幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

文字の大きさ
158 / 242

第百五十九話:シュリ

しおりを挟む
ギリアムの目が覚めてから2ヶ月が経過していた。

マニラの懇親的な介護でギリアムは心身ともにすっかりと回復していた。

「ギリアム、これからどうするの?」
「僕は全てを失ったと思っていた。だけどそれは違っていたんだね」

マニラは、ギリアムと出会って僅か3ヶ月足らずで、竜人族語をマスターしていた。

「マニラ、ずっと僕の側にいてくれないだろうか?勿論強制はしない」

竜人族と人族とが一緒になる事など前代未聞だった。

しかし、マニラの答えは決まっていた。

「ええ、私なんかで良ければ喜んで」

マニラは満面の笑みで答える。
そして2人は優しく抱きしめ合う。

マニラには、初めてギリアムと出会った時から、薄々と感じていた事があった。

''この人が私の運命の人なのだと''

マニラは、両親に告げた。
反対されるかと思いきや、「お前の人生だから好きに生きなさい」と、温かく受け入れてくれた。

それからあっという間に3ヶ月という月日が経過し、2人は晴れて契りを結び正式に夫婦となった。

領主の娘の結婚式だと言うのに、その場には両親、弟、屋敷に仕えるメイド、執事、祖母しかいなかった。
流石に、街の者には受け入れてもらえないだろうと、式は身内だけで行われ、式が終わると、2人は街を出た。

「いい?時々は手紙をよこしてね?それと、最低でも1年に1回は帰って来なさい。ここが貴方たち2人の故郷なのだから。いい?ギリアムちゃんと聞いてる?」

マニラが、母の言葉をギリアムに翻訳し、ギリアムの言葉を母に翻訳する。

「娘を頼むぞ」

領主であるマニラ父がギリアムと固い握手を結ぶ。

「行って来ます!」

街から2日ばかり離れた場所を新たな居住区として構え、2人の新たな生活がスタートした。

「幸せな家庭にしましょうね」
「ああ、キミが望むなら」

その後、2人の間に待望の子供が産まれた。
名前は、シュリ。
ギリアムにはとうにマスターする事が出来なかった共通語をシュリは、全てを吸収する子供特有の理解の速さで覚えて行った。

シュリが成人し、独り立ちし、両親の元を離れて竜人族の長として活躍していくのはまた別の話。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「種族間の違いはあっても、仲の良い優しい良い両親だったんだな」
「うん、世界一の両親」
「いいですねぇ、何だか、こう、グッと込み上げてくるものがありますよね!」
「ルーが言うと、何か軽く感じるな」
「何ですかそれ!ひどいです!それに私の体重は軽いですよ!」
「いや、今体重の話なんてしてないだろ・・あっ・・」

しまった、俺とした事が、ついルーのボケに反応してしまった。

ルーは、してやったりとニヤリと口元を歪めて「私の素晴らしいボケにツッコミを入れずにはいられないんですね!」なんて意味の分からない事を言っている。もう無視だ。反応した方が負けなのだ。

俺達は、シュリの両親の話を聞きながら、目的地へと向かっていた。

形態変化メタモルフォーゼで隠していたシュリの竜人族としての特徴を解除しておく。
このままだと、どう見ても人族にしか見えないからね。

竜人族の集落が視界に入ると、流石に警戒されたのか、数人の獣人族の兵士が槍を構えて行く手を遮る形で陣を取っている。

「止まれ!何者だ!貴様ら!」
「これ以上進むなら容赦はしないぞ!」

竜人族言語で投げ掛けられている為、シュリと俺以外には理解出来ないはずだった。

「これ以上進んだら、グサリですよ」

ルーだった。

「言葉が分かるのか?」
「ふふふ、転生者特典ですよ~。喋れないですけど、聞くぶんには分かるんです!」
「ふむ」

シュリが、竜人族言語で自分たちの素性を説明する。

最初は戸惑っていた竜人族たちもシュリの真摯な説明が良かったのか武装を解除し、警戒を解いてくれた。
そして、何故だか進んで集落に入るように案内された。

「人族の匂いする」
「え?」
「マスター、私たち以外の人族反応1です」
「俺ら以外にもいるのか」

妙だな。
シュリみたいなケースは珍しいはずだ。
ならば、考えられるケースは捕虜とかだろうか?

集落の規模は、範囲探索エリアサーチの反応からすると25人だった。
全員の視線がこちらへと向けられる。
しかし、何処と無く覇気が感じられないのは気のせいだろうか?
元気がないというか、もうどうでもいいみたいな感を漂わせている。

そして、案内された先に居たのは、人族の赤ん坊を抱えていた、この集落の長をしている人物の元だった。

ガゼネラさんと言うらしい。

シュリとガゼネラさんが話をしている。

俺はと言うと・・

「ねえ、お兄ちゃん!私いいこと思いついた!」
「ん、どうした?」
「私もテンセイシャ?って言うのになる!そしたら、私もルーちゃんみたいに聞こえるようになるんだよね」

ユイがキラキラした眼差しを向けてくる。
うん、きっと職業か何かと勘違いしてるんだな・・無理もないけど、その「私頑張るね!」みたいなキラキラした眼差しはやめてくれ!直視出来ないから・・。

「ユイ、転生者っていうのはな、特別な職業なんだ。なりたくてもなれるもんじゃないんだよ。勿論俺でもなれないしね」
「なーんだ、そうなのかぁ・・」

ガックシと肩を落すユイ。
何だか俺が悪い事言ったみたいじゃないか。
俺は、ジト目をルーに対して向ける。
ルーは、バツが悪いのか、向けられた視線をヒラリとかわしていた。

「ユウ」

シュリだった。
長のガゼネラさんとの話が終わったのだろうか?

「この赤ん坊、馬車がモンスターに襲われた生き残り。竜人族が助けた」

この近くの街道沿いでモンスターに襲われている馬車を発見した彼等は、助けるべくモンスターと戦った。
結果、竜人族側にも1人の犠牲者を出してしまったが、何とか倒す事が出来たそうだ。
しかし、馬車の中は酷い有様で、その中に両親に身を呈して守られるようにその腕の中に赤ん坊がいたそうだ。

「なるほど、となると送り届けるとかは難しいな」
「うん、だからこの赤ん坊を竜人族が育てる言ってる」
「出来るのか?そもそも人族とは住む世界が違うんだし赤ん坊の扱いとか・・」

俺でも赤ん坊の扱いとか分からないなんて、言えないよな。

「大丈夫、でも・・・」

シュリが下を向いて言葉を詰まらす。

「シュリ?」

何やら意を決したようにその眼が鋭い眼光へと変わる。

「私がここに残る」

一瞬、シュリの言ってる事が理解出来なかった。

ここに残る・・残る・・。
ああ、そう言う事か。

俺は、シュリを仲間にした時の事を思い出していた。

「目的を見つけたんだな」

シュリは、コクリと頷く。

「うん。この子を立派な竜人族の戦士にしたい。それに・・」

シュリが残ると言ったのにはもう一つの理由があった。
赤ん坊を助ける時に犠牲になったのは、この竜人族の長をしていた人物だった。
現長のガゼネラさんの旦那でもある。

だから、竜人族たちに覇気が感じられなかったのか。
誰だってリーダーを失えば、落胆するのも頷ける。

「私がリーダーになって、支える」

そうだよな、シュリは元々一部族の長をしていたんだよな・・。
それを卑劣な罠で仲間を全滅させられた時に俺たちと出会ったんだよな。

シュリは重ねているのかもしれない。
あの時の仲間たちと・・。

「意思は固いんだな?」
「うん」

その言葉だけでシュリの決意は十分なほど伝わってきたよ。
俺はシュリの頭を優しく撫でる。

しかし、相手側もすんなりとシュリの事を認めたなと思っていたが、実はシュリは意外と同族間では有名らしい。
その愛くるしさは勿論の事、その強さに関しても同族では群を抜いているとか。
流石は俺の仲間だなと誇らしい気分になる。

ユイが、駆けてきて勢い良くシュリに抱きつく。

「嫌だよ!そんなの寂しいよ!」

シュリと離れたくないのか、駄々をこねていた。
それを慈愛に満ちた目で優しくユイの頭を撫でるシュリ。

シュリの見た目と年齢は、ユイの姉貴分にあたるのだが、立ち位置的には、妹のようにユイは接していた。
以前は、クロがその立ち位置だった。
クロが一時離脱してからもきっとユイは寂しかったんだと思う。

だからシュリの事を・・。

だめだ、そんな事を考えていたら俺も泣けてきそうになってきた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...