幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第百六十話:オークの襲撃【前編】

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シュリが、ここ竜人族の部族と共に歩むと決めてから、一夜が明けた。

昨晩は、シュリとの別れを惜しむささやかな晩餐会を開催した。
勿論、竜人族たちにも全員参加してもらう。

あいにくと、食料は豊富にあったので、足らなくなるという心配もなかった。
次から次へと出てくる料理に竜人族たちは目をまん丸に見開き驚いていた。
料理が口に合うか心配だったが、同族であるシュリが美味しそうに食べている姿を見て、安心したのか口をつける。
余程美味しかったのか、以降は物凄いスピードで料理を平らげていた。

ユイは、終始元気がなかった。
あのユイが途中まで殆ど食事を食べていなかったのだ。
流石に心配になり、俺はユイの横でなだめ続けた。
やはり、シュリとの別れが辛いようだ。
しかし、これが今生の別れという訳ではない。
流石に会いたい時にすぐには会えないけど、またいつか必ず会えるからと言う俺の苦しい説得で理解してくれたのか、その後はシュリの横で黙々と料理を食べ漁っていた。
ルーに関しては、何を考えているのか分からないので終始スルーだ。

俺はシュリが今後の生活で使いそうな物を入れたマジックバックをシュリに手渡す。

「マジックバック貴重」
「それは、予備で持ってた物だから、役立ててくれたら俺も嬉しいよ」
「ありがとう。それに、こんな私拾ってくれてありがとう」

くそう、俺だってシュリが離れるのは悲しいってのに。そんな事を言われると、今までのシュリとの思い出とかが頭の中を巡っちゃうだろ。

あーもう、我慢できない!

俺はシュリを抱き締めた。

「シュリ!離れ離れでもお前はずっと俺たちの仲間だからな!」

俺の行動に一瞬戸惑いながらもシュリもしっかりと両手を腰に回していた。

ユイもその中に入ってくる。

「何かあったらちゃんと呼んでね、これ渡しとくから」

ユイは念話の使える魔導具テレコンイヤリングをシュリに手渡した。

「いいでしょ、お兄ちゃん?」
「ああ、これで話したい時にいつでも話せるからな」
「やったあ!」
「ありがとう。何かあれば連絡する」
「おう、あんまり長いとまた別れが辛くなるから、この辺で俺たちは行くよ。いいか、健康には気を付けるんだぞ?元気でな」
「元気でねシュリちゃん」
「私とは短い付き合いだったけど、楽しかったよ!またね!」

別れは辛い。
しかし、この別れは永遠ではない。
きっとまた何処かで会える。

また会おうぜ!シュリ!

シュリと別れた俺たちは、空飛ぶ絨毯に乗って、バーン帝国を目指していた。

何処にも寄り道するつもりは無かったのだが、まだ遠目だが、少し右に逸れた先から煙がモクモクと上がっているのが見えた。

「モンスターの反応あり、兎人族ラビが襲われているものと推測します」

兎人族ラビとは珍しいな。

「助けに行くぞ!総員戦闘準備!」

間違えた、ついつい空を飛んでいたので何処かの艦長めいた事を口走ってしまった。
全員戦闘準備!が正しいか。
恥ずかしいので、今更訂正はしないけどね。

ユイが両短剣を構える。
ルーも杖を構えている。

「闇雲に突っ込むと危険が伴う。まずは状況把握からだ」

絨毯に乗ったまま、煙が上がっている場所まで進む。

燃えているのは・・・集落入り口の木製の壁のようだ。
「あれは、オークかなぁ?」

眼前には、同一種族のモンスターが溢れかえっていた。おびただしい数だ。

鑑定アナライズで確認すると、ルーの言う通りオークの群れだった。
しかし、数種類の個体が入り混じっている。
視界に映るだけで、

スタンダード型のオーク
オークの上位種のハイオーク
剣を使うオークナイト
巨大な斧を担いでいるギガントオーク
魔術を使うオークメイジ
弓を使うオークアーチャー

その中でも一際大きい個体がいる。

名前「オークキング」
レベル60
種族:オーク
弱点属性:火
スキル:轟音Lv2、突進Lv3、パワーアップLv3、オーク斬りLv5、パワースイングLv4、地割れLv5、
称号:オークの王
特殊:統率力向上Lv2、指揮高騰Lv3、援軍要請Lv3

俺は、知り得た情報を皆に説明する。

「私がオークキングと戦いたい!」

やけに張り切ってるな。

「だめだ危険すぎる」
「大丈夫だよ。新しいスキルも試してみたいし、ね、お願いお兄ちゃん」

だからその上目遣いやめろって・・

(最近、ユウさんの方がユイさんに良いように利用されてません?)
(気のせいだ)

クスクスと笑っているのは精霊のセリアだ。

「分かった。だけど、単騎はだめだ。アリスと一緒だぞ」
「おっけー!分かった!」
「ユイを頼むぞアリス」
「了解マスター」
「ルーは俺と一緒に集落に攻め入っているオーク供を狩るぞ」
「私に任せて!」

ルーはそう言うと、トリプル召喚を発動させ、3体の精霊を召喚した。

1体目は、燃え盛る大鷲、まさに火の鳥と例えるのが妥当だろう。
精霊術師レベル46で召喚可能なシュライアだ。

2体目は、緑の葉で編んだような服を身に纏っている可愛らしい人型妖精のシルフ。
レベル52で召喚可能だ。

3体目は、例えるならば真っ黒いサッカーボールだろうか。
幻惑系の魔術を得意とするシャモンだ。
レベル36で召喚可能だ。

「ルー、本気だな」
「たまには、私の実力を見せてあげますよ!」

空飛ぶ絨毯で近くに降り立つと、二手に分かれた。

オークキングは、兎人族の集落の外にいる。
自分は安全な外から、指示を送っているのだろう。
せこい奴だと言いたくなるが、指揮命令系統ならば、当然といえば当然だ。
司令官がやられれば、兵士は脆い。

ユイとアリスが真っ直ぐにオークキングに突っ込んで行く。

「さて、俺たちは集落側へ向かうぞ」
「はい!やっちゃうよ!」

シャモンが、俺達の姿が見えない幻惑魔術を常時展開する。
それを利用して次々と駆逐していく。

2人とも後衛職で、精霊もまた遠距離魔術型なので、まさにシューティングゲームのような感覚でオーク共を一掃していく。
オークに知性があったのならば、こうも簡単には行かなかっただろう。
オークたちは、何が起こったのか分からないままにどんどんと地面に突っ伏していく。

精霊たちは、個々で勝手に動いているのかと思っていたが、実は全て念話による術者からの指示によって動いていた。

「悪かったルー。おまえは、ただのアホな子じゃなかったんだな」
「ふぇ?何ですかいきなり!」
「いや、やるときはやる子なんだなって」
「意味が分からないです!あ、右から来ますよ!」

右から矢が2本ばかり飛んで来たので、雷撃ライトニングボルトで矢と進行方向にいた術者とその周りにいた数匹のオークを丸焼きにした。

「流石ユウさん!」
「奴等、姿が見えないからって、でたらめに攻撃を飛ばしてくるから逆に読み辛いな」
「でもだいぶ数は減らせましたよ」

既に、決壊していた木製の柵を越えて、兎人族ラビの集落内に入っている。

「ここからは、兎人族ラビもいる。攻撃を当てるなよ」
「分かってますよ!」

返事が軽すぎるので逆に心配にはなるが、先ほどの精霊捌きなら大丈夫だろう。

襲われている兎人族ラビを助け、傷付いている者を治癒ヒールで癒しながら、オーク共を一掃していく。

兎人族ラビ側にも少なくない犠牲が出ている。

「あ、ごめんそろそろシャモンちゃん限界みたい。こっからは幻惑なしで!」
「了解だ。今度はこっちが技を見せる番だな」

範囲探索エリアサーチを頼りにターゲットロックオン!
久し振りの新技!喰らいやがれっ!

全範囲火撃インフェルノレイン‼︎」

範囲探索エリアサーチに移った87体のオークに1m級の火球が一斉に襲い掛かる。
速度重視だから威力には若干欠けるが、問題ないだろう。

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