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第1部 エピソード2023
「12歳年下の後輩に婚約者を寝取られた女 安稀世」
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「12歳年下の後輩に婚約者を寝取られた女 安稀世」
幸による稀世の紹介が始まった。岩本と岡山兄弟はそっちのけで勝手に飲み会を始めているが、西沢と岩井、そして加藤、杉田は真剣な視線を向けている。
稀世は「UFOの街」、そして本物のNASAやソビエト時代の本物の宇宙船やロケット、各種機材が展示されている事で有名な「コスモアイル羽咋」のある石川県羽咋市のかつては「65歳以上人口が50%」を超える「限界集落」と言われた神子原地区の菅池町で生まれた。高校を卒業すると、「村の立て直し」を目標に地元の「スーパー公務員」への憧れを胸に大阪の有名私立大学の経営学部に進学した。
入学直後の1年生のゴールデンウイークに開催された「春の新入生歓迎祭」の「キャンパスプリンセス」に選ばれ、夏には友人が勝手に応募した関西メジャーアイドルグループ「国防少女隊SDF17」に選出され、学業の傍らアイドルとしての活動が始まったと稀世の略歴が幸から紹介された。加藤の耳がピクリと動いた。
稀世はデビュー後、有名私大の「インテリキャラ」、「いくら食べても太らない大食いキャラ」に加え、持って生まれた「フィジカル面」を活かした「芸能人」、「有名人」が出場する「運動系娯楽番組」ではプロスポーツ選手を凌駕する成績を残す万能キャラクターで地上波テレビに多数出演し人気を博した。
童顔と巨乳のギャップと可愛い笑顔と知的なトークはお茶の間に受け入れられた。特に満面の笑顔での稀世の食べっぷりは好評で、全国のスイーツ店、レストラン等の有名飲食店の巡りの食レポ番組は人気で、食材原価や利益率まで話題にする稀世のトークが受け入れられ、有名食通タレントや飲食インフルエンサーとの共演も増えた。
そんなアイドル活動の中、番組の企画で稀世の優れたフィジカル面を取り上げた国内「女子プロレス最大手団体」の「スターリボン」に参戦する企画が持ち上がった。もちろん、アイドルとして出場する「できた忖度シナリオ」での勝負だったのだが、試合の途中で「キレた」女子レスラーのシナリオを無視した本気の攻撃に鼻血を吹き出し顔面を真っ赤に染め、ほぼ「放送事故」レベルでなすすべもなくやられた稀世に同情の意見が集まり、対戦レスラーに誹謗中傷のSNSの投稿がバズった。
稀世は「私が弱いから負けただけです。もし許されるなら、トレーニングを積んだ後に再チャレンジさせてもらいたいです。」のツイートで、ファンからは「稀世ちゃんはやさしいね!」、「アイドルなんだから無茶しないで!」とリツイートが寄せられ、女子プロレスラーファンからは「本気でないくせにかわい子ぶるな!」、「女子プロレスをなめんな!」と厳しい意見が集まった。
多くのファンやアンチの意見に反して、稀世の「本気」は学生、アイドルと並行しつつ地元の「大阪ニコニコ女子プロレス」で研修生に入門し、女子プロレスラーとしての生活が加わった。半年後のリベンジマッチでは「ガチ勝負」で見事にフォール勝ちのリベンジ完勝を遂げ、女子プロレスファンの「アンチ」も稀世のファンになった。
大学3年生になると、後々羽咋市に戻り「町おこし」や「企業再建」をしたいと思い、専門のゼミに入った。ゼミの教授が稀世のタレント性に興味を示し、「経営コンサルタントと女子大生アイドル・レスラーがあなたの会社を再建します!」というタイトルで企画をマスコミに持ち込み、「経営コンサルタント」が「飲食店」、「企業」を再建させる人気経済番組のアシスタントとして活躍するようになった。
その時に、門真市にあるニッチな「よろずコンサルタント」の「金城司法書士事務所」とも関係を持ち、税務、労務、法務等の専門知識を身に付けた。
卒業前に父親が他界し、22歳で経営学部を首席で卒業した後は母からの「やりたいことをやりなさい。」の一言で一般企業には就職せず、アイドル兼レスラー兼レポーター、アシスタントとしてのタレントとして大阪に残った。マルチタレントとして、テレビに出演を続けながらプロレスのリングに上り、アイドルライブのステージに立ち続けた。
23歳で「国防少女隊SDF17」の人気投票で初の「1位」となり「センター」を獲得したが、その祝いのステージで1曲歌っただけで、「2位」の若い後輩女の子にその場を譲り、潔く「アイドル引退」を宣言した。
「こんな私にいろんなチャンスを与えてくれた「SDF17」には感謝しかありません。この場は、後輩の「U20」ユニット内グループの四天王「フォアローゼス」に任せて、私、安稀世は芸能界から卒業し、将来の「日本の女子プロレス」界の盛り上げのために本気でチャレンジします!」
は名言として残り、引退を惜しむファンには詫びを丁寧に入れ、アイドル界の中では恨まれたり、やっかまれたりすることなく引退した。
その後、経営コンサルタント補助者の仕事をやりつつ、経営が厳しい「女子プロレスインディーズ」団体の為に「スターリボン」に所属を移して全国の「弱小インディーズ」との交流戦を積極的に企画し自ら参戦することで各団体の興行を応援した。
WWEの日本大会にも参加し、アメリカの「スーパーディーバ」とも互角の戦いを見せ、テレビ局の企画で「アマレス」にもチャレンジした。オリンピックの代表候補選手になったものの、代表選考会で思わず出てしまった「アマレス」では禁止されている「プロレスの締め技」で反則負けとなり、オリンピック出場はならなかったが、JOC強化委員会やアマチュアスポーツ協会と太いパイプができた。
その後、「シュートボクシング」や「総合格闘技」にも積極的に参戦するも、27歳で膝を壊し女子プロレスの引退を余儀なくされた。そんな中、スターリボンのスポンサーであり、稀世の大ファンだった「株式会社ハピネスフード」の御曹司の専務「武藤兼良」からスカウトを受け入社した。
コンサルタント時代の知識と経験を基に、「経営企画室」の主任として採用された稀世はすぐに手腕を発揮した。
アイドル時代に訪問した店の店主やコックやパティシエとは、その後も連絡を取り合っていたので「新たなニーズ」や「新商品企画」は次々と集まった。稀世の販路開拓は順調に進み、29歳で最若年の「経営企画室長」として「執行役員」に選ばれた。そのことが全国放送のビジネス番組で取り上げられ、全国の「食」に関する事業者を相手に飛び回る生活となった。
30歳を前に専務の兼良から内々に正式なプロポーズを受けた。羽咋の母や親戚は「結婚」を勧めた。稀世は結婚し、育児をしながらでも「オンライン」で活動はできると考えていたが、「ハピネスフード」の社長と取引先から「今、抜けられたら困る。」と懇願され、継続中のプロジェクト事業に集中せざるを得なかった。
その活動は国内にとどまらず、海外にまで広がっており長期出張が増えた。32歳を前にして、3か月の長期赴任だったアメリカでの「プロジェクト事業」が一息つき帰国した。
(あぁ、1年半遅れたけど、これでようやく結婚やな…。子供は2人は欲しいから、早く赤ちゃんできるといいな!)と思いながら予定より1日早い日曜日の午後10時に関西国際空港に戻り、サプライズを装って午後11時に連絡なしに兼良のマンションを訪れた。
「ただいまー!美味しいカリフォルニアスパークリング持って帰って来てるから、一緒に飲もうか!」
と合い鍵で部屋に入ると、兼良でなく秘書課の今年の新卒採用の19歳の「本田心亜」がTシャツと短パンのラフな格好でドアを開けた。
「わーい、安経営企画室長おかえりなさーい!お土産ありがとうございまーす!」
何の屈託もない表情で出てきた心亜に一瞬戸惑いを覚えたが、バスルームからバスタオル一枚を腰に巻いただけで「こんな時間に宅配便か?」と出てきた兼良と目が合った瞬間の表情の変化で稀世は全てを把握した。
(あっ、これが世間でいうところの「NTR」っていうやつか…。まあ、ここ3か月アメリカやヨーロッパまわってて、なんもできへんかったからな…。兼良さんも32歳やから、そりゃ「溜まるもんは溜まるわな…。」心亜ちゃんは兼良さんは私と婚約してるのを知らんねんから、仕方ないわな…。くすん。)と思い、「これ冷やしてあるし、美味しいから二人で飲んでな。」とだけ言うと、心亜にばれないように涙をこぼさないように、ボトルを渡すと踵を返しスーツケースを引き玄関を出ようとした。
「えー、室長も一緒に飲みましょうよ!」
と悪気なく掛けられた心亜の言葉に、涙が溢れて止まらなくなった。
自分のマンションに帰った稀世に更なる追い打ちがかかった。母親と「世話好きな叔母」から「稀世、帰ってきたらすぐに電話ちょうだいな。ところで結婚式はいつにするの?お母さん、着物の新調の都合もあるから早めに教えてよ!」、「稀世ちゃん、いよいよ結婚やね。叔母ちゃんとこは孫まで含めて12人で出席させてもらうわね。引き出物にコスモアイル羽咋の「宇宙食たこ焼き」と「サンダー君ストラップ」入れたってね!」との留守番メッセージを再生すると、ベッドに突っ伏して3時間泣き続けた。
(あぁ、こんなことなら2年前に結婚しておくべきやった…。心亜ちゃんは悪気があった訳やない…。私が「女」として負けたっていう事やねんな…。)とマンションのベッドの上でこれまでの「頑張り」って何だったのか一人自問自答を繰り返した。
翌日の昼に「ハピネスフードサービス」に出社すると、先制パンチを喰らった。社長に呼び出されて、社長室に赴くと前室に居た心亜から
「室長、昨日のスパークリングワイン美味しかったです!ねえねえ聞いて下さいよー!私、「赤ちゃん」できたんですよ!サプライズのお祝いで、本当は飲んじゃいけないんですけどグラス半分だけいただいちゃいましたー!ごちそうさまでした!」
と声をかけられ、「おめでとう。よかったね…。」としか言えなかった。
社長室で5分程待つと、申し訳なさそうな顔の社長と頬を赤く腫らしたしょぼくれた顔の兼良が入室してきたことで、これからの話が予想できた。
「安君、すまん…。このバカ息子を煮るなり焼くなり好きにしてもらって構わん。安君にはどう詫びていいものやら…。ただ、関係各社の中には、安君と兼良の関係を知っている者もいるので…。当社規定の退職金以外にわしから「慰謝料」を用意するので、身を引いてはもらえないか…。」
言葉に詰まる社長に、稀世は「はい、お気遣いいただき、ありがとうございます。私の処遇は社長に一任します…。」とだけ答えると「本当にすまない。」と社長は震える手で稀世の両手を握り何度も頭を下げた。兼良からは「ゴメン…、何の言い訳もできない…。」とだけ言われ顔を見ると、大粒の涙をぽろぽろと零す情けない32歳の2代目経営者候補の顔を見ると何も言う気はなくなった。
稀世はマンションに帰ると、親と叔母に「結婚は無くなったわ。会社も辞めることになったから、そっちに帰ろうかな…。」と初めて愚痴が口から溢れた。母親は、「大阪で13年、よう頑張ったじゃない。いつでも戻っておいで。」と慰め、叔母は「あらあら、何があったんか知らないけど、叔母ちゃんがもっといい旦那さん見つけてあげるから安心しなさいよ。」とフォローしてくれた。
(おせっかいな「叔母ちゃん」に任せて、もう結婚してしまおうかな…。)と思ったが、現実はそうは甘くなかった。
32歳を迎えた大阪の「ハイカラ娘」は叔母の紹介する名家の羽咋の男の家族からは受け入れられなかった。稀世に過去に言い寄って来た取引先や関係者の男は全て既婚者になっていた。
やむを得ず稀世は旧くからの知人である「準幸結婚パートナー紹介システムズ」のADの「薄井幸」を訪ねることにした。なった。
幸による稀世の紹介が始まった。岩本と岡山兄弟はそっちのけで勝手に飲み会を始めているが、西沢と岩井、そして加藤、杉田は真剣な視線を向けている。
稀世は「UFOの街」、そして本物のNASAやソビエト時代の本物の宇宙船やロケット、各種機材が展示されている事で有名な「コスモアイル羽咋」のある石川県羽咋市のかつては「65歳以上人口が50%」を超える「限界集落」と言われた神子原地区の菅池町で生まれた。高校を卒業すると、「村の立て直し」を目標に地元の「スーパー公務員」への憧れを胸に大阪の有名私立大学の経営学部に進学した。
入学直後の1年生のゴールデンウイークに開催された「春の新入生歓迎祭」の「キャンパスプリンセス」に選ばれ、夏には友人が勝手に応募した関西メジャーアイドルグループ「国防少女隊SDF17」に選出され、学業の傍らアイドルとしての活動が始まったと稀世の略歴が幸から紹介された。加藤の耳がピクリと動いた。
稀世はデビュー後、有名私大の「インテリキャラ」、「いくら食べても太らない大食いキャラ」に加え、持って生まれた「フィジカル面」を活かした「芸能人」、「有名人」が出場する「運動系娯楽番組」ではプロスポーツ選手を凌駕する成績を残す万能キャラクターで地上波テレビに多数出演し人気を博した。
童顔と巨乳のギャップと可愛い笑顔と知的なトークはお茶の間に受け入れられた。特に満面の笑顔での稀世の食べっぷりは好評で、全国のスイーツ店、レストラン等の有名飲食店の巡りの食レポ番組は人気で、食材原価や利益率まで話題にする稀世のトークが受け入れられ、有名食通タレントや飲食インフルエンサーとの共演も増えた。
そんなアイドル活動の中、番組の企画で稀世の優れたフィジカル面を取り上げた国内「女子プロレス最大手団体」の「スターリボン」に参戦する企画が持ち上がった。もちろん、アイドルとして出場する「できた忖度シナリオ」での勝負だったのだが、試合の途中で「キレた」女子レスラーのシナリオを無視した本気の攻撃に鼻血を吹き出し顔面を真っ赤に染め、ほぼ「放送事故」レベルでなすすべもなくやられた稀世に同情の意見が集まり、対戦レスラーに誹謗中傷のSNSの投稿がバズった。
稀世は「私が弱いから負けただけです。もし許されるなら、トレーニングを積んだ後に再チャレンジさせてもらいたいです。」のツイートで、ファンからは「稀世ちゃんはやさしいね!」、「アイドルなんだから無茶しないで!」とリツイートが寄せられ、女子プロレスラーファンからは「本気でないくせにかわい子ぶるな!」、「女子プロレスをなめんな!」と厳しい意見が集まった。
多くのファンやアンチの意見に反して、稀世の「本気」は学生、アイドルと並行しつつ地元の「大阪ニコニコ女子プロレス」で研修生に入門し、女子プロレスラーとしての生活が加わった。半年後のリベンジマッチでは「ガチ勝負」で見事にフォール勝ちのリベンジ完勝を遂げ、女子プロレスファンの「アンチ」も稀世のファンになった。
大学3年生になると、後々羽咋市に戻り「町おこし」や「企業再建」をしたいと思い、専門のゼミに入った。ゼミの教授が稀世のタレント性に興味を示し、「経営コンサルタントと女子大生アイドル・レスラーがあなたの会社を再建します!」というタイトルで企画をマスコミに持ち込み、「経営コンサルタント」が「飲食店」、「企業」を再建させる人気経済番組のアシスタントとして活躍するようになった。
その時に、門真市にあるニッチな「よろずコンサルタント」の「金城司法書士事務所」とも関係を持ち、税務、労務、法務等の専門知識を身に付けた。
卒業前に父親が他界し、22歳で経営学部を首席で卒業した後は母からの「やりたいことをやりなさい。」の一言で一般企業には就職せず、アイドル兼レスラー兼レポーター、アシスタントとしてのタレントとして大阪に残った。マルチタレントとして、テレビに出演を続けながらプロレスのリングに上り、アイドルライブのステージに立ち続けた。
23歳で「国防少女隊SDF17」の人気投票で初の「1位」となり「センター」を獲得したが、その祝いのステージで1曲歌っただけで、「2位」の若い後輩女の子にその場を譲り、潔く「アイドル引退」を宣言した。
「こんな私にいろんなチャンスを与えてくれた「SDF17」には感謝しかありません。この場は、後輩の「U20」ユニット内グループの四天王「フォアローゼス」に任せて、私、安稀世は芸能界から卒業し、将来の「日本の女子プロレス」界の盛り上げのために本気でチャレンジします!」
は名言として残り、引退を惜しむファンには詫びを丁寧に入れ、アイドル界の中では恨まれたり、やっかまれたりすることなく引退した。
その後、経営コンサルタント補助者の仕事をやりつつ、経営が厳しい「女子プロレスインディーズ」団体の為に「スターリボン」に所属を移して全国の「弱小インディーズ」との交流戦を積極的に企画し自ら参戦することで各団体の興行を応援した。
WWEの日本大会にも参加し、アメリカの「スーパーディーバ」とも互角の戦いを見せ、テレビ局の企画で「アマレス」にもチャレンジした。オリンピックの代表候補選手になったものの、代表選考会で思わず出てしまった「アマレス」では禁止されている「プロレスの締め技」で反則負けとなり、オリンピック出場はならなかったが、JOC強化委員会やアマチュアスポーツ協会と太いパイプができた。
その後、「シュートボクシング」や「総合格闘技」にも積極的に参戦するも、27歳で膝を壊し女子プロレスの引退を余儀なくされた。そんな中、スターリボンのスポンサーであり、稀世の大ファンだった「株式会社ハピネスフード」の御曹司の専務「武藤兼良」からスカウトを受け入社した。
コンサルタント時代の知識と経験を基に、「経営企画室」の主任として採用された稀世はすぐに手腕を発揮した。
アイドル時代に訪問した店の店主やコックやパティシエとは、その後も連絡を取り合っていたので「新たなニーズ」や「新商品企画」は次々と集まった。稀世の販路開拓は順調に進み、29歳で最若年の「経営企画室長」として「執行役員」に選ばれた。そのことが全国放送のビジネス番組で取り上げられ、全国の「食」に関する事業者を相手に飛び回る生活となった。
30歳を前に専務の兼良から内々に正式なプロポーズを受けた。羽咋の母や親戚は「結婚」を勧めた。稀世は結婚し、育児をしながらでも「オンライン」で活動はできると考えていたが、「ハピネスフード」の社長と取引先から「今、抜けられたら困る。」と懇願され、継続中のプロジェクト事業に集中せざるを得なかった。
その活動は国内にとどまらず、海外にまで広がっており長期出張が増えた。32歳を前にして、3か月の長期赴任だったアメリカでの「プロジェクト事業」が一息つき帰国した。
(あぁ、1年半遅れたけど、これでようやく結婚やな…。子供は2人は欲しいから、早く赤ちゃんできるといいな!)と思いながら予定より1日早い日曜日の午後10時に関西国際空港に戻り、サプライズを装って午後11時に連絡なしに兼良のマンションを訪れた。
「ただいまー!美味しいカリフォルニアスパークリング持って帰って来てるから、一緒に飲もうか!」
と合い鍵で部屋に入ると、兼良でなく秘書課の今年の新卒採用の19歳の「本田心亜」がTシャツと短パンのラフな格好でドアを開けた。
「わーい、安経営企画室長おかえりなさーい!お土産ありがとうございまーす!」
何の屈託もない表情で出てきた心亜に一瞬戸惑いを覚えたが、バスルームからバスタオル一枚を腰に巻いただけで「こんな時間に宅配便か?」と出てきた兼良と目が合った瞬間の表情の変化で稀世は全てを把握した。
(あっ、これが世間でいうところの「NTR」っていうやつか…。まあ、ここ3か月アメリカやヨーロッパまわってて、なんもできへんかったからな…。兼良さんも32歳やから、そりゃ「溜まるもんは溜まるわな…。」心亜ちゃんは兼良さんは私と婚約してるのを知らんねんから、仕方ないわな…。くすん。)と思い、「これ冷やしてあるし、美味しいから二人で飲んでな。」とだけ言うと、心亜にばれないように涙をこぼさないように、ボトルを渡すと踵を返しスーツケースを引き玄関を出ようとした。
「えー、室長も一緒に飲みましょうよ!」
と悪気なく掛けられた心亜の言葉に、涙が溢れて止まらなくなった。
自分のマンションに帰った稀世に更なる追い打ちがかかった。母親と「世話好きな叔母」から「稀世、帰ってきたらすぐに電話ちょうだいな。ところで結婚式はいつにするの?お母さん、着物の新調の都合もあるから早めに教えてよ!」、「稀世ちゃん、いよいよ結婚やね。叔母ちゃんとこは孫まで含めて12人で出席させてもらうわね。引き出物にコスモアイル羽咋の「宇宙食たこ焼き」と「サンダー君ストラップ」入れたってね!」との留守番メッセージを再生すると、ベッドに突っ伏して3時間泣き続けた。
(あぁ、こんなことなら2年前に結婚しておくべきやった…。心亜ちゃんは悪気があった訳やない…。私が「女」として負けたっていう事やねんな…。)とマンションのベッドの上でこれまでの「頑張り」って何だったのか一人自問自答を繰り返した。
翌日の昼に「ハピネスフードサービス」に出社すると、先制パンチを喰らった。社長に呼び出されて、社長室に赴くと前室に居た心亜から
「室長、昨日のスパークリングワイン美味しかったです!ねえねえ聞いて下さいよー!私、「赤ちゃん」できたんですよ!サプライズのお祝いで、本当は飲んじゃいけないんですけどグラス半分だけいただいちゃいましたー!ごちそうさまでした!」
と声をかけられ、「おめでとう。よかったね…。」としか言えなかった。
社長室で5分程待つと、申し訳なさそうな顔の社長と頬を赤く腫らしたしょぼくれた顔の兼良が入室してきたことで、これからの話が予想できた。
「安君、すまん…。このバカ息子を煮るなり焼くなり好きにしてもらって構わん。安君にはどう詫びていいものやら…。ただ、関係各社の中には、安君と兼良の関係を知っている者もいるので…。当社規定の退職金以外にわしから「慰謝料」を用意するので、身を引いてはもらえないか…。」
言葉に詰まる社長に、稀世は「はい、お気遣いいただき、ありがとうございます。私の処遇は社長に一任します…。」とだけ答えると「本当にすまない。」と社長は震える手で稀世の両手を握り何度も頭を下げた。兼良からは「ゴメン…、何の言い訳もできない…。」とだけ言われ顔を見ると、大粒の涙をぽろぽろと零す情けない32歳の2代目経営者候補の顔を見ると何も言う気はなくなった。
稀世はマンションに帰ると、親と叔母に「結婚は無くなったわ。会社も辞めることになったから、そっちに帰ろうかな…。」と初めて愚痴が口から溢れた。母親は、「大阪で13年、よう頑張ったじゃない。いつでも戻っておいで。」と慰め、叔母は「あらあら、何があったんか知らないけど、叔母ちゃんがもっといい旦那さん見つけてあげるから安心しなさいよ。」とフォローしてくれた。
(おせっかいな「叔母ちゃん」に任せて、もう結婚してしまおうかな…。)と思ったが、現実はそうは甘くなかった。
32歳を迎えた大阪の「ハイカラ娘」は叔母の紹介する名家の羽咋の男の家族からは受け入れられなかった。稀世に過去に言い寄って来た取引先や関係者の男は全て既婚者になっていた。
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