幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第二百一話:アーネストvs魔王2

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ユウ視点

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「中々に面白い話しじゃったぞ」

目の前のアーネストなる人物は、実は異世界からやってきた魔王の一人で、この世界を征服しようとしているのだと言う。

頭が可笑しいんじゃない? と笑い飛ばしたい所だったけど、冗談で言ってる訳じゃなさそうだ。

それと、たぶんだけどコイツかなり強い。

臨戦態勢に入ると、突き刺さるような威圧が俺と魔王様を襲う。

どちらにしてもこの世界の最高戦力である魔王様と出逢ってしまったのが、お前達、異世界の魔王の敗因だね。

「この女は解放してやる。もっと面白い事を思いついたからな」

ムー王女から何かが抜けるように黒い光が天へと登って行く。

そうして、何処からともなくガタイのいい長身の男が現れた。

「それで? 魔王を名乗るからには、相応に実力があるんじゃろうな?」

言い終わった次の瞬間、巨大な火の炎弾がアーネストを襲った。
完全に不意打ちと言っていいだろう。
魔王様もえげつない事をする。
俺でも避けれたかどうか怪しい速度だった。

着弾した箇所が一瞬のうちに燃焼の炎を上げ、消えた。

消えた?

「おいおい、この世界の魔族ってやつは、礼儀も弁えてないのか?」

アーネストは、魔術を避けるでも耐えるでもなく搔き消したのだ。

隣にいる魔王様を顔をチラ見するに、少々険しい顔をしていた。
手応えを感じていたのだろう。

「ユウ」

不意に名を呼ばれた。
それは魔王様からだった。

「そこにいる二人を連れて逃げるんじゃ」

魔王様からありえない言葉が発せられた。

え、逃げる?

恐らく最も似つかわしくない言葉だろうか。
この世界の最強たる人物。神にすら匹敵、もしかしたらそれすら凌駕する程の実力を持っている魔王様が逃げろだって?

コロンブスの辞書に不可能という文字が載ってないように、魔王様の辞書に逃げろという文字が載っている訳がない。

「それはどういう⋯」

決して冗談なんかで発せられた言葉じゃない事は、顔を見れば分かる。

「妾の第六感が言っておるんじゃ。目の前の彼奴は、危険じゃとな。このような感じは、数千年ぶりじゃな」

魔王様は、顔は依然として真剣な顔立ちだが、何処か嬉しそうにしている気がする。

強敵との対決。

恐らく魔王様が最も望んでいるモノだろう。
俺も理解できなくはないが、進んで戦いたいとは思わない。

しかし、目の前の人物が果たして本当に強敵なのかどうか、俺には判断出来なかった。

「用があるのはそっちの魔族だけだ。逃げるというならお前は見逃してやるよ」

俺の顔色が一瞬変わったのを魔王様は見逃さなかった。

(逆上するなよ?)

心配してか魔王様から念話が届く。

(大丈夫です。このまま離脱します。魔王様も気を付けて下さい)
(うむ。任せておけ)

倒れ伏しているラティ王女とムー王女を抱えて、転移の準備をしていると、再度魔王様から念話が届く。

(久しぶりに会えて良かったぞ。色々と話したい事があったんじゃが、それはまた別の機会じゃな)

完全な死亡フラグな気がしないでもないが、魔王様に限っては、万が一にも億が一にもありえない。

会釈だけして、転移でその場を後にする。

戻って来たのは、ラティ王女が結婚式を挙げるはずだった大聖堂の一室だった。

誰もいない事にホッと安堵の溜息を吐く。
イキナリ現れた男が王女二人を抱えている姿など見られようものなら、それは誘拐犯以外の何者でもない。

意識を失っている二人をベッドに優しく寝かせる。

このまま起きるのを待ってても良かったが、先程からヒシヒシと嫌な予感が俺の脳裏を過る。

頬をペシペシと叩き、ムー王女を強引に起こす。

「い、痛いではないか! ええい、やめんか!」

軽く叩いたつもりが、痛かったようだ。
だけど、こちらも急いでるんだよね。

「ごめん、だけど急いでるんだ。何処まで覚えてる?」

俺の真剣な雰囲気を察したのだろう、起き上がると、乱れていた髪を手櫛で整え、衣服をサッと直すと、改めて俺の方へと振り返る。

多少お転婆な所もあるが、やはり身なりを気にする王女なのだと見識を改める。

「確か⋯ラティを眠らさせた後に急に目の前が真っ暗になったんじゃ」
「なら、そんなに時間は経ってないか」

俺達が駆けつけてからの話をムー王女にする。
勿論、魔王と一緒に居たことや、七大魔王などの情報は伏せている。
しかし、ラティ王女が、洗脳と暗示によって、本人でさえも知らず知らずのうちに操られて居た事は話した。

「そうか、良かった⋯。ラティは操られていただけだったんだな⋯」

ムー王女は涙を流していた。
優しくラティ王女の手を握っている。

幼少期からの親友が自分に向けて刃を向けた事が辛かったのだろう。
でもそれが、他者の介入によるものだと知れて、安堵と喜びと、そして哀しみの表情になっている。

「悪いけど、他の人への説明は頼めるか?」
「あ、ああ。それは良いんじゃが。何処へ行くんじゃ?」
「あの場から二人を救出するのを優先させちゃったからな、犯人を捕まえてくるよ」
「うむ。分かった。ユウに限って、万が一なんて事はないとは思うが、気をつけるんじゃぞ」

何処かで見たような光景だったが、すぐに戻るとだげ告げ、転移した。


「なんだこれは⋯」

先程までいた場所へと戻って来たが、地形が一変している。
建物という建物は、全壊。良くて半壊だ。

無数の隕石でも落ちたのか、所々にクレーターが空いている。
奥の方は、更地になっていて、その中心は巨大なクレーターになっている。

しかし、この惨状を作り上げた当の本人達の姿が何処にも見当たらない。
一度去ってからまだ三十分と経過していないはずなんだけどな⋯

「一体何処に⋯」

ふと、レーダーの端に何かを捉えた。

宛てもない為、反応を頼りに進むと、身体が急に動かなくなる。

どうやら、何者かの魔術のようだ。
行動阻害系だろう。
自力で脱出する事も可能だけど、敢えて様子見する。
というのも、こちらに近付いてくる状態に気が付いていたからだ。

目の前には二つの人物が見える。
その背中には立派な漆黒の翼を有していて、頭には2本のツノが生えている。

「久し振りですね、フランさん」

右側の銀髪を靡かせている女性には見覚えがあった。
魔族であり、俺の知り合いでもある。
互いに何度か助け合った仲でもあったりする。

「お久し振りです。ユウ様」

フランさんは頭を下げる。
その隣で嫌なものでも見るような目で俺を睨みつけている存在がある。

「ちょっとフラン。この人族誰よ?」
「自己紹介の前に、まずはこの捕縛を解いてほしいんだけど」

今俺達は、まさに宙に浮いている状態だ。
自らの羽で飛べる魔族と違い、俺は魔力を使用して飛んでいる。
故に、長時間の飛行は魔力を著しく消費してしまう。

「すみません、すぐに解除します」

その後、地上へと降りた俺達は、簡単に自己紹介を済ませた後、この場にいた理由を話していく。

「私達は、魔王様を捜しています」
「俺も魔王様を捜してたんだ」

やはり、同じ理由でここにいるらしい。

「おい人族。魔王様を一体何処に隠しやがった!」

あれ、こいつ人の話を聞いていたのか?
何故俺が疑われる。

出会い頭から殺気を放ってるし、えらく好戦的な人物のようだ。

「ユウ様、すみません。彼は、元々人族の事をよく思っておりません。それと、リューイ。あなたは少し黙っていて下さい。ユウ様は、魔王様とも懇意にしている人族の方で、魔王様復活の立役者ですよ。あまり失礼な物言いは私が許しませんよ」

俺を擁護してくれた事に素直に嬉しい。

「いいですよ。別に気にしてませんし」
「チッ⋯気に入らねえな」

やっぱり前言撤回だ。おい、あんまり調子に乗ってると3枚に降ろすぞ!


本来魔族と人族とは敵同士。
半ば魔王様の独断で、人族との停戦協定を結んでしまったようなもので、それに賛同していない魔族も多いのだろう。

「魔王様と一体ここで何があったのか話して頂けませんか?」

俺が現在の魔王様の所在を知らないまでも、何かを知っていると確信しているのだろう。


包み隠さずこの場で魔王様と出会ってから、離れるまでの一部始終を二人に説明する。

「なるほど、ではこれはそのアーネストなる人物と魔王様との戦闘の爪痕という事ですか」

フランさんが、辺り一帯の惨状を見渡しながら呟く。

「魔王様とまともにやり合える奴などこの世界には存在しないだろ!」

うん、それは俺も同感なんだけどね。

少なくともこの惨状を見る限りでは、決して一方的な戦闘じゃないのは火を見るより明らかなんだけど。

「問題なのは、魔王様の反応が感じられないという事です」

神妙な顔つきのフランさん。
魔王様の身を案じているのだろう。

魔族は、魔王様の所在までは分からないにしても、その存在だけは、いつも片隅に感じる事が出来るようで、その反応自体が先程、綺麗さっぱりと無くなってしまったそうだ。

「反応が無くなる理由としては二つ考えられます」

ゴクリと生唾を飲み込む。

「魔王様が命を落とされたかあるいは」
「そんな事ある訳ないだろ!」

リューイが怒鳴り声を上げる。

「話は最後まで聞いてください。あくまでも可能性の一つです。そして、もう一つは⋯何らかの方法で、この世界とは違う別次元におられる場合です」

フランさんは続ける。

「可能性として高いのは、後者ですね。ユウ様なら、別次元と聞いて、何か心当たりがあるんじゃないですか?」

別次元か。

パッと思い付くのは、神の社だろうか。
神メルウェルのいる神の社。
確か、あそこは別の次元だったはずだ。
だけど、そんな場所に居る訳がない。
後は⋯そうだな、不死の王ノーライフキングとの一騎打ちしたあの異空間みたいな魔術だろうか。
アーネストが使えるのかは不明だけど、存在しているのは確かなので、使えてもおかしくはないだろう。
でなければ、魔王様の反応が消えてしまったのに説明がつかない。

今は、所用で何処かに行ってしまっている精霊のノアが居てくれれば、どんなに離れていようが、捜しだす事が出来るかもしれないんだけどな。
異空間は流石に無理だけど。

「アーネストが異空間を作り出す魔術を持っていれば、反応が消えた説明にはなるんだけどな⋯」
「そんな魔術は聞いたこともないぞ!」

口調が荒いのは仕方がないとして、その睨むのはやめて欲しいんだけどな。
威圧を込められて睨まれると、なんかこう、寿命が縮むような気がするからさ。

「私は、魔王様に聞いています。ユウ様が、かの不死の王ノーライフキングと対峙した事を。その際、似たような魔術を相手が使っていたという事も」
「え、あの戦い見られてたのか⋯」
「魔王様は全てお見通しですよ」

そんな慈愛に満ちた笑顔で、全て見てますと言われても、怒るに怒れない⋯。
むしろ恥ずかしい。

「仮にそうだとすれば、戦闘が終われば出てくるはずだ。まだ姿を現さないという事は、まだ戦闘が続いてるって事になる」
「そうですね、待つしかないという事でしょうか⋯」
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