幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第百六十六話:試練

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ムー王女と共に修練の洞窟に潜る事早4時間が経過していた。
洞窟内は依然として薄暗いジメジメした空間が続いていた。

「かなり歩いたけど、目的地はまだなのか?」
「たぶんもうすぐじゃ。妾だって、幼き頃に一度しか訪れた事がない故、あまり正確には覚えておらん」

普通に考えて、行きに費やした時間分だけ帰りにも必要だ。ユイたちには、夜には戻ると伝えていたが、どうやら無理そうだなと溜息をつく。

「どうしたんじゃ?溜息などついて」
「いや、妹たちに何って言い訳しようかを考えていたんだ」
「達って事は何人もおるのか?話には聞いておったが、今度妾にも紹介してくれたら嬉しいんじゃがな」
「そういえば、ムー王女にはまだ紹介してなかったな」

今度会わせてみてもいいかもしれない。
ユイたちからすれば、年上の姉的立場になるしね。

「妾が可愛がってあげる」

前言撤回だ。
危険な匂いがするので絶対に会わせない事にしよう。

更に洞窟の奥へと進むと、目の前に大扉が見えた。
何とも、洞窟には似つかわしくない。

「あそこが終着点じゃ」
「お、やっと到着か」

結局、道中に遭遇したモンスターは全てムー王女が討伐し、俺の出る幕はなかった。

途中何度か休憩した際に寄ってきた奴を倒したくらいだろうか。

「あの扉の中に、待人がいるんだよな」
「うむ、そのはずじゃ」

仮にその待人が、紀元の魔女だった場合、俺は何を話せばいいのだろうか。

魔女にして下さい?
ないな。

(魔法少女にして下さい)
(セリアか?どうしてそんなネタを知ってるんだ・・)
(精霊界では、魔法少女は有名なんですよ)

なにそれ。精霊界ではまさかのテレビというものが存在して、更にはアニメなんてものが放送されてるとでも言うというのか!そんな馬鹿な!ありえない!

(何をブツブツ言ってるんですか?魔法少女と言うのは、ずっとずっと昔に、精霊界を唯一訪れた人族の名です)
(え、精霊界に人族が入れるの?)

てっきり精霊界と言えば、他種属は介入不可能な神聖な場所だと思ってたんだけど。

(別に規制している訳でも、門番がいる訳でもないので、入る事自体は可能ですよ)
(じゃあ、なんで訪れた事があるのが唯一の一人なんだ?)
(それは、話すと長くなるので・・・まぁ、簡単に言うと、その魔法少女が強力な結界めいたものを張ってしまって、精霊以外は入口を通る事はおろか、その場所を見ることすら出来なくしてしまいました)

さっきから連呼してるけど、そもそも何、魔法少女って・・まさか本当に魔法少女がいるというのか?

まぁ、その疑問は後だ。

「開けるわよ」

ムー王女が扉に手を掛けた時だった。

いきなり、俺の背後から1体のモンスターが現れた。
先程までは範囲探索エリアサーチは反応してなかったから、今この場に出現したという事になる。


名前「名も無き者」
レベル80
種族:無
弱点属性:なし
スキル:威圧Lv5、混乱Lv5、毒霧Lv5、催眠Lv5、暗黒Lv5、絶望Lv5
状態:絶対魔術無効

「おいおい、とんでもない相手だそ」
「え?」

レベルはまぁ、置いておく。
外見はボロボロの黒フードに鎌を担いでいる。
まんま死神と言えるだろうが、それも置いておく。

絶対魔術無効っなんだよ・・。
まるで、魔術師に対しての嫌がらせだな。

「絶対魔術無効らしいぞ」
「へぇ」
「あまり、驚かないんだな」
「ええ、あの人がやりそうな試練じゃ」

そういえば、忘れていたが、本来この洞窟に訪れた理由としては、ムー王女の鍛錬が目的だった。

「しかし、魔術無効の相手にどう戦うんだ?」
「そんなの決まってるじゃろ。魔術がダメなら切り刻むまでじゃ」

あ、なるほど・・って、あんた魔術師だろ!

ムー王女は、短剣を取り出し構える。

「相手のレベルは80だ。加えてバッドステータスオンパレードのスキル構成みたいだから、流石にキツイぞ」
「これは、妾に試された試練じゃ。まずは妾だけで試させてはくれぬか」
「いいけど、気を付けろよ。危ないと判断したら有無を言わず助けに入るからな」
「ほぉ、妾の事を案じてくれるのか?」
「一応な」
「まあ良い、少しだけやる気が湧いたのじゃ」

ボソボソと小声で喋っていたが、バッチリと聞き耳スキルが仕事をしていた。

ムー王女が、速度増加アジリティアップを自身に使用する。
そして、一呼吸の後、颯爽と死神もどきに向かっていく。

死神もどきは、鎌を持っていない方の手を前に出し、何やら魔術発動準備のモーションを取っている。

ムー王女は、すかさず、死神もどきの背後に回り、無防備な首元に短剣を突き立てる。

しかし、死神もどきは微動だにせず、そのまま毒霧を発動させて、自身を中心に展開する。

自爆行為とも思えるが、奴にはチートとも言える絶対魔術無効がある。
本来、毒と魔術は関連性がない気もするが、魔術によって発生させた毒ならば、魔術扱いになるのだろう。

ムー王女は、短剣を抜くと、毒霧から離れるように後ろへ飛び退く。

術者のレベルが80で毒霧Lv5ともなれば、レベル44のムー王女では、喰らえば恐らくひとたまりもないだろう。
俺でさえ、レベル差耐性が足りずに効果を受ける可能性だってある。

死神もどきは、まるで毒ガス散布マシーンのように自身の周りに毒霧を展開させながらゆっくりとムー王女の元へと近付いていく。

大津波ビッグウェーブ!」

ムー王女が魔術を発動させる。

俺も初めてみる魔術だった。
ここへ来る道中も使用していなかったのを見ると、奥の手か、切り札か、あるいは発動を躊躇う何かがあるのだろうか。

その名の通り、高さ3mはあろうかという津波が死神もどきを襲う。

本来何も水源がない箇所から、水魔術を発動させるのは中々に難しい。
ムー王女は、水の魔女の称号のおかげで、発動自体は幾分かマシになっている。
しかし、これだけの水量を発動させるとなると容易ではない。
かなりの鍛錬と魔力を消費しているはず。

大津波ビッグウェーブが通り過ぎると、死神もどきが周りに展開していた毒霧が、綺麗さっぱりと洗い流されていた。
しかし、あれだけの水圧を受けてもその場から一歩も動いていないというのは、どういう訳だろうか。

取り敢えず、毒霧の解除には成功したが、死神もどきは何度だって魔術を使える。対するムー王女は、とても連発出来そうな感じには見えない。
既に疲労感を滲ませている。

ムー王女は、またしても 背後に張り付き短剣を今度は脳天に突き立てる。
そして、何やら腰に巻いていたポーチから黒い小さな玉を取り出すと短剣を抜いて出来た小さな穴の中にそれを落とし入れる。

そのまますぐに後ろへ飛び退き、死神もどきから距離をとった。

「ユウ!伏せておれ!」

すぐにそれが爆弾の類であると分かり、その場から距離を置き、保険で障壁を展開した。

次の瞬間、死神もどきの内部から炎が沸き起こり、やがて体全体が炎に包まれ炎上する。
あ、爆発しないのね。
しかしながら、中々の火力のようで、飛び火した火の粉があたり一面に広がり、まさに炎の絨毯と化していた。
当の本人は炎に包まれいて、その姿を確認する事は出来ない。

数分の後、終わったのか?と思った矢先、死神もどきが魔術を展開した。

体全体を何かが駆け抜けた。
途端に脱力感と恐怖感が襲って来る。恐らく威圧だろう。
膝をつく程ではないが、自身のレベル差からあまり状態異常に掛かったことが無かった為、この威圧は確実に俺にも影響を与えていた。

ムー王女よりも死神もどきからは距離を置いていたにも関わらずこの効力だ。

すぐにムー王女の状態を確認するべく、視認できる位置まで移動する。

燃え盛る炎の中に不自然な水色の球体が見える。
ムー王女が展開した水の防御膜だった。
この中に入る事により、威圧すらも防いでいるのだろう。
しかし、周りが炎の海という事もあり、水の防御膜を維持するのに苦労している感じだ。

その時、再び身体を何かが通り抜ける感覚が襲った。

突如として、視界が暗転し、何も見えなくなる。
確か、あいつのスキル一覧に暗黒というのがあったが、それが文字通り視界を黒一色に染めているのか。

すぐに状態回復リフレッシュを使用する。

次第に視界から闇が消え、すぐに元通りとなった。

ムー王女は、水の防御膜をまだ維持している。
威圧を防いだくらいだから、暗黒も防げれているのだろう。
辛そうにはしているが、キョロキョロしている感はないからだ。

あの水の防御膜は、かなり有用かもしれない。
後で、ムー王女に教えて貰おうかなどと考えていると、死神もどきが、その肩に担いでいた鎌を初めて動かした。

横薙ぎに振り払われた鎌の風圧により、依然として炎を纏っていた死神もどきの身体から炎が払われた。
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