幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

文字の大きさ
164 / 242

第百六十五話:修練の洞窟

しおりを挟む
仮面野郎の正体不明の攻撃を喰らい、意識を失ってしまった。
間一髪意識が途切れる前に治癒ヒールをしていたので、大事には至らなかったのだが、気を失っている最中に、この世界の神の一人であるメルウェル様が俺の意識の中に|・・・ルビ来た。
伝えておきたい事があったらしいのだが・・

それは、この世界全体を脅かすような危機がもうすぐ訪れようとしているって事。時期はまだ不明なんだけどね。
だから、今まで通り冒険を続けていればいいそうだ。
結局は何も変わらない。
後、俺を気絶させた仮面野郎には気を付けろと忠告された。
あの仮面野郎とは何かと因縁のあった亡国の騎士のリーダーだった。
今度見かけたら、絶対に借りは返すからな。

意識が戻った俺は、それこそ皆を死ぬほど心配させてしまったようだ。
ルーは泣きわめくし、アリスは無言で何処と無く悲しそうな顔をしているし、それより一番意外だったのはユイだ。
ルー以上に泣きわめくのかと思っていたのに、一番冷静だったらしい。
「お兄ちゃんは寝てるだけ」とルーをあやしていた程に。
確かに目が覚めた時、心配そうな顔ではあったけど、すぐに笑顔になっていた。

大人になったなぁ、と少しだけ感慨深い気持ちになる。

目が覚めた時、そこに仮面野郎の姿はなかった。
勿論、仲間たちの姿もだ。
意識を失う直後、仮面野郎は仲間たちを連れて転移していったらしい。

次に会うときは何かしらの対策をしないと、魔術完全無効化なんてチートにも程がある。
ていうかどうやって闘えばいいんだ?
それに最後の攻撃に関しても全く見えなかったからな。奴だけの固有ユニークスキルなのか?それとも俺が知らないスキルなのか・・
どちらにしても、色々と調べる必要がありそうだな。

自分の強さに慢心するなって事が今回の教訓だった。
決して慢心していたつもりはないんだけど、結局の所メルウェル様もそれが言いたかったんだと思う。


場所は変わって、俺達はバーン帝国まで戻って来た。

当初は、吸血鬼兄妹を送り届けるだけの予定だったので3.4日程度で戻るはずだったのが、色々とあり結果1週間以上も費やしてしまった。
戻って来たのが夕方だった事もあるので、宿で食事だけ済まして、床に入る。

やっぱり、ふかふかベッドが一番だな・・。

次の日の朝は、各自自由行動とした。
俺は朝一からムー王女の元を訪れていた。

「遅くなって悪かったな」
「無事に妾の元に帰って来てくれただけでよい」

ん、妾の元?
訂正するのも面倒なので、スルーしておこう。

空飛ぶ絨毯をムー王女に返す。
非常に貴重な物らしいので、すぐに返したかった。

「そいつのおかげで大幅に時間短縮が出来たよ。ありがとう」
「今度は妾も乗してくれると嬉しいのじゃがな」
「え?ああ、それくらいならいつでもいいよ」

ムー王女は、フフと笑う。

「そうじゃ、ユウに見て欲しい物があったのじゃ」
「名前で呼ばれたのは初めてだな」
「フッ、ユウも名前で呼んでくれて良いのだぞ」
「それは、周りの目があるので頼まれても遠慮します。自分の為でもあるし」

第三者がいるとこで、うっかりムー王女を呼び捨てにしようものなら、首が飛ぶらしいからね。
万が一にもそんな事は御免被りたい。
まだ死にたくない。

ムー王女は部屋の隅に置いてあった箱を此方へ持って来て、中から紙の束を取り出す。

「これは?」
「感謝状じゃ。それ以外にも近況報告や是非会ってお礼がしたいなど、様々じゃな」
「もしかして、奴隷たちからの?」
「ユウの考えた新しい奴隷制度は奴隷にとっては良い事づくしじゃからな」
「そうか、グワン氏が頑張ってくれたんだな」
「寝る間も惜しんでおったぞ。まぁ、生憎今は高熱を出して、寝ておるがな」
「それって大丈夫なのか・・」
「いつもの事じゃ。何かに没頭してしまうと、それが終わるまでは不眠不休をする輩じゃ。じゃから、それが終わると反動で倒れるんじゃ」

面と向かってお礼が言えないのが心苦しいが、心の中でグワン氏にお礼を述べておく。

「その中で一つ、気になる手紙を見つけてな」

そう言い、差し出された手紙の内容はこうだ。

''私は無の魔女。今回の奴隷制度改定について是非話したい事がある。修練の洞窟にて待つ''

「修練の洞窟って、ムー王女が行きたがっていた洞窟の事だよな?」
「うむ、しかし驚くのはそこじゃない」

ムー王女は、指差す。

「無の魔女って言うのはじゃな、紀元の魔女の数ある呼び名の中の一つじゃ」
「本物なのか?」
「分からんな。じゃが、確かにこの手紙には魔女の魔力を感じる。紀元の魔女かは分からぬが、何処かの魔女であるのは確かなようじゃ。本人ならばいざ知らず、名を騙っているだけだとすれば、そんな不敬な輩は正統たる水の魔女である妾が粛清してくれようぞ」

今すぐにでも出発したいと言うので、今日はユイたちには自由行動と伝えていたし、約束でもあったので、それを了承する。

修練の洞窟は、ここバーン帝国から馬車で3日程の距離にあった。
往復で1週間とか話にならない。
ムー王女も乗りたいと言っていたので、早速空飛ぶ絨毯で向かう事になった。

「ほぉ、かなりのスピードをだしておるが、風の抵抗を感じないのは、結界か何かを発動させておるのか?」
「鋭いね。この絨毯の範囲に障壁を展開させてるよ。これがないと、最初に乗った時風圧で飛ばされかけたからな」

2人しか乗っていない為、絨毯はゆったり広々スペースだと言うのに何故だか、背中に密着してくるムー王女。

「近くないか?」
「気のせいじゃ」

そのまま、2時間程度で目的地である修練の洞窟へと辿り着いた。

「ここに来るのは久々じゃな」

目の前に見えるのは、何の変哲も無いただの洞窟だった。

「でもこれだと、誰でも入れるんじゃないか?」

魔女か魔女の弟子でないと入れないと言っていたからだ。

「目には見えない結界が張ってあるのじゃ。同時にそれは外から出てこれないようにする為でもある」

ムー王女が、地面に落ちている小石を拾い上げると、徐にそれを洞窟の入口に向かって放り投げた。

小石は、見えない何かにぶつかり、「バチっ」と紫電が走ったように表面が黒く焦げて下へと落下した。

「心配せずともちゃんと結界は効いておる」
「・・・お、俺は入っても大丈夫なんだよな?」
「大丈夫じゃ。仮に弾かれてもたぶん死ぬ事はないから安心せえ」

今、たぶんって言ったよな!そんな不確定要素で命を失ってたまるかよ。

俺が不安がっているのが面白いのか、ムー王女がクスクスと笑っている。

先にムー王女が洞窟の中へと入る。

「うむ。入口には何もいないようじゃな」

俺が入るのを躊躇っていると、

「何をしておるのじゃ。案ずるな。仮に拒まれても骨くらいは拾ってやる」
「冗談に聞こえないからやめてくれ」

ムー王女は、ニヤニヤしている。
美女のニヤついた顔も悪くない。
いや、違うぞ騙されるな俺!

それにしても、こいつ絶対Sだな。いつか仕返ししてやる・・
はぁ・・とは言っても、このままでは本当の意味でも先に進めないので、覚悟を決めるしかない。

結界の前まで進み、右手の人差し指で触ってみる。

うん、分かってたよ。
だって、偉大なエスナ先生の弟子なんだから、入れるに決まってるじゃないか。
何の抵抗もなく、そのままするりと通り抜けた。

「いつまで笑ってるんだ?」

ムー王女は、クスクスと笑っている。

「いやな、意外と普通の人みたいな反応するんじゃなと思ってな」
「俺を化け物か何かと勘違いしてないか?至って普通の人なんだけど」
「そういう事にしておくかの」
「そう言う事ってなんだよ!」

その後中へと進む。
次から次へと現れるモンスターをムー王女が、水の魔術でねじ伏せて行く。

「ユウは手を出すなよ。妾が一人でやるんじゃからな」
「危険だと判断したら手を出すからな」
「そんな局面があればな」

確かに言うだけある。
俺が持っていない水魔術を複数使っている。

そして観察するように見ていると魔術を覚えてしまった。

''アクアブリットを取得しました''

アクアブリットは、一度に複数の水玉を自身の周りに出現させる。
そして、超高速で発射された水玉は、触れたものに風穴を開けていく。
数量は、使い手の魔力と実力に依存するらしい。
ちなみにムー王女は、一度に12個までが限界らしい。

後で俺も試してみよう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【完結】嫌われ公女が継母になった結果

三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。 わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

処理中です...