幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第二百二十二話: 精霊界2

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振り向いた先に居たのは、人型サイズになっている精霊のノアだった。
隣に、見知らぬ恐らく精霊だろう、同じく人型サイズの人物がいた。

「ノアじゃないか、久し振りだな。それにしても、ノアが敬語なんて何だか新鮮だな」

ノアは、若干頬を染める。

「しょうがないでしょ。仕来りなんだから!」
「ノアさん、お客様ですよ。親しき仲にも礼儀ありですよ」
「わ、分かってます!」

なるほど、口うるさそうな監視の目があるのね。

精霊の名前は、ククリナさんと言い、ノアの姉貴分的な存在らしい。
どちらも人型で、本当の姉妹の様に見えなくもない。

その後、ノア達に案内されて一際ゴージャスな建物の前へとやってきた。
左右に大きな穴が空いており、時折何やら呻き声が聞こえたかと思うと、そこから炎の渦だったり、竜巻だったり、渦潮だったりと、様々なものが噴き出していて、この場所が恐ろしく危険な場所だと言うのを表しているようだった。

拷問の館とかそんな感じの何かだろうか。何も知らずに近付くと酷い目に遭いそうだな。

「あれは、一体なんですか?」

ジラの疑問も最もだった。

「入れば分かります」

ぱっと見、入り口が見当たらない。
まさか、あの引っ切り無しに魔術を放出している通気口めいた場所から入るんじゃないだろうな。
最悪俺には魔術完全無効があるから問題なく通れはするだろう。だけどみんなは違う。

ククリナさんが建屋の前まで移動する。
徐に何かを唱えると、一瞬にして消えてしまった。

転移か何かか?
不思議そうに伺っていると、

「特殊な転送の術式が施してあるの。あそこの位置まで移動して、クエナ・アル・ノーズと唱えたらいいわ」

姉貴分のククリナさんがいない為か、ノアの口調がいつもの調子に戻っていた。

まずは俺が中へと入る。
今更だが、呪文めいた言葉を喋るのは些か抵抗があるんだよね。
基本、魔術を行使する時に呪文なんて唱えないしな。
恥ずかしさを押し殺して、唱えると景色が暗転した。

真っ暗な中に大小様々な球体が浮いている。
さながらその光景は宇宙と言っても過言では無い。
いや、実際俺自身も宙に浮いてる。
宇宙遊泳気分だ。

暗さを調整しているのか、薄暗い中も何とか部屋全体を見渡す事が出来た。
良く見ると、先に入ったククリナさんの姿も見える。
俺の様にジタバタせずに慣れた様子でその場にじっと佇んでいた。

遅れてジラ、クロ、セリアと最後にノアが、このヘンテコ空間に入ってくる。

ここは一体。

「お集まりの諸君。待たせて悪かったね」

何処からともなく俺たち以外の声が聞こえてくるが、肝心の声元の姿は見えない。
何処となくセリアの元気がないように見えるのは気のせいだろうか?

「紹介が遅れたね、私は精霊王。以後お見知り置きを。折角招待したからね、今日は取って置きの余興を用意したよ。是非楽しんでくれたらありがたいかな」

パチンと指を鳴らしたような音が聞こえたかと思うと、薄暗かった部屋が真っ暗に染まった。
俺には暗視があるはずなのだが、その機能が何故だか働いていない。

部屋の中央に突然小さな小石が出現したかと思うと、打ち上げ花火のように上へ上へと昇っていく。
昇った先にあったのは、これまた小さ小石だった。
互いの小石同士が衝突すると、そこに小さな爆発が起こり、小石が何当分にも砕けて散らばった。
まるで、ホログラムでも見ているようだった。
実際に近場に降り注いた小石にクロが手を伸ばすが、その手をすり抜けてしまった。
何度も何度も掴もうとするが、結果は変わらない。
「むぅぅ」と若干膨れつらになっているクロが可愛いのは言うまでもない。

最初は一つだった小石が無数に現れたかと思うと、同じようにぶつかっては砕けてを繰り返していく。
やがて、破片同士が密集し大きな岩石へと変貌を遂げる。

岩石は、まるで意思を持っているかのように彷徨いながら周りの小さな小石を取り込み次第に大きくなっていき、やがてその表面を薄い靄のようなものでが覆い包んだ。
すると、途端に景色が一変し、薄暗い世界から一転。
今度は、果てしない岩場が広がっているだけの殺風景な風景へと様変わりした。

「今見てもらった小惑星の中に転移したよ」

怪しい声の解説が入る。
小惑星?
やっぱり、さっきのは宇宙の映像を見ていたのか。

360°見渡してもゴツゴツとした岩肌しか見えない。
小さな小石の集合体だけあってか、表面はなだらかではなく、いくつもの隆起した突起が目立ち、それはとても人が歩く事が出来なさそうな程に不規則に歪んでいた。

そうして視界を巡らせていると大地に一人の人物が降り立った。

全身白一色の服を着た人物で、後ろに真っ白な翼を生やした年配の老人だ。
同様に顔にも白いフサフサの豊かな髭を生やしている。
手には錫杖を持っていて、それを振りかざした瞬間、周り全体を淡く白い光が包み込む。
光の濃さはどんどん増していき、やがて光色一色で何も見えなくなった。

やがて光が晴れると、そこに広がる光景は驚くべきものだった。
ゴツゴツとした岩肌しかなかったにも関わらず、そこには青々と生い茂る豊かな自然と広大な海が広がっていた。

複数人の人が、種族毎に別れて二人一組で集まっていた。
頭の上に獣人特有の耳や魔族特有のツノが生えている。
この世界の住人達なのだろうか。
手を取り合い、輪になっている。
その中心には、最初にいた豊かな髭を生やした老人だ。
その光景のまま、すーっと、抜けるように目の前の映像めいたものが消え、部屋の中の風景になった。

「楽しんでもらえただろうか? 今キミ達に見てもらったのは、この世界の誕生秘話さ。ユウくん。キミならば興味があると思ってね」

背後から聞こえた声に振り向くと、端正な顔立ちの青年が立っていた。
しかし、何故俺の名前を知っているのだろうか。

その姿を見るや否や、ククリナさん、ノア、セリアが頭を下げた。
それを見た俺も慌てて、頭を下げる。
更にそれを見たジラとクロも頭を下げていた。

「畏まらなくて結構だよ。呼びつけたのはむしろ私の方だしね」

いいからいいから楽にしてと言わんばかりに背中をバシバシと叩く青年。
精霊達の態度から察するに、自己紹介は無くとも目の前の人物の正体は容易に想像できる。
この目の前の若々しい青年こそ、セリアの父親でもある精霊王だろう。
にしても、姿格好は人族と変わらない。
精霊っぽさを全く感じない。

そもそも本来、精霊達は固有の形を持っていない種族だ。
セリアやノアがたまたま人族に近い姿をしているだけで、実際はまぁ、ちみっこなんだけど、中には獣に近い獣人にしか見えない姿をしている者や道中に出会ったような巨人の姿をした者まで様々だった。

「キミが考えている事を当ててみようか?」

ニヤリとした眼差しでそんな事を言うものだから、速攻でお断りしておいた。

「初めまして、冒険者をしているユウと言います。で、こっちが、仲間のジラとクロです」

俺の自己紹介に合わせて二人がぺこりとお辞儀する。

「ご丁寧にありがとう。私は、ここ精界で王をしているトゥエルと言う。よろしく頼むよ。そして、単刀直入に言うと、キミの事が嫌いだ」

は?
初対面で何を言うかと思えば…

「ちょっとお父様、ユウさんの事を悪く言うといくらお父様でも許さないですよ!」

俺の代わりにセリアが抗議する。

「既にセリアから聞いているとは思うが、セリアは私の娘だ。その娘が誰かの宿主、ましてや人族の年若い青年などと聞いたときは煮え繰り返る思いで一杯だったよ。当の本人は姿を眩まし、行方が分からない始末だったしね。本当に困った子だ」

なるほど、だからセリアはここに帰ってきたくなかったんだな。
しかし、一方的に言われるだけというのは、こっちとしても腹が立つわけで・・それにまるで娘を嫁に出すみたいな言い方はやめて欲しい。
少し反論してやるか。

「宿主になるならないは、セリア自身が決めた事です。親だからって、娘を束縛するのは――」
「皆まで言わずともよい。私は、私自身が認めた存在でない限り娘をやるつもりはない」
「だからっ…まるで俺がセリアを嫁に貰うみたいな言い方はやめて下さい。俺とセリアはそんな関係じゃありませんから!」
「生きとし生けるものの宿主になるという事は、嫁に出す事と同じ事なのだよ」

まじかよ。
って、セリア、なぜ顔を赤くしてるんだ。

「キミに決闘を申し込む!キミが娘にとって相応しい存在かどうか私自ら見定めてくれよう」
「すいません、お断り――」
「問答無用!」

またしても景色が変わり、室内から何処かの荒野めいた場所へと移動していた。
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