幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第百八話:港町ペリハーファ

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次の日の朝~

昨晩は豪華な夕食をご馳走してもらい、皆満足していた。

「昨日は堪能出来たのかしら?」

俺はミラ王女と一緒に中庭のテラスで紅茶のような飲み物をご馳走してもらっている。
もちろん誘われたからなのだが、俺一人だけというので、ユイ達がブツブツと文句を言っていた。

「はい、お陰様で。皆満足していました、ありがとうございます」
ミラ王女は改まって、こちらに身体を向ける。

「それにしても、あなた達は一体何者なの・・。どこぞの大国の精鋭部隊かしら?」

どうやら俺達の強さに驚いているようだ。
まぁ、無理もないけど。
レベルだけだとこの世界では英雄級のランクにまで昇りつめているのだから。
俺はチートありきだけど、みんなは違う。実力だ。

「まさか、ただの冒険者ですよ。今の仲間達も旅の道中で知り合ったんです」

俺の様子を伺うようにミラ王女は言葉を発した。

「何処にも属していないなら、この国に腰をすえるつもりは無い?もちろん仲間達全員歓迎よ」

美少女からの誘いを断るのは忍びないが、俺達は旅を続けなければならない。
神様からの命令だからね。

”命令などしていませんから!”

ん、今一瞬神の声が聞こえた気がしたが、いつもの耳鳴りの可能性もあるので、気にしないでおく。

「ミラ王女。お誘い頂き本当に光栄なのですが、俺達はこの世界を旅して周っている最中なのです。申し訳ありません」
深々と頭を下げる。

「そう・・よね。頭を上げて頂戴。本当にユウには感謝しきれない程の大恩がこの国にはあるの」
「いえ。昨日の宴でも十分過ぎるほどその気持ちは感じましたし、仲間達も久しぶりの賑やかで美味しい食事に羽根を伸ばすことが出来ました。こちらこそ感謝しています」

「また近くに寄った際は、是非立ち寄って下さいね力になれる事があれば、協力は惜しみませんわ」

いつの間にやら、シャルミーザさんも参加していた。

「はい、シャルミーザさん、その時は宜しくお願いします」

別れの挨拶を済まし、俺は皆の所へと戻った。

「もう出発するの?」
「ああ、ダンジョンをクリアしたらね」

先程、ミラ王女から情報を仕入れていたのだ。
グラキール王国にもダンジョンがある事を。
しかも、ダンジョンは城内にあるという。

「久しぶりに本気を出しても?」

日頃の鬱憤が余程溜まっていたのか、この時のジラの言葉の意味を今の俺は理解していなかった。


ダンジョンに入ってから早数時間が経過していた。

「もう、ジラ!私の分も残しておいてよ!」

言い合いをしているのは、ユイとジラだ。
道中ここまで、ほぼジラの無双劇が繰り広げられていたのだ。何か鬱憤でも溜まっていたのだろうか?聞くのも怖いので、そっとしておく。

「ジラ怖い」

クロがそんな事をつぶやく程にジラは遠距離魔術で容赦なくモンスターを殲滅させていく。
近接戦闘専門のユイが近付く前に戦闘は終了してしまう。

俺?

このダンジョンに入ってから一度も攻撃に参加してないけど?
このパーティーが危なくなる程の相手は出てこないだろうと、願いたい。
何度も言うが俺は戦闘は嫌いだからね。
己の強さに過信もしていない。
常に安全マージンを取りすぎるくらいを心掛けている。
時々、場に流されてしまうこともあるけどね。

結局俺は、ほぼ何もせぬまま最深部と思われる場所まで到達した。
今までで最速かもしれない。何もしていないのに。
さて、気を取り直してボス戦の準備といこう。

「この階層はボスがいるから、流石に皆で協力して・・」

何故だかユイとジラに睨まれてしまった。

え、ここも無双劇するの?

まぁ、敵の情報を見てからでも遅くは無いけど。

暫く進むが、一向にボスが出現する素振りがない。
しかし、下に降りる階段もない為、ここが最下層である事は間違いない。

「お兄ちゃーん!何か見つけたよ~」

ユイが宝箱を探してきた。
”バラトリウスダンジョン踏破の証”

あれ、これで終わり?ボスは?

いや戦闘がないに越した事はないんだけど、皆の残念感が半端ない。
やってやろう満々だったこの空気どうしてくれるよ?


その後は特に変わった事はなく、無事に地上まで辿り着いた。
最下層にボスがいなかったのは、もしかすると先に誰かが倒したのかもしれない。

「お兄ちゃん、何だか物足りないよ」
「私も」
「まぁ、たまにはそんな事もあるさ」
「もう一回潜ろう!」

いや、勘弁してくれ。
以外とこの閉鎖空間はストレス溜まるんですよ。ユイさん。

ダンジョンから戻り、その足で港まで向かう。

港は、大小様々な船が停泊していた。
海賊騒動で全ての船が使い物にならなくなっていたのだが、ここ数日の間に8割以上の船は既に修理が完了しているらしい。

「リン、港町ペリハーファまでのチケットを買ってきてくれないか」
「分かりました」
「ユウ様、船の出航までお時間を貰えないでしょうか?」
「いいよ。何か忘れ物?」
「ええ、別れを言い忘れた人物がいましたので」

ジラは、そのまま飛び立ってしまった。
もちろん、透明化マントを貸している。
魔族だってバレたら面倒だしね。でも空の移動は速いから仕方がない。

アリスが袖をクイクイっと引っ張ってくる。

「マスター、怪しい奴がいます」

アリスが指差した方向には、あの侍がいた。
侍は、名のある傭兵集団グリモアの一員だ。
訳あって俺が雇っていたのをすっかり忘れていた。

「やっと見つけたっすよダンナ」

傭兵の良いところは、日雇いじゃないことだった。
これこれをやって欲しいと依頼すれば、それに2日費やそうが、10日費やそうが傭い料自体は変わらない。
普通は先払いなんだが、今回は状況が状況だった為、後払いにしてもらっていた。

「悪い悪い、えっと、いくらだったっけ?」

侍は、領収書のような物を取り出し、俺に叩きつける。

「ビタ一文負ける気はないっすよ!」
「マスター、目の前のコイツを排除する許可を下さい」

俺に対する少し威圧的な態度にアリスが反応してしまった。今の行動くらいで、いちいち腹を立てていたら、この世界じゃ暮らせないよアリス。
でも俺に対して、怒ってくれたことには素直に感謝しておく。

何じゃこりゃああああ!

思わず口に出して叫びそうになるところだった。
いや、別に叫ぶ程でもないんだけど。
領収書に記載されていた金額に驚いたのだが、まさかこれ程とは・・。
予想してた額と全然違うじゃないか。

なんで、なんでこんなに安いんだ!
銀貨3枚って!なんで端数!いや、それはこの際どうでもいい。

「こんなに安いのか?」
「初めての客には、一律でその金額なんすよね」

なるほど。
金は掃いて捨てる程あるが、支出は少ない方がいい。

侍は、依頼料を受け取ると、そのまま去っていった。
その時に、(今後ともごひいきに~)と言っていた。
また何処かで会うこともあるだろう。あるのか?

「出航までまだ2時間程あります」
リンがチケットを購入し、戻って来た。

特にすることもないので、この辺りをブラブラしておこう。

数日前に国が滅びそうな程の事件があったにも関わらず、何事も無かったかのように住人達は過ごしている。今回の事件を一部始終知っている人物は、一部の親衛隊と王宮に仕えている一部の使用人達、それと王族か。

住民の大半は、家の中に閉じ込められていた為、海賊が攻めて来た事までしか知らない。
王妃が国民に詳細は説明しないと決めたのだ。
色々と複雑だし、怖がらせてもね。
因みに、魔の種の話は、俺も誰にもしていない。
何となく、言わない方が良いと思ったからだ。

暫くするとジラが戻って来た。
「ただいま戻りました」
「別れは言えたのか?」
「はい、たっぷりと利子をつけて」

ん、利子?
興味はあるが、単なる好奇心だけで恐怖は味わいたくないので、ここでも聞くのは我慢する。

出航時間になり、俺達は船へと乗り込む。
全長20m近くはあるだろうか?
船のくせして肝心のアレがない。
帆だ。
帆に受ける風を頼りにしないという事は、他に動力となる何かがあるのだろう。

俺がキョロキョロしていると、近くにいた恰幅のいいおばちゃんが話しかけてくる。

「なんだい、アンタ、高速艇は初めてかい?」
「高速艇?」
「ああ、この船はまだこの世界に4隻ほどしか無い希少な技術で海を航行するんだよ」

余程説明したいのか、おばちゃんは話を続ける。
「なんと、これが魔力で進むんだよ!しかもそれだけじゃないんだよ!魔力増幅回路?だか何とかっていうののおかげで、少ない魔力で大きな効果を発揮するんだよ!」

その後も延々と話し続けるおばちゃん。
次第に船の話から逸れていっている。
自分は何回乗っただとか、息子がここの乗組員だとか。
正直どうでもいい。
しかも、細かい内容は良く分からないようで、いちいち説明を省いている。

ひとしきり喋って満足したのか、おばちゃんは満面の笑みで離れていった。

「大変でしたね・・」
ジラが同情したのか、ポンポンと肩に優しく手を乗せた。

「あれ、もう着いたの?」

「はい、ちょうど今到着した所ですよ」
景色を楽しむ余裕すらなかった。
あのおばちゃんめ、恨んでやる。。

にしても、さすが高速艇・・。あまり揺れすら感じなかった気がしたが、一体どんな原理で動いているのだろうか。
おばちゃんの説明では大雑把過ぎて肝心な部分がまったく分からなかった。
うん、今度時間のある時に誰かに教えて貰う事にしよう。

港町ペリハーファというだけあり、多数の大型船が所狭しと停泊していた。
見渡す限り船船船だ。
地平線の先まで続いているんじゃないだろうか?
さすがは、シア大陸の玄関口となっているだけの事はある。

港に降り立った俺達は、そこで意外な人物に話し掛けられた。
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