28 / 242
第二十八話:新たなる世界へ
しおりを挟む
とうとう旅立ちの朝がやってきた。
今俺たちは、エルフの里の門の前にいる。
そんな俺たちの見送りに来てくれた人々の姿が見える。
エレナと弟子のミアと、その兄アスト、執事のザンバドさんに、メイドのルナさん、なぜか王妃のミリハさんまで・・
「また来てくださいねユウ様」
あれ、「1週間に1回は顔を見せる事!」って言ってたのに。
耳元に小声でエレナが話しかける。
「週一の密会は私とユウ様だけの秘密ですよ」
あ、そういう事ね。
エレナと交代するように、ミリハさんも俺の耳元で囁いてきた。
「エレナだけではなく、私にも会いに来てね」
ってバレてるじゃないか!
前にもこんな事があったが、もしかしたらミリハさんは人の心の中が読めるんじゃないだろうか?
機会があれば聞いてみるとしよう。
俺はみんなに手を振り、エルフの里を後にする。
エレナに馬車を準備すると言われていたのだが、断っていた。
たまには、ゆっくりと3人で景色の変化を感じながら歩きたかったのだ。
もちろん、目的地も無くただ歩く訳ではない。
ここから南に行った先に人族の街があるそうだ。
馬車で3日なので、徒歩なら10日以上はかかりそうだが、走ればもう少し早く辿り着けるだろう。
何よりも体育会系の2人は、走りたくてしょうがないお年頃のようだ。
そんなこんなで、新たなる地へと出発したのである。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
エルフの里を出てから、早7日が経過していた。
走ったり、歩いたり、遭遇したモンスターをみんなで倒したり、釣をしたり、見晴らしの良いところでご飯を食べたり、野宿をしたりと、実に楽しく有意義な時間を過ごしていた。
これがほんとの冒険ってやつだよね。
ユイもクロも実に楽しそうだった。
たまには歩くのも良いかと思ったが、やはり馬車の方が楽なのは間違いない。
次に大きな街に寄った時には馬と馬車を購入してもいいかもね。
操縦を覚える必要はあるけども。
道中で、いくつか錬金術に使えそうな薬草の数々をストレージに回収していたので、かなり貯まっていた。
ポーションの材料となる物や、毒消しや麻痺治しの材料まであった。
あとで整理しておこう。
「お兄ちゃん、向こうの方に村が見えるよ」
「お、着いたのか?」
遠視を使い確認する。
確かに遠くの方に村らしきものが見える。
にしても、まだまだ先なんだけど・・・ユイ、お前どんだけ目がいいんだよ。
しかし、あれが目的地なのかどうかは分からない。
エレナに教えてもらったのは、ミノールと村で、人口的には100人程度の小規模な集落だった。
次第に集落が近付いて来る。
そして集落の手前100mくらいの地点に辿り着いた時だった。
「止まれ!」
声を発したのは他でもない俺だ。
2人が驚いた表情をこちらに向けている。
目の前の集落の光景があきらかに異様だったのだ。
人の気配が全く感じられず、何より薄っすらと靄(もや)がかっている。
セリアが俺の中から出てきた。
「どうやら、集落全体が瘴気に侵されているようですね」
「瘴気ってなーに?」
ユイが俺の顔を見る。
いや、俺だって知らないよ。
「たぶん、体に良くないものなんじゃないか」
間違ってはいないだろう。
人の気配は感じられないが、範囲探索自体には複数の反応が確認できる。
「セリア、瘴気を吸い込み続けるとどうなる?」
村人が瘴気の中で苦しんでいるのではないだろうかと考えていた。
「瘴気の濃さにもよりますが、短時間なら問題ありません。長時間となると、身体が麻痺していき、生命力が徐々に奪われていきます。最終的には・・」
セリアは口を紡ぐ。
俺は、恐らく瘴気を浴びてもなんとかなるだろう。
ユイには、バッドステータスを全て無効化してくれるエルフの里で購入したフルリバイバルネックレスを持たせるとして、問題はクロだな。
俺が頭をかかえて悩んでいると、肩越しに座っているセリアが耳元に顔を近付けてくる。
「魔族は瘴気の影響は受けませんよ」
「おお、なんだそうなのか」
って、あれ?
今、口に出していなかったよな?
まるで、俺の心を読んだように実にタイミングがいい。
「はい、読みました」
「な、なんだって・・・・・読めるの?」
「はい、以前は無理でしたが、私とご主人様の繋がりが強くなったのでしょう。念話を使わなくてもお互いの心の中が分かるのは便利ですね」
おいおい、心の中を読まれるなんて、プライバシーも何もあったもんじゃないぞ。訴えてやる!
訴えた所でどうしようもないんだけどね。
「お互いのって、セリアの心情なんて分からないんだけど・・ていうか、ご主人様じゃないからな」
「私は、普段は無心ですので」
「それは、俺の方が一方的に心を読まれるって事じゃないか・・」
「うふふ」
はぁ・・・
まぁ嘆いてもしょうがないか・・。話を戻そうか。
2人が安全なら取り敢えず大丈夫だ。
セリアも俺の中にいれば安全みたいだしね。
俺が先頭で、集落の中に入っていく。
範囲探索には、数人の反応がある。恐らく村人の生存者だろう。
靄がかっており、少し先でも見えない状況だった。
それでもレーダーを頼りに、1人の村人の前まで辿り着いた。
まだ子供のようだ。
容体を確認すると、衰弱、麻痺、毒の3つのバッドステータスになっている。
すぐに治癒と状態回復を使用する。
以前として意識はないままだが、ステータス欄からは、状態異常の項目は消えているので恐らくもう大丈夫だろう。
「大丈夫そう?」
心配そうなまなざしで俺の顔を覗き込むユイ。
「ああ、もう大丈夫だ。さぁ、他の村人も助けるぞ」
「うん!」
俺は、その子を抱えて集落の中へと進む。
道中に何人か倒れている人を見つけては、治癒と状態回復を使用して治療にあたる。
相変わらず意識までは回復しないが、大丈夫だろう。
全員抱えて歩くわけにはいかないので、壁にもたれ掛けさせる程度しか出来なかった。
はやく、この原因となっている正体を突き止めないと、本当に死者が出てしまう。
ていうか、今でもギリギリの状態なのだ。
今の所、俺のステータスに変化はない。
クロももちろんだが、ユイも平気そうだ。
「二人とも何か身体に異常があったらすぐに言うんだぞ」
「うん、分かった。今のところは何ともないかな。少しお腹が減ってるくらい?」
「・・ユイの大物振りには毎度尊敬するよ・・」
「異常ない」
「おう」
そのまま進んで行く。
やがてレーダー反応が6つある建物の前まで来ていた。
外見からするとどうやら教会のようだ。
中へと入る。
中へ入るな否や暖かさと心地良さを感じた。
”結界Lv1を獲得しました”
何かスキルを覚えてしまったが、恐らく獲得したスキルがこのエリア一帯に展開されているのだろう。
そのまま視線を真っすぐに向けると、視界の先に複数の生存者がいることが確認出来た。
この村に入って、意識を失っていない初めての村人だ。
「まだ外に動ける方がおられたのですね。早くこちらへ、この中なら安全ですよ」
名前:リターニア・エストック
レベル:25
種族:人族
職種:聖職者
スキル:治癒Lv2、状態回復Lv2、結界Lv1
この結界の発動者はどうやら彼女のようだ。
しかし、見た目からして、かなり疲労している。
今、この場には俺たち以外に6人いるのだが、かろうじて意識はあるが、皆絶望に伏した顔をしている。
「あんたたち、ミノールの住人ではないわね」
声を発したのは、村人の1人だ。
「ええ、先ほどここに到着した冒険者です。一体この村で何が起こっているんですか?」
「私たちにも分かりません・・。それにこの村に入るともう外に出る事は出来ません、何か強力な結界に阻まれているようです。なので、解決策が分からない以上、いずれ訪れる死を待つだけなんです・・
表情と雰囲気でなんとなく状況は理解したが、外に出れないとはどういう事だろうか。
リタさんと、この場にいる村人の話だと、この瘴気が発生したのは2日ほど前だと言う。
最初は、もっと薄かったので、身体に対する害もほんの少しの違和感程度だったのもあり特に気にしていなかったようだ。
最初に違和感を感じた症状は、息切れや目眩等の軽いものだった。
異変に気が付いたのは今朝の事で、瘴気から逃げようと村人が村から出ようとした時に何かに弾かれて村の外に出れなくなっていたのだ。
既に瘴気が発生してから丸一日が経過していた。
時すでに遅く、ほとんど村人がまともに動く事すら出来ない状態だった。
たまたま教会にいた者だけが、リタさんの結界のおかげで、瘴気の影響を受けずに済んでいるらしい。
だいたいの状況は分かった。
しかし、こうなってしまった原因は誰も分からないようだ。
どちらにしても、まだ外で苦しんでいる者がいるかもしれない。原因も追及する必要がある。
俺は、リタさんに魔力注入を行った。
魔力注入は、物に魔力を付与するだけではなく、生き物にも自身の魔力を分け与える事が出来る。
これで、魔力の枯渇は防げるだろう。
「原因を調べてきます」
それだけ言い、俺たちは教会を後にする。
時は一刻を争う。
幸いこの集落は広くない。レーダーで全て把握するのにそんなに時間は掛からないだろう。
俺たちは駆け足で生存者がいないか確認する。
原因の調査も同時進行で進める。
ユイとクロには何か不審なものがないか探してもらう。
探索なら、俺よりもユイたちの方が得意だろう。
そうしてすぐに村全範囲を把握する事が出来たので、倒れている1人1人に治癒と状態回復を施していく。
これだけでどれくらい持つのかは分からないが、今は持ってくれる事を信じるしかない。
その時、レーダーに妙な反応があった。
赤い点なのでモンスター反応のようだ。
すぐに反応がある場所へと急行する。
どうやら村はずれの見えない結界の境界辺りだ。
かろうじて、こちらの攻撃は届きそうだな。
名前:魔瘴の玉
俺の鑑定でも名前しか出てこない。
一体目の前の物体はなんだ?
直径2m程の表面がゴツゴツした歪な球体が宙に浮いている。
だが、コイツが瘴気を発生させているのは一目瞭然だった。
時折、プシューという音を出して全方位に向かって何やら噴き出している。
「取り敢えず、考えるのは後だ。消滅させるぞ!」
そう思い、天に杖をかざした、まさにその時だった。
レーダーに高速で近付く反応が2つ。
ハッとすぐに周りを見渡すが、何も見えない。
俺たち以外の姿はなかった。
瘴気のせいで見えないだけだろうか?
「お兄ちゃん!上から何かくる!」
ユイが指し示す虚空を見上げると、そこには上空から飛来し俺たちを睨みつけている存在があった。
今俺たちは、エルフの里の門の前にいる。
そんな俺たちの見送りに来てくれた人々の姿が見える。
エレナと弟子のミアと、その兄アスト、執事のザンバドさんに、メイドのルナさん、なぜか王妃のミリハさんまで・・
「また来てくださいねユウ様」
あれ、「1週間に1回は顔を見せる事!」って言ってたのに。
耳元に小声でエレナが話しかける。
「週一の密会は私とユウ様だけの秘密ですよ」
あ、そういう事ね。
エレナと交代するように、ミリハさんも俺の耳元で囁いてきた。
「エレナだけではなく、私にも会いに来てね」
ってバレてるじゃないか!
前にもこんな事があったが、もしかしたらミリハさんは人の心の中が読めるんじゃないだろうか?
機会があれば聞いてみるとしよう。
俺はみんなに手を振り、エルフの里を後にする。
エレナに馬車を準備すると言われていたのだが、断っていた。
たまには、ゆっくりと3人で景色の変化を感じながら歩きたかったのだ。
もちろん、目的地も無くただ歩く訳ではない。
ここから南に行った先に人族の街があるそうだ。
馬車で3日なので、徒歩なら10日以上はかかりそうだが、走ればもう少し早く辿り着けるだろう。
何よりも体育会系の2人は、走りたくてしょうがないお年頃のようだ。
そんなこんなで、新たなる地へと出発したのである。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
エルフの里を出てから、早7日が経過していた。
走ったり、歩いたり、遭遇したモンスターをみんなで倒したり、釣をしたり、見晴らしの良いところでご飯を食べたり、野宿をしたりと、実に楽しく有意義な時間を過ごしていた。
これがほんとの冒険ってやつだよね。
ユイもクロも実に楽しそうだった。
たまには歩くのも良いかと思ったが、やはり馬車の方が楽なのは間違いない。
次に大きな街に寄った時には馬と馬車を購入してもいいかもね。
操縦を覚える必要はあるけども。
道中で、いくつか錬金術に使えそうな薬草の数々をストレージに回収していたので、かなり貯まっていた。
ポーションの材料となる物や、毒消しや麻痺治しの材料まであった。
あとで整理しておこう。
「お兄ちゃん、向こうの方に村が見えるよ」
「お、着いたのか?」
遠視を使い確認する。
確かに遠くの方に村らしきものが見える。
にしても、まだまだ先なんだけど・・・ユイ、お前どんだけ目がいいんだよ。
しかし、あれが目的地なのかどうかは分からない。
エレナに教えてもらったのは、ミノールと村で、人口的には100人程度の小規模な集落だった。
次第に集落が近付いて来る。
そして集落の手前100mくらいの地点に辿り着いた時だった。
「止まれ!」
声を発したのは他でもない俺だ。
2人が驚いた表情をこちらに向けている。
目の前の集落の光景があきらかに異様だったのだ。
人の気配が全く感じられず、何より薄っすらと靄(もや)がかっている。
セリアが俺の中から出てきた。
「どうやら、集落全体が瘴気に侵されているようですね」
「瘴気ってなーに?」
ユイが俺の顔を見る。
いや、俺だって知らないよ。
「たぶん、体に良くないものなんじゃないか」
間違ってはいないだろう。
人の気配は感じられないが、範囲探索自体には複数の反応が確認できる。
「セリア、瘴気を吸い込み続けるとどうなる?」
村人が瘴気の中で苦しんでいるのではないだろうかと考えていた。
「瘴気の濃さにもよりますが、短時間なら問題ありません。長時間となると、身体が麻痺していき、生命力が徐々に奪われていきます。最終的には・・」
セリアは口を紡ぐ。
俺は、恐らく瘴気を浴びてもなんとかなるだろう。
ユイには、バッドステータスを全て無効化してくれるエルフの里で購入したフルリバイバルネックレスを持たせるとして、問題はクロだな。
俺が頭をかかえて悩んでいると、肩越しに座っているセリアが耳元に顔を近付けてくる。
「魔族は瘴気の影響は受けませんよ」
「おお、なんだそうなのか」
って、あれ?
今、口に出していなかったよな?
まるで、俺の心を読んだように実にタイミングがいい。
「はい、読みました」
「な、なんだって・・・・・読めるの?」
「はい、以前は無理でしたが、私とご主人様の繋がりが強くなったのでしょう。念話を使わなくてもお互いの心の中が分かるのは便利ですね」
おいおい、心の中を読まれるなんて、プライバシーも何もあったもんじゃないぞ。訴えてやる!
訴えた所でどうしようもないんだけどね。
「お互いのって、セリアの心情なんて分からないんだけど・・ていうか、ご主人様じゃないからな」
「私は、普段は無心ですので」
「それは、俺の方が一方的に心を読まれるって事じゃないか・・」
「うふふ」
はぁ・・・
まぁ嘆いてもしょうがないか・・。話を戻そうか。
2人が安全なら取り敢えず大丈夫だ。
セリアも俺の中にいれば安全みたいだしね。
俺が先頭で、集落の中に入っていく。
範囲探索には、数人の反応がある。恐らく村人の生存者だろう。
靄がかっており、少し先でも見えない状況だった。
それでもレーダーを頼りに、1人の村人の前まで辿り着いた。
まだ子供のようだ。
容体を確認すると、衰弱、麻痺、毒の3つのバッドステータスになっている。
すぐに治癒と状態回復を使用する。
以前として意識はないままだが、ステータス欄からは、状態異常の項目は消えているので恐らくもう大丈夫だろう。
「大丈夫そう?」
心配そうなまなざしで俺の顔を覗き込むユイ。
「ああ、もう大丈夫だ。さぁ、他の村人も助けるぞ」
「うん!」
俺は、その子を抱えて集落の中へと進む。
道中に何人か倒れている人を見つけては、治癒と状態回復を使用して治療にあたる。
相変わらず意識までは回復しないが、大丈夫だろう。
全員抱えて歩くわけにはいかないので、壁にもたれ掛けさせる程度しか出来なかった。
はやく、この原因となっている正体を突き止めないと、本当に死者が出てしまう。
ていうか、今でもギリギリの状態なのだ。
今の所、俺のステータスに変化はない。
クロももちろんだが、ユイも平気そうだ。
「二人とも何か身体に異常があったらすぐに言うんだぞ」
「うん、分かった。今のところは何ともないかな。少しお腹が減ってるくらい?」
「・・ユイの大物振りには毎度尊敬するよ・・」
「異常ない」
「おう」
そのまま進んで行く。
やがてレーダー反応が6つある建物の前まで来ていた。
外見からするとどうやら教会のようだ。
中へと入る。
中へ入るな否や暖かさと心地良さを感じた。
”結界Lv1を獲得しました”
何かスキルを覚えてしまったが、恐らく獲得したスキルがこのエリア一帯に展開されているのだろう。
そのまま視線を真っすぐに向けると、視界の先に複数の生存者がいることが確認出来た。
この村に入って、意識を失っていない初めての村人だ。
「まだ外に動ける方がおられたのですね。早くこちらへ、この中なら安全ですよ」
名前:リターニア・エストック
レベル:25
種族:人族
職種:聖職者
スキル:治癒Lv2、状態回復Lv2、結界Lv1
この結界の発動者はどうやら彼女のようだ。
しかし、見た目からして、かなり疲労している。
今、この場には俺たち以外に6人いるのだが、かろうじて意識はあるが、皆絶望に伏した顔をしている。
「あんたたち、ミノールの住人ではないわね」
声を発したのは、村人の1人だ。
「ええ、先ほどここに到着した冒険者です。一体この村で何が起こっているんですか?」
「私たちにも分かりません・・。それにこの村に入るともう外に出る事は出来ません、何か強力な結界に阻まれているようです。なので、解決策が分からない以上、いずれ訪れる死を待つだけなんです・・
表情と雰囲気でなんとなく状況は理解したが、外に出れないとはどういう事だろうか。
リタさんと、この場にいる村人の話だと、この瘴気が発生したのは2日ほど前だと言う。
最初は、もっと薄かったので、身体に対する害もほんの少しの違和感程度だったのもあり特に気にしていなかったようだ。
最初に違和感を感じた症状は、息切れや目眩等の軽いものだった。
異変に気が付いたのは今朝の事で、瘴気から逃げようと村人が村から出ようとした時に何かに弾かれて村の外に出れなくなっていたのだ。
既に瘴気が発生してから丸一日が経過していた。
時すでに遅く、ほとんど村人がまともに動く事すら出来ない状態だった。
たまたま教会にいた者だけが、リタさんの結界のおかげで、瘴気の影響を受けずに済んでいるらしい。
だいたいの状況は分かった。
しかし、こうなってしまった原因は誰も分からないようだ。
どちらにしても、まだ外で苦しんでいる者がいるかもしれない。原因も追及する必要がある。
俺は、リタさんに魔力注入を行った。
魔力注入は、物に魔力を付与するだけではなく、生き物にも自身の魔力を分け与える事が出来る。
これで、魔力の枯渇は防げるだろう。
「原因を調べてきます」
それだけ言い、俺たちは教会を後にする。
時は一刻を争う。
幸いこの集落は広くない。レーダーで全て把握するのにそんなに時間は掛からないだろう。
俺たちは駆け足で生存者がいないか確認する。
原因の調査も同時進行で進める。
ユイとクロには何か不審なものがないか探してもらう。
探索なら、俺よりもユイたちの方が得意だろう。
そうしてすぐに村全範囲を把握する事が出来たので、倒れている1人1人に治癒と状態回復を施していく。
これだけでどれくらい持つのかは分からないが、今は持ってくれる事を信じるしかない。
その時、レーダーに妙な反応があった。
赤い点なのでモンスター反応のようだ。
すぐに反応がある場所へと急行する。
どうやら村はずれの見えない結界の境界辺りだ。
かろうじて、こちらの攻撃は届きそうだな。
名前:魔瘴の玉
俺の鑑定でも名前しか出てこない。
一体目の前の物体はなんだ?
直径2m程の表面がゴツゴツした歪な球体が宙に浮いている。
だが、コイツが瘴気を発生させているのは一目瞭然だった。
時折、プシューという音を出して全方位に向かって何やら噴き出している。
「取り敢えず、考えるのは後だ。消滅させるぞ!」
そう思い、天に杖をかざした、まさにその時だった。
レーダーに高速で近付く反応が2つ。
ハッとすぐに周りを見渡すが、何も見えない。
俺たち以外の姿はなかった。
瘴気のせいで見えないだけだろうか?
「お兄ちゃん!上から何かくる!」
ユイが指し示す虚空を見上げると、そこには上空から飛来し俺たちを睨みつけている存在があった。
0
あなたにおすすめの小説
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる