最後の魔女

砂鳥 ケイ

文字の大きさ
14 / 110

最後の魔女13 教会の闇2

しおりを挟む
「はい、勿論それは承知しています。ですから、アグヌスに戻られるまでの間だけの臨時聖女様としてお勤め頂きます」

 少しだけピリッとした空気に肝を冷やしたが、あんまり反抗的な態度を取っていると危ない気がするので取り敢えず応じることにする。

「それでしたら⋯」


 私がここ王都で臨時聖女の任を授かってから既に数日が経過していた。
 良いこともいくつかあった。
 今までは、大聖堂とは離れた宿舎で寝起きしていたけれど、聖女に任命されてからは、シオン様が使用していた大聖堂内の寝室を利用させてもらっている。
 言われたからではなく、私の方からお願いした。
 だって、ここなら隠し部屋まで直通だしね。
 寧ろここからしか行けないしね。
 一番嬉しかったのは、寝る時まであったうっとおしい監視が居なくなった! 正直もうほんとにやめて欲しかった。途中からなんてもう自己暗示で、誰もいない誰もいないと思って耐え凌いでいたんだから。
 監視が外れた時は、往年の疲れが枷が外れたような喜びが込み上げてきた。
 聖女の仕事といっても、今までとやることは変わらない。シオン様と2人でやっていたことを1人でするだけのこと。
 使いパシリの仕事がなくなったので、その分楽になったような気はするけど、今と昔どっちが良い? って聞かれたら間違いなく昔って答える。
 だって、常に私一人で、周りに気の許せる人がいないのって辛いよ? 鬱になるよ?
 なんだかんだ言って、シオン様は口うるさいお姉ちゃんみたいな感じだった。今になってその有り難みが良く分かる。

 そんなある時、この王都の重鎮を名乗る人物が私に接触してきた。

「聖女はいるか?」

 まだ公務中だというのに、参拝者も治療を求めて来ている人もいるのに、そんなことは御構い無しとズケズケと聖堂内へと入ってくる。でも相手が相手なので、無視する訳にもいかない。ていうか、私の付き人をしているヤンさんが「すぐに挨拶して下さい」と言っている。
 このヤンさんだけど、凄い有能なんだよね。私のスケジュール管理まで担当してくれている。少し口うるさい所はあるけど、私が聖女の公務だけに集中出来るように他を全部やってくれるのだ。雑用まで嫌な顔一つせずにやってくれる。私には勿体無いくらい良く出来た付人なんです。この人だったら、私の力になってくれる気がする。

「私がこの王都で臨時の聖女をしておりますアンと言います」

 私を品定めするかのように上から下へと視線を下ろしていく。
 この人、初対面の人にましてや女性に対して失礼なんじゃないかな!

「まだ若いな。そんな小さななりで聖女の仕事をこなせているのか?」

 悪かったわね! 余計なお世話よ!
 本当なら平手打ちでもかましてる所よ。グッとこらえて、愛想笑いで乗り切る。

「はい、まだまだ覚えることはいっぱいありますけど、精一杯頑張ってます」

 精一杯の作り笑顔。

 あれ?
 ヤンさんの顔が微妙に引きつってない?
 私の作り笑顔がマズいのかな⋯
 などと考えていると、私への興味が失せたのか、重鎮さんは、そのまま修道士の一人と話をして帰っていった。

「さっきの方はミハエル様。この国の大臣の一人です」
「そんな偉い人だったんですね」
「あと、一つ忠告です。作り笑顔の練習をされた方が宜しいかと」
「え、そんなにバレバレだった?」
「それはもう⋯」

 う、うぅぅ、恥ずかしい。穴があったら入りたい。と、取り敢えず今晩から作り笑顔の練習をしなくちゃと心に誓う。

 その日の夜に修道士の人に呼ばれた。
 あの時、ミハエル様と話をしていた修道士の人。

「アン様。ミハエル様から伝言が御座います」

 ほらきた! てかもう来たの? 早くない?
 嫌な予感がするなぁ。

 適当に聞き流そうと思っていたのだけど、そうもいかない用件だった。

「1週間後の公務終了後にミハエル様宅まで来るようにと仰せつかっています。これが地図です」

 可憐な少女の私を家に招待するとか何?
 変な想像しかしないんだけど?
 嫌々ながら私は地図を受け取った。

 寝室へと戻った私は、レイランに会う為に地下へと降りた。

「実は、ミハエル様っていう人の自宅に呼ばれたんだけど、私大丈夫かな?」
「ミハエルといえば、大臣の一人ですね。シオン様の危険視リストに入っていますので、十分に気をつけて下さい。寧ろアン様の身の安全を考えるならば会わない方が得策です」
「でも断ったりしたら、逆に不信感を与えないかな?」
「では考え方を変えましょう。潜入して何か教会の悪事の証拠を掴んで来て下さい」
「むりむり! 潜入なんてむりだよ!」
「何の為の聖女の力ですか?」

 私はジト目でレイランを睨む。

「むー、、レイランって、時々厳しいこと言うよね?」
「此の世界で生きていく為にアン様には強くなって頂く必要がありますから」

 レイランはニッコリと微笑む。

 何その眩しい笑顔!
 私、直視出来ないんですけど! やめて! 目が潰れちゃう!

「いやでも、その、うーん、私に出来るかな?」
「大丈夫ですよ。自信を持って下さい」

 そんなこんなであっという間に1週間が経過し、私はミハエル様宅を訪れていた。

「それで、私に何か御用でしょうか?」
「相変わらずキミは態度がデカイな。私を誰だと思っているんだ?」
「この王都の大臣様ですよね?」
「分かっているならば、もう少し敬いたまえ」

 やな感じだね。何様のつもりなのよ。
 あ、大臣様か。
 でも、こういう人って私は嫌い。自らの権利をチラつかせて私は偉い! だから言うことを聞け! みたいなの、ヘドが出る。
 私が毛嫌いするような目でミハエル様を睨みつける。

「まあいい。お前をここに呼んだ理由を教えてやろう」

 さぁ何処からでもかかって来い! 私は、いつでも逃げれるように準備をしているんだから!
 事と次第によってはすぐに逃げ出す必要があるから。それはレイランからも強く言われていた。
 少しでも危険を察知したら逃げろって!

「前聖女がなぜ殺されたか、お前は知っているか?」
「ふぇ?」

 身構えていたぶん、予想外の質問に一瞬たじろいでしまった。

「教えてやろうか?」

 ニヤニヤしながら私の顔色を伺っている。気持ち悪い。もしかして、私の動揺を誘ってる? 反応を見てる? これって、私がどこまで知っているのか反応を見て判断しようってこと?
 もしそうだとしたら、変なことを口走ったら駄目だよね。
 なるべく平静を保たないと。

「シオン様は聖堂に侵入した賊の手にかかって命を堕としたのではないのですか?」

 うん、間違ってないはず。

「ハハハ、まさか本当にそう思っているのか?」
「ち、違うのですか?」
「聖堂は厳重警備がしてあるのだぞ? 賊如きが侵入出来るはずもないだろう」

 鬱陶しいなぁ、まったく。
 本当は真実を知ってるんだよ! っと暴露しちゃおうかって一瞬思ったんだけど、ミハエル様が遮る。

「殺されたんだよ。教会側の送り込んだ暗殺者にな」

 なんで教会側のこの人が私にバラしちゃてるの?
 何がしたいのこの人?
 それとも教会側の敵? ならば私の味方?

 その後、私の動揺した表情を楽しむようにベラベラとシオン様が殺されてしまった理由や教会の秘密について話し出した。
 私は、わざと動揺したそぶりをしつつ、一言たりとも聴き漏らさまいと耳を傾けていた。
 で、最後にミハエル様が衝撃的な一言を告げる。
 私はなぜ教会の秘密をここまでベラベラと私に喋るのか理解出来なかった。
 だけど、その一言で全て分かった。

「私の養女となれば、お前の身の安全は守ってやる」

 寒気がした。
 ありえない、養女って何?

「養女にして、私をどうするつもりなんですか?」

 本音が出てしまった。
 あまり突っ込んだ質問をすると怪しまれる。
 でも、間違ってない、別に普通な質問のはずだよね。

「聖女を自分の養女に出来れば、行く行くは私も元老院となるチャンスが巡ってくるかもしれんのでな」

 あ、そういうこと。自らの昇進が目的なんですね。
 でも、ちょっとホッとした。だけど、そんなの答えは決まってる。

「お断りします!」

 私はそれだけ告げると、逃げるように部屋から出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です

流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。 父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。 無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。 純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

三年目の離婚から始まる二度目の人生

あい
恋愛
三年子ができなければ、無条件で離婚できる――王国の制度。 三年目の夜、オーレリアは自らその条文を使い、公爵ルートヴィッヒに離婚を告げた。 理由はただ一つ。 “飾り”として生きるのをやめ、自分の手で商いをしたいから。 女性が公の場で立てる服を作るため、彼女は屋敷を去り、仕立て屋〈オーレリア・テイラーズ〉を開く。 店は順調に軌道に乗り、ついに王女の式典衣装を任されることに。 だが、その夜――激しい雨の中、彼女は馬車事故に遭い命を落とす。 (あと少し早く始めていたら、もっと夢を叶えられたのに……) そう思った瞬間、目を覚ますと――三年前、ルートヴィッヒと結婚する前の世界に戻っていた。 これは、“三年目の離婚”から始まる、二度目の人生。 今度こそ、自分の人生を選び取るために。 ーーー 不定期更新になります。 全45話前後で完結予定です、よろしくお願いします🙇

処理中です...