幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

文字の大きさ
107 / 242

第百八話:港町ペリハーファ

しおりを挟む
次の日の朝~

昨晩は豪華な夕食をご馳走してもらい、皆満足していた。

「昨日は堪能出来たのかしら?」

俺はミラ王女と一緒に中庭のテラスで紅茶のような飲み物をご馳走してもらっている。
もちろん誘われたからなのだが、俺一人だけというので、ユイ達がブツブツと文句を言っていた。

「はい、お陰様で。皆満足していました、ありがとうございます」
ミラ王女は改まって、こちらに身体を向ける。

「それにしても、あなた達は一体何者なの・・。どこぞの大国の精鋭部隊かしら?」

どうやら俺達の強さに驚いているようだ。
まぁ、無理もないけど。
レベルだけだとこの世界では英雄級のランクにまで昇りつめているのだから。
俺はチートありきだけど、みんなは違う。実力だ。

「まさか、ただの冒険者ですよ。今の仲間達も旅の道中で知り合ったんです」

俺の様子を伺うようにミラ王女は言葉を発した。

「何処にも属していないなら、この国に腰をすえるつもりは無い?もちろん仲間達全員歓迎よ」

美少女からの誘いを断るのは忍びないが、俺達は旅を続けなければならない。
神様からの命令だからね。

”命令などしていませんから!”

ん、今一瞬神の声が聞こえた気がしたが、いつもの耳鳴りの可能性もあるので、気にしないでおく。

「ミラ王女。お誘い頂き本当に光栄なのですが、俺達はこの世界を旅して周っている最中なのです。申し訳ありません」
深々と頭を下げる。

「そう・・よね。頭を上げて頂戴。本当にユウには感謝しきれない程の大恩がこの国にはあるの」
「いえ。昨日の宴でも十分過ぎるほどその気持ちは感じましたし、仲間達も久しぶりの賑やかで美味しい食事に羽根を伸ばすことが出来ました。こちらこそ感謝しています」

「また近くに寄った際は、是非立ち寄って下さいね力になれる事があれば、協力は惜しみませんわ」

いつの間にやら、シャルミーザさんも参加していた。

「はい、シャルミーザさん、その時は宜しくお願いします」

別れの挨拶を済まし、俺は皆の所へと戻った。

「もう出発するの?」
「ああ、ダンジョンをクリアしたらね」

先程、ミラ王女から情報を仕入れていたのだ。
グラキール王国にもダンジョンがある事を。
しかも、ダンジョンは城内にあるという。

「久しぶりに本気を出しても?」

日頃の鬱憤が余程溜まっていたのか、この時のジラの言葉の意味を今の俺は理解していなかった。


ダンジョンに入ってから早数時間が経過していた。

「もう、ジラ!私の分も残しておいてよ!」

言い合いをしているのは、ユイとジラだ。
道中ここまで、ほぼジラの無双劇が繰り広げられていたのだ。何か鬱憤でも溜まっていたのだろうか?聞くのも怖いので、そっとしておく。

「ジラ怖い」

クロがそんな事をつぶやく程にジラは遠距離魔術で容赦なくモンスターを殲滅させていく。
近接戦闘専門のユイが近付く前に戦闘は終了してしまう。

俺?

このダンジョンに入ってから一度も攻撃に参加してないけど?
このパーティーが危なくなる程の相手は出てこないだろうと、願いたい。
何度も言うが俺は戦闘は嫌いだからね。
己の強さに過信もしていない。
常に安全マージンを取りすぎるくらいを心掛けている。
時々、場に流されてしまうこともあるけどね。

結局俺は、ほぼ何もせぬまま最深部と思われる場所まで到達した。
今までで最速かもしれない。何もしていないのに。
さて、気を取り直してボス戦の準備といこう。

「この階層はボスがいるから、流石に皆で協力して・・」

何故だかユイとジラに睨まれてしまった。

え、ここも無双劇するの?

まぁ、敵の情報を見てからでも遅くは無いけど。

暫く進むが、一向にボスが出現する素振りがない。
しかし、下に降りる階段もない為、ここが最下層である事は間違いない。

「お兄ちゃーん!何か見つけたよ~」

ユイが宝箱を探してきた。
”バラトリウスダンジョン踏破の証”

あれ、これで終わり?ボスは?

いや戦闘がないに越した事はないんだけど、皆の残念感が半端ない。
やってやろう満々だったこの空気どうしてくれるよ?


その後は特に変わった事はなく、無事に地上まで辿り着いた。
最下層にボスがいなかったのは、もしかすると先に誰かが倒したのかもしれない。

「お兄ちゃん、何だか物足りないよ」
「私も」
「まぁ、たまにはそんな事もあるさ」
「もう一回潜ろう!」

いや、勘弁してくれ。
以外とこの閉鎖空間はストレス溜まるんですよ。ユイさん。

ダンジョンから戻り、その足で港まで向かう。

港は、大小様々な船が停泊していた。
海賊騒動で全ての船が使い物にならなくなっていたのだが、ここ数日の間に8割以上の船は既に修理が完了しているらしい。

「リン、港町ペリハーファまでのチケットを買ってきてくれないか」
「分かりました」
「ユウ様、船の出航までお時間を貰えないでしょうか?」
「いいよ。何か忘れ物?」
「ええ、別れを言い忘れた人物がいましたので」

ジラは、そのまま飛び立ってしまった。
もちろん、透明化マントを貸している。
魔族だってバレたら面倒だしね。でも空の移動は速いから仕方がない。

アリスが袖をクイクイっと引っ張ってくる。

「マスター、怪しい奴がいます」

アリスが指差した方向には、あの侍がいた。
侍は、名のある傭兵集団グリモアの一員だ。
訳あって俺が雇っていたのをすっかり忘れていた。

「やっと見つけたっすよダンナ」

傭兵の良いところは、日雇いじゃないことだった。
これこれをやって欲しいと依頼すれば、それに2日費やそうが、10日費やそうが傭い料自体は変わらない。
普通は先払いなんだが、今回は状況が状況だった為、後払いにしてもらっていた。

「悪い悪い、えっと、いくらだったっけ?」

侍は、領収書のような物を取り出し、俺に叩きつける。

「ビタ一文負ける気はないっすよ!」
「マスター、目の前のコイツを排除する許可を下さい」

俺に対する少し威圧的な態度にアリスが反応してしまった。今の行動くらいで、いちいち腹を立てていたら、この世界じゃ暮らせないよアリス。
でも俺に対して、怒ってくれたことには素直に感謝しておく。

何じゃこりゃああああ!

思わず口に出して叫びそうになるところだった。
いや、別に叫ぶ程でもないんだけど。
領収書に記載されていた金額に驚いたのだが、まさかこれ程とは・・。
予想してた額と全然違うじゃないか。

なんで、なんでこんなに安いんだ!
銀貨3枚って!なんで端数!いや、それはこの際どうでもいい。

「こんなに安いのか?」
「初めての客には、一律でその金額なんすよね」

なるほど。
金は掃いて捨てる程あるが、支出は少ない方がいい。

侍は、依頼料を受け取ると、そのまま去っていった。
その時に、(今後ともごひいきに~)と言っていた。
また何処かで会うこともあるだろう。あるのか?

「出航までまだ2時間程あります」
リンがチケットを購入し、戻って来た。

特にすることもないので、この辺りをブラブラしておこう。

数日前に国が滅びそうな程の事件があったにも関わらず、何事も無かったかのように住人達は過ごしている。今回の事件を一部始終知っている人物は、一部の親衛隊と王宮に仕えている一部の使用人達、それと王族か。

住民の大半は、家の中に閉じ込められていた為、海賊が攻めて来た事までしか知らない。
王妃が国民に詳細は説明しないと決めたのだ。
色々と複雑だし、怖がらせてもね。
因みに、魔の種の話は、俺も誰にもしていない。
何となく、言わない方が良いと思ったからだ。

暫くするとジラが戻って来た。
「ただいま戻りました」
「別れは言えたのか?」
「はい、たっぷりと利子をつけて」

ん、利子?
興味はあるが、単なる好奇心だけで恐怖は味わいたくないので、ここでも聞くのは我慢する。

出航時間になり、俺達は船へと乗り込む。
全長20m近くはあるだろうか?
船のくせして肝心のアレがない。
帆だ。
帆に受ける風を頼りにしないという事は、他に動力となる何かがあるのだろう。

俺がキョロキョロしていると、近くにいた恰幅のいいおばちゃんが話しかけてくる。

「なんだい、アンタ、高速艇は初めてかい?」
「高速艇?」
「ああ、この船はまだこの世界に4隻ほどしか無い希少な技術で海を航行するんだよ」

余程説明したいのか、おばちゃんは話を続ける。
「なんと、これが魔力で進むんだよ!しかもそれだけじゃないんだよ!魔力増幅回路?だか何とかっていうののおかげで、少ない魔力で大きな効果を発揮するんだよ!」

その後も延々と話し続けるおばちゃん。
次第に船の話から逸れていっている。
自分は何回乗っただとか、息子がここの乗組員だとか。
正直どうでもいい。
しかも、細かい内容は良く分からないようで、いちいち説明を省いている。

ひとしきり喋って満足したのか、おばちゃんは満面の笑みで離れていった。

「大変でしたね・・」
ジラが同情したのか、ポンポンと肩に優しく手を乗せた。

「あれ、もう着いたの?」

「はい、ちょうど今到着した所ですよ」
景色を楽しむ余裕すらなかった。
あのおばちゃんめ、恨んでやる。。

にしても、さすが高速艇・・。あまり揺れすら感じなかった気がしたが、一体どんな原理で動いているのだろうか。
おばちゃんの説明では大雑把過ぎて肝心な部分がまったく分からなかった。
うん、今度時間のある時に誰かに教えて貰う事にしよう。

港町ペリハーファというだけあり、多数の大型船が所狭しと停泊していた。
見渡す限り船船船だ。
地平線の先まで続いているんじゃないだろうか?
さすがは、シア大陸の玄関口となっているだけの事はある。

港に降り立った俺達は、そこで意外な人物に話し掛けられた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【完結】嫌われ公女が継母になった結果

三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。 わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

処理中です...