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第二十七話:エルフの里での生活8(事件の終焉)
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突然の衝撃波に俺以外の誰も反応する事が出来ず、皆が後方に飛ばされてしまった。
俺は、衝撃波が放たれる前の刹那の時間でエレナの前まで行き、彼女を庇う姿勢を取り、衝撃波をやり過ごした。
すぐに周りを見渡したが、どうやら今の一撃で何人かは気絶してしまっているようだ。
「怪我はないか?」
「はい、ありがとうございます」
「ここは危険だから離れているんだ」
そう言って、廃屋があった場所を睨みつける。
未だに土煙が上がっており、まだ肉眼での視認が出来ないでいた。
レーダーには確かにモンスター2匹の赤い点が確認出来る。
そして次第に土煙が晴れ、2匹の正体が露わとなる。
「な、なんだあれは・・」
声を発したのは、俺ではなく、エルフの兵士だった。
恐らく、この、近郊に出現するモンスターではないのだろう。
名前「名もなき者」
レベル43
種族:魔族
弱点属性:聖
スキル:オーロラシェル、金縛りLv4、衝撃波Lv4
名前「名もなき者」
レベル51
種族:魔
弱点属性:聖
スキル:重力Lv2、次元移動、レーザーガンLv3、ブラックホールLv2
明らかにこいつらは、異形の形をしていた。
全身真っ黒な身体で、額にはツノのような物を生やしており、背中には翼らしきものが生えていた。
両者の違いは、ツノが1本なのか2本なのかだけだ。
俺のように相手の情報が分からなくても、皆、種族は分かっているようだった。
恐らく、周知されている魔族のデフォルトがあの姿なのだろう。
「ま、魔族だっ!」「魔族が現れたぞ!!」
エルフ、ダークエルフの両名から警戒の声が発せられる。
確かにLvは高いが、ここにいるメンツも強者揃いだけあって、逃げ出すものは誰一人いなかった。
聖職者が手際よく、負傷者の傷を癒していく。
俺は、よほど危険な局面にならない限りは、力を温存するつもりだった。
即座にソニアさんが指示を出していく。
この場に居る戦闘職で尚且つ戦える人数は俺を含めて8人だ。
4vs1で戦うことになり、俺はツノが1本あるLvの低い方が担当となった。
そして戦闘を開始する。
剣士2人が剣を振り上げて前へと走っていく。
いい勢いで走っていったと思ったら、急に動かなくなってしまった。
どうやら、金縛りを喰らってしまったようだ。
一瞬魔族の目が金色に光っていた気がしたが、恐らくあれがそうなのだろう。
俺はすぐに状態回復を使い、剣士2人の金縛りを解除する。
前衛が抜けてしまった穴を埋めるべく、その横で精霊術師が、Lv38の氷色のトカゲを召喚していた。
その際、クリスタルのような物を地面に投げつけて召喚している。
パリンッという音が辺りに響く。
俺は、火撃を相手に向かって連射していく。
もう一人のメンツは、エルフの狩人だ。
遠距離射撃を高速で行っている。
オーロラシェルの影響で、俺の魔術が威力減になっていたのだが、回復した剣士も含めて5人でフルボッコにし、徐々に魔族のHPを削っていき、結果5分程度で倒すことが出来た。
あまりにも呆気ない結果に少々不安が残る。
驚いたのは、倒された魔族が一瞬で黒い闇に包まれて、俺が尾行していたダークエルフへとその姿を変えていた事だった。
既に息は無かった。
一体どういう事なのだろうか。
もう片方の魔族も、ほぼ同じタイミングで倒されていた。
同様に、ダークエルフの姿となっている。
この場にいる誰も、その答えを出せる者はいなかった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今俺は、エルフの王からの呼び出しで王宮を訪れていた。
魔族を倒してから既に3日が経過している。
隣には、ダークエルフの王であるソニアさんと、その護衛2人と、エレナだった。
前には、エルフの王のロイドさん、王妃のミリハさん、教皇のルイスさんだ。
この3日間で、ガリム卿はダークエルフとの密会の事実を認め、現在牢獄に幽閉されている。
教皇を決める選挙は、事態が収束するまで延期という事になっていた。
それよりも前にガリム卿の抜けた元老院の穴埋めをする必要があるそうだ。
今俺たちがこの場にいるのは、同盟を結ぶ為に呼ばれている。
そう、エルフとダークエルフの両種族の同盟を結ぶのだ。
実際に、決定するのはまだ先の事なのだが、両種族がお互いの里を行き来するのは、すでに可能となっていた。
昨日あたりから、エルフの里の中でダークエルフの姿をちらほらと見かけるようになっている。
「ユウ殿にはエルフとダークエルフの懸け橋となってくれた事に感謝している」
俺自身、元々そういうつもりはなかったのだが、結果的にそうなってくれた事が何より嬉しい。
だって、1000年以上も昔の些細(ささい)な切っ掛けで、以降絶縁状態なんて勿体ないじゃないか。
俺の居た元の世界でも戦争はある。
しかし、このファンタジーの世界でも種族間の争いなんて、出来る事ならば根絶したいと思っていた。
自分に出来ることなど、たかが知れている。
だが、争いを無くすことが出来るならば、精一杯の努力はしたい。
今回の件は、その為の第一歩となるだろう。
ほぼ丸一日に渡る同盟についての話し合いも終え、屋敷へと戻った。
屋敷へ帰るな否やユイとクロが飛びついてくる。
「お兄ちゃんお帰りなさい!」
「ユウ、お帰り」
食事は既に済ませていた為、ザンバドさんとルナさんに挨拶だけし、自室へと入った。
それにしても、当初クロの話し方には、ぎこちなさがあったのだが、今では流暢(りゅうちょう)に話している。
恐らく、俺がいない間にユイに色々と教わったのだろう。
さすがは、お姉ちゃんだな。
明日は、3人で一緒にダンジョンに潜る約束をしていた。
この3日間色々あったが、結局あの魔族の正体は分からなかった。
朝になり、俺たちは早速ダンジョンに潜る準備をする。
事前にザンバドさんにダンジョンに数日潜ることを話していた為、なんと徹夜で料理を作ってくれていた。
彼には、ストレージの事を、何でも入る魔導具という事で話をしていたのだ。
礼を言って、ストレージの中に準備してくれた料理を収納していく。
「よし、出発だな」
3人で屋敷を出て、ダンジョンの前までやってきた。
ここでも、入る前にキッチリと申請書の記載が必要だった。
取り敢えず適当に3日間という事にしておく。
今回はレベル上げが目的ではなく、最下層まで潜る事だ。
前回と違い、今回はクロもいるので、より一層俺の仕事がない。
全て2人で片付けてしまっている。
ダンジョンに入る時に「お兄ちゃんはピンチになるまでは手出さないでよね!約束だよ!」
とまで、ユイに言われていたので、尚の事手を出すことが出来ない・・。
気付けば一日で地下20階の安全層まで来ていた。
前回のダンジョンの最下層は30階だったが、今回も同じなのだろうか?
初日は、ここにテントを張り、一夜を過ごす事にした。
ユイが、「お肉お肉!」と騒いでいる。
「今日は2人が頑張ったからな、ユイには肉のフルコースだぞ。クロは好きなだけ吸っていいからな」
「ほんとに!?やったあ!」
「分かった。かぷっ」
俺たち以外誰もいない場所で楽しく食事をとる。
それにしても、エルフ族にはダンジョンはあまり人気がないのだろうか?
ここに至るまでの道中に誰とも出会わなかった。
次の日も俺たちはひたすらに下層を目指していく。
2日目からは俺も参戦し、3人で協力し合って進んでいく。
特に何のイベントも起こらず、29階層まで辿り着いていた。
この階層はかなり狭い。それに敵の反応は1匹だけだった。
どうやら、ラスボスというやつだろうか。
明らかに今までのモンスターよりもレベルが高い。
ていうかデカい・・
名前「アルトロス」
レベル55
種族:竜
弱点属性:なし
スキル:雷撃咆哮Lv3、焔撃咆哮Lv3、氷撃咆哮Lv3、ショックウェイカーLv5
「わーお、大きいね、相手にとって不足はない!」
「食べごろサイズ」
「あはは、頼もしいな。だが、油断は禁物だぞ」
2人がコクリと頷き、散開する。
アルトロスは、器用にも炎と氷と雷を口から吐いている。
その迫力は相手のサイズも相まって圧巻だった。
ちょこまかと動きまわるので、その度に地響きが襲ってくる。
迫力はかなりあるはずなんだけど、ユイもクロも気後れせずに戦っている。
恐怖を抱いているのは俺だけ?
ユイもクロも、もちろん俺も相手の攻撃を躱しつつ、徐々に相手のHPを削っていく。
俺は、2人の邪魔にならないように大魔法は避け、風撃(ウィングカッター)で応戦する。
クロは、自身の爪を鍵爪のように伸び縮みすることが可能だ。
それを巧みに使い相手を切り刻んでいる。
それにしても、戦闘中のクロは実に楽しそうな表情をする。
ユイもそういう気があるのだが、クロはなんというか、それが生きがいのような、そんな感じに見える。
魔族という種族特有の性質なのだろうか?
相手のレベルは2人よりも高かったが、終始危なげなく倒す事が出来た。
その際ユイが何かの武器をドロップしたようだ。
名前:ドラゴンダガー
説明:高レベルのドラゴンの牙で作られた短剣。生存していた頃の特性を帯びており、火、氷、雷の3属性を切り替えてその刀身に付与する事が出来る。
特殊効果:3属性エンチャント、敏捷性アップ
相場:金貨100枚
希少度:★★★★☆☆
「それはユイが使っていいよ」
見つけたのもユイだしね。
そして30階層に到達した。
やはり、ここが最下層なのだろう。しばらく彷徨ってみたが、更に下へと降りる階段は見当たらなかった。
中央らしき部分にトレジャーボックスが1つあるだけだった。
中を開けて見ると、以前のダンジョンでも見つけた拳大ほどの結晶が入っていた。
名前:クランチダンジョン最深部到達者の証
説明:世界に点在する24個のダンジョンの内の一つクランチダンジョンの最深部に到達した者に贈られる証。全24種集めると何かが起こる。
特殊効果:破壊不可
やはり、全てのダンジョンに存在しているのだろうか?
さてと、目標は達成したので、地上に戻るか。
真面目に歩いて戻るつもりもない。
俺は、ポータルリングで屋敷へと一瞬の内にワープする。
後で、ダンジョン入口に行き、戻った事だけ告げておく必要はあるけどね。
当初の予定では3,4日は潜る予定だった為、こんなに早く制覇して戻ってきたことにザンバドさんは驚いていた。
夕飯時にダンジョンでの2人の活躍ぶりをザンバドさんたちに話した。
自慢の妹たちなんだから、やっぱり自慢したくなるよね。
それに考えている事があった。
ここ数日中にこのエルフの里を出ようと思っているのだ。
この里での目的も果たしたしね、明日エレナに言おうと思っている。
その日の夜に、クロとユイに打ち明けた。
「エレナも一緒?」
「どうだろうか、一応誘ってみるつもりだけど。王女だからな・・難しいかもしれないな」
彼女は、エルフの王女だ。恐らく、一緒に冒険する事は出来ないだろう。
次の日、俺は王宮を訪れていた。
正確には、王宮にいるエレナをだ。
「そうですか・・・いつかは行ってしまわれると思っていましたけど・・」
ガックリと肩を落として項垂れている。
「俺たちと一緒に冒険しないか?」
「ありがとうございます。私もユウ様と一緒に冒険をしたいのですが、今はこの里でやらなければならない事もありますので」
エレナはニコッと微笑み返してくれた。
やけにアッサリしている。
俺はてっきり、「絶対だめ!」と反対されると思っていたのだが。
だがその答えはすぐに分かった。
「許可します。けども、一つ約束して下さいね、ユウ様」
彼女は尚も笑顔を絶やさないが、しかしなぜだろう、その笑顔が無性に怖く感じるのは・・。
「最低でも1週間に1回は、私に会いに戻ってくる事!私知ってるんですよ。ユウ様が一瞬で行き来出来る魔導具をお持ちなのを」
ははは・・アッサリと許してくれたのは、そういう事だったのか。
断れそうな感じではなかったので、俺はその要件を飲んだ。
ポータルのメモ座標まで指定されてしまった。
王宮のしかもエレナの部屋だった。
それって、大丈夫なのだろうかね・・。いろんな意味で・・
「あ、あと、これをユウ様に渡しておきます」
エレナが手渡してきたのは、なんと、精霊王の指輪だったのだ。
名前:精霊王の指輪
説明:この指輪を指にはめた者に命令された精霊は、抗う事が出来ない。命令の上書きは可能。
相場:金貨???枚
希少度:★★★★★★
希少度MAXなんて初めて見たぞ。
「これは、人が持っていて良い物じゃないと思うの。あるべき場所へ返す必要があるわ。何故だか、ユウ様だったら、いつか精霊王に会えるような気がするの」
「その精霊王っていうのが、どこにいるのか皆目見当がつかないなぁ。セリア知ってるか?」
「知りません」
ん、やけに態度が冷たいな。
「でもセリアが知らないとなると、本当に行き当たりばったりになるな」
「けど、分かったよ。いつか精霊王に会った時に返しておく。それまでは、大事にしまっておくよ」
「はい、お願いしますね」
俺のいつか訪れたい目的地メモに書き加えておいた。
そして、ゆっくりとこの里を出る準備をする。お世話になった人に挨拶周りをした。初めて出来た弟子も出発前に見ておこうと思う。
俺は、衝撃波が放たれる前の刹那の時間でエレナの前まで行き、彼女を庇う姿勢を取り、衝撃波をやり過ごした。
すぐに周りを見渡したが、どうやら今の一撃で何人かは気絶してしまっているようだ。
「怪我はないか?」
「はい、ありがとうございます」
「ここは危険だから離れているんだ」
そう言って、廃屋があった場所を睨みつける。
未だに土煙が上がっており、まだ肉眼での視認が出来ないでいた。
レーダーには確かにモンスター2匹の赤い点が確認出来る。
そして次第に土煙が晴れ、2匹の正体が露わとなる。
「な、なんだあれは・・」
声を発したのは、俺ではなく、エルフの兵士だった。
恐らく、この、近郊に出現するモンスターではないのだろう。
名前「名もなき者」
レベル43
種族:魔族
弱点属性:聖
スキル:オーロラシェル、金縛りLv4、衝撃波Lv4
名前「名もなき者」
レベル51
種族:魔
弱点属性:聖
スキル:重力Lv2、次元移動、レーザーガンLv3、ブラックホールLv2
明らかにこいつらは、異形の形をしていた。
全身真っ黒な身体で、額にはツノのような物を生やしており、背中には翼らしきものが生えていた。
両者の違いは、ツノが1本なのか2本なのかだけだ。
俺のように相手の情報が分からなくても、皆、種族は分かっているようだった。
恐らく、周知されている魔族のデフォルトがあの姿なのだろう。
「ま、魔族だっ!」「魔族が現れたぞ!!」
エルフ、ダークエルフの両名から警戒の声が発せられる。
確かにLvは高いが、ここにいるメンツも強者揃いだけあって、逃げ出すものは誰一人いなかった。
聖職者が手際よく、負傷者の傷を癒していく。
俺は、よほど危険な局面にならない限りは、力を温存するつもりだった。
即座にソニアさんが指示を出していく。
この場に居る戦闘職で尚且つ戦える人数は俺を含めて8人だ。
4vs1で戦うことになり、俺はツノが1本あるLvの低い方が担当となった。
そして戦闘を開始する。
剣士2人が剣を振り上げて前へと走っていく。
いい勢いで走っていったと思ったら、急に動かなくなってしまった。
どうやら、金縛りを喰らってしまったようだ。
一瞬魔族の目が金色に光っていた気がしたが、恐らくあれがそうなのだろう。
俺はすぐに状態回復を使い、剣士2人の金縛りを解除する。
前衛が抜けてしまった穴を埋めるべく、その横で精霊術師が、Lv38の氷色のトカゲを召喚していた。
その際、クリスタルのような物を地面に投げつけて召喚している。
パリンッという音が辺りに響く。
俺は、火撃を相手に向かって連射していく。
もう一人のメンツは、エルフの狩人だ。
遠距離射撃を高速で行っている。
オーロラシェルの影響で、俺の魔術が威力減になっていたのだが、回復した剣士も含めて5人でフルボッコにし、徐々に魔族のHPを削っていき、結果5分程度で倒すことが出来た。
あまりにも呆気ない結果に少々不安が残る。
驚いたのは、倒された魔族が一瞬で黒い闇に包まれて、俺が尾行していたダークエルフへとその姿を変えていた事だった。
既に息は無かった。
一体どういう事なのだろうか。
もう片方の魔族も、ほぼ同じタイミングで倒されていた。
同様に、ダークエルフの姿となっている。
この場にいる誰も、その答えを出せる者はいなかった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今俺は、エルフの王からの呼び出しで王宮を訪れていた。
魔族を倒してから既に3日が経過している。
隣には、ダークエルフの王であるソニアさんと、その護衛2人と、エレナだった。
前には、エルフの王のロイドさん、王妃のミリハさん、教皇のルイスさんだ。
この3日間で、ガリム卿はダークエルフとの密会の事実を認め、現在牢獄に幽閉されている。
教皇を決める選挙は、事態が収束するまで延期という事になっていた。
それよりも前にガリム卿の抜けた元老院の穴埋めをする必要があるそうだ。
今俺たちがこの場にいるのは、同盟を結ぶ為に呼ばれている。
そう、エルフとダークエルフの両種族の同盟を結ぶのだ。
実際に、決定するのはまだ先の事なのだが、両種族がお互いの里を行き来するのは、すでに可能となっていた。
昨日あたりから、エルフの里の中でダークエルフの姿をちらほらと見かけるようになっている。
「ユウ殿にはエルフとダークエルフの懸け橋となってくれた事に感謝している」
俺自身、元々そういうつもりはなかったのだが、結果的にそうなってくれた事が何より嬉しい。
だって、1000年以上も昔の些細(ささい)な切っ掛けで、以降絶縁状態なんて勿体ないじゃないか。
俺の居た元の世界でも戦争はある。
しかし、このファンタジーの世界でも種族間の争いなんて、出来る事ならば根絶したいと思っていた。
自分に出来ることなど、たかが知れている。
だが、争いを無くすことが出来るならば、精一杯の努力はしたい。
今回の件は、その為の第一歩となるだろう。
ほぼ丸一日に渡る同盟についての話し合いも終え、屋敷へと戻った。
屋敷へ帰るな否やユイとクロが飛びついてくる。
「お兄ちゃんお帰りなさい!」
「ユウ、お帰り」
食事は既に済ませていた為、ザンバドさんとルナさんに挨拶だけし、自室へと入った。
それにしても、当初クロの話し方には、ぎこちなさがあったのだが、今では流暢(りゅうちょう)に話している。
恐らく、俺がいない間にユイに色々と教わったのだろう。
さすがは、お姉ちゃんだな。
明日は、3人で一緒にダンジョンに潜る約束をしていた。
この3日間色々あったが、結局あの魔族の正体は分からなかった。
朝になり、俺たちは早速ダンジョンに潜る準備をする。
事前にザンバドさんにダンジョンに数日潜ることを話していた為、なんと徹夜で料理を作ってくれていた。
彼には、ストレージの事を、何でも入る魔導具という事で話をしていたのだ。
礼を言って、ストレージの中に準備してくれた料理を収納していく。
「よし、出発だな」
3人で屋敷を出て、ダンジョンの前までやってきた。
ここでも、入る前にキッチリと申請書の記載が必要だった。
取り敢えず適当に3日間という事にしておく。
今回はレベル上げが目的ではなく、最下層まで潜る事だ。
前回と違い、今回はクロもいるので、より一層俺の仕事がない。
全て2人で片付けてしまっている。
ダンジョンに入る時に「お兄ちゃんはピンチになるまでは手出さないでよね!約束だよ!」
とまで、ユイに言われていたので、尚の事手を出すことが出来ない・・。
気付けば一日で地下20階の安全層まで来ていた。
前回のダンジョンの最下層は30階だったが、今回も同じなのだろうか?
初日は、ここにテントを張り、一夜を過ごす事にした。
ユイが、「お肉お肉!」と騒いでいる。
「今日は2人が頑張ったからな、ユイには肉のフルコースだぞ。クロは好きなだけ吸っていいからな」
「ほんとに!?やったあ!」
「分かった。かぷっ」
俺たち以外誰もいない場所で楽しく食事をとる。
それにしても、エルフ族にはダンジョンはあまり人気がないのだろうか?
ここに至るまでの道中に誰とも出会わなかった。
次の日も俺たちはひたすらに下層を目指していく。
2日目からは俺も参戦し、3人で協力し合って進んでいく。
特に何のイベントも起こらず、29階層まで辿り着いていた。
この階層はかなり狭い。それに敵の反応は1匹だけだった。
どうやら、ラスボスというやつだろうか。
明らかに今までのモンスターよりもレベルが高い。
ていうかデカい・・
名前「アルトロス」
レベル55
種族:竜
弱点属性:なし
スキル:雷撃咆哮Lv3、焔撃咆哮Lv3、氷撃咆哮Lv3、ショックウェイカーLv5
「わーお、大きいね、相手にとって不足はない!」
「食べごろサイズ」
「あはは、頼もしいな。だが、油断は禁物だぞ」
2人がコクリと頷き、散開する。
アルトロスは、器用にも炎と氷と雷を口から吐いている。
その迫力は相手のサイズも相まって圧巻だった。
ちょこまかと動きまわるので、その度に地響きが襲ってくる。
迫力はかなりあるはずなんだけど、ユイもクロも気後れせずに戦っている。
恐怖を抱いているのは俺だけ?
ユイもクロも、もちろん俺も相手の攻撃を躱しつつ、徐々に相手のHPを削っていく。
俺は、2人の邪魔にならないように大魔法は避け、風撃(ウィングカッター)で応戦する。
クロは、自身の爪を鍵爪のように伸び縮みすることが可能だ。
それを巧みに使い相手を切り刻んでいる。
それにしても、戦闘中のクロは実に楽しそうな表情をする。
ユイもそういう気があるのだが、クロはなんというか、それが生きがいのような、そんな感じに見える。
魔族という種族特有の性質なのだろうか?
相手のレベルは2人よりも高かったが、終始危なげなく倒す事が出来た。
その際ユイが何かの武器をドロップしたようだ。
名前:ドラゴンダガー
説明:高レベルのドラゴンの牙で作られた短剣。生存していた頃の特性を帯びており、火、氷、雷の3属性を切り替えてその刀身に付与する事が出来る。
特殊効果:3属性エンチャント、敏捷性アップ
相場:金貨100枚
希少度:★★★★☆☆
「それはユイが使っていいよ」
見つけたのもユイだしね。
そして30階層に到達した。
やはり、ここが最下層なのだろう。しばらく彷徨ってみたが、更に下へと降りる階段は見当たらなかった。
中央らしき部分にトレジャーボックスが1つあるだけだった。
中を開けて見ると、以前のダンジョンでも見つけた拳大ほどの結晶が入っていた。
名前:クランチダンジョン最深部到達者の証
説明:世界に点在する24個のダンジョンの内の一つクランチダンジョンの最深部に到達した者に贈られる証。全24種集めると何かが起こる。
特殊効果:破壊不可
やはり、全てのダンジョンに存在しているのだろうか?
さてと、目標は達成したので、地上に戻るか。
真面目に歩いて戻るつもりもない。
俺は、ポータルリングで屋敷へと一瞬の内にワープする。
後で、ダンジョン入口に行き、戻った事だけ告げておく必要はあるけどね。
当初の予定では3,4日は潜る予定だった為、こんなに早く制覇して戻ってきたことにザンバドさんは驚いていた。
夕飯時にダンジョンでの2人の活躍ぶりをザンバドさんたちに話した。
自慢の妹たちなんだから、やっぱり自慢したくなるよね。
それに考えている事があった。
ここ数日中にこのエルフの里を出ようと思っているのだ。
この里での目的も果たしたしね、明日エレナに言おうと思っている。
その日の夜に、クロとユイに打ち明けた。
「エレナも一緒?」
「どうだろうか、一応誘ってみるつもりだけど。王女だからな・・難しいかもしれないな」
彼女は、エルフの王女だ。恐らく、一緒に冒険する事は出来ないだろう。
次の日、俺は王宮を訪れていた。
正確には、王宮にいるエレナをだ。
「そうですか・・・いつかは行ってしまわれると思っていましたけど・・」
ガックリと肩を落として項垂れている。
「俺たちと一緒に冒険しないか?」
「ありがとうございます。私もユウ様と一緒に冒険をしたいのですが、今はこの里でやらなければならない事もありますので」
エレナはニコッと微笑み返してくれた。
やけにアッサリしている。
俺はてっきり、「絶対だめ!」と反対されると思っていたのだが。
だがその答えはすぐに分かった。
「許可します。けども、一つ約束して下さいね、ユウ様」
彼女は尚も笑顔を絶やさないが、しかしなぜだろう、その笑顔が無性に怖く感じるのは・・。
「最低でも1週間に1回は、私に会いに戻ってくる事!私知ってるんですよ。ユウ様が一瞬で行き来出来る魔導具をお持ちなのを」
ははは・・アッサリと許してくれたのは、そういう事だったのか。
断れそうな感じではなかったので、俺はその要件を飲んだ。
ポータルのメモ座標まで指定されてしまった。
王宮のしかもエレナの部屋だった。
それって、大丈夫なのだろうかね・・。いろんな意味で・・
「あ、あと、これをユウ様に渡しておきます」
エレナが手渡してきたのは、なんと、精霊王の指輪だったのだ。
名前:精霊王の指輪
説明:この指輪を指にはめた者に命令された精霊は、抗う事が出来ない。命令の上書きは可能。
相場:金貨???枚
希少度:★★★★★★
希少度MAXなんて初めて見たぞ。
「これは、人が持っていて良い物じゃないと思うの。あるべき場所へ返す必要があるわ。何故だか、ユウ様だったら、いつか精霊王に会えるような気がするの」
「その精霊王っていうのが、どこにいるのか皆目見当がつかないなぁ。セリア知ってるか?」
「知りません」
ん、やけに態度が冷たいな。
「でもセリアが知らないとなると、本当に行き当たりばったりになるな」
「けど、分かったよ。いつか精霊王に会った時に返しておく。それまでは、大事にしまっておくよ」
「はい、お願いしますね」
俺のいつか訪れたい目的地メモに書き加えておいた。
そして、ゆっくりとこの里を出る準備をする。お世話になった人に挨拶周りをした。初めて出来た弟子も出発前に見ておこうと思う。
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激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
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以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
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