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第3部 エピソード2025
「ダブルデートの約束」
しおりを挟む「ダブルデートの約束」
「稀世と三朗」の婚約は「健司とガイル」の結婚と併せて夜の宴会で公表された。昨年から交際が知られていた「健司とガイル」は皆が納得していたが、「健司の父」の状況が明確でない為、一時的に神標津を離れることは伏せられていた。
「いよいよ」という状況になれば、凛、蘭も連れて大阪に行くことで幹部スタッフには直から話は通じている。
「稀世と三朗」のサプライズ婚約については、「雪の日事件」の詳細を知る者以外には、「青天の霹靂」で、多くの女性スタッフを驚かせると同時に、徹にショックを与えた。
祝いムードで楽しく盛り上がる中、ひとり手酌で酒を飲む徹の様子を気遣って、広志が席の横に着いた。
「徹、どうしたんだよ。めでたい席なんだから、もう少し盛り上がってくれよ。」
と声をかけ、やさしくビールグラスに日本酒を注いだ。徹は元気なくグラスに口をつけると蚊の鳴くような声で呟いた。
「稀世ちゃんがまさかのあの三朗にさらわれてしまうとはな…。広志は知ってると思うけど、俺、稀世ちゃんか晶ちゃんを狙ってたっぺな…。まあ、去年の大ポカがあったから言いだせずにいたから、今度の人事で成果を出して告白するつもりだったべな…。
晶ちゃんは俺に対して「反応薄」だから、いつも「頑張ってや!」ってやさしく励ましてくれる稀世ちゃんにアタックするつもりになってたとこだったんだべ…。典史、真一に続いて、龍二と和樹もいい感じだべ?三角関係の広志はもちろんの事、翔すら心亜ちゃんといい感じだべな。そこによもやの三朗…。あぁ、俺だけが残されてしまったべ…。」
(うーん、晶さんは靖君と「いい感じ」っていうのは、徹は知らないもんな…。稀世ちゃんと三朗の事も一部のメンバーしか知らない話だったから、そりゃ落ち込んでしまうよな…。)と思うと「気遣いのサブリーダー」気質が顔を出してしまった。
「徹、今度気晴らしに休みの日にドライブでも行かないか?唯ちゃんと葵ちゃんも誘って4人で釧路湿原でも遊びに行って気晴らししようか?」
徹に忖度した発言の後、(あっ、唯ちゃんと葵ちゃんに先に言うべきだったかな?ちょっと、一度ストップかけておかないといかんな。)と思ったが、
「ほんとだっぺか?俺、めちゃくちゃ楽しみにしてるべ!あー、俺だけ「あぶれ者」にならんように気を使ってくれるところが広志だっぺな!お前が言うように、今日はめでたい日だから、三朗に「おめでとう」を言ってくるべ!」
と予想以上に元気を取り戻した徹にその場では何も言えなかった。
楽しい「仮祝言」パーティーが終わると、片付けをしながら広志は唯と葵に事情を話した。2人は「別に私らはかまへんで。お弁当が3人前から4人前になるだけやろ。」、「広志さんらしいな。まあ、私らを無理やり菅野さんにあてがうっていうのは堪忍して欲しいけどな。」とあまり深く考えず、4人でのデート案を受け入れてくれ、少し「ほっ」とした。
広志がふたりから離れた隙をついて、直が唯と葵に近づき、声をかけた。
「すまんな。決して「徹とのカップリング」の為のデートじゃないからな。ただ、広志は「うちのあほボン」に忖度しすぎるところがあるから、嫌じゃったら2度目からは断ってくれたらいいからな。
きっと唯ちゃん、葵ちゃんの前であほの徹は精一杯「背伸び」するじゃろうけど、底の浅いところがあるから適当に流してやってくれな。」
「直さん、そんなに気を使わないでください。徹さんだって今はアグリ神標津の為に一生懸命やってますし、新たに大阪から婚活メンバーも来るみたいですし、きっといい人が見つかりますよ。」
「そうそう。広志さんから稀世ちゃんか晶さんを狙ってるって聞いてたんで、申し訳ないけど「脈無し」かなって思ってたんですけど、「準幸」のADのさっちゃんが素敵な女の子を連れてきてくれますよ!」
と唯と葵は直に気を使った。
「ねえねえ、何の話してんの?」、「直さんの再婚話とか?」と使った食器を夏子と陽菜が下げてきて、シンクに放り込むと話に割って入って来た。
唯が「なっちゃんと陽菜ちゃんは結婚したいとかないの?」、葵は「ふたりともめっちゃ可愛いのに彼氏とか要らんの?」と同時に尋ねた。
夏子と陽菜は顔を見合わせて大声で笑って言った。
「私らは、近々、東京に出るつもりやねん。陽菜ちゃんと六本木か品川あたりで今の商売を広げようと思ってるねん。」
「せやから彼氏は「東京セレブ」を見つけるまでは「お預け」にしよなってなっちゃんと決めてるんです。」
(ふーん、夏子と陽菜もしっかりと先の事を考えてるんじゃな…。まあ、この子らとうちの徹じゃ釣り合わんのは最初から分かってた事じゃ。徹には落ち着いた女でないとな…。まあ、唯ちゃんと葵ちゃんのどちらかが広志とくっついて、もうひとりが徹と…。いやいや、そんな欲を出したら罰が当たるな…。)と直は思いつつも、「何か」が起こることを期待していた。
「直さん、片付け終わったんならちょっと一緒に飲みなおしませんか?」と上機嫌なまりあが誘いに来た。「あとは私たちで十分ですから、どうぞ、ゆっくり飲んできてください。」と唯と葵に促され、直はまりあと一緒に和室の広間に戻った。
和室で待っていた「ベロベロに酔わされた三朗」と「仲良く寄り添う稀世」と一緒に4人で飲みなおした。
「稀世ちゃん、まりあちゃんの前で聞くのは失礼なんじゃけど、ほんまに「三朗」で良かったのか?」
と問う直に
「何言ってるんですか!怒りますよ!「サブちゃんで」じゃなく「サブちゃんが」私はええの!本当は、サブちゃんから先に「好き」って言ってもらいたかったんやけど、もうそんなことはどうでもええねん。今、こうしてサブちゃんから「プロポーズ」を受けられたんやから、こんな幸せなことあれへんよ!」
と満面の笑みで答える稀世に照れて何も言えない三朗に代わり、まりあが言った。
「まあ、この子は絶対に浮気はしないタイプだから、しっかりと稀世ちゃんがそのキュートな「お尻」に敷いてあげてね。」
翌日、広志は唯、葵の休みに合わせ7月の最初の日曜日に「4人デート」の日を設定した。徹は
「早速ありがとう。その日は和樹に休みを代わってもらうから楽しみにしてるっぺ。釧路湿原は「ヒメシャクナゲ」や「クロユリ」、「カキツバタ」や「ヒオウギアヤメ」がきっとキレイだべ。」
と独自に下調べをしていたことからも、このデートにかける徹の気合が広志には少し重たかったが喜ぶ徹を見ていると、一瞬脳裏になにか「悪い事」が起こるイメージが浮かんだ事は口に出せなかった。
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