幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第百九十七話:強敵との遭遇

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「お前たち。一体こんな場所で何をしておるのか説明して貰おうか?」

俺とムー王女は、ラティ王女がいると思われる場所に乗り込み、王女誘拐その関係者と思われる人物らと睨み合っていた。

向こうも、いきなりこんな場所に現れた俺たちに右往左往している。

「誰だ貴様らは!一体、どうやってここに入った!」

彼等が驚くのも無理はない。
どうやらこの場所には、関係者以外は近付けないように認識阻害の結界めいたものが張ってあったようだ。
普通ならば、それを突破するのは難しい。
以前、俺の師匠であるエスナ先生が張っていたものと恐らく同種のものなのだろうが、その時も今回もレーダー機能によって、難なく突破する事が可能だった。
認識阻害は、あくまでも視界や嗅覚などを捻じ曲げる程度のもので、そんなものに左右されないレーダーには、無意味だった。
しかし、そんな説明をこの世界の住人にしても通じないだろう。
それに教えてやるつもりもないしね。

「質問しているのはこっちじゃ。居るんじゃろう?この国の王女がここに」

図星なのだろう。
慌てふためいている姿が、滑稽だ。
物陰に隠れていた複数の人影がゾロゾロと出て来て、あっという間に周りを取り囲まれてしまった。

なるべく穏便に済ませたかったんだけどね。

「動くなよ。お前らが不審な動きをすれば、ラティエラ王女の命はないと思え」

やはり、ここにラティ王女はいるようだ。
新しく会得したサーチは正しく機能していたみたいだな。
少しでも疑ってしまった事を心の中で謝罪しておく。

それにしても、人質を盾に脅してくるとは、最低な奴らだ。

「一眼姿を見せてはくれないか?もし本当にここにラティ王女がいるのなら、俺たちは無抵抗で捕まってもいい」

勿論、嘘だ。

一眼でいい。
ラティ王女が現れた一瞬の隙を狙って救出し、離脱する事くらい今の俺には造作もない事だ。
レーダーによって、大体の場所は把握出来るが、建物の中なので、ラティ王女の状態は不明だった。
身動きが出来ないように拘束されていたら連れ出すのが面倒になる。

もう一つ気になるのは、この場所に魔族がいる事。
人の姿に化けてこの場に堂々と姿を見せている事だ。
周りの人物たちが、彼が魔族である事を知っているのかは不明だ。
この場でそれを騒いでも無意味だろう。

「貴様の要求は受け入れられない」

槍を構えた青年が強い口調でこちらを睨みつける。

あ、そうですか。
それでもどうにか争う事なく穏便に済ませないかと考えていると、ムー王女が一歩前へと進む。

「ならば、力付くでもラティは返してもらう」

え?

突如として放たれたムー王女のフリージングで、この辺り一体の地面が凍結した。

ここまでの威力を出そうと思ったら、恐らく既に魔力の溜めと詠唱を完成させていたのだろう。

不意を突かれた連中は、凍りつき地面と一体化してしまった脚を何とか引き抜こうと必死になっている。

「相変わらず強引だな」
「相変わらずかどうかはさておき、何、無力化しただけじゃ。誰も怪我人は出ておらん」

そのまま平然と、怒る連中の横を通り過ぎ、ラティ王女の元へと向かう。
その際、一緒に動けなくなっていた魔族が何かしてくるのか警戒していたが、結局動きは無かった。
抗う事すらせず、ただ呆然と立ち尽くしているだけだった。
すれ違いざまに鑑定アナライズを行使するが、鑑定阻害となってしまった。

過去、鑑定阻害となったケースは、皆只者ではなかった為、警戒レベルを改めないとまずいかもな・・。

レーダーを頼りに迷う事なくラティ王女の囚われている場所へと向かう。

「あら、どうしてフラムがここにいるの?」

どういう訳か、ラティ王女は囚われているばかりか、拘束もなく寛いでいた。

その側には、鋭い眼光を向ける執事風の老人が立っている。

え、この人何者?
気配が尋常じゃないんですけど・・
思わず二度見してしまった。

「ラティよ。一体どういう状況なんじゃこれは?妾が納得いく説明をしてもらおうか」
「まさかこんなにも早くバレるなんてね。大聖堂からはかなり距離あったし、外にも警護がいたと思うんだけど?」

「ラティ!!」

ムー王女がいつになく声を荒げる。
あまりの気迫に隣にいる俺の方が少しだけビビってしまった。
勿論、ポーカーフェイスは崩していないけど。

「妾の質問に答えぬか!場合によっては、其方を即刻拘束する事も厭わぬぞ!」

ラティは、「はぁ・・・」と溜息を吐く。
何処と無く呆れた顔をしているように見えるのは気のせいだろうか?

そんなラティの気を察したのか、老執事が動いた。
恐らく峰打ちを狙ったのであろう高速の突きがムー王女へと放たれた。
だけど、世間一般的には確かに早い突きなのだろうが、限界突破した俺にはスロー再生にすら見える。

ムー王女の前へ出て、難なくその突きを弾き、手刀でまだ鞘に収まったままの武器を弾き落とした。

これには、ムー王女の牽制にも狼狽えなかったラティ王女も表情を崩している。
老執事も堪らず俺との距離を置いた。

「それがラティの答えか?」

しかし、ラティは口を紡いだまま、喋らない。
何かの機会を伺っているのか、視界が右往左往していた。
誰かを待っているのか?

「まあ良い。城へ強制連行してゆっくり事情を聞くだけじゃ」

ムー王女が歩き出そうと一歩踏み出した時だった。

レーダーに高速で近付く反応があった。
しかも、どうやらその反応はムー王女を狙っているようで、すぐに反応のある方へと顔を向けるが、何も見えない。
しかし、相手はすぐそこまで迫ってきていた。

くそっ!

「ムー!!伏せろ!」

俺は前を行くムー王女に飛び掛かり、そのまま地面へと一緒に倒れ込んだ。
咄嗟だった為、呼び捨てになってしまった事には目を瞑ってもらおう。

倒れ込んだ直後、鎌鼬のような旋風が先ほどまでムー王女が居た場所を通り過ぎていく。

「な、何じゃ!」

動揺するムー王女に対して、俺は意外と冷静だった。

恐らく、何者かの透明化状態のままの攻撃だろう。
ただの魔術の場合、範囲探索エリアサーチに映るなんて事はありえない。

っと、分析している状況じゃなかった。
反応が、グルリと旋回して戻って来る。

癪だが、障壁を張り、迎え撃つ。

すぐに障壁に何かが激突したように振動が走る。

「一体何が起こってるんじゃ!」
「分からない。見えない何かに攻撃されてるみたいだな」

様々な角度から障壁に激突する何か。
このままではラチが明かない。

ムー王女に小声で耳打ちする。

「悪いね、やられっぱなしは性に合わないんだ」

転移でラティ王女の背後に移動した俺とムー王女は、ラティ王女を掴み、少し間を置いてからもう一度転移する。

「ムー王女、後は大丈夫か?」
「ああ、ラティと二人だけで話がしたい」

頷き、俺だけ転移のリキャストタイム終了後に再度転移する。

「待たせて悪かったな」

先ほど見えざる何かと対峙していた場所まで戻って来た俺は、戦闘態勢を取る。

姿は見えないが、居場所は分かる。

「答えろ!お嬢様を何処へ連れて行った!」

先程の老執事が怒号を飛ばす。
悪いけど、爺さんに付き合ってる暇はないよ。

それに二人は今、あの塔の屋上にいるしね。
教えてはあげないけど。

さてと、さっきの借りを返させてもらうとするかな。

姿が見えない相手を倒す方法はいくつかある。
簡単なのは、問答無用で広範囲な魔術を畳み掛ける事だけど、流石にそれをすると、この辺りの地形が変わりかねないので、却下だ。

そうこう考えているうちに相手の方が先に仕掛けて来た。
そのまま、今までのように攻撃を避けたり、やり過ごす事はせず、敢えてその攻撃を受けた。
勿論ダメージは覚悟していたが、どうやら上手い事剣でガードが出来たようだ。

相手がその場所から離れる前に、老執事にしたように手刀を繰り出した。
外さまいと、なるべく体の中心を狙って放たれた手刀は、見事にそこにいる何かにヒットする。

「ふぎゃ」と言う悲鳴混じりの声が聞こえたかと思うと、そのまま地面へと落下する音が聞こえた。

見えなかった姿が次第に薄ぼんやりと現れ、やがて鮮明にその姿が見えるようになる。

見た事のない種族だな。

名前:クロム
レベル47
種族:蜂人族ビータル
弱点属性:火
スキル:暗視、突進Lv3、迷彩化インビシブル、錐突きLv3、旋風斬Lv3
状態:気絶

人族の赤子サイズに背中には蜂のような4枚羽が生えている。
両手は鎌のように鋭く伸びている。
頭には、黄色と黒色の縞々の触覚がヒクヒクと動いていた。

蜂人族ビータルなんて、聞いたことがないな。
まぁ、気絶となっているから取り敢えずの脅威は去ったか。

「さて、次の相手はあんたか?」

いつの間にやら、すぐ近くまで近付いていた魔族の一人が硬質化した自らの腕を振り下ろす。
予想外のスピードに、一瞬タイミングが遅れ、仕方なく腕でそれをガードする。

腕がギシギシと鈍い音を立てながら、脚が地面へとめり込む。

なんちゅう馬鹿力だ・・。
腕の骨にビビ程度は入ったかもしれない。

そのまま負けじと力で後方へと弾き飛ばした。

すぐに治癒ヒールを使い、その後自らに全能力向上ブーストを施す。
どうやら、並みの相手ではないようだ。
こちらも本気でいかないと脚をすくわれる可能性だってある。

ところで、あいつは何処だ?
あろうことか、魔族を見失ってしまった。

レーダーにも反応がない。
反応が消えるとすれば、範囲探索エリアサーチ圏外に移動したか、あるいは・・まさか異空間に飛んだのか?

直後、下腹部に強烈な痛みが走る。
と同時に、後方へと飛ばされてしまった。
まるでさっきのお返しと言わんばかりだ。

そのまま何とか受け身を取り、岩壁への直撃を免れた俺は、続いて襲って来る斬撃を障壁で防ぐと、いつの間にか姿を現していた魔族に向かい、風刃ウインドカッターを放つ。ただの風刃ウインドカッターではない。同時に3本の音速すら越える風の刃だ。

到底躱す事など・・・嘘だろ

躱しやがった!
まじかよ。
ちっ!

すぐさまノータイムで放てる重力グラビティを発動する。
溜め無し、モーションなしで放たれた俺の重力グラビティは、今度こそ避ける事は不可能だ。
これには、素早いあの魔族も例外なく掛かって・・・って消えたぞ!

転移か!?

背後から気配を感じ、すぐさま障壁を展開する。
すぐに後ろを振り向くと、既にその場所に姿はなかった。

俺、さっきから防戦一方だな・・・。

限界突破し、不死の王ノーライフキングを倒し、ロストマジックまで覚え、正直浮かれていたかもしれない。
しかし、この世界にはまだまだ俺なんかよりも強い奴らは、こうしてたくさん存在している。

障壁を解くと、両手で両ほっぺを叩き、気合を入れ直す。

さて、第2ラウンドだ。
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