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『あなたならどう生きますか?~両想いを確認した直後に「余命半年」の宣告を受けました~』
1-44「大晦日」
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「大晦日」
大晦日の夜十時、いつもながら突然、直が向日葵寿司にやってきた。
「サブちゃん、今、仕事引けてお風呂ですけど。」
稀世が熱い緑茶を入れながら、直に言った。
「そうか、まあ、都合ええわ。稀世ちゃん、直球で聞くけど、三朗とはやったんか?」
「えっ?何をですか?」
「あほ。稀世ちゃんもあほボン三朗のあほがうつったか?夫婦になって、もう三ケ月以上経つやないか。そりゃ、わしが、「赤ちゃんは諦めろ」言うたけど、やったらあかんとは言うてないやろ。その話や。」
稀世は、真っ赤になって答えた。
「ま、まだ、キスだけです…。」
「お前ら、中学生か!夫婦やろが、この馬鹿ちん。稀世ちゃん、女の幸せ知らんまま逝くつもりか?あほボンもあほボンや、こんなかわいい子を前にして何のんびりしとんねん。今度思いっきり、しばいたらなあかんな。」
「直さん、しばくのは、堪忍したって下さい。サブちゃん、すごく優しくしてくれてますから。」
「まあ、こんなことやろうとは思っとったからな。これ、わしからのお年玉や。今日、必ず使えよ。三朗にもしっかり言うたろ。」
直は、稀世に小さな巾着を渡した。中を見て、稀世の顔は、さらに赤くなった。
「なんか声する思たら、直さん来てはったんですか。本年は、大変お世話になりました。来年もよろしゅうお願いしますね。」
頭をタオルでわしわししながら、三朗が頭を下げた。
「あほボン、ちょっとこっち来い。」
三朗が「何ですか?」と近づくと、思いっきりデコピンして、
「今晩、稀世ちゃんと決めろよ。」
と言い残して、出て行った。
「「決めろ」って、いったいなんなんやろね。ところで、稀世さん、顔めちゃくちゃ赤いですやん。また、風邪ひいてしもたんとちゃうでしょうね?」
「さ、サブちゃん。こ、コレ…。直さんから。」
三郎は、寝室で稀世が風呂からあがってくるのを布団の上で正座して待っていた。二十五歳の時に稀世のファンになり、「いつか来たらいいな」と「想像した日」に備えて買った、「あれ」のノウハウ本を元の自分の部屋の本棚から取り出してきて読んだ。(慣れるまでは、ゴムは明るい所で着けること。空気が入らないように先をつまんでつける事。)、(精力剤は三十分前までに飲むこと)、(うまく入ったら、最初は、ゆっくり。焦りすぎないように。三回浅く、一回深く。)、(最初は、七人中二人が失敗するから、失敗しても気にしないように。)、(あくまで、女性への気遣いを忘れないように。)、(終わってから、優しい言葉と抱擁が大切。)何度も何度も、繰り返し、見返しては、復唱した。
一階で、風呂場のドアが開く音が聞こえた。直のくれた巾着から「絶倫赤マムシ」と書かれた金と赤のラベルのドリンク剤を前に置き、(うまくできますように。)と手を合わせて、一気飲みした。5センチ角の箱に入った、十二個綴りのピロー包装を、ミシン目に沿い丁寧に切り離して、三枚を枕の下に入れ、残りを巾着に戻した。
仏壇に手を合わせ、(親父、おかん、三十歳にしてついに童貞卒業のチャンスが来ました。相手は、もちろん稀世さんです。うまくいくように見守っててな。)とお願いし、お鈴を二回鳴らした。
稀世が二階に上がってきた。緊張した面持ちで、三朗の前に正座し、丁寧に頭を下げた。
「サブちゃん、私も初めてやから、上手にできなかったらごめんね。ふつつかでポンコツの妻ですが、優しくしてな。痛いときは痛いって言うから、その時は、ストップしてな。つい、プロレスの技出たらあかんから…。お願いします。じゃあ、恥ずかしいから、電気消すわな。」
「き、稀世さん、直さんくれた、ゴムつけるまで、電気つけとってほしいねん。ぼ、僕、つけんの初めてやから、本で調べたら、明るい所で着けんと、破れたり、空気入ってしまうって書いてあって。」
「えーでも、私、恥ずかしいし。」
「すいません。でも、ぼ、僕は、稀世さんの全部見たいんで、お願いします。」
「じゃあ、お布団だけはかけさせてな。」
「はい、大丈夫です。」
年が明けて2022年の元日は、関西地方は、全般的に晴天に恵まれた。午前九時、すっかりと日は上がり、明るくなった部屋で稀世は目を覚ました。三朗が、隣の布団の中から顔を見ている。
「稀世さん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね。」
「サブちゃん、あけましておめでとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。あと三ケ月やけど、ずっといっしょに居てください。き、聞きにくいねんけど、わ、私、昨日、どうやった。」
「最高でした。想像を一億倍上回ってました。本当の夫婦になれた気がしてうれしいです。最初の二個は、つけるの失敗しましたけど、一晩で、後の残り全部使い切ってしまうくらい、良かったです。元日から空いてるドラッグストアありますから、初詣の後で買いに行ってきます。」
「サブちゃん、私も良かった。「あぁ、女の幸せ死ぬ前に感じられて良かった。直さんに感謝やわ。」って思ったわ。で、でもね、か、仮によ、初詣で直さんに会ったら、「二個だけ使った。」って言おな。全部使こたって、やっぱり恥ずかしいから。」
「そうですね、じゃあ、今日の分は、直さんと絶対会わんように、駅ふたつ向こうで買ってきます。」
「うん、ごめんね。面倒かけるけど。」
「じゃあ、おせち食べましょうか?」
「うん、さすがに、朝六時までやってたから、お腹ペコペコやわ。」
ふたりで、布団の上で「ちゅっ」とした。
大晦日の夜十時、いつもながら突然、直が向日葵寿司にやってきた。
「サブちゃん、今、仕事引けてお風呂ですけど。」
稀世が熱い緑茶を入れながら、直に言った。
「そうか、まあ、都合ええわ。稀世ちゃん、直球で聞くけど、三朗とはやったんか?」
「えっ?何をですか?」
「あほ。稀世ちゃんもあほボン三朗のあほがうつったか?夫婦になって、もう三ケ月以上経つやないか。そりゃ、わしが、「赤ちゃんは諦めろ」言うたけど、やったらあかんとは言うてないやろ。その話や。」
稀世は、真っ赤になって答えた。
「ま、まだ、キスだけです…。」
「お前ら、中学生か!夫婦やろが、この馬鹿ちん。稀世ちゃん、女の幸せ知らんまま逝くつもりか?あほボンもあほボンや、こんなかわいい子を前にして何のんびりしとんねん。今度思いっきり、しばいたらなあかんな。」
「直さん、しばくのは、堪忍したって下さい。サブちゃん、すごく優しくしてくれてますから。」
「まあ、こんなことやろうとは思っとったからな。これ、わしからのお年玉や。今日、必ず使えよ。三朗にもしっかり言うたろ。」
直は、稀世に小さな巾着を渡した。中を見て、稀世の顔は、さらに赤くなった。
「なんか声する思たら、直さん来てはったんですか。本年は、大変お世話になりました。来年もよろしゅうお願いしますね。」
頭をタオルでわしわししながら、三朗が頭を下げた。
「あほボン、ちょっとこっち来い。」
三朗が「何ですか?」と近づくと、思いっきりデコピンして、
「今晩、稀世ちゃんと決めろよ。」
と言い残して、出て行った。
「「決めろ」って、いったいなんなんやろね。ところで、稀世さん、顔めちゃくちゃ赤いですやん。また、風邪ひいてしもたんとちゃうでしょうね?」
「さ、サブちゃん。こ、コレ…。直さんから。」
三郎は、寝室で稀世が風呂からあがってくるのを布団の上で正座して待っていた。二十五歳の時に稀世のファンになり、「いつか来たらいいな」と「想像した日」に備えて買った、「あれ」のノウハウ本を元の自分の部屋の本棚から取り出してきて読んだ。(慣れるまでは、ゴムは明るい所で着けること。空気が入らないように先をつまんでつける事。)、(精力剤は三十分前までに飲むこと)、(うまく入ったら、最初は、ゆっくり。焦りすぎないように。三回浅く、一回深く。)、(最初は、七人中二人が失敗するから、失敗しても気にしないように。)、(あくまで、女性への気遣いを忘れないように。)、(終わってから、優しい言葉と抱擁が大切。)何度も何度も、繰り返し、見返しては、復唱した。
一階で、風呂場のドアが開く音が聞こえた。直のくれた巾着から「絶倫赤マムシ」と書かれた金と赤のラベルのドリンク剤を前に置き、(うまくできますように。)と手を合わせて、一気飲みした。5センチ角の箱に入った、十二個綴りのピロー包装を、ミシン目に沿い丁寧に切り離して、三枚を枕の下に入れ、残りを巾着に戻した。
仏壇に手を合わせ、(親父、おかん、三十歳にしてついに童貞卒業のチャンスが来ました。相手は、もちろん稀世さんです。うまくいくように見守っててな。)とお願いし、お鈴を二回鳴らした。
稀世が二階に上がってきた。緊張した面持ちで、三朗の前に正座し、丁寧に頭を下げた。
「サブちゃん、私も初めてやから、上手にできなかったらごめんね。ふつつかでポンコツの妻ですが、優しくしてな。痛いときは痛いって言うから、その時は、ストップしてな。つい、プロレスの技出たらあかんから…。お願いします。じゃあ、恥ずかしいから、電気消すわな。」
「き、稀世さん、直さんくれた、ゴムつけるまで、電気つけとってほしいねん。ぼ、僕、つけんの初めてやから、本で調べたら、明るい所で着けんと、破れたり、空気入ってしまうって書いてあって。」
「えーでも、私、恥ずかしいし。」
「すいません。でも、ぼ、僕は、稀世さんの全部見たいんで、お願いします。」
「じゃあ、お布団だけはかけさせてな。」
「はい、大丈夫です。」
年が明けて2022年の元日は、関西地方は、全般的に晴天に恵まれた。午前九時、すっかりと日は上がり、明るくなった部屋で稀世は目を覚ました。三朗が、隣の布団の中から顔を見ている。
「稀世さん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね。」
「サブちゃん、あけましておめでとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。あと三ケ月やけど、ずっといっしょに居てください。き、聞きにくいねんけど、わ、私、昨日、どうやった。」
「最高でした。想像を一億倍上回ってました。本当の夫婦になれた気がしてうれしいです。最初の二個は、つけるの失敗しましたけど、一晩で、後の残り全部使い切ってしまうくらい、良かったです。元日から空いてるドラッグストアありますから、初詣の後で買いに行ってきます。」
「サブちゃん、私も良かった。「あぁ、女の幸せ死ぬ前に感じられて良かった。直さんに感謝やわ。」って思ったわ。で、でもね、か、仮によ、初詣で直さんに会ったら、「二個だけ使った。」って言おな。全部使こたって、やっぱり恥ずかしいから。」
「そうですね、じゃあ、今日の分は、直さんと絶対会わんように、駅ふたつ向こうで買ってきます。」
「うん、ごめんね。面倒かけるけど。」
「じゃあ、おせち食べましょうか?」
「うん、さすがに、朝六時までやってたから、お腹ペコペコやわ。」
ふたりで、布団の上で「ちゅっ」とした。
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