最後の魔女

砂鳥 ケイ

文字の大きさ
93 / 110

最後の魔女92 エルスレインの魔の手1

しおりを挟む
慌しくドンドンとドアを叩く音と共に金属音の擦れ合う音が微かに聞こえる。鎧を着た兵士に違いない。そういえば、シルフィはお忍びで幻想花を探してたんだっけ。もしかしてここに居るのがバレたのだろうか?

「私が出ますわ。シルはここで待っていてね」

 ターニャさんとアリシアさんが入り口へと向かう。

「お姉様、あの人が全快したことがバレちゃうけどいいんですか?」
「本当はよくない。もう少し考える時間が欲しかったけど、仕方ない」

 だって、ターニャさんが話をしないとたぶん、シルフィが捕まっちゃうかもしれないから。
 だけど、これで術者に知られてしまうのが早まったのも事実。すぐにでも次の手を打ってくるかもしれない。打たれる前にこちらから打つしかない。

「ええ、それではこれで失礼しますわ」

 ターニャさんが戻って来た。

 やはりシルフィを捜索していた衛兵だったようだ。事情を説明して帰って貰ったみたいだけど。

 私はこの衛兵を尾行する為に眷属シャナリオーゼを召喚していた。

(久し振りに呼び出したかと思えば、いきなり仕事かにゃ)

 久し振りに呼び出したかと思えば、文句とはいい度胸ね。

(主人の命令は絶対。無駄口叩いて見失ったらお仕置きだから)
(にゃああ!)

 駄猫こと、にゃもを尾行役に任命する。勿論、周りにバレないように不可視の魔法を使っている。
 私の考えが正しければ、シルフィの行動を疎ましく思っているのは呪怨を仕掛けた本人だと思うから。

 さて、動くなら早い方がいい。

「ターニャさん、私を王様の所に連れて行って下さい」
「お姉様、それは危険です。いつぞやの剣王の事もあります。行かれるのでしたら私もお供します」
「大丈夫。無茶はしないから。それにリグには別に頼みたいことがある」

 リグの頭を撫でて何とか了承の許可をもらう。にしてもリグの外見が大人になっちゃったから、撫でる為にいちいちしゃがんで貰わなくちゃいけないのは少しだけ不便。

「リアさん、貴女は一体⋯」

 また怪しまれてしまったみたい。こんな時は⋯

「私はただの正義の魔技使い」

 新しく魔技使いと言うバリエーションを考えてみた。まぁ、冗談はさておき急いだ方がいいのだけど、ターニャさんは病み上がりだから今晩は安静にしてもらい、明日の朝に国王様に会いにいく運びとなった。

 私たちは個室を一室当てがってもらい、作戦会議を練っていた。

「お姉様の慈悲は神をも凌駕していますね」
「神様はリグの方じゃ」
「私は元です。それに神様じゃなくて、十二星? それに今は正反対の存在ですよ、フフフ」

 リグは妖艶な笑みを浮かべる。

 まるで悪魔のような笑み。あ、悪魔だった。まぁ、そんな事より明日の朝までにやっておく必要があることをリグに伝える。
 それは、国王様が何らかの精神汚染の影響を受けていないかの確認だ。
 急に豹変してしまった態度から恐らくそう言うことなのだろうと思っている。でもそれが見破れるのは解析が使える私だけ。リグには出来ないから頼みたいのはもう一つの方。
 それは、呪怨が使われた現場を特定して欲しい。あれだけのレベルの呪怨を施そうと思えば、それなりの準備とそれなりの時間、場所が必要になるはず。また使われても困るから現場を押さえて破壊して欲しい。まぁ、呪怨を行使するには何日も掛かる儀式が必要だからすぐすぐは大丈夫だと思うけど。

 リグは元気よく返事をし、そのまま一目散で駆け出してしまった。
 あーあぁ『バレないように』って言葉を言い忘れた。
 まぁ、リグなら上手にするよね、たぶん。

 そのまま一人寂しく、部屋で待つこと数時間。
 はぁ、お風呂が恋しい⋯。お風呂に入れないだけで、こうもイライラするとは⋯⋯むむぅ。

(ご主人、問題発生にゃ。さっきの兵を尾行したら周り回って王様の所に報告が挙がったにゃ)

 駄猫からの定時連絡だった。
 全く持って報告は要点を簡潔かつ明瞭にっていつも言ってるのに。

(で?)
(さっきのお嬢ちゃんを今すぐに連れて来るように命令が下されたにゃ)

 ふうん。まずは娘から事情を聞き出すのだろうか。
 もしかして、母親が全快したことは報告に挙がっていない?

 またしてもドアをノックする音が鳴り響く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です

流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。 父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。 無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。 純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

三年目の離婚から始まる二度目の人生

あい
恋愛
三年子ができなければ、無条件で離婚できる――王国の制度。 三年目の夜、オーレリアは自らその条文を使い、公爵ルートヴィッヒに離婚を告げた。 理由はただ一つ。 “飾り”として生きるのをやめ、自分の手で商いをしたいから。 女性が公の場で立てる服を作るため、彼女は屋敷を去り、仕立て屋〈オーレリア・テイラーズ〉を開く。 店は順調に軌道に乗り、ついに王女の式典衣装を任されることに。 だが、その夜――激しい雨の中、彼女は馬車事故に遭い命を落とす。 (あと少し早く始めていたら、もっと夢を叶えられたのに……) そう思った瞬間、目を覚ますと――三年前、ルートヴィッヒと結婚する前の世界に戻っていた。 これは、“三年目の離婚”から始まる、二度目の人生。 今度こそ、自分の人生を選び取るために。 ーーー 不定期更新になります。 全45話前後で完結予定です、よろしくお願いします🙇

処理中です...