幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第二百三十八話:元老院ゲンブvs上位人族(ハイヒューマン)

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「これは面倒だな」

感嘆の声を漏らすのは、元老院が1人、ゲンブだった。

シリュウの展開した結界内に居たのは、ゲンブともう1匹・・

全長40mはあろうかと言う成竜だった。

「まさか人化出来る竜人族など、噂には聞いていたが実際にこの目で見れるとはな」

成竜は、ゲンブを睨みつけると、咆哮を上げる。

「小サキ者ヨ、我ノ前二阻ムナラバ死ヲクレテヤル」

ゲンブは虚空より一振りの剣を取り出した。
刀身の長さは10mは有るだろうか。
凄まじい風切り音を奏でながら長刀を数回振るうと、肩に担ぐ。
まるで短剣を振るっているかのような長刀らしからぬ速度にもしも周りに他者がいればあまりの異様な光景に度肝を抜かれていただろう。

「さて、竜狩りと行こうか」

成竜に向かって構えると、その場から消えた。
同時に成竜は灼熱の吐息を吐き捨てた。
先程までゲンブのいた場所が、吐息によりドロドロに溶けていた。
喰らえばひとたまりもないだろう。

「遅いな」

次の瞬間には、成竜の巨大な首を一刀両断していた。
巨大な頭が地面へと落下する衝撃音だけを残して。

意外と呆気ない…いや、ん、なんだあれは?

異様な光景と気配を察知したゲンブは、横たわる成竜から一旦距離を置いた。

その視界の先に居たのは、両断された巨大な頭の中から何かが出てきている姿だった。

「あっちゃー、全然ダメだね。いやでも、ボクが操りきれなかったって事かな?本来ならこうはならなかったはず。ごめんねー」

一体なんだあいつは…

衣服を一切身につけていない人族と思しき少年が現れた。
見た目的には10代半ばの頃だろう。

「何者だ貴様は」
「ん、ボク?」
「この場に他に誰がいる」

少年は周りを見渡すと、大きく頷いた。

「あーそだね。ボクは上位人族ハイヒューマンさ」

なに? 上位人族ハイヒューマンだと?

2000年以上の時を生きているゲンブは、聴きなれぬ上位人族《ハイヒューマン》という言葉に思い当たる節があった。

「古の時代により滅亡したはずの古来種がなぜこの場にいる」
「それはボクにも分からないね。ずーっと昔にコイツの身体の中にいる時に死んじゃったみたいなんだよね。だけど、最近になって復活したんだ」

死神が生き返らせた竜の中にたまたま寄生していた上位人族ハイヒューマンがいたと言うのか?
死神は知っていたのか?
いや、今はそんな事はどうでもいい事だ。

上位人族ハイヒューマン…。
俺の知っている情報が正しければ、成竜なんかよりもよっぽど厄介な存在だ。
噂だけだと信じたい所だが。試して見るか。

先に動こうとした瞬間、長刀を持った左手が長刀毎宙を舞う。

一瞬、起こった出来事に理解が追いつかず、その場から動く事が出来なかった。
自身の舞った腕が視界に入る。

攻撃された事すら全く察知出来なかった事に、僅かながら恐怖した。

宙を舞う左手を右手で掴むと、そのまま、まるで脱着式のパーツのように元ある場所へと嵌めて、何事も無かったかのように長刀を構える。

「貴様、心を読むか…」
「そうだよー」

やはりそうか、先程一歩踏み出そうとした段階で飛ばされたからもしやと思えば…。

それと、先程の攻撃、速すぎて見えなかった訳じゃないな。

「ご名答!」

上位人族ハイヒューマンは、パチパチと拍手していた。

「そうさ、時間停止だよ」

噂は本当だったか。
上位人族ハイヒューマンの中には時間を停止させる事が出来る者がいると聞く。
止めていられる時間は、力量次第だったと言う事だが、恐らく数秒。だが数秒もあれば簡単に首すらも落とせるだろう。

我らが魔王様ですら使えぬ時間停止。
まさかこんな形でそれを持った者と戦う事になろうとはな。
おまけにこちらが考えている事は全て相手に筒抜けとくれば、圧倒的に不利なのはこちら…か。

今更この命、惜しくも何ともないが、奴をここから出す事は出来んな。

「ふーん、道連れを狙うって事かな?」
「・・・」
「でも出来るかな?今すぐにだってキミの頭を落とすくらい訳ないんだけど?」
「やれるものならやってみるがいい」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

上位人族ハイヒューマンは、5000年以上前に死に絶えた種族だった。
元々個体数が少なく、全盛期でも100人程度程しかいなかった。

彼等の誕生は、とある神の悪戯だった。

当時の人族は他種族からみても圧倒的に劣勢の立場に立たされていた。
そんな人族側を救うべく、一人の神が特異な存在として上位人族ハイヒューマンなるべく存在を創生した。
ある一時期、ある場所において、人族から産まれてくる腹の子を入れ替え、上位人族《ハイヒューマン》が産まれてくるように仕向けたのだ。
彼等は、普通の人族とは異なり、産まれてすぐに立って歩き、言葉も喋れたと言う。
成長速度も本来成人となる16歳の身体つきになるまでに僅か5年程と言う、驚異的なスピードだ。
知識は優れているが、年相応の子供っぽい性格の者が多かった。
驚くべきは人族とは比べ物にならない身体能力と、それぞれが別々に特異な能力を持っていた。

ある者は、天候を自由自在に左右したり、ある者は、ありとあらゆる魔術を使う事が出来たり、ある者は時を止めたり、はたまた別次元へと自由に行き来したりなど、現在においてもそんな力を持つ者は存在しえない。
そんな能力を持った化け物達だった。

その特異な能力と相まって、神の悪戯と呼ばれる真の所以は、その圧倒的なまでの戦闘力だった。
その当時、地界で勢力を伸ばしつつあった狼人族《ルーヴ》達の精鋭勢力総勢1500人を僅か10人足らずでたった数時間で蹴散らしてしまったのがきっかけだった。

更には神の意図とは違い、上位人族ハイヒューマン達は、自分達は神に選ばれた特別な存在だとし、共に手を取るべき人族を劣等種扱いした。
親でさえも敵対の意を示した。

これに激昂した神々達は、上位人族ハイヒューマンの寿命を僅か10年で終わるように遺伝子配列を改ざんし、更には子孫を残せないように手を加えた。

どんなに強くても寿命10年。
成人してからでは5年程しかなく、いかに彼等が強大な力を有していようと、僅か5年の寿命では出来る事は自ずと限られてくる。

彼等にとって酷なのは、予め自らの寿命を知っていれば、其れ相応の行動をしたであろう。

だが、彼等に知らされる事はなかった。

先に生まれた者達が寿命を全うし、次々と倒れていく中、それが寿命によるものとは誰一人疑わずに、ついには全員死んでしまった。

しかし、神すら知り得なかった例外が3つだけ存在した。

月日は流れて5000年以上の時を経て、1人の上位人族ハイヒューマンが復活を遂げてしまった。
それが、今ゲンブと対峙している、アスタロス。
復活させた当の本人であるラドルーチでさえ、まさか竜の中にそんな化け物が入っていようとは思いもしなかった。

そしてもう一人は、不死の王ノーライフキングと呼ばれているスイ。
封印と復活を経て現代まで生き延びていたが、ユウにより消滅させられた。
しかし、彼もまた上位人族ハイヒューマンと呼ばれている存在だった。

そして、最後の一人……メルキオス。

彼女は、もう少し後の話で登場する。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

先に動いたのはゲンブだ。
先程、成竜を両断した時よりも速くその太刀を振るった。
しかし、凄まじい速度でもアスタロスの桁違いの反応速度で難なく時間停止を発動した。
目の前まで迫っていたゲンブの首に手を掛ける。

「無駄だって言ったのにね。バイバイ」

いとも簡単に胴体から首が切断された。

効果が切れ、止まっていた時が動き出す。
アスタロスはそのまま背を向き歩き出した。

1秒、2秒と経過するが、地面に倒れ伏せる音が聞こえてこない事に違和感を感じ、すぐに振り向いた。

振り向いた先で何やら視界が回転し反転し、地面へと転がり落ちた。

「あれ? なんで? 生きてるの?」

視界の端の方に確かに見える、ゲンブの五体満足の姿。
斬り落としたはずのその首は確かに繋がっていた。

「実体を伴った人形を使っただけの事」

自らと全く同じ人形を作り出し身代わりにしただけの事。
当の本人は姿を隠し、隙が出来るのを狙っていた。

デタラメな能力を持っているが故の油断。
しかし、ゲンブが勝利するには相手の油断を狙う以外に方法がなかったのも事実。

「なんだ。騙された訳か」
「古の存在よ。もう眠るがいい」


そのまま右拳に魔力を込め、転がり落ちた頭目掛けて渾身のストレートをお見舞いする。

位人族ハイヒューマンと言えど、頭を破壊されれば終わりだろう。
性格が幼稚だったのが幸いしたな。
出なければ負けていたのはこちらだっただろう。

その後、残った身体も跡形もなく焼き尽くした。
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