔かわいいー!」、
「あっ、これは私が白目向いてるから消去!」、
「うーん、これはいい感じ!ゼクシィのグラビアみたい!ドキドキ!」、
「残念、これはふたりの視線がずれちゃってるからボツ!」、
「まあ、セルフ連写やからこんなもんかな?サブちゃんはどれか納得のいく写真あった?」
と小さな画面の前で頬を寄せ一喜一憂しながら一緒に画面を見ている稀世の横で三朗は茹蛸のように真っ赤になって動けなかったがとても楽しかった。

 場所を変え、アングルを変え何度も何度も写真を撮っていくうちに三朗の緊張も解け、向かい合っての両手握手や、やさしいハグも照れずにできるようになった。
 人気アトラクションの「バチャンガ」前の紅葉の樹のある通りで観覧車をバックに撮影したり、ワンダーガーデンでは「レッサーパンダ」、「リスざる」を背景に撮影した。
 途中のアトラクションはフリーパスでどんどんチャレンジした。ひらパーで大人の女性に人気のアンティークな造りで重厚感のあるメリーゴーランドでは遊園地スタッフが快く撮影係を受けてくれたし、観覧車の中では同じ側の席に座り、大阪や京都の街をバックに撮影し、楽しい時間を過ごした。
 かれこれ園内を3周し、木製コースターエルフとレッドファルコンというジェットコースターには5回乗った。ジャイアントドロップメテオと呼ばれるフリーフォールも4回チャレンジした。ありとあらゆるアトラクションはほぼ網羅していく中、毎回、稀世がスルーしていくアトラクションが一つあることに三朗は気づいた。(もしかして稀世さんって…。)

 三朗は人気ひとけのない西の端にあるアトラクションの前で稀世に尋ねた。
「稀世さん、もしかして「お化け屋敷」ダメなんですか?」
 稀世は黙って頷いた。(えぇっ、「国士無双」で「天下無敵」の稀世さんがお化け屋敷が苦手ってほんと?なんかめっちゃ萌えてしまうんやけど…。)と三朗は思った。
「お化け屋敷って………って思うと怖くて………入るのに躊躇してしまって………。」
ととぎれとぎれにしか聞こえない蚊の鳴くような声で稀世は呟いた。
 (ここは男として、一つ良いところを見せないとな!)三朗は気合を入れて、稀世に言った。
「僕がついてますから大丈夫ですよ。この「ドキドキお化け屋敷 どろろん旅行社」をクリアすれば「ひらパー」アトラクション完全コンプリートじゃないですか!頑張って入ってみませんか?」

 すると稀世は周りに人がいないことを確認すると照れくさそうに囁いた。
「サブちゃん、後ろから「ぎゅっ」と強くハグしてくれへん?」
「えっ?ほ、ほんまに、い、いいんですか?」
 思わぬ稀世の言葉に驚いた三朗がドモリながら答えると「早くぎゅっとして…。」
と再度懇願されたので三朗は稀世の背後に周り、稀世のおへその当たりで手を交差させ、ぎゅっとハグした。
「サブちゃん、もっと強く…。」
と言われ、さらに力を入れ抱きしめた。
「サブちゃん、マックスの力で締め付けて・・・・・みて…。」
 潤んだ瞳の稀世を見ると、三朗はあらん限りの力を込めて稀世の身体を抱き寄せた。稀世のお尻に三朗の固くなったものが当たっていることがバレる恐怖心はあったが、稀世の髪から香るほのかなシャンプーの匂いと女性特有の甘い香りに三朗の「分身・・」の制御は不可能だった。


「おまけ」
さて、「ひらパー」ですねー!
園長はあの「岡田准一」さんですよー!
で「おまっ!」










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