幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第百九十二話:テーマパーク

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俺が合宿中の出来事。

「エレナさん!外にお出掛けしようよ!」
「そうですね、この部屋にいても特にする事がないですしね。何処か行きたい所はありますか?」
「うん!私ね、テーマパークって言うとこに行ってみたいな」

そう言い、準備でもしていたかのように、何処からかチラシめいたものを取り出す。
エレナは、ユイに渡されたチラシに目を通した。

「魔術や魔導具を使った色々なショーをしているみたいですね」
「うん。だけど、一番気になるのは、ほらここの最後の所だよ」

ユイが指差した場所に目を向けると、

「えっと、迷宮トレジャー探検ですか?」
「それそれ!お宝探しの旅だよ!」

しかし、エレナは同時に気になる文面を見つけた。

※尚、この迷宮トレジャー探検は、女性冒険者限定・・・・・・です。

「なんで、女性冒険者限定なのでしょうね?」
「分からないー。だから、お兄ちゃんには言わなかったの」

何か理由があるのだろうが、その時はまだ、この場にいる誰にも分からなかった。

「面白そうですし、行ってみましょうか」
「私は留守番しています」

アリスは、基本的に主人絡み以外は、あまり興味を示さない。
今回もそれは変わらなかった。

「ごめんなさい。私も、少し調べたい事がありますので、お留守番していますね」
「えっと、一人でも大丈夫ですか?確かアニさんは、まだこの国に来てから日が浅いとユウ様から聞いています」
「はい、心配して下さってありがとうございます。私は一人で大丈夫ですので。ユイさんたちと楽しんで来て下さい。留守は、私とアリスさんに任せて下さい」

調べたい事があると聞き、エレナはてっきり図書館に行きたいものだと勘違いしていた。
留守を預かると言う事は、すわなち何処にも行かないと言う事だ。

結局、アリスとアニを除いた、ユイ、ルー、ミラ、とエレナを加えた4人でテーマパークに赴く事になった。

開催場所は、この宿屋街からはかなりの距離があったが、例の如く短距離転移装置にて、一瞬でその場所まで移動した。

「すごい・・ユウ様の転移のようですね」
「私も初めてみた時はビックリしちゃったよぉ。このバーン帝国はねぇ、この世界でも一、二を争うほどに技術が進んでるからね!」
「そういえば、ルーさんは、何処の国の出身なんですか?」
「えっと・・・良く覚えてないの。物心つく前に親にほっぽり出されてからは、クーちゃんが親代りだったから」
「ごめんなさい・・・」

事情を知らなかったとはいえ、話したくない過去を思い出させてしまったと思ったエレナは、すぐに頭を下げて謝った。

「全然いいよ!だって今の私は幸せだからね!」
「危なっかしくて、いつもソワソワさせられるけどな」

突然の声に、ユイ以外の皆がキョロキョロと声の主を探す。

「あ、クーちゃんじゃない。最近あんまし姿を見せないから、私の中が居心地良くなって、グゥ垂れた生活を送ってるのかと思ったよ!」
「私とて、色々と忙しい身なんだぞ?セリア殿や今は留守にしているが、ノア殿との精霊談義には、一行の趣があるのだ」

それを忙しいと言うのかどうかはさておき、精霊クロウは多忙な生活を送っているようだ。

ルーと精霊クロウとのやり取りを不思議そうな様子で見ている他のメンバーだったが、流石にいたたまれなくなったエレナが口を開く。

「ルーちゃん、もしかして精霊様とお話ししているの?」
「え?あ、あれ、エレナさんには見えないんだっけ?」
「はい、ユウ様の中におられる、セリア様とノア様のお姿は拝見出来るのですけど」
「そうだった!クーちゃん自身が許可を出さないと、他の人は見れないんだったよぉ!」
「今し方、私の友としてそちらの麗しいお二人に許可を与えましたので、確認して見てくれるかな?」
「あ、はい、ちゃんと見えてます。初めまして、えっと、クロウ様?」
「影の精霊のクロウだ。よろしくな嬢ちゃんたち」
「初めまして、影の精霊クロウ様。エルフ族のエレナと申します」
「・・・サラ」
「それにしてもつくづくこのパーティは、なんと言うか。凄いとしか言いようがないな」
「クーちゃん何が凄いの?」
「エルフの嬢ちゃんにしたって、この世界では割とレアな種族なんだよ?それに更にハイエルフの嬢ちゃんが2人とは、ユウ殿の手腕が伺えるな」
「お兄ちゃんは、たくさんの人を惹きつける魅力があるんだよ」
「私もそう思います」
「うーん、そもそも私はなんで、一緒にいるんだったっけ? ま、いっか!」

能天気なルールはさておき、目的地までの道中、精霊クロウとの談笑は続いた。

一行は目的地であるテーマパーク会場のある大広間へと辿り着いた。

まず目を疑ったのは、溢れるばかりの人の多さだろう。
バーン帝国広しといえど、ここまで人がごった返している場所は、そうはないだろう。

「凄い人ですね・・」

あまりの多さに、足取りが止まり、進むのを躊躇ってしまう程だった。

テーマパーク会場の入り口でビラを配っている人物を見つけた為、代表してユイが受け取った。

そこには、このテーマパークの紹介が記載されていた。
大まかな地図と催しの一覧、それが開催される時間などが記載してあった。
中には、以前水上都市アクアリウムで見たような魔術を使った大規模なショーなんてものや、エルフの里プラメルであったプラネタリウムのような幻想的な映像を見せてくれる催しまで執り行われていた。

このテーマパークは、人々の娯楽を起点とした数々のイベントが行われている会場だった。
しかし、それを見ていたユイがある事に気が付く。

「あれ、迷宮トレジャー探検の事が何処にも書いてないよ」

ビラをユイから受け取ったエレナも探してみるが、確かに何処にも記載されていなかった。

「聞いて見ましょうか」

ビラを配っていた青年にエレナが確認する。
希少種であるエルフのましてや美少女であるエレナからの問い掛けに、青年は何処か緊張した面持ちだった。

「迷宮トレジャー探検ですか? 生憎、この会場ではそのような催しは行っておりません。何かの勘違いではないでしょうか?」

青年の物言いにすかさずユイが反論する。

「そんな訳ないよ!だってほら、ここに書いてあるもん!」

ユイが以前貰っていたビラを青年に見せる。

「確かに書いてありますね。ですけど、こんなビラは私たちが作ったものじゃないです」
「もしかしてぇ、去年のビラとかいう落ちじゃないの?」
「いえ、私は25年この国に住んでますが、そのようなイベントは聞いた事がないですね。ですけど、面白そうですので、新しく取り入れて見てもいいかもしれません。ま、自分下っ端なんで、そのような権限はないんですけどね」
「その下っ端の小僧が仕事もせずに何、可愛い子とくっちゃべってサボってやがるんだ?ああ」
「げ!お頭!すいません!真面目にやります!」

青年の恐らく上司にあたる人物であろう。
青年は、逃げる様に彼方へと消えていった。

「取り敢えず、この地図によると、一番奥みたいですから、道中の催しも楽しみながら向かって見ましょうか」
「うん、そだねー。私こういうの初めてだからちょっとワクワクするなぁ」

まず視界に飛び込んで来たのは、巨大なコーヒーカップが空を飛んでいる様だった。
メルヘンと言えばメルヘンに該当するのだろう。

「え、何あれー!」

ユイはその光景に興奮していた。
コーヒーカップの中には人が入っている。
中心の軸を起点に、宙に浮いた複数の巨大なコーヒーカップがクルクルと回転していた。

「よく見るとあれ、紐で繋がってるね」
「なんじゃ、お前さん方はフライカップは初めてか?」

隣にいた年配のご老人が、声を掛けてくる。

「はい、そうなんです」
「おや、エルフの方とは、珍しい限りじゃ」
「旅の道中に滞在しているだけだよー。それより、あのカップは何で空を飛んでるのぉ?」

ルーが興味津々に指差す。

「あれはな、魔力で動かしておるんじゃ。中心の球体が見えるじゃろ?あれが動力部になっており、あれに魔力を注ぐと、決められた動きをする魔導回路なる物が入っておるんじゃ」
「人が乗っているようですけれど?」
「当たり前じゃ、これは乗って楽しむためのアトラクションなんじゃからの」

早い話が、娯楽専用の遊具だった。
10個の巨大なコーヒーカップが円形状に配置されており、全てが中央の丸い球体のオブジェに透明な糸で繋がれている。
管理者と思われる人物がその球体に魔力を注ぐと、球体が青く光り始め、その青い光が透明な糸を伝い巨大コーヒーカップに到達すると、地面からフワリと浮き上がる。
ゆっくりと浮き上がった巨大コーヒーカップは、やがて、中央の丸い球体を軸として、10個全てがゆっくりと時計回りに旋回し始める。
旋回している時間は、精々5分程だろう。
旋回し終えると、元の場所まで戻って来る。

この遊具もとい、アトラクションに参加するべく長蛇の列が出来ていた。

遊具と言えど人件費が掛かっている以上、タダではない。
体験するためには、一人10銅貨が必要だった。
ユイたちは、これまでも何度も空を飛ぶという体験をしてきた為、あまり魅力を感じてないようだが、一般人だと空を飛ぶ機会などまずないだろう。
国同士を結ぶ空艦は存在するが、あれに乗る事が出来るのは、貴族または一定以上の収入のある人たちに限られてしまう。
それ故、一時だが、空を飛ぶ事が体験出来るこのアトラクションは、テーマパークの中でも人気のアトラクションの一つだった。

フライカップを後にしたユイたちは、辺りを散策しながら目的の場所を目指していた。

「あ、あれも食べたい!!」

フライカップ以降、周りの特設コーナーには見向きもしないユイだったが、食い気にはめっぽう弱い。

テーマパーク会場に足を運び、まだ1時間程度しか経過していなかったが、既に似たような屋台から3回購入し、立食いしていた。
しかし、ユイだけではなく、ルーもミラも同じように欲していたので、エレナも特段気にする様子もなく、ユイの要望に応えた。

事前にユウから必要経費として、金貨数枚を渡されていたエレナが、財布係を担当していた。

先ほど屋台で購入した甘い串餅を頬張りながら、全員の足が一斉に止まる。

「さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!魔術を使った幻想的な世界に皆様をご招待するよ~。お代は、観終わってからで結構!さぁ、もうすぐ開演だよ~」

「綺麗・・」

ポツリと呟くエレナだった。
開演前のデモンストレーションに心奪われてしまっていた。

恐らく人工的に造られたであろう雪が降り注ぎ、色鮮やかな電光が降り注ぐ雪をライトアップし、まるで空から宝石が降っているかのように幻想的な雰囲気を醸し出していた。
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