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『あなたならどう生きますか?~両想いを確認した直後に「余命半年」の宣告を受けました~』
1-29「宴会」
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「宴会」
記念写真のあと、みんな店に入り、お祝いの席が始まった。酒屋の武藤金義が持ってきた神酒樽が、店の前に設置され、三朗、稀世、まりあ、直の四人で「おめでとう、よいしょ」の掛け声で鏡割りされ、道行く人にも振舞われた。店の中は、広義と嫁のかずみ、徹三とその嫁さとみがフル回転で、料理と飲み物を配膳して回った。直の宣伝効果のおかげで、店に入りきらない人数が祝福に訪れ、道にまであふれた。大阪ニコニコプロレスの社長と稀世の後輩研修生の夏子も七時過ぎに合流した。
三朗と稀世は、皆と記念写真と祝辞を受けるのに精いっぱいで、飲み食いする余裕はほとんどなかった。会う人会う人が皆、三朗に対しては、「一生ひとりもんの童貞でおるんやと思ってた。」という意味の言葉を掛けていたので、(三十歳、独身、彼女歴無しはほんまなんやなぁ)と稀世を納得させた。
夏子は、稀世に抱きつき
「稀世姉さん、三朗さんのもんになってしもたんですね。ちょっと、ジェラシーやわ。」
と言って、甘えている。大阪ニコニコプロレスの社長からは、
「安稀世っていう看板レスラーを失うことは、うちとしたらすごい痛手やねんけど、稀世の幸せの方が大事やから、必ず幸せになってや。五年間、よお頑張ったな。持ち前のファイトとうちで鍛えた根性でがんばりや。また、いつでも遊びにおいで。」
との言葉をもらった。思わず、涙が溢れた。
時間が進むにつれ、乱痴気騒ぎが激しくなり、三朗も稀世もそこそこ飲まされ、昨晩の徹夜の疲れもあり、テーブル席で眠ってしまった。午後九時、直が仕切って、お披露目会は終了となり、お開きとなったみんなは、別の店に流れていった。
まりあが稀世を背負い、二階の三朗の母の部屋まで連れていき、直が着物を脱がせ、ジャージに着替えさせた。はたと、目を覚ました稀世が、直とまりあに言った。
「さっき、三朗さんのお父さんとお母さんに会ってあいさつしました。笑顔で頑張れよって言ってくれはったんです。あー、こんな私のこと認めてもらえてよかったです。」
と言って、再び、鏡台の前の椅子で眠りに落ちた。
「まりあちゃん、稀世ちゃんが椅子から落ちんように、支えといたってな。」
というと、直は勝手知ったるなんとやらで、押し入れから、二組の布団を並べて引き、その一枚に稀世を寝かせてもらった。リビングで紙とマジックを取り出し、稀世の隣の布団の枕の上にメモを置いて、まりあといっしょに部屋を出ていった。
一階の店には、テーブルに突っ伏して寝ている三朗と、ニコニコプロレスの社長と夏子だけが残っていた。まりあが、社長と夏子に
「ごめんね、遅くなっちゃって。近くのパーキングに、車停めてるから、夏子、先に社長送って、それから私んとこ頼むわ。そんで、明日は、稀世のアパートの荷物移すから、ジム寄ってハイエース乗って、お昼に稀世の家に集合な。じゃあ、直さん、今日はありがとうございました。明日もまた来ますんで、あとサブちゃんだけお願いしますね。」
「あいよ。あほボンは任しとき。じゃあ、また明日よろしく頼むわな。」
直は、三人を店の前まで見送り、暖簾をしまった。三朗が寝てるテーブルに水の入ったコップを持ってきて
「三朗、三朗。こら、起きんかい、あほボン。」
といって頬をたたいた。
「うーん、あー、直さん、すんません。すっかり飲まされてしもて。稀世さんは?」
「お前が、酔っぱらって無茶苦茶するから、愛想つかして、出ていったぞ。」
「えっ、うそ。あー、稀世さーん。」
と入り口の扉に向かって、駆け出したが、足がもつれて、転倒した。
「うそや、うそや。だからお前はあほボンやねん。まりあちゃんが二階まで背負ってくれて、もう着替えて、おまえの母親の部屋で寝てるわ。昨日、寝てへん言う話やったから、今日はそっとしといたり。いちおう、サービスでお前の布団も横に並べてるけど、寝込みを襲うような卑怯な真似だけはするなよ。何なら、わしが一晩寝ずの番したってもええねんぞ。」
「直さん、それは堪忍してください。僕もおとなしく寝ますから。」
「三朗、今日の昼にも言うたけど、「半年では、赤ちゃんは生まれへん。」っていうことだけは、頭に置いとけよ。もしものことがあったら、つらい思いをすんのは稀世ちゃんなんやからな。わかったか。」
「う、うん。わかってる。稀世さんといっしょに居られるだけで十分や。」
「なら、ええ。親父さんとお袋さんに手合わせて、しっかり報告してから寝るんやで。じゃあ、わしも帰るから、戸締り忘れんようにな。」
「うん、直さん、ほんまに今日は、ありがとうございました。これから頑張るんで、よろしくお願いします。」
「ああ、がんばるんは当然や。稀世ちゃん、泣かすようなことがあったら、わしが許せへんで。じゃあ、お休み。」
「はい、おやすみなさい。送らんでええですか?」
「わしの事はええ、はよ風呂入って寝ろ。」
直は踵を返し、入り口から出ていった。静まり返った店の中で、冷たい水を飲み、風呂を沸かして、この一日半を振り返った。(今までの三十年間を超える濃さの三十時間やったなぁ。あぁ、ちょっと疲れた。親父、おかん、報告は明日にさせてくれな。お仏壇じゃなくて、お墓に行くわ。)
記念写真のあと、みんな店に入り、お祝いの席が始まった。酒屋の武藤金義が持ってきた神酒樽が、店の前に設置され、三朗、稀世、まりあ、直の四人で「おめでとう、よいしょ」の掛け声で鏡割りされ、道行く人にも振舞われた。店の中は、広義と嫁のかずみ、徹三とその嫁さとみがフル回転で、料理と飲み物を配膳して回った。直の宣伝効果のおかげで、店に入りきらない人数が祝福に訪れ、道にまであふれた。大阪ニコニコプロレスの社長と稀世の後輩研修生の夏子も七時過ぎに合流した。
三朗と稀世は、皆と記念写真と祝辞を受けるのに精いっぱいで、飲み食いする余裕はほとんどなかった。会う人会う人が皆、三朗に対しては、「一生ひとりもんの童貞でおるんやと思ってた。」という意味の言葉を掛けていたので、(三十歳、独身、彼女歴無しはほんまなんやなぁ)と稀世を納得させた。
夏子は、稀世に抱きつき
「稀世姉さん、三朗さんのもんになってしもたんですね。ちょっと、ジェラシーやわ。」
と言って、甘えている。大阪ニコニコプロレスの社長からは、
「安稀世っていう看板レスラーを失うことは、うちとしたらすごい痛手やねんけど、稀世の幸せの方が大事やから、必ず幸せになってや。五年間、よお頑張ったな。持ち前のファイトとうちで鍛えた根性でがんばりや。また、いつでも遊びにおいで。」
との言葉をもらった。思わず、涙が溢れた。
時間が進むにつれ、乱痴気騒ぎが激しくなり、三朗も稀世もそこそこ飲まされ、昨晩の徹夜の疲れもあり、テーブル席で眠ってしまった。午後九時、直が仕切って、お披露目会は終了となり、お開きとなったみんなは、別の店に流れていった。
まりあが稀世を背負い、二階の三朗の母の部屋まで連れていき、直が着物を脱がせ、ジャージに着替えさせた。はたと、目を覚ました稀世が、直とまりあに言った。
「さっき、三朗さんのお父さんとお母さんに会ってあいさつしました。笑顔で頑張れよって言ってくれはったんです。あー、こんな私のこと認めてもらえてよかったです。」
と言って、再び、鏡台の前の椅子で眠りに落ちた。
「まりあちゃん、稀世ちゃんが椅子から落ちんように、支えといたってな。」
というと、直は勝手知ったるなんとやらで、押し入れから、二組の布団を並べて引き、その一枚に稀世を寝かせてもらった。リビングで紙とマジックを取り出し、稀世の隣の布団の枕の上にメモを置いて、まりあといっしょに部屋を出ていった。
一階の店には、テーブルに突っ伏して寝ている三朗と、ニコニコプロレスの社長と夏子だけが残っていた。まりあが、社長と夏子に
「ごめんね、遅くなっちゃって。近くのパーキングに、車停めてるから、夏子、先に社長送って、それから私んとこ頼むわ。そんで、明日は、稀世のアパートの荷物移すから、ジム寄ってハイエース乗って、お昼に稀世の家に集合な。じゃあ、直さん、今日はありがとうございました。明日もまた来ますんで、あとサブちゃんだけお願いしますね。」
「あいよ。あほボンは任しとき。じゃあ、また明日よろしく頼むわな。」
直は、三人を店の前まで見送り、暖簾をしまった。三朗が寝てるテーブルに水の入ったコップを持ってきて
「三朗、三朗。こら、起きんかい、あほボン。」
といって頬をたたいた。
「うーん、あー、直さん、すんません。すっかり飲まされてしもて。稀世さんは?」
「お前が、酔っぱらって無茶苦茶するから、愛想つかして、出ていったぞ。」
「えっ、うそ。あー、稀世さーん。」
と入り口の扉に向かって、駆け出したが、足がもつれて、転倒した。
「うそや、うそや。だからお前はあほボンやねん。まりあちゃんが二階まで背負ってくれて、もう着替えて、おまえの母親の部屋で寝てるわ。昨日、寝てへん言う話やったから、今日はそっとしといたり。いちおう、サービスでお前の布団も横に並べてるけど、寝込みを襲うような卑怯な真似だけはするなよ。何なら、わしが一晩寝ずの番したってもええねんぞ。」
「直さん、それは堪忍してください。僕もおとなしく寝ますから。」
「三朗、今日の昼にも言うたけど、「半年では、赤ちゃんは生まれへん。」っていうことだけは、頭に置いとけよ。もしものことがあったら、つらい思いをすんのは稀世ちゃんなんやからな。わかったか。」
「う、うん。わかってる。稀世さんといっしょに居られるだけで十分や。」
「なら、ええ。親父さんとお袋さんに手合わせて、しっかり報告してから寝るんやで。じゃあ、わしも帰るから、戸締り忘れんようにな。」
「うん、直さん、ほんまに今日は、ありがとうございました。これから頑張るんで、よろしくお願いします。」
「ああ、がんばるんは当然や。稀世ちゃん、泣かすようなことがあったら、わしが許せへんで。じゃあ、お休み。」
「はい、おやすみなさい。送らんでええですか?」
「わしの事はええ、はよ風呂入って寝ろ。」
直は踵を返し、入り口から出ていった。静まり返った店の中で、冷たい水を飲み、風呂を沸かして、この一日半を振り返った。(今までの三十年間を超える濃さの三十時間やったなぁ。あぁ、ちょっと疲れた。親父、おかん、報告は明日にさせてくれな。お仏壇じゃなくて、お墓に行くわ。)
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