世界の理

医白影(いしかげ)

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3章

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「んー、いい朝。やっぱベッドはいいな。」
 きちんと宿の手配も頼み、いつも(野宿)より気持ちの良い朝を迎えた双子。急いで支度を終わらせ、朝食を食べに街にでた。
 闘技会の開催はもともと予定されており、街には出場者と思われる男たちがたくさんいた。そんな中で朝食を食べ、予定の時刻に双子は闘技場にやってきた。
「観覧者でしたらあちらですよ?」
「いや、出場者だよ。」「名前はミーシャとサーシャ。」
「え、あ。サーシャ・ディアン様、ミーシャ・ディアン様でよろしいですか?」
「そうそう。」
「こちらが出場者証になります。」
「ありがとう。」
「では、お気をつけて。」

「ほう。これがこの国の闘技場かー。サーシャ、ボクらはいつ出場?」
「えーと確か私が3試合目だから、ミーシャは2試合目だね。相手は...魔剣使いなんて会ったことないんじゃないかな。」
「じゃあ手加減しないとだね。」
「でも、仮想空間展開するみたいだよ。」
「一瞬で試合終わったら不正だって言われそうじゃん。」
「それもそうか。」
 双子がペチャクチャ喋っているのを、他の出場者は不審な目で見ている。そうこうしているうちに、闘技会が始まる。
「レディースアンドジェントルマン!今月の闘技会は皇室主催だあ!その分優勝への門は狭くなるが、賞金はいつもの倍近いぞ!観覧者の者どもよ、優勝予想の賭けは済んだか!?出場者の者どもよ、覚悟はいいか!?
一獲千金目指して、レッツゴオオオ!」
 司会が声を張り上げると、会場のボルテージは一気に上がった。
「なあ、誰に賭けたよ?」
「いやー、あいつしかいねーだろ。なんてったって我が国の将軍とやるんだぜ?」
「そうだよな。でも一回戦目の相手見たかよ。他国から来たらしい。」
「かわいい女の子だったな。まあ、無理だろ。一瞬で終わるだろうな。」

 その試合は会場の予想通り、一瞬で終わった。
 ただ1つ予想と違っていたのは、倒れている人が女の子ではなく、屈強な男であったことだ。
「弱すぎない...?」
 手加減したつもりだったミーシャは、会場の誰よりも驚いていた。控え室で映像を見ているサーシャも拍子抜けしている。
「ミーシャが本気をだしたら、1人でこの国征服できそうね。」
 あろうことか、こんなことまで考えている。

 次のサーシャの試合は、相手がなんと棄権して終わった。
 勇気あるものは撃沈し、他の人は棄権したために、双子は楽々と決勝まで駒を進めた。決勝戦では、この国の軍の将軍が挑戦者と戦うことになっていた。
「準備運動にもならない...。」
 ミーシャはしょんぼりと肩を落としてため息をつく。魔物の方がまだ強かった...。
「...おかしくない?」
 サーシャは悩みながらミーシャに問う。
「こんなに弱い人ばかりだったら、この国は戦争仕掛けられたら、即負けちゃうよね。なんで他の国は攻めないのかな?」
「王様の外交手腕が良いのかな?周りに国は...あったもんね。なんでだろ。」

 2人でかかってこいという申し出に、双子は消極的だった。この国の将軍ともあろう人を瞬殺してしまったら、この国を敵にまわす可能性もあるかも。
 いやいや会場で対戦相手を待つ双子の前に姿を現した将軍を見て、双子は自分達の疑問の答えがわかった。
 その将軍は、見た目40歳くらいのおじさまである。猛将というよりは智将。190cmほどありそうな大きめの体と、優しそうな笑顔が目につく。
 しかし双子にはわかった。その歩き方、立ち方、どれをとっても隙がない。こんな人が将軍がいたら、戦争も強いだろう。確かに、兵士はこの闘技会には参加していなかったし、軍の強さは計り知れない。
「君たちは...!」
 将軍は双子をみて少し驚いたが、すぐ元の笑顔に戻った。
「随分と可愛らしい容姿をしているが、なかなかの手練れのようだ。」
「将軍もなかなかやるね。山の中の魔物くらいは、1人でも倒せるでしょ。なんで放置してるの?」「ボクら来るの面倒だったよ。将軍に勝ってちゃんと賞金貰わないと、割に合わないや。」
「そうか。なぜ放置しているのかは、私に勝ったら教えよう。今は目の前の試合を楽しもうじゃないか。」
 その言葉と同時に、仮想空間(死んでも復活する空間。展開できる者は数少ない。)が展開された。
「仮想空間まで展開できるの?良い魔導師がいるんだね。」
「おかげさまで。こちらも惜しみなく力を発揮できる。さあ、2人一気にかかってきて良いんだぞ。もちろん、武獣レイドを使っても構わない。私も使わせて頂こう。」
 どこからともなく一匹の黒の犬出てきて、将軍の体に擦り寄った。その犬を将軍が愛おしそうに撫でた途端、犬は細身の剣へと変わった。それをみた双子は、隠していたレイドをだした。サーシャのレイドは白と黒の2匹の蛇、ミーシャのレイドは白と黒の2匹の梟である。そして蛇は2つの杖に、梟は2つの剣に変わった。

「「「さあ、始めよう!」」」
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