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第二百四話:消えた魔王
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目を開けているのかさえ錯覚してしまう程の暗黒の世界が広がっていた。
大地に触れているのか?
宙を舞っているのか?
一切の感覚が感じられなくなっていた。
彼奴が光ったと思ったらいきなり目の前が暗転しおった。
目を潰された?
違う。
幻影の類か?
それも違うな。
自らを鑑定してみるが、それらしい事は何も分からん。
転移が使えない事を考えるに、どうやら別次元に飛ばされてしまったようじゃな。
しかし妙なのは、妾以外の気配が全く感じられん事じゃ。
「さて、どうしたものか・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ユウ視点
「お前! 魔王様を何処に連れて行きやがった!!」
イキナリ現れたこの人物は、アーネスト。
七大魔王を名乗っていた人物だ。
魔王様と対峙していたはずだけど、魔王様の姿は見えない。
こいつだけ戻って来たって事か?
「お前は、さっきの魔族と一緒にいた奴か。フンッ仲間を呼んで来たという事か。くだらんな」
アーネストは、俺たち三人に視線をくべると、一瞥の表情で吐き捨てた。
「そのさっきの魔族とやらは、何処にいるんですか?」
チラリと横にいるフランさんを確認するが、言葉とは裏腹に今までに見た事がない程お怒りの様子だ。
相手に悟られまいと決して表情には出していないはずだったのだが、アーネストはその内に秘める怒りを察したのか、更に追い討ちを掛ける。
「ああ? あの魔族なら、もう死んでるぜ。情けない最期だったなぁ、俺様に命乞いしてきやがってな」
勿論そんな事は嘘っぱちなのだが、ここにいる3人はそれが真実なのか判断する事は出来ない。
しかし、その言葉が皆の怒りを買う事にはどうやら成功したようだ。
「嘘を抜かすなぁぁぁ!」
魔族の一人、リューイがアーネストに向かって飛び出す。
リューイもまた、魔界でクオーツに属している程の手練れだった。
手のひらサイズの槍が途端に大きくなり、アーネストの顔面を捉えた⋯はずだった。
アーネストは身動き一つ取らず、そのまま顔面をすり抜けてしまった。
そのままの勢い余ってリューイは通り過ぎてしまう。
狙いをミスったのか?
いや、違う。確かに狙い通りヒットしたはずだ。
奴のスキルか何かか?
振り返ったアーネストは、リューイの背中目掛けて拳を構えた。
いちいち感に触る奴だったが、みすみすやられるのを見ている程、腑抜けてはいないつもりだ。
重力発動!
アーネストの動きを止めるつもりで加減なしの全力で放った魔術が、全く効力を発揮せず、そのまま拳を止める事が出来ず、リューイはもろに攻撃を喰らってしまった。
なぜ効かない?
先程も攻撃をすり抜けた事といい、実体がないのか?
「ユウ様、離れて下さい」
後ろにいたフランさんがまさに大技を放つ寸前だった。
近くに居たにも関わらず、魔力チャージに全く気が付かなかった。
一つ一つの動作が洗練され、その動きに一切の無駄がない。
「炎嵐」
直径三メートル級の巨大火の玉が次々とアーネスト目掛けて放たれる。
着弾するたびに辺り一面を火だるまに変貌させていた。
毎秒毎に繰り出される火の玉にフランさんの静かな怒りが垣間見れる。
しかし、表情には出していない。
何となく、そんな気がしただけだった。
巻き添えを食らう前に後方へと退避する。
数秒後には辺り一面が火の海と化していた。
まさに地獄絵図といっても過言かもしれない。
範囲探索で確認するとアーネストはまだあの燃え盛る中心にいる⋯なっ!
「フランさん! 危ない!」
炎と煙に紛れて、アーネストがフランさん目掛けて突進してきたのだ。
立ち込める煙幕により視界を妨げられていた事が仇となり、反応しきれていなかったフランさんを無理やり弾き飛ばす。
間一髪の所でアーネストの突きを躱す事に成功した。
危なかった。今のは本当にヤバかった。
アーネストの渾身の一撃は相手を一撃で葬り去る事が出来ただろう。
例えそれがフランさんであっても。
しかし、これでハッキリした事がある。
アーネストに魔術は効かない。もしくは、無効にする術を持っている。
実際俺も魔術完全無効を持っているが、常にではない。
発動条件を満たす必要があるし、発動中はそれなりの魔力を消費する為、常時発動させる事は出来ない。
「すみませんユウ様。助かりました」
お礼を言いながらも相手への警戒は一切怠っていないところは流石と言える。
「いえ、どうやらあいつは魔術の類が効かないみたいですね」
「そのようです。物理攻撃で押し切ります」
フランさんが取り出したのは、禍々しいオーラを放っているフィストと呼ばれる拳に装着する武器だった。
確かに、斬ったり潰したりする剣ではなく、殴り飛ばす方がフランさんのイメージに合っているかもしれない。
身体強化一式をフランさんに施す。
「雑魚どもが⋯調子に乗るんじゃないぞ⋯」
見ると、アーネストの身体が金色に輝いていた。
何かをする気だろうかと思考を巡らせた瞬間、アーネストがその場所から消えた。
次にアーネストを視界に捉えた時には、その太腕が振り下ろされるまさにその瞬間だった。
目にも止まらぬスピード。
転移で逃げる暇も障壁を展開する余裕すらない。
杖を持っていない方の手で受け止め、あわよくば受け流しを狙った。
しかし、アーネストの拳が俺に触れる事はなかった。
「ぐはぁ⋯」
突如として、アーネストは背後から強打を喰らったかのようにその場に倒れ込んだ。
何が起こったのか状況整理に右往左往していると、フランさんが近付いてくる。
「お怪我はありませんか?」
優しく手を差し伸べてくる。
受け身を取るために、勢い余って地面へと尻餅をついた状態となっていた俺を優しく立ち上がらせてくれる。
「これでおあいこですね」
ニッコリとした笑顔に一瞬だけど、ドキッとしてしまったのは内緒にしておく。本当に一瞬だけだと念押しておく。
「ありがとうございます。助かりました。今のはフランさんが?」
隣で動かぬ死体となっているアーネストに視界をくべる。
「はい。どんなに早く動こうが、既にターゲットをロックしていましたので、当てるのは造作もありませんでした。私の攻撃は、相手の内部から破壊します。一撃で終わるとは思っていませんでしたが、不愉快な発言に少々力が入ってしまったのかもしれません」
一撃必中とは恐ろしいスキルと威力だな⋯。
今後、フランさんを怒らせないようにしよう。
しかし、一撃で終わってしまうんだからアーネストも脆すぎる気もする。
外傷が見られない事から、やはり内部を破壊されているのだろう。
フランさんがアーネストの死体を調べようと近付いた時だった。
アーネストの身体が眩いほどの光に包まれたかと思いきや、その身体が光の粒子となり、散り散りとなって霧散してしまった。
「倒したのか?」
背中をさすりながら、リューイがこちらへとやってくる。
「ええ、何とかね。正面からやり合えば正直厳しかったと思うわ。ユウ様に気を取られていたから隙を付く事が出来たみたいね」
リューイの治療を済ました後、皆でもう一度魔王様を散策する。
「あの野郎の言っていた事なんて私は信じないからな!」
アーネストは確かに言っていた。魔王様は、もう死んでいると。
勿論、リューイ同様にそんな言葉を信じてはいない。
だが、魔王様の反応を感じ取る事が出来ないのは確かだ。
その理由として考えられるのは、やはり亜空間に閉じ込められているからだろう。
「このまま探しても埒があきませんね」
魔王様を必死で探すうちに、いつの間にか、辺りは日が暮れはじめていた。
夜になってしまえば、捜索は更に困難になる。
俺には暗視があるから問題はないんだけど、二人は違う。
「くそっ! 信じないからな! 信じるもんか!」
何度も何度も壊れた人形のように同じ言葉を繰り返すリューイ。
「彼も魔王様の事を慕っている一人です。最悪な結果は信じたくないのでしょう。勿論それは私も同じですが」
「ただの勘でしかないですけど、魔王様はきっとアーネストの作り出した亜空間に取り残されているのだと思います。普通ならば、術者に出してもらわない限りは出られない。だけど、他でもない魔王様ですからね、きっとそのうちひょっこりと帰ってくるようなそんな気がしますね」
俺の発言を聞いたフランさんは、クスクスと笑い出してしまった。
あれ、俺そんな面白い事を言っただろうか?
「ごめんなさい。何だか、魔族である私たち以上に魔王様の事を信頼しておられて、同時に魔王様の事を理解しておられて、そう考えると、少し可笑しくなっちゃいました。そうですよね、私たちが信じないで誰が魔王様の無事を信じるんですかね」
「何をしんみりしてるんだ?って今度は魔王様に笑われますね」
「そうですね」
今度は二人して笑い合った。
そんな姿を少し離れた所で見ていたリューイが不思議そうに頭を傾げていた。
大地に触れているのか?
宙を舞っているのか?
一切の感覚が感じられなくなっていた。
彼奴が光ったと思ったらいきなり目の前が暗転しおった。
目を潰された?
違う。
幻影の類か?
それも違うな。
自らを鑑定してみるが、それらしい事は何も分からん。
転移が使えない事を考えるに、どうやら別次元に飛ばされてしまったようじゃな。
しかし妙なのは、妾以外の気配が全く感じられん事じゃ。
「さて、どうしたものか・・」
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ユウ視点
「お前! 魔王様を何処に連れて行きやがった!!」
イキナリ現れたこの人物は、アーネスト。
七大魔王を名乗っていた人物だ。
魔王様と対峙していたはずだけど、魔王様の姿は見えない。
こいつだけ戻って来たって事か?
「お前は、さっきの魔族と一緒にいた奴か。フンッ仲間を呼んで来たという事か。くだらんな」
アーネストは、俺たち三人に視線をくべると、一瞥の表情で吐き捨てた。
「そのさっきの魔族とやらは、何処にいるんですか?」
チラリと横にいるフランさんを確認するが、言葉とは裏腹に今までに見た事がない程お怒りの様子だ。
相手に悟られまいと決して表情には出していないはずだったのだが、アーネストはその内に秘める怒りを察したのか、更に追い討ちを掛ける。
「ああ? あの魔族なら、もう死んでるぜ。情けない最期だったなぁ、俺様に命乞いしてきやがってな」
勿論そんな事は嘘っぱちなのだが、ここにいる3人はそれが真実なのか判断する事は出来ない。
しかし、その言葉が皆の怒りを買う事にはどうやら成功したようだ。
「嘘を抜かすなぁぁぁ!」
魔族の一人、リューイがアーネストに向かって飛び出す。
リューイもまた、魔界でクオーツに属している程の手練れだった。
手のひらサイズの槍が途端に大きくなり、アーネストの顔面を捉えた⋯はずだった。
アーネストは身動き一つ取らず、そのまま顔面をすり抜けてしまった。
そのままの勢い余ってリューイは通り過ぎてしまう。
狙いをミスったのか?
いや、違う。確かに狙い通りヒットしたはずだ。
奴のスキルか何かか?
振り返ったアーネストは、リューイの背中目掛けて拳を構えた。
いちいち感に触る奴だったが、みすみすやられるのを見ている程、腑抜けてはいないつもりだ。
重力発動!
アーネストの動きを止めるつもりで加減なしの全力で放った魔術が、全く効力を発揮せず、そのまま拳を止める事が出来ず、リューイはもろに攻撃を喰らってしまった。
なぜ効かない?
先程も攻撃をすり抜けた事といい、実体がないのか?
「ユウ様、離れて下さい」
後ろにいたフランさんがまさに大技を放つ寸前だった。
近くに居たにも関わらず、魔力チャージに全く気が付かなかった。
一つ一つの動作が洗練され、その動きに一切の無駄がない。
「炎嵐」
直径三メートル級の巨大火の玉が次々とアーネスト目掛けて放たれる。
着弾するたびに辺り一面を火だるまに変貌させていた。
毎秒毎に繰り出される火の玉にフランさんの静かな怒りが垣間見れる。
しかし、表情には出していない。
何となく、そんな気がしただけだった。
巻き添えを食らう前に後方へと退避する。
数秒後には辺り一面が火の海と化していた。
まさに地獄絵図といっても過言かもしれない。
範囲探索で確認するとアーネストはまだあの燃え盛る中心にいる⋯なっ!
「フランさん! 危ない!」
炎と煙に紛れて、アーネストがフランさん目掛けて突進してきたのだ。
立ち込める煙幕により視界を妨げられていた事が仇となり、反応しきれていなかったフランさんを無理やり弾き飛ばす。
間一髪の所でアーネストの突きを躱す事に成功した。
危なかった。今のは本当にヤバかった。
アーネストの渾身の一撃は相手を一撃で葬り去る事が出来ただろう。
例えそれがフランさんであっても。
しかし、これでハッキリした事がある。
アーネストに魔術は効かない。もしくは、無効にする術を持っている。
実際俺も魔術完全無効を持っているが、常にではない。
発動条件を満たす必要があるし、発動中はそれなりの魔力を消費する為、常時発動させる事は出来ない。
「すみませんユウ様。助かりました」
お礼を言いながらも相手への警戒は一切怠っていないところは流石と言える。
「いえ、どうやらあいつは魔術の類が効かないみたいですね」
「そのようです。物理攻撃で押し切ります」
フランさんが取り出したのは、禍々しいオーラを放っているフィストと呼ばれる拳に装着する武器だった。
確かに、斬ったり潰したりする剣ではなく、殴り飛ばす方がフランさんのイメージに合っているかもしれない。
身体強化一式をフランさんに施す。
「雑魚どもが⋯調子に乗るんじゃないぞ⋯」
見ると、アーネストの身体が金色に輝いていた。
何かをする気だろうかと思考を巡らせた瞬間、アーネストがその場所から消えた。
次にアーネストを視界に捉えた時には、その太腕が振り下ろされるまさにその瞬間だった。
目にも止まらぬスピード。
転移で逃げる暇も障壁を展開する余裕すらない。
杖を持っていない方の手で受け止め、あわよくば受け流しを狙った。
しかし、アーネストの拳が俺に触れる事はなかった。
「ぐはぁ⋯」
突如として、アーネストは背後から強打を喰らったかのようにその場に倒れ込んだ。
何が起こったのか状況整理に右往左往していると、フランさんが近付いてくる。
「お怪我はありませんか?」
優しく手を差し伸べてくる。
受け身を取るために、勢い余って地面へと尻餅をついた状態となっていた俺を優しく立ち上がらせてくれる。
「これでおあいこですね」
ニッコリとした笑顔に一瞬だけど、ドキッとしてしまったのは内緒にしておく。本当に一瞬だけだと念押しておく。
「ありがとうございます。助かりました。今のはフランさんが?」
隣で動かぬ死体となっているアーネストに視界をくべる。
「はい。どんなに早く動こうが、既にターゲットをロックしていましたので、当てるのは造作もありませんでした。私の攻撃は、相手の内部から破壊します。一撃で終わるとは思っていませんでしたが、不愉快な発言に少々力が入ってしまったのかもしれません」
一撃必中とは恐ろしいスキルと威力だな⋯。
今後、フランさんを怒らせないようにしよう。
しかし、一撃で終わってしまうんだからアーネストも脆すぎる気もする。
外傷が見られない事から、やはり内部を破壊されているのだろう。
フランさんがアーネストの死体を調べようと近付いた時だった。
アーネストの身体が眩いほどの光に包まれたかと思いきや、その身体が光の粒子となり、散り散りとなって霧散してしまった。
「倒したのか?」
背中をさすりながら、リューイがこちらへとやってくる。
「ええ、何とかね。正面からやり合えば正直厳しかったと思うわ。ユウ様に気を取られていたから隙を付く事が出来たみたいね」
リューイの治療を済ました後、皆でもう一度魔王様を散策する。
「あの野郎の言っていた事なんて私は信じないからな!」
アーネストは確かに言っていた。魔王様は、もう死んでいると。
勿論、リューイ同様にそんな言葉を信じてはいない。
だが、魔王様の反応を感じ取る事が出来ないのは確かだ。
その理由として考えられるのは、やはり亜空間に閉じ込められているからだろう。
「このまま探しても埒があきませんね」
魔王様を必死で探すうちに、いつの間にか、辺りは日が暮れはじめていた。
夜になってしまえば、捜索は更に困難になる。
俺には暗視があるから問題はないんだけど、二人は違う。
「くそっ! 信じないからな! 信じるもんか!」
何度も何度も壊れた人形のように同じ言葉を繰り返すリューイ。
「彼も魔王様の事を慕っている一人です。最悪な結果は信じたくないのでしょう。勿論それは私も同じですが」
「ただの勘でしかないですけど、魔王様はきっとアーネストの作り出した亜空間に取り残されているのだと思います。普通ならば、術者に出してもらわない限りは出られない。だけど、他でもない魔王様ですからね、きっとそのうちひょっこりと帰ってくるようなそんな気がしますね」
俺の発言を聞いたフランさんは、クスクスと笑い出してしまった。
あれ、俺そんな面白い事を言っただろうか?
「ごめんなさい。何だか、魔族である私たち以上に魔王様の事を信頼しておられて、同時に魔王様の事を理解しておられて、そう考えると、少し可笑しくなっちゃいました。そうですよね、私たちが信じないで誰が魔王様の無事を信じるんですかね」
「何をしんみりしてるんだ?って今度は魔王様に笑われますね」
「そうですね」
今度は二人して笑い合った。
そんな姿を少し離れた所で見ていたリューイが不思議そうに頭を傾げていた。
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