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私を助けて
第五話 少女は語る
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太一のおかげで後顧の憂いなく学校を脱出した、深夜とエアの二人は深夜の家に向かって走っていた。深夜の家までは、バスで近くまで行くこともできるのだが、敵に見つかる可能性もあるので公共交通機関は使わないことにしたのだ。
エアは走りっぱなしだったが、深夜の説明(敵に見つかる可能性があることと走って20分ほどで着くこと)により渋々了承した。家に着いたらご飯も作って貰えるというので、甘い言葉に釣られたのだ。
外に出た瞬間に男の仲間の数人に襲われたので、それを殴り飛ばして気絶させた。街中だからか銃を使ってこなかったので苦もなく倒せた。銃を撃ってきても大した苦労の違いはないのだが。
その顛末を見ていた学校の事務員が警察を呼ぼうとしたので、申し訳ないが後ろから気付かれないように近づいて首筋に全力で手刀をいれ昏倒させた。
学校から離れても、ワイシャツの美少女と白シャツに破れたブレザーの髪の長い美少年という人目を引く二人だったが、深夜が意識してヒトが少ない道を選んだので大した騒ぎにはならずに済んだ。
というのも、二人に不用意に近づこうものなら深夜の殺気にまみれた視線を浴びさせられ、それに気付かないようなバカなら深夜の拳が飛んでくるのだ。なので、移動した距離の割には目撃者はかなり少ない。
そんなことがあり、自分の家に辿り着いた深夜は、家の前に立ち溜め息をついた。深夜は家に帰るために、この気持ちになる。
というのも、深夜の家は普通の家を一回りから二回りほど大きくしたぐらいの二階建てであり、周りを高さ2mほどのコンクリートの塀で囲われている。その塀の内側には、外から見えないように有刺鉄線が張り巡らされている。周囲には赤外線センサーも完備されており、警備体制は万全である。セ○ムやALS○Kなんぞ目じゃない。
塀の内側にある駐車スペースにはアメリカ軍が汎用輸送車両として正式採用されているハンヴィーが堂々と停まっており、とても一般人の家とは思えない。もっとも、彼の家庭事情からすると、一般人の家とは言えないかもしれないが。
深夜は、高校から歩いて1時間ほどなのですぐに見つかる恐れは少ないと考え、自分の家に連れてきたがその考えを少し後悔していた。普通の人がこんな家に来たら、絶対に引く。もし、深夜がこんな家に連れてこられたら引く自信がある。
深夜の家庭事情は少し複雑で、父親と二人暮らしなのだが、その父がいささか特殊な事情を抱えている。
普段は仕事が忙しく長期に渡ることもあり、家にいることが少ない人なので今は家にはいない。もし家にあの親父が待っていると思うとさすがの深夜でもゾッとしない。
というのも深夜の親父は傭兵をしている。
イマドキそんな仕事あるのか?と思うヤツもいると思うが意外と需要はある。
ただ、表に出てこないのはもちろんのこと、それにフリーの傭兵をやるよりどっかの国で軍隊に入ったほうが待遇もいいし保障もしっかりしているハズだ。
ハズというのも深夜の親父は腕が相当に立つため、軍隊に入るよりそのほうが稼げるのである。どこからか引っ張ってきた保険により、保障もしっかりとしている。
戦いがあるかないかで収入はピンからキリまでだが、多いときになると月収で1億も稼ぐときもある。そのときに、どこで仕事をしてたかは何も教えてくれなかったが。それだけいつも稼げるわけでもなく、悪いときは何ヶ月も収入が入らなかったりするのだが。
それに傭兵とは思えないほど優しそうな顔立ちをしており、深夜の美貌はこの父親譲りだと言ってもいい。深夜は母親には会ったことがないので、もしかしたら母親譲りかもしれない。この美貌は戦場で見ると、まるで死神のように思えて恐ろしく見えるのだ。
その他にも護身術をしこたま仕込まれたり、銃や兵器の知識や使い方まで伝授されている。そのため深夜は既に特殊部隊を凌ぐほどの身体能力と技術を持っている。もっとも、これは深夜が日々の鍛錬を怠らないというのもあるのだが。
そんなことを考えつつ、深夜は家のドアを開けた。
玄関にはこじんまりとした白塗りの靴箱と、その上にある小物入れには小銭や判子、ペンなどと一緒にグロック17(拳銃)が置かれている。さも当たり前のようにグロックが置かれているが、違和感があることこの上ない。
普段、数少ない例外を除き、ヒトを家にあげないので来客もほとんどいない。それに配達されるような荷物もない(その割には玄関に判子とペンが常備してある)ので特に気にせず護身用の武器を家に置いてある。
学校の友人では唯一、家に来たことがあるのが太一で、割と頻繁に遊びに来ている。まぁ、深夜の友人自体が少ないというのもあるが。それに、太一はそういうこと(深夜の家庭事情やその環境)は全く気にしないタチなので気を煩わせなくて済む。
それだけではなく、深夜に護身術などの教えを請うほどであり、深夜は修練のつもりで太一の指導をしている。太一はセンスもよく、努力も怠らないので中々の腕であり、深夜も本気を出さなければ勝てないほどである。深夜は特殊な事情を抱えているので、一般人でここまで強いのはかなり希な部類に入る。
「適当にあがってよ。お茶でも出すから少し待ってて」
深夜は玄関に入った後、外でボンヤリとしていたエアに声を掛け、リビングに行くよう促した。エアは入るときにちゃんと靴を脱いでいたので、こちらの文化に馴染みがあるらしい。
エアをリビングのソファーに座らせた後、深夜は二階にある自分の部屋に向かう。10畳ほどの広さの部屋には、ベッドと机、小さな本棚しかなく、生活感があまりない。
その机の上から、親父から譲り受けた日本刀(真剣)と指紋認証付きのロックがかかっている引き出しからサブマシンガンのP90を引っ張り出した。ついでに予備弾倉も10個ほど。
エアがベレッタを持っていたことを思い出し、クローゼットにある武器庫(こっちも指紋認証付きのロックがある)から、その予備弾倉も取り出し、下に持っていくことにした。色々な国で使われているような銃器や、その弾薬、色々なパーツなどは父親の仕事の関係上、家に置いてある。合法かどうかは深夜は知らされていない。もっとも、深夜が人目につかないように勝手に使っている時点でお察しだが……。
ガチャガチャと物騒なモノを小さめのコンテナに入れて、両手に抱えて下りる。リビングに入るとエアは行儀良く静かに椅子に座っており、目をキラキラさせて辺りを見回していた。
「どうした? なんか珍しいモンでもあったか?」
深夜は何気なく、会話を弾ませるために聞いたが完璧に無視された。何気なく聞いたのでショックはないが、どうやら深夜の声が耳まで届いてないようだ。本当にショックはないぞ……これっぽっちしか。
首を振って忘れるように、仕方なく手っ取り早く湯を沸かし紅茶の用意をする。エアの前に紅茶と山盛りのクッキーの皿を置き、その前に自分の紅茶を置きクッキーを一つ口に入れてから向かいの椅子に座った。
「冷めないうちにどうぞ、お姫様~」
「あ、ありがとう。いただくわ」
深夜がからかいの口調で言うと、エレノアは動かしていた視線を前に向けて、やっと深夜の言葉に反応した。
やたらと素直に言われたので少し驚いた。深夜は、見た目からして傲慢な性格をしているんじゃないかと予想していたのだ。ただの偏見であることは重々承知である。しかし、こんな可愛い顔をしているので性格は良くないハズだという深夜の経験が物語っている。
そういえば、一番最初に助けた時もけっこう素直な気がした。偏見は良くないですね、本当に。
深夜は、なにから説明しようか考えていると相手の方から話しかけてきた。
「ごめんなさい……その、迷惑をかけてしまって」
「…………迷惑? この状態がか?」
深夜は最初、何を言われたのかわからなかったので、たっぷり5秒ほど固まる。その深夜の言葉に、エアは何を言ってるんだこのヒトはっ!?とでも言いたげな視線を深夜に送ってきたのでやっと得心がいった。
「あぁ、なるほど。う~ん……まぁ、確かに普通の感覚からしたら迷惑なんだろうな、多分」
そこまで言った時にエアが傷ついたような顔をしたので慌てて訂正した。
「違うぞっ! 俺は全く迷惑じゃないからな、誤解するなよ! 普通の感覚からしたらって言ったんだぞ、俺は」
まだ、エアがキョトンとした顔をしてるので、深夜はため息混じりに思っていたことを言うことにする。本当はあまり言いたくなかったんだが……。
「エアって意外と鈍いんだな。違うぞ、いい意味でっ!」
途中で、あの視線で睨まれたので、深夜はまたもや慌てて訂正した。
「あのな~、拳銃を持った相手に素手で勝つようなヤツが普通な訳ないだろ。 白状するが俺の親父は傭兵で、おれはその技術を受け継いでるってだけだから。 戦場にもそんなに行ったことないし」
深夜は、しっかりとエアの目を見ながら、言い聞かせるように言う。言っている途中で、自分のことを再確認して悲しくなってきたが、事実なので仕方がない。本当に世間一般の普通とはかけ離れているなと。
「だから、俺に迷惑を掛けたなんて思わなくていいぞ。むしろ、久しぶりにヒトに頼られて嬉しかったくらいだ」
(しかも、こんな美少女に助けてなんて言われたら断るほうがおかしい)
深夜は、このセリフはあえて言わずに心の中だけで言う。
「び、美少女なんて……!」
顔を朱に染めたエアが恥ずかしそうに深夜を見つめている。
「しまった!! 声に出してたかっ、なんたる不覚……」
「……そこまで、後悔しなくてもいいんじゃない?」
やや拗ねたように言われ、慌てて訂正する深夜。さっきからやたらと訂正してばかりのような気もするが……。
「後悔じゃないぞ! だ、だって、ほらあれだろ……会ってばかりの女の子に美少女なんて言ってみろ。お、俺が手の早い男みたいじゃないか。…………そんな風に思われたら嫌だし」
かなりどもりながらだったので、ちゃんと伝わったかどうかはわからないが一応は頷いてくれた。
最後の一言は思わず、口に出してしまったが運よくエアは聞いてなかった。
深夜は言葉の途中で、エアがなにか思いつめたような顔をしているのに気がつく。
「……どうした? そんな、まるでこれから世界が終わるような顔して」
キョトンとして発せられた深夜の言葉にエアは苦笑して、疲れたような顔をした。
「私、そんな顔してるの? 参ったなぁ~。じゃあ私も白状するけど実は私って本当は……」
この次の言葉は深夜におもわぬ爆弾を落としていった。そして、エアとはこの場かぎりの縁では終わらないだろうと確信した。
「この世界の住人じゃないの」
実に静かに言われたから、実感がまるで湧かなかった。途中までは。
「へぇ、そうなんだ…………って、ええぇぇっっ!!! この世界の住人じゃないって!? そりゃ、またどういうことさっ!?」
深夜は驚いた頭で思った。
(はい、来ました。今日一番のビックリポイント!!)
エアは走りっぱなしだったが、深夜の説明(敵に見つかる可能性があることと走って20分ほどで着くこと)により渋々了承した。家に着いたらご飯も作って貰えるというので、甘い言葉に釣られたのだ。
外に出た瞬間に男の仲間の数人に襲われたので、それを殴り飛ばして気絶させた。街中だからか銃を使ってこなかったので苦もなく倒せた。銃を撃ってきても大した苦労の違いはないのだが。
その顛末を見ていた学校の事務員が警察を呼ぼうとしたので、申し訳ないが後ろから気付かれないように近づいて首筋に全力で手刀をいれ昏倒させた。
学校から離れても、ワイシャツの美少女と白シャツに破れたブレザーの髪の長い美少年という人目を引く二人だったが、深夜が意識してヒトが少ない道を選んだので大した騒ぎにはならずに済んだ。
というのも、二人に不用意に近づこうものなら深夜の殺気にまみれた視線を浴びさせられ、それに気付かないようなバカなら深夜の拳が飛んでくるのだ。なので、移動した距離の割には目撃者はかなり少ない。
そんなことがあり、自分の家に辿り着いた深夜は、家の前に立ち溜め息をついた。深夜は家に帰るために、この気持ちになる。
というのも、深夜の家は普通の家を一回りから二回りほど大きくしたぐらいの二階建てであり、周りを高さ2mほどのコンクリートの塀で囲われている。その塀の内側には、外から見えないように有刺鉄線が張り巡らされている。周囲には赤外線センサーも完備されており、警備体制は万全である。セ○ムやALS○Kなんぞ目じゃない。
塀の内側にある駐車スペースにはアメリカ軍が汎用輸送車両として正式採用されているハンヴィーが堂々と停まっており、とても一般人の家とは思えない。もっとも、彼の家庭事情からすると、一般人の家とは言えないかもしれないが。
深夜は、高校から歩いて1時間ほどなのですぐに見つかる恐れは少ないと考え、自分の家に連れてきたがその考えを少し後悔していた。普通の人がこんな家に来たら、絶対に引く。もし、深夜がこんな家に連れてこられたら引く自信がある。
深夜の家庭事情は少し複雑で、父親と二人暮らしなのだが、その父がいささか特殊な事情を抱えている。
普段は仕事が忙しく長期に渡ることもあり、家にいることが少ない人なので今は家にはいない。もし家にあの親父が待っていると思うとさすがの深夜でもゾッとしない。
というのも深夜の親父は傭兵をしている。
イマドキそんな仕事あるのか?と思うヤツもいると思うが意外と需要はある。
ただ、表に出てこないのはもちろんのこと、それにフリーの傭兵をやるよりどっかの国で軍隊に入ったほうが待遇もいいし保障もしっかりしているハズだ。
ハズというのも深夜の親父は腕が相当に立つため、軍隊に入るよりそのほうが稼げるのである。どこからか引っ張ってきた保険により、保障もしっかりとしている。
戦いがあるかないかで収入はピンからキリまでだが、多いときになると月収で1億も稼ぐときもある。そのときに、どこで仕事をしてたかは何も教えてくれなかったが。それだけいつも稼げるわけでもなく、悪いときは何ヶ月も収入が入らなかったりするのだが。
それに傭兵とは思えないほど優しそうな顔立ちをしており、深夜の美貌はこの父親譲りだと言ってもいい。深夜は母親には会ったことがないので、もしかしたら母親譲りかもしれない。この美貌は戦場で見ると、まるで死神のように思えて恐ろしく見えるのだ。
その他にも護身術をしこたま仕込まれたり、銃や兵器の知識や使い方まで伝授されている。そのため深夜は既に特殊部隊を凌ぐほどの身体能力と技術を持っている。もっとも、これは深夜が日々の鍛錬を怠らないというのもあるのだが。
そんなことを考えつつ、深夜は家のドアを開けた。
玄関にはこじんまりとした白塗りの靴箱と、その上にある小物入れには小銭や判子、ペンなどと一緒にグロック17(拳銃)が置かれている。さも当たり前のようにグロックが置かれているが、違和感があることこの上ない。
普段、数少ない例外を除き、ヒトを家にあげないので来客もほとんどいない。それに配達されるような荷物もない(その割には玄関に判子とペンが常備してある)ので特に気にせず護身用の武器を家に置いてある。
学校の友人では唯一、家に来たことがあるのが太一で、割と頻繁に遊びに来ている。まぁ、深夜の友人自体が少ないというのもあるが。それに、太一はそういうこと(深夜の家庭事情やその環境)は全く気にしないタチなので気を煩わせなくて済む。
それだけではなく、深夜に護身術などの教えを請うほどであり、深夜は修練のつもりで太一の指導をしている。太一はセンスもよく、努力も怠らないので中々の腕であり、深夜も本気を出さなければ勝てないほどである。深夜は特殊な事情を抱えているので、一般人でここまで強いのはかなり希な部類に入る。
「適当にあがってよ。お茶でも出すから少し待ってて」
深夜は玄関に入った後、外でボンヤリとしていたエアに声を掛け、リビングに行くよう促した。エアは入るときにちゃんと靴を脱いでいたので、こちらの文化に馴染みがあるらしい。
エアをリビングのソファーに座らせた後、深夜は二階にある自分の部屋に向かう。10畳ほどの広さの部屋には、ベッドと机、小さな本棚しかなく、生活感があまりない。
その机の上から、親父から譲り受けた日本刀(真剣)と指紋認証付きのロックがかかっている引き出しからサブマシンガンのP90を引っ張り出した。ついでに予備弾倉も10個ほど。
エアがベレッタを持っていたことを思い出し、クローゼットにある武器庫(こっちも指紋認証付きのロックがある)から、その予備弾倉も取り出し、下に持っていくことにした。色々な国で使われているような銃器や、その弾薬、色々なパーツなどは父親の仕事の関係上、家に置いてある。合法かどうかは深夜は知らされていない。もっとも、深夜が人目につかないように勝手に使っている時点でお察しだが……。
ガチャガチャと物騒なモノを小さめのコンテナに入れて、両手に抱えて下りる。リビングに入るとエアは行儀良く静かに椅子に座っており、目をキラキラさせて辺りを見回していた。
「どうした? なんか珍しいモンでもあったか?」
深夜は何気なく、会話を弾ませるために聞いたが完璧に無視された。何気なく聞いたのでショックはないが、どうやら深夜の声が耳まで届いてないようだ。本当にショックはないぞ……これっぽっちしか。
首を振って忘れるように、仕方なく手っ取り早く湯を沸かし紅茶の用意をする。エアの前に紅茶と山盛りのクッキーの皿を置き、その前に自分の紅茶を置きクッキーを一つ口に入れてから向かいの椅子に座った。
「冷めないうちにどうぞ、お姫様~」
「あ、ありがとう。いただくわ」
深夜がからかいの口調で言うと、エレノアは動かしていた視線を前に向けて、やっと深夜の言葉に反応した。
やたらと素直に言われたので少し驚いた。深夜は、見た目からして傲慢な性格をしているんじゃないかと予想していたのだ。ただの偏見であることは重々承知である。しかし、こんな可愛い顔をしているので性格は良くないハズだという深夜の経験が物語っている。
そういえば、一番最初に助けた時もけっこう素直な気がした。偏見は良くないですね、本当に。
深夜は、なにから説明しようか考えていると相手の方から話しかけてきた。
「ごめんなさい……その、迷惑をかけてしまって」
「…………迷惑? この状態がか?」
深夜は最初、何を言われたのかわからなかったので、たっぷり5秒ほど固まる。その深夜の言葉に、エアは何を言ってるんだこのヒトはっ!?とでも言いたげな視線を深夜に送ってきたのでやっと得心がいった。
「あぁ、なるほど。う~ん……まぁ、確かに普通の感覚からしたら迷惑なんだろうな、多分」
そこまで言った時にエアが傷ついたような顔をしたので慌てて訂正した。
「違うぞっ! 俺は全く迷惑じゃないからな、誤解するなよ! 普通の感覚からしたらって言ったんだぞ、俺は」
まだ、エアがキョトンとした顔をしてるので、深夜はため息混じりに思っていたことを言うことにする。本当はあまり言いたくなかったんだが……。
「エアって意外と鈍いんだな。違うぞ、いい意味でっ!」
途中で、あの視線で睨まれたので、深夜はまたもや慌てて訂正した。
「あのな~、拳銃を持った相手に素手で勝つようなヤツが普通な訳ないだろ。 白状するが俺の親父は傭兵で、おれはその技術を受け継いでるってだけだから。 戦場にもそんなに行ったことないし」
深夜は、しっかりとエアの目を見ながら、言い聞かせるように言う。言っている途中で、自分のことを再確認して悲しくなってきたが、事実なので仕方がない。本当に世間一般の普通とはかけ離れているなと。
「だから、俺に迷惑を掛けたなんて思わなくていいぞ。むしろ、久しぶりにヒトに頼られて嬉しかったくらいだ」
(しかも、こんな美少女に助けてなんて言われたら断るほうがおかしい)
深夜は、このセリフはあえて言わずに心の中だけで言う。
「び、美少女なんて……!」
顔を朱に染めたエアが恥ずかしそうに深夜を見つめている。
「しまった!! 声に出してたかっ、なんたる不覚……」
「……そこまで、後悔しなくてもいいんじゃない?」
やや拗ねたように言われ、慌てて訂正する深夜。さっきからやたらと訂正してばかりのような気もするが……。
「後悔じゃないぞ! だ、だって、ほらあれだろ……会ってばかりの女の子に美少女なんて言ってみろ。お、俺が手の早い男みたいじゃないか。…………そんな風に思われたら嫌だし」
かなりどもりながらだったので、ちゃんと伝わったかどうかはわからないが一応は頷いてくれた。
最後の一言は思わず、口に出してしまったが運よくエアは聞いてなかった。
深夜は言葉の途中で、エアがなにか思いつめたような顔をしているのに気がつく。
「……どうした? そんな、まるでこれから世界が終わるような顔して」
キョトンとして発せられた深夜の言葉にエアは苦笑して、疲れたような顔をした。
「私、そんな顔してるの? 参ったなぁ~。じゃあ私も白状するけど実は私って本当は……」
この次の言葉は深夜におもわぬ爆弾を落としていった。そして、エアとはこの場かぎりの縁では終わらないだろうと確信した。
「この世界の住人じゃないの」
実に静かに言われたから、実感がまるで湧かなかった。途中までは。
「へぇ、そうなんだ…………って、ええぇぇっっ!!! この世界の住人じゃないって!? そりゃ、またどういうことさっ!?」
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