最後の魔女

砂鳥 ケイ

文字の大きさ
55 / 110

最後の魔女54 盗賊団ヴォルス4

しおりを挟む
私は今絶賛逃走中。誰もバッカスの脚には敵わない。走り出してしまえばこっちのもの。取り敢えず逃げる。逃げるったら逃げる。
 あんな化け物相手にしてられない。少なくとも何の準備もせずに高位悪魔と対峙なんて出来ない。

「お姉様を侮辱した輩をみすみす見逃すんですか!」

 リグにげんこつをお見舞いする。
 涙目になり抗議してくるリグは取り敢えず置いておく。

 とてつもなく大きな音が聞こえたかと思えば、突然背後が爆ぜた。
 恐る恐る背後を振り向くと、先程までいた砦が火の海に包まれていた。

 同時に見たくないものが見えてしまった。

 何か得体の知れないものが真っ直ぐ猛スピードでこちらに向かってくる姿。あの悪魔に違いない。

 何で滅多に会うことが出来ない悪魔にこう何度も何度も遭遇しちゃうかな⋯。
 でも、流石にこれは覚悟を決めるしかないかもしれない。

「先に言ってて、シュメルハイツで合流」

 猛スピードの場所からかっこよく飛び降りる。
 リグがついて来ようとしたけど、眼でそれを制した。
 戦えないのなら足手まといにしかならないから。

 さてと、準備準備。

 身体強化一式を自身に施す。
 ある一定のダメージまでを肩代わりしてくれる防御障壁は結局12枚しか間に合わなかったか。
 これ、発動までに結構時間が掛かっちゃうやつ。地下から逃げ出した時から準備してたけど、12枚か⋯。リグの時は、確かこの倍くらい張ってたけど殆ど破られちゃったんだよね。

 私の姿を視認した悪魔は、そのスピードを徐々に落とし、やがて止まった。

「ふむ。逃げるのを諦めたか。ならば我の計画を邪魔した報いを受けて貰うぞ。あぁ、ついでにあの悪魔を解放してもらう」

 リグはついでなのね。

「別に。広い場所に移動したかっただけ」

 馬車の方は見逃してもらうべく、ヘイトをなるべく私が稼がないといけない。

「私は、魔女シュタリア・レッグナート。最後の魔女にして貴方に終わりを告げる者」

 よし、決まった。我ながら中々に決まったと思う。
 悪魔の表情が変わる。怒らせるつもりだったのだけど、怒りというよりも少し驚いてる?

「魔女だと? 笑わせるな。魔女は絶滅したと聞き及んでいる。大方魔族が成り代わっているだけなのだろう。まぁいい。もうすぐ死者となる者の戯言など気に置く必要もない」

 コイツ、私を信用しないばかりか名乗ってるのに名乗らないつもりなの?
 しょうがない、少し下手に出てみるかな。

「これから死に行く哀れな私めにどうか貴方様の名を」

 私にここまで言わせた罪。その命で償ってもらうから。
 私がこうまで相手の名に拘るのには意味がある。
 高位悪魔には位階序列があり、強さがある程度決まってくる。推定、リグ以上だとすれば9位以内。
 私だって正直死にたくはない。覚悟を決めたと言っても勝ち目のない戦いに身を投じるなんて真っ平ごめん。

「下等種族に名乗るのも遺憾だが、まぁいいだろう。悪魔大神官の一人、第7位階メフィスト・フェレスだ」

 うわあ⋯やっぱりリグより上か。

 え、何⋯

 周りの景色が一変していく。

 今の今まで見晴らしの良い草原だったにも関わらず、赤黒い世界へと誘われてしまった。
 どういう原理なんだろ。

「逃げようなどとは思わぬように結界を張ったまでだ」

 マズい。

 結界を張られたことが?
 違うよ。私をただの雑魚だと思っているのなら、わざわざこんな手の込んだことをする必要はないはず。
 つまりは、私を強敵だと思っているということ。油断している相手に付け入るのは簡単だけど、どうやらそれは望めないみたい。

 不意に背後から重圧を感じた。

「たかだか小娘相手に随分用意周到ね」

 黒いローブを羽織った軍勢大凡20弱。
 私の背後から槍を構えて、その隙を狙っていた。

 《眷属召喚サモンベテルギウス

 現れたのは、魔界でも一緒に暴れてくれた闇王ベテルギウス。その強さはお墨付。

「背後のあれ、任していい?」

 ギウスはチラリと背後ではなく、前方の悪魔に視線をやる。

「御意。すぐに蹴散らし、加勢しよう」

 これで後ろのことは何も考えなくていい。目の前の悪魔にだけ集中出来る。

 闇色に紛れた無数の剣が上空を舞っていた。
 悪魔による先制攻撃。降り注がれる剣には猛毒が塗られていた。掠りでもすれば致命傷は免れない。

 コイツ⋯不可視インビシブルを使い隠蔽してやがったな。

 私には障壁があるからダメージは追わない。だけど、守りの要をなるべくは擦り減らしたくない。

 《聖域展開セーフティドーム

 私の魔力が続く限り展開される絶対防御壁。

 甲高い音を発しながら降り注がれる剣が聖域に阻まれる。

 てっきり本物の剣かと思ったけど、弾かれ勢いを失った剣は地面に散らばる前に消失していく。

 正面からは、悪魔が自身の拳を肥大化させ、聖域を殴っていた。

 殴られる度に魔力がゴッソリと持っていかれるのが分かる。

 聖域展開セーフティードームを解除し、大きく右へ跳躍する。
 跳躍中に私の背丈程度はある火炎球を5個全てを悪魔に投擲する。

 悪魔は持っていた剣を乱雑に振るい、私の火炎球を掻き消してしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...