幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第百十九話:誘拐犯を追って2

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今俺は、聖女様と向き合っていた。

噂通りかそれ以上の美人だった。
金髪ロングに整った顔立ち、年齢はリンと同じくらいだろうか。
しかし、その姿は容姿を台無しにするかのように酷く憔悴しきっていた。

この感じ、俺は心当たりがある。
以前に何度も経験があったのだ。

そう、魔力の枯渇だ。

よく見ると、かなりの汗もかいているようだ。
一瞬、脅されて無理やりにやらされているのかと想像したが、さっきの祈りにしてもそうだが、この子はきっと、ドがつくほど優しく真面目な性格なのだろう。

あの時、誘拐された現場の部屋が荒らされていなかったのは、きっと後者のお人好しが正解だったに違いない。

「いきなりすみません、俺はユウと言います。冒険者をしてるんですが、モルトトであなたの噂を聞いたので、是非一眼お会いした・・今は自己紹介している場合じゃないですね」

呑気に挨拶している場合じゃなかった。

「まず、これを飲んでください」

ストレージからMP回復ポーションを取り出し聖女様に手渡す。

「これは・・ポーションですか?」
「はい、魔力の使い過ぎです。それでは貴女の方が倒れてしまいますよ」
「必要、ありません・・」

聖女様は、何故かポーションを受け取らない。

「この子の名前はシェリル・・」

聖女様は、目の前で横たわっている少女の容態を説明してくれた。

少女の名前はシェリル。
シェリルは、この世界では不治の病と言われている瘴病に侵されていた。
瘴病は、聖女様でも治せないようで、それでも奇跡を信じ、全魔力を使い治療を施してみたが、症状が改善せず、後出来る事といえば、神に祈るくらいだという。
まさに今、神に祈っているところだ。

取り敢えず、見ていて俺の方がつらいので聖女様にMP回復ポーションを飲んでもらう。

「俺も治癒(ヒール)が使えますので、今度は同時に治療をしてみましょう」

俺が治療(ヒール)が使えるのが意外だったのか聖女様は少し驚いていた。

「そうですね!可能性のある事は全部やってみましょう!」

うお、聖女様、治癒ヒールレベル4もあるのか。

今まで出会った中では一番高い。
ていうか見た事がない。

瘴病というのも恐らく俺の治癒ヒールLv5で治せるとは思うが、それだと聖女様の治癒ヒールレベルより上だという事がバレてしまう。
だから二人同時に行う必要がある、

「では行きますよ」

俺の掛け声を合図に二人同時に治癒ヒールを発動する。
相乗効果でもあるのか、いつも以上の眩い光が少女の身体全体を包み込んでいた。

聖女様は、全快したMPを全て使い切る勢いで連続使用している。

聖女様、確か治癒ヒールの連続使用って意味ないですよ。
まぁ、聖女様の頑張りを無駄ですなんて口が裂けても言えないんだけどね。

「聖女様、シェリルの顔色が良くなってきましたよ」

鑑定(アナライズ)により、瘴病の表示が消えていたので、恐らくもう大丈夫だろう。

「本当・・・良かった・・・本当に良かった・・」

聖女様は、シェリルの手を握り続けた。

それから少しの時間が経過する。

「お姉ちゃん、だれ?」

シェリルが目を覚ました。

バルザーさんがシェリルを抱きしめている。

「お前を瘴病から救ってくれた聖女様だよ」
「モルトトで聖女をしてます。サーシャと言います。治って本当に良かったです」

俺は、こっそりと建物から出る。
讃えられるのは聖女様だけでいいよ。
頑張ったのは彼女だし、おれは少しばかり手助けしただけだしね。

「ご主人様、おかえりなさい」

外にはリンとアリスが待ってくれていた。
聖者様もいたか。

「それで、聖女様は中に?」
「はい、無事に治療が済みましたので、じきに出て来られると思いますよ」

聖者様は、ホッと肩をなで下ろす。

それからしばらく待つと聖女様とバルザーさんが出てくる。
最初、聖者様がいる事に驚いていた。

「アリウス。心配を掛けてごめんなさい」

聖女様が頭を下げていた。

「サーシャ様は何にも悪くありません。悪いのは、後ろのその男です!」

バルザーさんが、地に膝をつける。

「約束だ。俺を連行するなり、この場で殺すなり好きにすればいい」

聖女様が驚いた顔をしていた。

「それはどういう事ですか?アリウス」

偉そうな聖者様の名前はアリウスと言うらしい。
終始偉ぶっていたアリウスも何故だかタジタジだった。

「い、いえ、この者は、聖女様誘拐の罪でモルトトに連行するのです」
「なんですかそれは!そんなのは私が認めません!」
「で、ですが・・」
「認  め  ま  せ  ん  っ !」

あ、聖者様が根負けした。
聖女様つよし。

その後少しもめていたが、俺達は無事にモルトトまで戻ってきた。

道中の馬車の中で、ユイ達獣人族がこの国の決まりで宿屋内から外に出る事が出来ない事を説明したところ、特例で出歩いても良い許可をもらった。

さすが、この国で一番の裏権力者だ。

もちろん、周りの目があるので形態変化メタモルフォーゼで獣人族の特徴である耳や尻尾は隠した上でだけどね。

聖女様と聖者様は、大聖堂からの迎えの馬車が来たので、そっちに乗り換えだ。
その際、大聖堂に来て欲しいと言われたので、後からみんなで行こうと思っている。

「ただいま」
「お兄ちゃんおかえりなさい!」

ユイが出迎えて飛びついて来たので、タイミングを合わせ抱き抱える。

なかなかの衝撃とスピードが出ていたが、俺以外だと受け止めるだけでかなりのダメージを受けてたんじゃないだろうか。

もう少しお兄ちゃんを労わりなさい!

「お帰りなさいませご主人様。留守中特に異常はなしです」
「ただいまリン。了解」

くいくいと俺の袖をクロが引っ張る。

「ユウ、お願いある」

クロがお願いなんて珍しいな。

「珍しいな、どうした?」

クロがシュリを手招きしている。

シュリは、少しモジモジしている。
シュリは、見た目尻尾が生えている以外はまんま人族と変わらない竜人族だ。
本人曰く突然変異だとかで、人族の姿のまま生まれてきた。

「服欲しいです」

あ。

そういえば、シュリは俺達と出会ってからも元々着ている軽装の鎧をずっと身にまとっていた。
確かに、みんなとの服にギャップがあるね。
ユイやクロよりは大きくて、リンやジラよりは小さい為、使い回すことが出来ない。

「よし、外出の許可も出たし、久しぶりにみんなで露店巡りしようか」

時刻は昼過ぎだった為、最初に昼ご飯を食べる事になった。

自炊以外は外食なんだけど、外食する時は基本的に上限はない。みんなが思い思いに好きな物を頼んでいる。
こっちの世界に来た当初は、チート仕様により、文字は読めても名前だけでは想像がつかないので、結局新しい物を注文する時はいつも冒険だった。

「シュリちゃん、何でも好きなメニューを注文してもいいのよ」

ジラがお姉さんぶりを発揮する。

「本当?」

竜人族の口に合うのか心配していたが、聞けば人族の食べ物とそんなに差はないようだ。

相変わらずユイの食べる量は半端ない。
軽く俺の5倍は食べている。

まぁ、食べる子は育つって言うしね。

向かいの席のシュリが何故だか涙を流している。
口に合わなかったか?

「こんなに美味しい食事初めて・・」

あ、そっちね。
自給自足の生活も中々に大変だったみたいだな。

「ちゃんと残さず全部食べるんですよ」
「うん」

ジラの妹という立場が定着しつつあるシュリだった。

食事を終えた俺達は、早速シュリの服を買いに衣服屋へと向かう。
防具屋と違い、衣服屋には戦闘に使える特殊効果や耐久性のある物は取り扱っていない。

せっかく来たので、みんなも普段着を購入していく。
次々と・・。

「いや、買いすぎじゃないか?」
「お兄ちゃん!服はいくつあっても大丈夫だよ!」
「いやまぁ、うん、ちゃんと無駄にせずに着るならば文句は言わないけどさ」
「ユウ様、シュリちゃんをちょっと可愛くコーデしてみましたので、来て下さい」

ジラに連れられて店の奥の試着室の前まで案内された。

「シュリちゃん、ちゃんと着れた?」
「うーん。人族の服難しい」

試着室のカーテンが開けられた。
他でもない、シュリ本人の手によって。

出てきたのは、ほとんど全裸状態のシュリだった。

「ちょ、ちょっとシュリちゃん!」

俺は流石に直視できずに目を逸らしてしまった。

すぐにジラが試着室の中へと入り、中からカーテンを閉めた。

「もう!人がいっぱいいるんだから、ちゃんと服を着ないとだめでしょ!それになんで下着まで脱いでるの!それと、ユウ様以外の殿方に肌を見せるのはだめです!禁止です!」

いや、うん、男としては、ラッキースケベ的なあれは嫌ではないんだけど、ね、周りの目があるからね?さっきから周りの視線が痛いんだよね。せめてもう少し小声でお願いします・・。

そして、試着室から出てきたシュリは、フリフリスカートの可愛い系のコーデだった。

「どうですか、ユウ様?」
「えっと、良いんじゃないかな?」

面と向かって言うのって、ちょっと恥ずかしいものだよね。

心の中で感想を述べておく。

”かなり似合ってて凄くいいよ!”

どうやらシュリには、羞恥心というものがないようなので、そこらへんジラにちゃんと教育するように言っておいた。

みんなが思い思いの服を何着か購入し、ユイの持っているマジックバックに入れる。

「さてと、じゃ、聖女様のところに行きますかね」

(ユウさんは、聖女様のようなタイプの女の子が好きなのですか?)
(なぜそうなる!)
(ただなんとなくです)

最近良く、セリアに絡まれてる気がするな。

聖女様のいる大聖堂へとやってきた。

「こ、この行列はいったい・・」

リンが行列の最前線から最後尾までを目で追っていた。

「美味しいものでも売ってるのかな?」
「聖女様に治療してもらう為の列ですね」
「なんだ、食べ物じゃないのかぁ」
「聖女様竜人達も一目置いてた」

今は仕事で忙しいようだから後から出直そうかと思った矢先、大聖堂に備え付けられている青銅の鐘がリーンゴーンと鳴り出した。

すると、治療待ちの行列の列が、散り散りとなり解散していく。

先程まで人でごった返していた大聖堂前の広場が、今は閑散としてしまった。

「お待ちしておりました。ユウ様」

声に反応して振り向くと、いつの間にやら、聖女様がそこにいた。
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