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第七話:王国での日常
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小屋を出てから3時間程が経過していた。
俺はレーダーを頼りに南へ向かって走っていた。
道中何度かモンスターと遭遇したが、躊躇なく瞬殺していく。
目的地に近付くにつれてモンスターのレベルが下がっている気がする。王国の周辺は強いモンスターがいないという事だろうか。
更に進むと、レーダーにポツポツと白い点が現れた。目的地が近いのだろう。そのまま直進する。
「見えたな」
いつの間にか崖上で少し開けた場所に出ていた。眼前に目的地であろう王国が広がっているのが見える。
話には聞いていたが、これはデカイな。街の中でも迷子になるんじゃないだろうか?
俺は崖から降り、目的地へと足を運んでいく。
今俺の目の前に見えているのは巨大な入り口だ。
入り口の前には人々の列が見える。恐らく入国審査のようなものをしているのだろう。
とりあえず最後尾に並んでおく。
他の人は皆馬車だったり、馬に乗ったりしている。
すると一人の若者がこちらに近付いてくる。
「旅の者か?その身なりだと商人というわけではないだろう?」
おれは、一着しか持っていなかった。
この世界に来た時から来ている黒いローブ姿をしていた。
「はい、旅の者です。世界を旅しています」
「ならこちらへ来い。その列は行商人の並ぶ列だ」
どうやら並ぶとこが違ったようだ。
行商人の入国審査は厳しいようで全ての荷物を入念にチェックしているのを横目で見ながら通り過ぎる。
俺は案内された建物の中に入り、そこでいくつか質問をされた。
まず身分証の提示を求められる。
俺は先生から貰った首飾りを見せようとしたが、ハッと思いとどまり、ありませんと答えた。
なんとなくまだ使うのは早いと思ったからだ。
衛兵らしきその若者は質問を続ける。何処から来たのか?とか、ここへ来た目的は?とか。
俺はいつも通り適当に答えた。
一通りの質問を終えた後、若者は親切に教えてくれた。
「まずは身分証を作ってもらうことだな。魔術師をしているならば、魔術師ギルドから発行して貰うといいだろう」
礼を言い、一礼した。
行って良いと言われたので、その場を後にする。
おっと、魔術師ギルドの場所を聞くのを忘れたぞ。
まぁ、のんびり探す事にしよう。
無事に街の中に入ることが出来た。
とりあえず衛兵に言われた通り身分証を作るのが第一優先だな。
少し小腹がすいたのでミリーが作ってくれたキノコの串焼きをソッとストレージから取り出しかぶり付く。
まだ温かい。
ストレージの中の時間は入れた時点で止まっているのだ。つまり何時でも何処でも出来たてホヤホヤの料理を食べることが出来る。
素晴らしい。
しばらく歩くと雑貨屋が見えて来た。せっかくなので少し覗いてみよう。
そこには生活に必要な雑貨用品やアクセサリーなどの金品まで置いてある。
いくつかの値札を見ながら情報を整理して見る。
この世界には通貨として銅貨、銀貨、金貨の3枚しかないようだ。
それぞれ銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚になる。
俺は、ストレージを観察する。
うーん・・どうみても金貨と思われるものが1、10、100・・・ヤバい。
数えるのを途中で止めた。
とりあえず分かった事は、お金に困る事はないだろうという事だ。
雑貨屋で下着の類やタオル、衣服なんかをいくつか購入した。使ったお金は銅貨20枚程度だ。
感覚だが銅貨1枚が元の世界の100円程度だろうか。
俺は雑貨屋を後にする。
誰にも気付かれないように、購入したものをストレージに放り込んでおく。
改めて街を見渡すが人族しかいない。獣人やエルフなんかと出会えるんじゃないかと少し期待したがどうやら期待外れだったようだ。
道行く人を鑑定で確認していたが、だいたいレベルは5~20前後だった。
いくつか確認した職種を挙げておく。
剣士
盗賊
聖職者
魔術師
狩人
精霊術師
直接戦闘には参加しなさそうだが錬金術師という職種も確認出来た。
俺は鑑定で確認し尚且つあからさまに魔術師だろうと判断できる人に魔術師ギルドの場所を聞いた。
身なりの良さそうな青年だった。
実際に案内をしてくれるというのでお言葉に甘える事にする。
15分くらいだろうか。しばらく歩くといかにもという感じの魔術師ギルドが見えて来た。
俺は案内してくれた青年に礼を言いギルドの中に入った。
中は若干薄暗い。通路の両側にクリスタルだろうか?いくつか並んでいる。
様々な色合いのクリスタルがどこか幻想的な感じを醸し出している。
真っ直ぐ進んでいくと受付と思われる所についた。
受付嬢だろうか。これまたお決まりといった感じで魔女っ子帽子を被っている。歳は20代後半くらいだろうか。
「本日はどのようなご用件でしょうか」
なかなか色っぽい声だ。
先程この街に到着したばかりの旅の者で、多少魔術が使えるので魔術師ギルドに身分証の発行してもらいに来た事を告げた。
受付嬢が少々お待ち下さいと頭を下げ、席を立つ。
しばらくして何やらカードを手にして戻って来た。
「ではこちらのカードを手に取って下さい」
俺はカードを手に取った。すると僅かながらカードが光ったのだ。
どうやら俺の魔力に反応したようだ。
カードを再び渡すように言われたので受付嬢に返す。
「ユウ様、職種は魔術師で種族は人族ですね」
おっと名前がばれたぞ。驚いたが顔には出さずポーカーフェイスでやり過ごす。
「レベルは申告制となります。おいくつでしょうか?」
良かったレベルはバレてないのね。危ない危ない。
さていくつにしようか。弱くもなく強くもない辺りにしておこう。
「14です」
受付嬢は後ろを向いて魔導具のような物にカードをセットし、何やら操作している。少しの間待っているとカードが完成したのかこちらへ振り返り、ニコリとほほ笑む。
「身分証が出来ました。絶対に無くさないで下さいね。再発行には銅貨50枚が必要になりますので」
「それと、この魔術師ギルドでは依頼を受ける事も可能となっております」
人々は仕事や任務の依頼を組合と呼ばれる所に持ち込む。組合は、どのギルドに依頼すべきか内容を吟味した上でそれぞれのギルドに仕事の依頼をするようだ。中には複数のギルドと合同で行うような依頼もあるそうだ。恐らく討伐とかがそうなのだろう。
俺は、またの機会にすると受付嬢に告げ、魔術師ギルドを後にする。
よし、とりあえず第一目標の身分証はゲット出来た。次は・・・
宿でも探すか。当面の寝床の確保だな。
辺りをキョロキョロしながら、街を進んでいく。
しばらく進むとベッドの看板をぶら下げている建物に辿り着いた。
きっとここだろう。うん。
俺は扉を開けて中に入った。
「いらっしゃいませぇ~」
若い女性の声が聞こえた。
今目の前にいるのは10歳くらいだろうか?女の子がエプロンをつけてお盆を両手に抱えている。
「えっと、宿を探してるんだけど」
少女はニコリとほほ笑み俺の袖を引っ張り中へと案内する。
「お母さん~お客さんだよ~」
カウンターの所に人影が見えた。
なかなか恰幅のいいおばちゃんが目に入ってきた。
「お、いらっしゃいー」
カウンターの前まで移動する。
少女は袖から手を放し店の奥へと行ってしまった。
「一名様だね、何泊止まる予定だい?」
「えっと、とりあえず10日間でお願いします」
「1泊50銅貨だから10日で500銅貨だよ」
500銅貨って事は、5銀貨かな。
気付かれないようにストレージから銀貨を5枚取り出し、おばちゃんへ手渡す。
基本的に前払い制なのだそうだ。未払いで逃げられるなんてことがあるからだろうか?
おばちゃんの名前はホリーと言うそうだ。
俺はホリーさんに部屋まで案内してもらった。
部屋の中は中々に広い。ビジネスホテル並みを予想していたのだが、その倍はありそうだな。
俺はベッドに腰を掛ける。荷物は全てストレージに入れているので見た目は何も持っていないのだが、さすがにそれは怪しいので、後でカバンか何かを購入しておこう。
そして先ほど購入した衣類をストレージから取り出し、クローゼットに閉まった。
さっそく衣服を着替えた。着替えるのは何時ぶりだろう・・。いや初めてか。
思えばここへ来てからずっと同じ服を着ている。しかし、不潔なわけでは断じてない!
洗浄の魔術を使っていたから服はいつも清潔なのだ。
しかし、元いた世界のイメージが強いので、いくら清潔とはいえどうしても慣れない自分がここにいる。
こまめに着替えることにしよう。
そうと決まれば、もう少し衣服を充実させたいね。
というわけで本日は買い出しデーに決まりだ。街の散策もまだまだやりたいしね。
俺は宿を出て、再び彷徨い歩く。
しばらく進むと今度は剣と鎧が店先に置いてある建物が見えた。
武具屋だろうな、きっと。
店の中に入る。
割と広い。右側に武器が左側に防具が陳列してあった。俺には先生から貰った杖があるので武器に用はなかったが、一応見ておこう。
そこには、様々な職種の武器が並んでいる。
剣だけでも大きく分けて3種類あった。短剣や通常サイズ、両手剣のような大型の物まであった。
斧や弓矢に杖に本まである。
俺は杖の所で立ち止まった。試しに一番高価そうなのを見てみる。
名前:アルザードスタッフ
説明:樹齢100年以上の大木から削りだされた魔道杖
特殊効果:魔術ダメージ補正(小)
ふむふむと頷き、俺はもう少し詳しく杖を眺めていた。すると説明欄が追加された。
相場:銀貨8枚
おお、相場が見えるようになったぞ!これは便利だ。
悪徳商売に引っかからなくて良いな。なんてことを考えながら、今度は防具の方を見てみる。
戦闘用の服が欲しいんだよね。いつまでも黒ローブ1着というのはさすがにね。
たくさんあってどれがいいのか分からない。とりあえず、見た目で判断してみようかな。
ガチガチの戦士系職業がつけていそうなフルプレートアーマーや踊り子が着てそうな危うい物まで様々だ。
そして俺は1着の服の前で立ち止まった。
名前:マジックフォルトダノム
説明:使用者の一定の魔力を蓄えることが出来る。蓄えた魔力で様々な効果がある。
特殊効果:物理ダメージカット(中)、魔術ダメージカット(中)、魔術ダメージアップ(中)
相場:金貨10枚
希少度:★★★☆☆☆
高っ!
あれ、相場と一緒に希少度が見えるようになっている。
MAX星6つに対して3つってことは、中間くらいなのだろうか。
にしても高すぎじゃないか、でも効果は中々のようだ。
見た目も気に入ってしまった為に俺は即買いすることにした。
「毎度ありー」
それにしても金貨10枚ってことは、宿屋に6年泊まれる計算だ。元いた世界だと1,000万円か。
ちょっと奮発しすぎたかとも思ったので、次からは気を付ける事にする。次からはね。
俺は気になっていたので、世界樹の杖を見てみた。
名前:世界樹の杖
説明:神樹と言われる世界樹から作られた魔導杖。
特殊効果:消費魔力補正(大)、魔術ダメージ補正(大)、魔力吸収Lv1使用可
相場:金貨200枚
希少度:★★★★☆☆
やはり凄い。でもなぜだろう。いくらでも買える気になってしまうのは。
良くないな。お金は大事に使わないとね。
武具屋を後にして俺は雑貨屋を見つけた。ここではカバンと衣服を何着か購入した。カバンは肩から下げるタイプだ。
常時持ち歩くようにしよう。
服も試着室で着替えていた。
選んだ服は、行き交う人を参考に、ちょっと裕福な商人がコンセプトだ。
その格好のまま街を再び散策していた。
今俺の視界の先には、この街に来てからは初めての獣人族がいる。
どうやら奴隷のようだ。首に鎖を付けている。
荷物持ちをさせられているようだ。主人は、アイツか。
名前:ステルツ・バイゼン
レベル:8
職種:なし(貴族)
スキル:なし
無職のボンボンのお坊ちゃまってところか。先生が言っていた通り、この街の獣人族はやはり全員奴隷なのだろうか。
俺はお坊ちゃまの横を通り過ぎる。
そして暫く進むと何やらいい匂いが漂ってきた。
俺は、ついつい匂いに釣られ、匂いがする方へ足を運ぶ。
そこには出店が並んでいた。どれも美味しそうな匂いがするのだが、全部は食べられない。
1番近かった物に目をやる。ハンバーガーみたいな形をしている。
「お、あんちゃん商人さんかい?どうだ、うまそうだろ?うちのフラムは世界一だぜ」
フラムって言うのか。
「おじさん、二つ下さい」
「毎度あり!二つで銅貨5枚ね」
店主のおじさんに銅貨5枚を支払う。
近くのベンチに腰掛けてフラムを食べた。
うん、旨い。これはいけるな。やはり見た目通りハンバーガーのような感じだ。中にはレタスのような野菜にくるまれた何かの肉が見える。
肉はなんともジューシーだ。いくらでもいけそうだな。
俺はペロリと平らげてしまった。残りの1つはストレージにしまっておく。
今あまり食べると夜が食べられなくなるしね。
段々と空が暗くなり始めていた。迷子になっても困るので、俺は元来た道を戻り、宿屋まで辿り着いた。
宿屋は1階が受付兼食堂となっていた。食事をとっている客はいない。
チャンスだなと、俺はホリーさんにご飯を注文した。
メニューを見ても分からなかったため、おすすめということで日替わりディナーを頼むことにした。
しばらく待ち、出てきたのはステーキセットだ。しかもかなり分厚い。何の肉かは不明だが美味しければ何でもいい。
一番驚いたのは米が出てきた事だ。こっちの世界でもあるんだなお米・・。会いたかったぞ白米!
あとは、サラダが出てきた。
もちろん言うまでもないけど、どれも美味しく頂きました。
ちょうど食べ終わった所に少女がお茶を持って来てくれた。礼を言って、名前を尋ねてみる。
もちろん名前は知っているのだが、コミュニケーションを取りたいしね。
「ありがとう、俺の名前はユウ。君の名前は?」
「わたしの名前はココナって言います!」
それだけ言い、照れくさいのか店の奥に引っ込んでしまった。なんともしぐさが可愛らしい。
俺は部屋へ戻り、することもないのでベッドに入った。街で寝間着も買っていたので、着替えておく。
明日はギルドの任務でも受けてみるか。そんな事を考えながらいつのまにか眠ってしまっていた。
夢の中で確かに聞こえた気がした。
「・・願い・け・。私の・・界を・・て・・守・・。」
俺は目を開ける。外はすっかり朝になっていた。
声が聞こえたような気がしたんだけどな。夢だったのか。
よし、今日も張り切って行こう。俺はベッドから降りて寝間着を着替える。とりあえず戦闘スタイルではなく商人スタイルだ。
1階に降りてココナちゃんに朝食を依頼する。ラジャー!と額に手を当てて店の奥へと消えていく。
しばらく待って出てきた朝食をペロリと平らげ宿屋を出る。
今日はギルドの任務を受けてみようと思ったのだが、それは昼からにする。
先に街の散策の続きをする事にした。
この王国は全体としては丸型の作りになっているようだ。ドーナツ形状だな。
で、ドーナツの外円部分が俺達のような一般人?が利用する場所になっているようだ。ドーナツの中心部分には王宮が建っており王宮を中心に貴族街が広がっている。昨日は中心部まで行けなかったので今日行ってみる事にする。門前払されそうだが。
案の定門前払いされてしまった。30分も掛けて歩いて来たっていうのに。
貴族様にコネでもないとどうやら中に入る事すら出来ないようだ。
先生にもらった首飾りをを見せれば入れたかもしれないがまだ今はその時ではないだろう。
中に入るのはあきらめて反対側の街の散策をする事にする。
少し行くと、外から見ても異様な気配を醸し出している建屋が見えた。そこまで大きな建屋ではない。気になって中に入ってみる。
中には魔導具が所狭しと並んでいた。どうやら魔導具ショップらしい。
店主に聞いてみたのだが、魔導具というのはそのほとんどがダンジョンから発掘された物らしい。
一部は作成された物もあるらしいが。
ダンジョンなんてあるんだね。
それにしても魔導具の効果というのもピンキリのようだ。単純に音が鳴ったり光ったりするだけの物もあれば、自身のステータスを上昇してくれる物まであった。
今見ているのは、
名前:ブリックリング
説明:即死のダメージを負った時に一度だけそのダメージを肩代わりしてくれる。
相場:金貨100枚
希少度:★★★★☆☆
すごい効果だな。しかも高い・・。こんなの一般人が買えるのだろうか?俺は余裕だけどね。
「それがお気に召したのかい?」
俺に声をかけてきたのは、妙齢の女性だった。
全身黒一色でローブを羽織っている。フード付きだ。
俺は一応金額を聞いてみた。
すると、金貨10枚だと言う。あれ?相場よりかなり安いぞ。俺は拍子抜けしてしまった。
実際は金貨10枚といえば大金なんだが、今の俺は金銭感覚皆無だ。危ない危ない。
だが、1回だけ死を免れるなんて是非手に入れるべきだろう。大金を持っていても死んでしまっては意味がない。
俺は、このリングともう1つ水道の蛇口のような魔導具を購入した。
見た目の通り、魔力を込めるだけでこの蛇口から水が出てくるのだ。
俺としてはものすごくいい効果なのだが、どうも魔力効率が悪いようで、熟練の魔術師でも1分間も使用すれば魔力が空っぽになってしまうそうだ。
というのもあり、安かったのだ。といっても金貨10枚だったんだけどね。購入してから試したが、俺の場合は1分間使ってもほとんどMPが減ることはなかった。
よし、当たりだな。購入した魔道具をバッグに入れるフリをしてストレージに回収する。
店を出て、少し歩く。すると今度は重装備の団体さんが前を歩いていた。
なんだろうと思い、近くにいる人に聞いてみた。
どうやらあの団体さんはこの王国の騎士団らしい。騎士ギルドとはまた違って、王国専属の騎士団なんてものがあるらしいが、どこかへ遠征にでも行くところだろうか?
討伐か何かだろうが、レベル帯を確認してみると20後半から30前半だった。
たしか戦闘職でいう上級者レベルだったはずだ。
目的が気にはなったが、団体さんとは進行方向が違うため、見送ることにする。
お勤め頑張って下さい。と心の中でエールを送ることも忘れない。
道中、いくつかのギルドを発見していた。興味はあるが今でなくても良いので同じく先送りすることにした。
俺はレーダーを頼りに南へ向かって走っていた。
道中何度かモンスターと遭遇したが、躊躇なく瞬殺していく。
目的地に近付くにつれてモンスターのレベルが下がっている気がする。王国の周辺は強いモンスターがいないという事だろうか。
更に進むと、レーダーにポツポツと白い点が現れた。目的地が近いのだろう。そのまま直進する。
「見えたな」
いつの間にか崖上で少し開けた場所に出ていた。眼前に目的地であろう王国が広がっているのが見える。
話には聞いていたが、これはデカイな。街の中でも迷子になるんじゃないだろうか?
俺は崖から降り、目的地へと足を運んでいく。
今俺の目の前に見えているのは巨大な入り口だ。
入り口の前には人々の列が見える。恐らく入国審査のようなものをしているのだろう。
とりあえず最後尾に並んでおく。
他の人は皆馬車だったり、馬に乗ったりしている。
すると一人の若者がこちらに近付いてくる。
「旅の者か?その身なりだと商人というわけではないだろう?」
おれは、一着しか持っていなかった。
この世界に来た時から来ている黒いローブ姿をしていた。
「はい、旅の者です。世界を旅しています」
「ならこちらへ来い。その列は行商人の並ぶ列だ」
どうやら並ぶとこが違ったようだ。
行商人の入国審査は厳しいようで全ての荷物を入念にチェックしているのを横目で見ながら通り過ぎる。
俺は案内された建物の中に入り、そこでいくつか質問をされた。
まず身分証の提示を求められる。
俺は先生から貰った首飾りを見せようとしたが、ハッと思いとどまり、ありませんと答えた。
なんとなくまだ使うのは早いと思ったからだ。
衛兵らしきその若者は質問を続ける。何処から来たのか?とか、ここへ来た目的は?とか。
俺はいつも通り適当に答えた。
一通りの質問を終えた後、若者は親切に教えてくれた。
「まずは身分証を作ってもらうことだな。魔術師をしているならば、魔術師ギルドから発行して貰うといいだろう」
礼を言い、一礼した。
行って良いと言われたので、その場を後にする。
おっと、魔術師ギルドの場所を聞くのを忘れたぞ。
まぁ、のんびり探す事にしよう。
無事に街の中に入ることが出来た。
とりあえず衛兵に言われた通り身分証を作るのが第一優先だな。
少し小腹がすいたのでミリーが作ってくれたキノコの串焼きをソッとストレージから取り出しかぶり付く。
まだ温かい。
ストレージの中の時間は入れた時点で止まっているのだ。つまり何時でも何処でも出来たてホヤホヤの料理を食べることが出来る。
素晴らしい。
しばらく歩くと雑貨屋が見えて来た。せっかくなので少し覗いてみよう。
そこには生活に必要な雑貨用品やアクセサリーなどの金品まで置いてある。
いくつかの値札を見ながら情報を整理して見る。
この世界には通貨として銅貨、銀貨、金貨の3枚しかないようだ。
それぞれ銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚になる。
俺は、ストレージを観察する。
うーん・・どうみても金貨と思われるものが1、10、100・・・ヤバい。
数えるのを途中で止めた。
とりあえず分かった事は、お金に困る事はないだろうという事だ。
雑貨屋で下着の類やタオル、衣服なんかをいくつか購入した。使ったお金は銅貨20枚程度だ。
感覚だが銅貨1枚が元の世界の100円程度だろうか。
俺は雑貨屋を後にする。
誰にも気付かれないように、購入したものをストレージに放り込んでおく。
改めて街を見渡すが人族しかいない。獣人やエルフなんかと出会えるんじゃないかと少し期待したがどうやら期待外れだったようだ。
道行く人を鑑定で確認していたが、だいたいレベルは5~20前後だった。
いくつか確認した職種を挙げておく。
剣士
盗賊
聖職者
魔術師
狩人
精霊術師
直接戦闘には参加しなさそうだが錬金術師という職種も確認出来た。
俺は鑑定で確認し尚且つあからさまに魔術師だろうと判断できる人に魔術師ギルドの場所を聞いた。
身なりの良さそうな青年だった。
実際に案内をしてくれるというのでお言葉に甘える事にする。
15分くらいだろうか。しばらく歩くといかにもという感じの魔術師ギルドが見えて来た。
俺は案内してくれた青年に礼を言いギルドの中に入った。
中は若干薄暗い。通路の両側にクリスタルだろうか?いくつか並んでいる。
様々な色合いのクリスタルがどこか幻想的な感じを醸し出している。
真っ直ぐ進んでいくと受付と思われる所についた。
受付嬢だろうか。これまたお決まりといった感じで魔女っ子帽子を被っている。歳は20代後半くらいだろうか。
「本日はどのようなご用件でしょうか」
なかなか色っぽい声だ。
先程この街に到着したばかりの旅の者で、多少魔術が使えるので魔術師ギルドに身分証の発行してもらいに来た事を告げた。
受付嬢が少々お待ち下さいと頭を下げ、席を立つ。
しばらくして何やらカードを手にして戻って来た。
「ではこちらのカードを手に取って下さい」
俺はカードを手に取った。すると僅かながらカードが光ったのだ。
どうやら俺の魔力に反応したようだ。
カードを再び渡すように言われたので受付嬢に返す。
「ユウ様、職種は魔術師で種族は人族ですね」
おっと名前がばれたぞ。驚いたが顔には出さずポーカーフェイスでやり過ごす。
「レベルは申告制となります。おいくつでしょうか?」
良かったレベルはバレてないのね。危ない危ない。
さていくつにしようか。弱くもなく強くもない辺りにしておこう。
「14です」
受付嬢は後ろを向いて魔導具のような物にカードをセットし、何やら操作している。少しの間待っているとカードが完成したのかこちらへ振り返り、ニコリとほほ笑む。
「身分証が出来ました。絶対に無くさないで下さいね。再発行には銅貨50枚が必要になりますので」
「それと、この魔術師ギルドでは依頼を受ける事も可能となっております」
人々は仕事や任務の依頼を組合と呼ばれる所に持ち込む。組合は、どのギルドに依頼すべきか内容を吟味した上でそれぞれのギルドに仕事の依頼をするようだ。中には複数のギルドと合同で行うような依頼もあるそうだ。恐らく討伐とかがそうなのだろう。
俺は、またの機会にすると受付嬢に告げ、魔術師ギルドを後にする。
よし、とりあえず第一目標の身分証はゲット出来た。次は・・・
宿でも探すか。当面の寝床の確保だな。
辺りをキョロキョロしながら、街を進んでいく。
しばらく進むとベッドの看板をぶら下げている建物に辿り着いた。
きっとここだろう。うん。
俺は扉を開けて中に入った。
「いらっしゃいませぇ~」
若い女性の声が聞こえた。
今目の前にいるのは10歳くらいだろうか?女の子がエプロンをつけてお盆を両手に抱えている。
「えっと、宿を探してるんだけど」
少女はニコリとほほ笑み俺の袖を引っ張り中へと案内する。
「お母さん~お客さんだよ~」
カウンターの所に人影が見えた。
なかなか恰幅のいいおばちゃんが目に入ってきた。
「お、いらっしゃいー」
カウンターの前まで移動する。
少女は袖から手を放し店の奥へと行ってしまった。
「一名様だね、何泊止まる予定だい?」
「えっと、とりあえず10日間でお願いします」
「1泊50銅貨だから10日で500銅貨だよ」
500銅貨って事は、5銀貨かな。
気付かれないようにストレージから銀貨を5枚取り出し、おばちゃんへ手渡す。
基本的に前払い制なのだそうだ。未払いで逃げられるなんてことがあるからだろうか?
おばちゃんの名前はホリーと言うそうだ。
俺はホリーさんに部屋まで案内してもらった。
部屋の中は中々に広い。ビジネスホテル並みを予想していたのだが、その倍はありそうだな。
俺はベッドに腰を掛ける。荷物は全てストレージに入れているので見た目は何も持っていないのだが、さすがにそれは怪しいので、後でカバンか何かを購入しておこう。
そして先ほど購入した衣類をストレージから取り出し、クローゼットに閉まった。
さっそく衣服を着替えた。着替えるのは何時ぶりだろう・・。いや初めてか。
思えばここへ来てからずっと同じ服を着ている。しかし、不潔なわけでは断じてない!
洗浄の魔術を使っていたから服はいつも清潔なのだ。
しかし、元いた世界のイメージが強いので、いくら清潔とはいえどうしても慣れない自分がここにいる。
こまめに着替えることにしよう。
そうと決まれば、もう少し衣服を充実させたいね。
というわけで本日は買い出しデーに決まりだ。街の散策もまだまだやりたいしね。
俺は宿を出て、再び彷徨い歩く。
しばらく進むと今度は剣と鎧が店先に置いてある建物が見えた。
武具屋だろうな、きっと。
店の中に入る。
割と広い。右側に武器が左側に防具が陳列してあった。俺には先生から貰った杖があるので武器に用はなかったが、一応見ておこう。
そこには、様々な職種の武器が並んでいる。
剣だけでも大きく分けて3種類あった。短剣や通常サイズ、両手剣のような大型の物まであった。
斧や弓矢に杖に本まである。
俺は杖の所で立ち止まった。試しに一番高価そうなのを見てみる。
名前:アルザードスタッフ
説明:樹齢100年以上の大木から削りだされた魔道杖
特殊効果:魔術ダメージ補正(小)
ふむふむと頷き、俺はもう少し詳しく杖を眺めていた。すると説明欄が追加された。
相場:銀貨8枚
おお、相場が見えるようになったぞ!これは便利だ。
悪徳商売に引っかからなくて良いな。なんてことを考えながら、今度は防具の方を見てみる。
戦闘用の服が欲しいんだよね。いつまでも黒ローブ1着というのはさすがにね。
たくさんあってどれがいいのか分からない。とりあえず、見た目で判断してみようかな。
ガチガチの戦士系職業がつけていそうなフルプレートアーマーや踊り子が着てそうな危うい物まで様々だ。
そして俺は1着の服の前で立ち止まった。
名前:マジックフォルトダノム
説明:使用者の一定の魔力を蓄えることが出来る。蓄えた魔力で様々な効果がある。
特殊効果:物理ダメージカット(中)、魔術ダメージカット(中)、魔術ダメージアップ(中)
相場:金貨10枚
希少度:★★★☆☆☆
高っ!
あれ、相場と一緒に希少度が見えるようになっている。
MAX星6つに対して3つってことは、中間くらいなのだろうか。
にしても高すぎじゃないか、でも効果は中々のようだ。
見た目も気に入ってしまった為に俺は即買いすることにした。
「毎度ありー」
それにしても金貨10枚ってことは、宿屋に6年泊まれる計算だ。元いた世界だと1,000万円か。
ちょっと奮発しすぎたかとも思ったので、次からは気を付ける事にする。次からはね。
俺は気になっていたので、世界樹の杖を見てみた。
名前:世界樹の杖
説明:神樹と言われる世界樹から作られた魔導杖。
特殊効果:消費魔力補正(大)、魔術ダメージ補正(大)、魔力吸収Lv1使用可
相場:金貨200枚
希少度:★★★★☆☆
やはり凄い。でもなぜだろう。いくらでも買える気になってしまうのは。
良くないな。お金は大事に使わないとね。
武具屋を後にして俺は雑貨屋を見つけた。ここではカバンと衣服を何着か購入した。カバンは肩から下げるタイプだ。
常時持ち歩くようにしよう。
服も試着室で着替えていた。
選んだ服は、行き交う人を参考に、ちょっと裕福な商人がコンセプトだ。
その格好のまま街を再び散策していた。
今俺の視界の先には、この街に来てからは初めての獣人族がいる。
どうやら奴隷のようだ。首に鎖を付けている。
荷物持ちをさせられているようだ。主人は、アイツか。
名前:ステルツ・バイゼン
レベル:8
職種:なし(貴族)
スキル:なし
無職のボンボンのお坊ちゃまってところか。先生が言っていた通り、この街の獣人族はやはり全員奴隷なのだろうか。
俺はお坊ちゃまの横を通り過ぎる。
そして暫く進むと何やらいい匂いが漂ってきた。
俺は、ついつい匂いに釣られ、匂いがする方へ足を運ぶ。
そこには出店が並んでいた。どれも美味しそうな匂いがするのだが、全部は食べられない。
1番近かった物に目をやる。ハンバーガーみたいな形をしている。
「お、あんちゃん商人さんかい?どうだ、うまそうだろ?うちのフラムは世界一だぜ」
フラムって言うのか。
「おじさん、二つ下さい」
「毎度あり!二つで銅貨5枚ね」
店主のおじさんに銅貨5枚を支払う。
近くのベンチに腰掛けてフラムを食べた。
うん、旨い。これはいけるな。やはり見た目通りハンバーガーのような感じだ。中にはレタスのような野菜にくるまれた何かの肉が見える。
肉はなんともジューシーだ。いくらでもいけそうだな。
俺はペロリと平らげてしまった。残りの1つはストレージにしまっておく。
今あまり食べると夜が食べられなくなるしね。
段々と空が暗くなり始めていた。迷子になっても困るので、俺は元来た道を戻り、宿屋まで辿り着いた。
宿屋は1階が受付兼食堂となっていた。食事をとっている客はいない。
チャンスだなと、俺はホリーさんにご飯を注文した。
メニューを見ても分からなかったため、おすすめということで日替わりディナーを頼むことにした。
しばらく待ち、出てきたのはステーキセットだ。しかもかなり分厚い。何の肉かは不明だが美味しければ何でもいい。
一番驚いたのは米が出てきた事だ。こっちの世界でもあるんだなお米・・。会いたかったぞ白米!
あとは、サラダが出てきた。
もちろん言うまでもないけど、どれも美味しく頂きました。
ちょうど食べ終わった所に少女がお茶を持って来てくれた。礼を言って、名前を尋ねてみる。
もちろん名前は知っているのだが、コミュニケーションを取りたいしね。
「ありがとう、俺の名前はユウ。君の名前は?」
「わたしの名前はココナって言います!」
それだけ言い、照れくさいのか店の奥に引っ込んでしまった。なんともしぐさが可愛らしい。
俺は部屋へ戻り、することもないのでベッドに入った。街で寝間着も買っていたので、着替えておく。
明日はギルドの任務でも受けてみるか。そんな事を考えながらいつのまにか眠ってしまっていた。
夢の中で確かに聞こえた気がした。
「・・願い・け・。私の・・界を・・て・・守・・。」
俺は目を開ける。外はすっかり朝になっていた。
声が聞こえたような気がしたんだけどな。夢だったのか。
よし、今日も張り切って行こう。俺はベッドから降りて寝間着を着替える。とりあえず戦闘スタイルではなく商人スタイルだ。
1階に降りてココナちゃんに朝食を依頼する。ラジャー!と額に手を当てて店の奥へと消えていく。
しばらく待って出てきた朝食をペロリと平らげ宿屋を出る。
今日はギルドの任務を受けてみようと思ったのだが、それは昼からにする。
先に街の散策の続きをする事にした。
この王国は全体としては丸型の作りになっているようだ。ドーナツ形状だな。
で、ドーナツの外円部分が俺達のような一般人?が利用する場所になっているようだ。ドーナツの中心部分には王宮が建っており王宮を中心に貴族街が広がっている。昨日は中心部まで行けなかったので今日行ってみる事にする。門前払されそうだが。
案の定門前払いされてしまった。30分も掛けて歩いて来たっていうのに。
貴族様にコネでもないとどうやら中に入る事すら出来ないようだ。
先生にもらった首飾りをを見せれば入れたかもしれないがまだ今はその時ではないだろう。
中に入るのはあきらめて反対側の街の散策をする事にする。
少し行くと、外から見ても異様な気配を醸し出している建屋が見えた。そこまで大きな建屋ではない。気になって中に入ってみる。
中には魔導具が所狭しと並んでいた。どうやら魔導具ショップらしい。
店主に聞いてみたのだが、魔導具というのはそのほとんどがダンジョンから発掘された物らしい。
一部は作成された物もあるらしいが。
ダンジョンなんてあるんだね。
それにしても魔導具の効果というのもピンキリのようだ。単純に音が鳴ったり光ったりするだけの物もあれば、自身のステータスを上昇してくれる物まであった。
今見ているのは、
名前:ブリックリング
説明:即死のダメージを負った時に一度だけそのダメージを肩代わりしてくれる。
相場:金貨100枚
希少度:★★★★☆☆
すごい効果だな。しかも高い・・。こんなの一般人が買えるのだろうか?俺は余裕だけどね。
「それがお気に召したのかい?」
俺に声をかけてきたのは、妙齢の女性だった。
全身黒一色でローブを羽織っている。フード付きだ。
俺は一応金額を聞いてみた。
すると、金貨10枚だと言う。あれ?相場よりかなり安いぞ。俺は拍子抜けしてしまった。
実際は金貨10枚といえば大金なんだが、今の俺は金銭感覚皆無だ。危ない危ない。
だが、1回だけ死を免れるなんて是非手に入れるべきだろう。大金を持っていても死んでしまっては意味がない。
俺は、このリングともう1つ水道の蛇口のような魔導具を購入した。
見た目の通り、魔力を込めるだけでこの蛇口から水が出てくるのだ。
俺としてはものすごくいい効果なのだが、どうも魔力効率が悪いようで、熟練の魔術師でも1分間も使用すれば魔力が空っぽになってしまうそうだ。
というのもあり、安かったのだ。といっても金貨10枚だったんだけどね。購入してから試したが、俺の場合は1分間使ってもほとんどMPが減ることはなかった。
よし、当たりだな。購入した魔道具をバッグに入れるフリをしてストレージに回収する。
店を出て、少し歩く。すると今度は重装備の団体さんが前を歩いていた。
なんだろうと思い、近くにいる人に聞いてみた。
どうやらあの団体さんはこの王国の騎士団らしい。騎士ギルドとはまた違って、王国専属の騎士団なんてものがあるらしいが、どこかへ遠征にでも行くところだろうか?
討伐か何かだろうが、レベル帯を確認してみると20後半から30前半だった。
たしか戦闘職でいう上級者レベルだったはずだ。
目的が気にはなったが、団体さんとは進行方向が違うため、見送ることにする。
お勤め頑張って下さい。と心の中でエールを送ることも忘れない。
道中、いくつかのギルドを発見していた。興味はあるが今でなくても良いので同じく先送りすることにした。
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