最後の魔女

砂鳥 ケイ

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最後の魔女27 国王の苦難2

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  私とサーシャとキャシーさんは、この国の国王様に呼ばれ、王宮へと案内されていた。
 謁見の間の前まで辿り着いた所で、私とキャシーさんだけ止められてしまった。
 この中に入れるのは聖女であるサーシャだけのようだ。
 ここは王宮。危険は全くないとは言えないけど、サーシャを1人にするのはやっぱり不安がある。

 再びミーアを召喚して、姿を消してサーシャの隣にいるように指示する。
 彼女の眼を借りて、その様を監視することにした。
 サーシャとは念話で話す事が出来るから、これで離れていてもバッチリサーシャの隣にいるようなもの。

 ふふっ、サーシャと私の仲は何人たりとも分かつ事は出来ないのだ。それが例えこの国の王様であっても。なんてね。
 ま、でも事前に国王様の事はミーアに調べて貰って、信用出来ると判断したから問題はないはずなんだけど。

(と言う事で、頑張ってサーシャ)
(ううう。緊張するよ⋯)

 扉の前には槍を構えた衛兵の姿があり、扉を開けてくれた。
 中はどうやら、国王様1人だけみたい。

 事前にミーアを通して何度か見ていたけど、普通のお爺ちゃんにしか見えない。
 まあでも外見だけで人は判断出来ないんだけどね。
 サーシャが礼儀正しく挨拶して、たわいもない会話が続く。
 ここへ呼ばれた理由は知っている。
 こんなに早く呼ばれるとは思ってなかったけど、正直助かった。時間が経てば経つほど不利になるのはこっちなんだから。

 この国へ来た目的は?

「ここへは、聖女としての勉強の為、幼少の頃母が過ごした国を見て見たかったのです」

 どうじゃ、この国は?

「はい、平和でとても良い国だと思います。ですが、この国には、目には見えない裏側に巨大な闇があります」

 お、サーシャが話を切り出したね。

「今回、其方をここへ呼んだのは真意を聞く為じゃ」

(ん。ねえリア、真意って何だろう?)
(んと、今朝方、国王様の耳にちょっとした噂を流しておいたの。その事についてだと思う)
(もう! 何かする時はちゃんと教えてよ! 事前に聞いてれば受け答えだって考えておけるんだからさぁ)
(サーシャなら大丈夫、私は信じてる)
(むむぅ。そうかなぁ?)
(うん、そう。大丈夫だから、話を合わせて)

 ふぅ、危ない危ない。サーシャに言うのを忘れていた。でも上手く責任を免れられた。
 そんな事はさておき、話は核心部分まで進んでいた。
 私の眷属たちが捉えた賊を捕まえている場所へ案内する流れになった。流石に国王様自らが動く事は出来ないみたいなので、代わりに信頼のおける人物を呼んでくれるそうだ。

 ザークスさんって言う側近らしい。ん、ザークス?
 あれ、何処かで聞いた名前だと思ったら、謁見の間に入って来た人物を見てびっくり。

(サーシャ、あの人知ってる)
(え、私は知らないよ?)
(うん、サーシャのお母さん、アンの記憶の中で会ったよ。確か、教会の事を教えてくれた先生だったはず。アンが凄くお世話になった少なくとも教会寄りではない良い人だよ)
(そう、お母様が⋯後でお母様のこと聞いて見てもいいかな?)
(うん。直接アンから聞いたって言えば大丈夫だと思う)
(ありがと)

 自分の母親のことを知ってる人に出逢えたら、嬉しいよね。

 謁見の間からサーシャとザークスさんが出てくる。
 合流して、一緒に馬小屋へと向かう。

(ミーアは悪いけどこのまま国王様を見てて)
(分かったわぁ、でも私の事恐らくバレてるわよ?)

 え、姿を隠してるのにバレるはずが⋯あ、本当だバレてた。

(リアちゃん、どうするのぉ? 姿を見せる?)
(うん、見せて良いよ。後、何か聞かれても私に繋がる事以外には応えて良いから)

 さて、賊共を捉えている馬小屋の前まで辿り着くと、見張り役と思われるゴツい男たちに出迎えられた。
 捉える時に協力してくれた鷹の牙の連中なのだけど、別にこちらから頼んだわけではなく進んで協力を申し出てくれた。
 当然の事ながら、第3者には私との関係を知られたくない訳で、その事について話す事は禁止してい⋯

「姐御! お疲れ様っす!」

 おい! ちょっと、何言っちゃってくれてるの! 私たちは無関係って事になってるのに!

「姐御?」

 一番後ろにいて、尚且つ視線の先にいた私を全員が振り返る。
 咄嗟に、私も誰もいない後ろを振り向き誤魔化した。誤魔化せたかどうかは分からない。私じゃありませんアピールをして、あいつが可笑しな事を言ってるんだと思わせなければならない。

 そのままなるべく誰とも目を合わせないように見張り役の横を通り過ぎた。
 ちょっとあんたこっち見すぎ!
 私に冷や汗をかかせた責任、後でちゃんと取って貰うから。覚えてなさい。

 馬小屋の中へと入ると、賊たちは既に意識はあるのか、目を開けて座り込んでいた。
 口には猿轡と手足はロープで縛られていた。

「この者たちが今回、診療所を襲った者たちです」

 サーシャが説明する。その数、ざっと18人。

「こ、これは一体どうやって捕まえたのですか?」

 ザークスさんが、驚いている。
 だよね、どう見てもサーシャ1人でやったとは思われないよね。
 まぁ、結果的には私が1人でやったんだけど、それすら信用して貰えるとは思えない。

「それは俺たち、鷹の牙が捕まえたのさ」

 馬小屋の奥からドヤ顔で登場したのは、鷹の牙のボスでもあり情報屋でもあるゲイルだった。
 事前にゲイルとは打ち合わせしていて、今回診療所を救ったのは、ゲイル率いる鷹の牙という事になっている。
 私とは、何の関係も⋯

 私にウインクをかましてくる。
 あんたたち⋯後で覚えてなさいよね。

 その後、ゲイルは打ち合わせ通りに、情報屋として教会側が以前から良く思っていなかった診療所を襲撃する話を聞き、それの阻止を行なったと掻い摘んで説明した。

「本当にそれは教会が関与しているのかね?」
「おいおい、俺たちの情報網を舐めて貰っちゃ困るぜ。何だったら、あんたの過去の経歴や今履いている下着の色だって分かるぜ」

 どう見てもハッタリだろうに、なんで下着?
 ほら、ザークスさん少しひいてるじゃん。

「教会にとって、診療所は目の上のたんこぶなんです。教会は、年々治療を求める人々が減っている事に頭を悩ませていました。そしてその対策として、診療所に目をつけたんです」
「ちょっと待って下さい。同じ治療として確かに診療所が無くなってしまえば、人々は教会を頼らざるを得ないでしょう。ですが、診療所の基本的スタンスは、教会から離れた場所、足を運べない人の為に教会のある中心地から離れた場所に対して設立の許可が与えられています。また個人経営ですので、教会と違い幾分かのお金を要求しています。無料奉仕をモットーとしている教会側がそもそも診療所を目の敵にするのが間違っていると思うのですが⋯」

 何も知らなければ確かにそういう考えに至ると思う。
 でも、ザークスさん、教会は貴方が思っているような綺麗なものじゃないんだよ?

「ザークス先生・・。母から聞きました。幼少期貴方には良くして下さったと。本当に感謝しています。貴方が教会に最後に訪れたのはいつでしょうか?」
「やはりご存知でしたか。はて、最後ですか? 月1の視察をしておりますので、先月の末頃ですね」
「その時に治療に訪れていた国民の皆様に何も感じませんでしたか?」

 サーシャが言いたい事は良く分かる。
 王政がしっかり教会を管理、統括出来ていればそもそもこんな事にはなっていたいのだから。
 アンだって、あんなに辛い体験をせずに済んだのだから。

「そうですね、毎回多くの治療を求める人の列が出来ているくらいで、特に変わった点は⋯」
「そうですか⋯⋯それは少し残念です。教会は、参拝者、治療に多額のお布施、お金を強要しているんです」
「そんなまさか⋯お布施とは本来、御礼として自らの気持ちで教会にお供えするものです。それは必ずしも金品の類いではなく、食料であるとか、造花用の花だったり、衣類などの使わなくなったもの、その品々を有効活用してくれる人へと行き渡るように教会側が計らうと言うものです」
「流石に御詳しいですね。ですが、実際その通りのお布施になっていないのが現状です。何よりも許せないのは、決して恵まれていない人々までもが、高額なお布施を強要され払わざるを得ない。そしてその巻き上げたお金は教会の一部の人たちが自分たちの私服を肥やす為に好き勝手に使っているのです」
「仮にそれが事実だとしたら、どうしたって治療が必要な連中は例え有料だったとしても遠方まで脚を運び安い診療所を利用するって筋書きさ」

 さも利口げに語るゲイル。
 まぁ、適当に相槌を打って聖女様の援護をするように言ったのは私なんだけど。

 頭を抱えてしまったザークスさん。

「ザークス様、こいつらはどうしましょう?」

 衛兵の1人が族を指差し、確認する。
 元々連行していくつもりだったのだろう。人数があまりにも多かった為、今し方追加で援軍が到着していた。

「ええ、そうですね。一応問い掛けますが、貴方たちは誰の指示で動いていたのですか?」

 賊の一人に投げ掛けるが、口を紡いでおり、無反応だった。

「お願いします。この国の為なのです。正直に教えては下さいませんか?」

 サーシャがまるで女神の微笑みでも見せるかのように問い掛ける。
 するとどうだろうか、黙りを決め込んでいた者たちが、次々と口を開く。

「俺たちは、直接教会からは命令されてねえ」
「ああ、だが仲介人を通しての正式な依頼だったな」
「気前良く前金で金貨2枚だったからな。断る手はなかったぜ」
「まあ、こういう稼業してりゃ、自ずと耳に入ってくらあ。教会が診療所を良く思ってないってな」

 1人、また1人と暴露していく。
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