幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第百二十話:旧友との再会

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俺達は、聖女様に会う為に大聖堂を訪れていた。

「治療はもういいんですか?」
「はい、ちょうど今しがた終わったところです。夕方の鐘の音が鳴るまでが治療の務めの時間なんですよ」

聞こえによっては、ただ治癒ヒールするだけなんだが、これが意外と奥が深く重労働だったりする。
魔力には当然限りがある。
ほいほいと最高レベルで治癒ヒールしているとすぐに枯渇してしまう。術者は使用するレベルを判断し効率良く治癒ヒールする必要がある。

魔力回復ポーションを使えばいい?
確かにそうなんだけど、あのポーションって凄くマズいんだよね。
出来ることならば、飲みたくない。
飲みやすい味のポーションを作るのも俺の実現したい事の一つだったりするほどに。

現に、今の聖女様もかなり疲労困憊に見える。

!?

「そ、そんなまさか・・」

少し後ろにいるリンから発せられた言葉だった。
どうしたのかと思ったら、聖女様も何故かリンの姿を見て口を開けて驚いていた。

「もしかして、リン?」
「サーシャなの?」

「知り合いなのか?」

2人は見つめ合ったまま、数秒だったが、思考が停止しているようだった。

「あっ、はい。幼少の頃から勇者の里で一緒でした。何処かに配属先が決まったと聞いていたけど、まさかここだったなんて」
「そうなの。あれよあれよと言う間に決まってしまったので、連絡する事も出来なくて。でもリンも元気そうでよかったわ」

幼馴染というやつだろうか。
久しぶりの再会なんだし、積もる話もあるだろう。
邪魔しちゃ悪いので、リンを残し俺達は宿屋へと戻る事にした。

リンも聖女様も”いいです!お気になさらず!”と言っていたが、逆にこっちの方を気にせず、せっかくなんだからご飯でも食べてきたら?と伝え、半ば強引にその場を後にした。


「親しげな感じでしたね」
「だな。久しぶりに合ったんだから2人だけの時間を作ってあげないとね」

リンと別れて街の中をブラブラしていると、人だかりができている箇所を発見した。

野次馬の話によると、どうやら何かの見世物でもしているようだ。
特に興味はなかったが、気になったので足を止めてみる。

「お兄ちゃん、見えないよ!」

人混みの最後尾にいる俺達には、野次馬の中心に檻の上の部分が少し見えているだけだった。

赤い点が見えるので、たぶん檻の中にモンスターがいるのだろう。
ユイが駄々をこねていたので肩車する。

「ん、小さな竜みたいなのが見えるよ」
「子供の竜かな?」

野次馬の隙間からチラッと姿が見えたので鑑定アナライズする。


名前「ファーズ・ルズ・ディン」
レベル70
種族:竜
弱点属性:火
スキル:衝撃波ソニックウェーブLv4、念力Lv4、超硬質Lv3、自己再生Lv3、フレアLv5、火焔玉Lv4


うーん、ヤバくない?強くない?

「あの子竜、レベルが70もあるんだが・・・」
「え、それ私より高いよ!」
「危険ですね」
「ああ、俺もそう思う。あんな檻で捕まえられるとは思えないよな」
「ボクが話をしてみようか?」
「ミミは、モンスターと話が出来るのか?」
「へへん、尊敬した?一緒にして欲しくはないけど、元モンスターだしね!」
「じゃ、頼むよ」

ミミはウインクすると、そのまま野次馬の中へと消えた。

すると、見世物にしていた商人の声が聞こえてきた。

「世にも珍しい竜の子供だよ!あんたらは運がいい!これから、この国の国王に献上しにいくところさ」

「ダンナ!一体どうやって捕まえたんだよ」
「街道を歩いていたら傷付き弱ってグッタリしているところを偶然にも見つけてさ、そのまま捕獲したんだ」

暫くするとミミが戻って来た。

「どうだった?」
「うん、割と社交的なやつだったよ」

モンスターに社交的とかあるのだろうか。

ミミの話によると、神竜である親を怒らせてしまいボコボコにやられて、そのキズを回復している所を人族に捕まってしまったようだ。
脱出するのは簡単だが、全回復するのを待っていたようだ。

「どうします?ユウ様」
「うーん。レベルから判断すると、暴れられたらかなりの被害が出ちゃうと思うんだよね」

それにしても、王に献上するとか言っていたが、ペットにでもするつもりだろうか?
いくら俺と違い鑑定(アナライズ)が出来ないとはいえ、竜はモンスターの中では最強の強さを誇る。
そんな竜の子供を生け捕りにするなんて危険だと思って当たり前だと思うのだけど。

商人は、王のいる中心街の城の方へと進んで行く。

「確か、竜からはいろいろな素材が採れましたよね。例えば高級回復剤の材料になったり、硬質な皮膚は、高価な防具の素材にもにもなり、余すことなくその部位を利用する事が出来ます」
「どうしますか?」
「暴れられても面倒だから、自然に返すか」
「強奪するんだね!」

何故かユイの目がキラキラしていた。
いくら職業が盗賊だからって犯罪は駄目だぞユイ。

野次馬が消えるのを待ち、商人風の男に事情を説明する。

「おいおい、冗談だろ?せっかくの金ヅルを解放しろってのか?」
「その子竜のレベルは推定70だ。もし暴れでもしたら、その被害は尋常じゃない規模になる」
「知った事か!金さえ手に入ればそれでいい。それに逃げられないように特別強固な檻を特注してもらったんだ」

やはり、交渉じゃ無理か。

「奪いますか?」
「いや、なるべく穏便に解決したい」
「なら、買い取りたい。いくらだい?」
「悪いな、もう売却済みなんだ」
相手はさっき言ってた国王だろうか。
さてと、どうしたものか。。

何やらミミが子竜と話している。

「ユウ、まずいよ」
「まさか今すぐ暴れるとか?」
「もっとまずいよ。この子の親が近くまで来てるみたいだ」

え、確かさっき親は神竜だとか言ってたよな。

「この国どころか、この大陸が滅ぶよ」

笑えない。

これは手段を選んでられなくなった。

「ご主人様!」

声に振り向くと、そこにはリンと聖女様の姿が。

「町中で竜の噂を聞きつけて、騒ぎになっていないか確認しに来たんですけど」

俺は2人に経緯を説明した。

「商人さん、今すぐその子竜を解放してあげて下さい!」

商人の男は、少し考えに耽っていたが、

「聖女様の頼みとあっては、断る事はできねえな」

さすが聖女様。あれだけ頑なに断られてたのにね、簡単に承諾した。
って、そんな場合じゃなかった。

「ミミ、解放した途端暴れ回るなんてないよな、頼むよ」
「うん、この子自体はおとなしいよ」

商人の男は檻の鍵を開けた。

神竜って、昔エスナ先生と倒した竜王と同種らしいし、そんなのと対峙するなんて、命がいくつあっても足りない。

檻の中からノシノシと歩き出てきた子竜は、一瞥し、ミミと何かを会話して、そのまま彼方へと飛び去っていった。

「ありがとってさ」
「ちょっとだけでも竜のお母さんを見てみたかったなぁ」

ユイ、それ死亡フラグだから。

騒ぎにならずに良かった。

後から聞いた話だが、国王の側近が興味本位で買い取りしたそうだが、聖女様に説明してもらい、事なきをえたそうだ。

結局、リンと聖女様と一緒にディナーに行く事になった。

聖女様行きつけの場所があるというので、案内してもらう。

「特別美味しいというわけではないんですが、落ち着くんですよね」

案内された先は、お世辞にも立派な場所とは言えない、パッと見外見は、少しガタがきている大衆食堂だった。
中へ入ると、店員が聖女様の姿を確認し、奥の個室へ入るように促される。
どうやら、VIPルームのようだ。

広さ8畳ほどの部屋の中央が、掘りごたつ式のように窪んでいた。
驚いたのは、タイルのような床が当たり前のこの世界に、なんと畳があったのだ。
俺が久しぶりの畳を感慨深そうに眺め、触っていると聖女様がその姿を微笑ましそうに眺めていた。

「ナギっていうんですよ。冬は暖かいし、夏は冷んやりなんです」

俺の世界の畳にそんな効果があったかは、定かではないが、見た目まんまの畳に少々懐かしさを感じてしまった。

「今日は私のおごりですので、たくさん召し上がって下さいね」

聖女様に酒を勧められたが、丁重にお断りし、水で奮闘していた。

「すっごく美味しいよ!」
店の見た目がちょっとアレだったので、少しだけ疑っていたが、味の方は絶品だった。
近海で取れたとされる新鮮な魚介類がベースのフルコースだった。

「ユウ様は、きっとすごくお優しい方なのですね」

食事中唐突にそんな事を言う聖女様。
顔を見ると、ほんのりと頬に赤みを感じる。
お酒のせいだよね?

「それに、親友のリンが惚れ込んだ殿方ですし」
「ちょ、ちょっと、サーシャ!」

今度はリンの方が少し赤くなっている。

その後は、聖女様とリンの昔話などでディナーは明け方まで盛り上がった。
ユイとクロが途中で寝てしまったので、お開きになった。
でもなければ、オールだったかもしれない。

大聖堂まで聖女様を送り、俺達も宿屋へと戻ってきた。

ディナーの途中から、何処となくリンの様子がおかしい。
というより、元気がないように見えた。

朝目が覚めると、大聖堂からの使者と名乗る人物が宿を訪れた。
ドアのノックで目が覚めたのだが、相変わらず、部屋の中は他人には見せられない惨状となっているので、というか、見せたくない光景となっていたので、外で話を伺う事にする。

「朝早くにすみません、聖女様が頼れるお方という事で聞いておりますので、伝令に参りました」
「なんでしょうか?」
「単刀直入に申します」

改まった言い方に、どうせいつもの悪い予感しかしないのだが、今回はその中でもワースト1、2を争うほど最悪なものだった。

「人族と魔族の戦争が始まります」

はい?

詳しくは大聖堂で説明するそうなので、みんなを叩き起こして、すぐに大聖堂へと向かった。
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