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Chapter.1 シスコン、異世界へ。
1-5:シスコン、冒険者になる。
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コワモテの巨漢、リカルドの営む宿屋、【疾風の穴熊亭】にお世話になって、一週間ほどが経とうとしていた。
その間、山賊のアジトに金を漁りに行ったり、別の山賊団に襲われて返り討ちにしたり、この世界の一般的な服を買ったり、リカルドの作る美味しい料理に舌鼓を打つなど、それなり異世界生活を楽しんでいた。
もちろん、姉さんや神の情報を集めることも怠らない。が、この世界は情報伝達の手段が少ないのか、他の街の話なんかはあまり入っては来ないようだった。
生活費に関しては貯金箱を割ることでまだ余裕があるが、これもいずれは尽きるだろう。今のうちに、お金を稼ぐ手段というのを見つけておいた方がいいかもしれないな。
ということをリカルドに相談していたら、リカルドはなんてことはないように言った。
「そんならお前、冒険者になるのはどうだ?」
「冒険者?」
「ああ。犯罪歴が無ければ、どんなやつにもなれる職業だ。一攫千金も夢じゃねぇ。かく言う俺も、元々冒険者をやってたクチなんだがな」
なるほど。リカルドの常人離れした肉体は冒険者時代に培われたということか。
さて、冒険者。ネット小説なんかでよく聞く職業だが、この世界の冒険者はどんな風になっているのだろうか。
リカルドに詳しく聞くと、彼は昔を懐かしむような感じで話し始めた。
「そうだな。冒険者ってのは、てめぇの命をチップに金を稼ぐってイメージが強いが、その実情は何でも屋みたいなものだ。冒険者にはランクってのがあって、そのランクが上がっていく毎に受けられる依頼が難しくなっていくんだ」
「何でも屋?」
「ああ。それこそ最低ランクのGランクに回される依頼の中には、家の中を掃除して欲しいだの、屋根を修理して欲しいだのっていう依頼も少なくねぇ。だから、何でも屋さ」
「なるほど」
「ま、その依頼が悪いってわけじゃねぇんだがな。塩漬けにされた依頼……貼り出されてから、長期間達成してねぇ依頼は、大抵がそんな何でも屋じみた依頼だ。それらを効率よく達成することが出来れば、通常の依頼で貰えるよりも多くのランクポイントが貰える。ま、新人のヤツらってのは、そんな地味な依頼よりも華々しい依頼ってのを好む傾向にあるがな。モンスター討伐とかよ」
「ふむ」
「それにランクの高い冒険者なら色々な場所を転々としているやつもいるだろう。冒険者は、国に縛られないからな。お前さんの探してるっていう大切なもののことも分かるかもしれねぇ。どうだ、悪い話じゃないとは思うが」
ふむ、確かにその通りだ。効率よく依頼をこなしてランクの高い冒険者になれば、他の高ランク冒険者とも接点が出来るかもしれない。そうすれば他の場所の情報も手に入りやすくなる、か。
ルトの名前が有名になれば、もしかしたら姉さんにその名前が届くかもしれない。そうしたら、姉さんの方から何かしらのアプローチがあってもおかしくないだろう。
七つの大罪の力が公になってしまうかもしれないデメリットはあるが、そこは上手い具合に言い訳でも考えておこう。それにこの世界にも七つの大罪という概念があるか分からないからな。特に問題ない可能性もある。
「よし、冒険者になろう。それで、冒険者になるにあたって必要なものはあるか?」
「いや? 特にねぇな。字が書けないなら代筆を頼めるし、武器や防具なんかを常日頃から持ち歩いてる奴もそこまで多くねぇ。着の身着のままでも大丈夫だと思うぜ?」
「分かった。早速向かおうと思う」
「おう、頑張ってこい。冒険者ギルドの場所は、一度中央通りに出てから噴水広場に行って、そこを右に進んでいけばすぐだ」
「助かる」
この一週間でこの街の地理もそこそこ頭に入れたが、知らない場所も多い。少しずつ覚えていくことにしよう。
街や周辺の地図なんかがあると楽なんだがな。冒険者ギルドの方で取り扱ってたりとかしないだろうか?
俺は今日の分の宿代をリカルドに渡し、【疾風の穴熊亭】を後にする。
今俺のいる交易都市はアルダートという名前があり、交易都市アルダートはアルダート伯爵領の領都でもあるようだ。
アルダート伯爵家はプラキア王国の貴族であり、この交易都市アルダートはプラキア王国の領土でもある。
まだこの世界の国については勉強していないので何とも言えないが、プラキア王国はこの世界の中でも比較的に安全な国だという話だ。
種族間での差別が無く、また国力も強いため他の国に攻められることも少ないのだとか。
戦争に怯えずに、平和に暮らしていける国。それが、プラキア王国という国だそうだ。
リカルドに教えてもらった通りに道を歩いていき、数分。俺は目当ての冒険者ギルドの前に立っていた。
建物自体の高さはそんなに高くないだろうか。二階建ての、横に広い建物だ。
玄関口にはデカデカと看板が掲げられており、そこには剣と杖の絵が交差するように描かれている。
入口には扉なんかはないようで、人の流れに乗ったまま中へと入っていく。
冒険者ギルドのロビーは吹き抜けになっているらしく、高い天井が目に入った。視界の端には二階に上がるための階段が見える。
入口を入ってすぐ左側には、大きな長机がいくつかと、丸椅子が何脚も置いてあった。奥からは美味しそうな匂いが漂ってくるので、恐らくここはギルド運営の食堂のようなものなのだろう。
右手側は広くなっており、いくつかの掲示板のようなものが見て取れた。恐らくあれが冒険者への依頼を貼っているボードなのだろう。
そのまま周りを確認しつつ進んでいくと、正面にはいくつかの窓口に別れたカウンターがあった。あれだ、地球で言うところの区役所みたいな感じだな。
カウンターの上には、それぞれの受付の内容が書かれているようだ。えっと、俺が行くべきは冒険者登録のカウンターか。
物珍しそうに周囲を眺めながら、俺は冒険者登録と書かれたカウンターの前に立った。
「冒険者への登録でよろしいでしょうか?」
「はい」
そこにいたのは、金の髪をポニーテールに纏めた美人な女の人だった。顔立ちが違うから何歳くらいというのは分からないが、高くても20代前半だろうということは分かる。
透き通るような声を聞き、ああ、この人はこの冒険者ギルドの看板受付嬢なのかもしれないなと思った。
「本日あなたの登録をサポートさせていただく、ミザリーといいます」
「俺はルト。よろしく」
「ではルトさん。代筆は必要ですか?」
「いや、自分で書けるよ」
「では、こちらの用紙に必要事項を記入してください」
そう言って彼女が取り出したのは、リカルドが宿帳として使っていた紙よりも質の良さそうな紙だった。羊皮紙……では無さそうだが。
俺はそれとペンを受け取り、冒険者登録に必要な事柄を書いていく。
名前はルト。年齢は……まぁ、そのまま十七歳でいいだろう。出身は……書かなくてもいいのか。助かる。
後は得意な武器種……基本的にアワリティアを使うから、剣でいいだろうか。魔法などは、使ってみたい気持ちもあるが使えないからな。空欄にしておこう。
記入の終わった俺は、紙とペンをミザリーさんに返した。
「はい、ありがとうございます。この情報をもとにルトさんのギルドカードを作成いたしますので、少しお待ちください」
「分かりました」
そう言うとミザリーさんは、紙を持って奥の部屋へと入っていった。
さて、この空き時間に少し周りを確認するとしようか。
俺はおかしく見えない程度にキョロキョロと周りを見る。それこそ、はじめての登録で緊張している男に見えるだろう。
実際、本物のファンタジー的な冒険者ギルドに興奮はしているのだが。
すると、複数人の冒険者が俺を見ているのが分かった。
うーむ、これはあれか。テンプレ展開的なあれだろうか。
新人に絡むうだつの上がらない冒険者……実際にそんなことをしたら、確実に何かしらの処分を受けそうなものなのだが。もしかしたら冒険者同士の喧嘩は、止められていないのかもしれないな。
もしくは、彼らがミザリーさんのファンという線もある。ただその場合、ミザリーさんが冒険者登録のカウンターにいる限り新人が絡まれるということになるのだが……この視線の意味はなんだろうか。
絡まれるくらいなら、まぁ、いいのだが。
居心地の悪い中しばらく待っていると、奥からクレジットカードサイズの何かを持ったミザリーさんがカウンターに戻ってきた。
「こちらがルトさんのギルドカードになります。冒険者についての詳しい説明は必要ですか?」
「一応お願いします」
「かしこまりました。では、説明させていただきます」
ミザリーさんの話してくれた内容をまとめると、以下の通りになる。
リカルドに聞いた通りに冒険者はランク制になっており、GからAまでのランクが存在しているという。
また、Aの上にはSというランクもあるみたいだが、Sランクとは人間を軽く超越するような人が至ることの出来るランクだそうだ。つまり、実質Aランクが人間としての最高到達点ということだろう。
ランクは依頼をこなしたり、モンスターの素材を納品したりすることで上がっていくようだ。ランクポイントというのを貯めていき、それが一定の水準に達したら次のランクに上がれる……といった感じだ。
ギルドカードには俺が記入した情報と、現在のランクや討伐記録なんかが載っているらしい。これだけやけにオーバーテクノロジーな気もするが、ファンタジーの世界にヤボを言うものじゃないな。きっと、大昔の錬金術師がなんやかんやして作り上げたのだろう。
ギルドカードは身分証の代わりにもなるようで、失くした場合の再発行には1ゴル銀貨ほどかかるらしい。
受けられる依頼は、自分のランクの1つ上まで。ただし何回も依頼を失敗するとランクの降格、あるいは冒険者登録を抹消される可能性があると。
だから、身の程に合った依頼を受けてくださいねと、ミザリーさんは言う。
聞きたいことはあらかた聞けたので、礼を言ってギルドカードを受け取って依頼ボードの前に移動する。どうやら俺に向けられていた視線は消えたようだ。恐らくミザリーさんのファン、だったのだろう。仕事をしないでいいのかは甚だ疑問だが。
「さて、これがGランクの依頼か」
そこにあったのは、ほとんどが街の中で完結する依頼だった。ものを探してほしいとか、片付けてほしいとかだな。
そのほとんどが依頼を出してから受けられてないみたいで、いくつかの依頼にいたっては数年、十数年単位で貼られているものもある。塩漬けにしても少し漬け過ぎではないだろうか。
俺はその中から、ものを片付けてほしいという依頼書を片っ端から取っていき、受付カウンターへと持っていく。
そこにいたのは、ミザリーさんとは毛色が違うものの、赤い髪で顔立ちのいい美人な女の人だった。ギルドの受付嬢というのは、美人であることが条件なのだろうか。それにしては、男性の方は筋骨隆々のマッチョメンばかりなのだが。
「こんにちは。依頼をお受けですか?」
「ええ。これらの依頼を受けたいのですが」
俺が持ってきた依頼書を確認した赤い髪の受付嬢は一瞬、驚いたような表情を浮かべてこちらに向き直った。
「こちらの依頼を受けてくれるのは、ギルドとしてはとても助かりますが……その、大丈夫でしょうか?」
「ええ、まあ。とりあえず、Gランクの依頼がどんな感じかを確かめたかったので」
「大丈夫ということであれば、よろしいのですが……」
赤い髪の受付嬢は心配そうな表情を浮かべて、それぞれの依頼書にスタンプのようなものを押していく。聞けば、このスタンプを押してある依頼書は、既に受けている冒険者がいることを指しているらしい。
「では、ギルドカードの提示を」
俺が先ほど作ったばかりのギルドカードを渡すと、なにやら四角い板のような物の上に置かれた。
その板が魔法陣のような、文字と図形が合わさった光を浮かべ、ギルドカードに吸い込まれていく。
「はい。これでギルドカードにあなたがこの依頼を受けたと登録されました。それでは、気をつけて行ってらっしゃい。……えっと」
「俺はルト。よろしく」
「はい、よろしくお願いします! 私はモニカって言います!」
「モニカさん、よろしく。では、行ってきます」
俺はモニカさんからギルドカードと依頼書を受け取り、ポケットに入れるように見せかけてグラの中に収納する。
さて、初めての依頼だ。それなりに気合いを入れてやらないとな。
その間、山賊のアジトに金を漁りに行ったり、別の山賊団に襲われて返り討ちにしたり、この世界の一般的な服を買ったり、リカルドの作る美味しい料理に舌鼓を打つなど、それなり異世界生活を楽しんでいた。
もちろん、姉さんや神の情報を集めることも怠らない。が、この世界は情報伝達の手段が少ないのか、他の街の話なんかはあまり入っては来ないようだった。
生活費に関しては貯金箱を割ることでまだ余裕があるが、これもいずれは尽きるだろう。今のうちに、お金を稼ぐ手段というのを見つけておいた方がいいかもしれないな。
ということをリカルドに相談していたら、リカルドはなんてことはないように言った。
「そんならお前、冒険者になるのはどうだ?」
「冒険者?」
「ああ。犯罪歴が無ければ、どんなやつにもなれる職業だ。一攫千金も夢じゃねぇ。かく言う俺も、元々冒険者をやってたクチなんだがな」
なるほど。リカルドの常人離れした肉体は冒険者時代に培われたということか。
さて、冒険者。ネット小説なんかでよく聞く職業だが、この世界の冒険者はどんな風になっているのだろうか。
リカルドに詳しく聞くと、彼は昔を懐かしむような感じで話し始めた。
「そうだな。冒険者ってのは、てめぇの命をチップに金を稼ぐってイメージが強いが、その実情は何でも屋みたいなものだ。冒険者にはランクってのがあって、そのランクが上がっていく毎に受けられる依頼が難しくなっていくんだ」
「何でも屋?」
「ああ。それこそ最低ランクのGランクに回される依頼の中には、家の中を掃除して欲しいだの、屋根を修理して欲しいだのっていう依頼も少なくねぇ。だから、何でも屋さ」
「なるほど」
「ま、その依頼が悪いってわけじゃねぇんだがな。塩漬けにされた依頼……貼り出されてから、長期間達成してねぇ依頼は、大抵がそんな何でも屋じみた依頼だ。それらを効率よく達成することが出来れば、通常の依頼で貰えるよりも多くのランクポイントが貰える。ま、新人のヤツらってのは、そんな地味な依頼よりも華々しい依頼ってのを好む傾向にあるがな。モンスター討伐とかよ」
「ふむ」
「それにランクの高い冒険者なら色々な場所を転々としているやつもいるだろう。冒険者は、国に縛られないからな。お前さんの探してるっていう大切なもののことも分かるかもしれねぇ。どうだ、悪い話じゃないとは思うが」
ふむ、確かにその通りだ。効率よく依頼をこなしてランクの高い冒険者になれば、他の高ランク冒険者とも接点が出来るかもしれない。そうすれば他の場所の情報も手に入りやすくなる、か。
ルトの名前が有名になれば、もしかしたら姉さんにその名前が届くかもしれない。そうしたら、姉さんの方から何かしらのアプローチがあってもおかしくないだろう。
七つの大罪の力が公になってしまうかもしれないデメリットはあるが、そこは上手い具合に言い訳でも考えておこう。それにこの世界にも七つの大罪という概念があるか分からないからな。特に問題ない可能性もある。
「よし、冒険者になろう。それで、冒険者になるにあたって必要なものはあるか?」
「いや? 特にねぇな。字が書けないなら代筆を頼めるし、武器や防具なんかを常日頃から持ち歩いてる奴もそこまで多くねぇ。着の身着のままでも大丈夫だと思うぜ?」
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「助かる」
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アルダート伯爵家はプラキア王国の貴族であり、この交易都市アルダートはプラキア王国の領土でもある。
まだこの世界の国については勉強していないので何とも言えないが、プラキア王国はこの世界の中でも比較的に安全な国だという話だ。
種族間での差別が無く、また国力も強いため他の国に攻められることも少ないのだとか。
戦争に怯えずに、平和に暮らしていける国。それが、プラキア王国という国だそうだ。
リカルドに教えてもらった通りに道を歩いていき、数分。俺は目当ての冒険者ギルドの前に立っていた。
建物自体の高さはそんなに高くないだろうか。二階建ての、横に広い建物だ。
玄関口にはデカデカと看板が掲げられており、そこには剣と杖の絵が交差するように描かれている。
入口には扉なんかはないようで、人の流れに乗ったまま中へと入っていく。
冒険者ギルドのロビーは吹き抜けになっているらしく、高い天井が目に入った。視界の端には二階に上がるための階段が見える。
入口を入ってすぐ左側には、大きな長机がいくつかと、丸椅子が何脚も置いてあった。奥からは美味しそうな匂いが漂ってくるので、恐らくここはギルド運営の食堂のようなものなのだろう。
右手側は広くなっており、いくつかの掲示板のようなものが見て取れた。恐らくあれが冒険者への依頼を貼っているボードなのだろう。
そのまま周りを確認しつつ進んでいくと、正面にはいくつかの窓口に別れたカウンターがあった。あれだ、地球で言うところの区役所みたいな感じだな。
カウンターの上には、それぞれの受付の内容が書かれているようだ。えっと、俺が行くべきは冒険者登録のカウンターか。
物珍しそうに周囲を眺めながら、俺は冒険者登録と書かれたカウンターの前に立った。
「冒険者への登録でよろしいでしょうか?」
「はい」
そこにいたのは、金の髪をポニーテールに纏めた美人な女の人だった。顔立ちが違うから何歳くらいというのは分からないが、高くても20代前半だろうということは分かる。
透き通るような声を聞き、ああ、この人はこの冒険者ギルドの看板受付嬢なのかもしれないなと思った。
「本日あなたの登録をサポートさせていただく、ミザリーといいます」
「俺はルト。よろしく」
「ではルトさん。代筆は必要ですか?」
「いや、自分で書けるよ」
「では、こちらの用紙に必要事項を記入してください」
そう言って彼女が取り出したのは、リカルドが宿帳として使っていた紙よりも質の良さそうな紙だった。羊皮紙……では無さそうだが。
俺はそれとペンを受け取り、冒険者登録に必要な事柄を書いていく。
名前はルト。年齢は……まぁ、そのまま十七歳でいいだろう。出身は……書かなくてもいいのか。助かる。
後は得意な武器種……基本的にアワリティアを使うから、剣でいいだろうか。魔法などは、使ってみたい気持ちもあるが使えないからな。空欄にしておこう。
記入の終わった俺は、紙とペンをミザリーさんに返した。
「はい、ありがとうございます。この情報をもとにルトさんのギルドカードを作成いたしますので、少しお待ちください」
「分かりました」
そう言うとミザリーさんは、紙を持って奥の部屋へと入っていった。
さて、この空き時間に少し周りを確認するとしようか。
俺はおかしく見えない程度にキョロキョロと周りを見る。それこそ、はじめての登録で緊張している男に見えるだろう。
実際、本物のファンタジー的な冒険者ギルドに興奮はしているのだが。
すると、複数人の冒険者が俺を見ているのが分かった。
うーむ、これはあれか。テンプレ展開的なあれだろうか。
新人に絡むうだつの上がらない冒険者……実際にそんなことをしたら、確実に何かしらの処分を受けそうなものなのだが。もしかしたら冒険者同士の喧嘩は、止められていないのかもしれないな。
もしくは、彼らがミザリーさんのファンという線もある。ただその場合、ミザリーさんが冒険者登録のカウンターにいる限り新人が絡まれるということになるのだが……この視線の意味はなんだろうか。
絡まれるくらいなら、まぁ、いいのだが。
居心地の悪い中しばらく待っていると、奥からクレジットカードサイズの何かを持ったミザリーさんがカウンターに戻ってきた。
「こちらがルトさんのギルドカードになります。冒険者についての詳しい説明は必要ですか?」
「一応お願いします」
「かしこまりました。では、説明させていただきます」
ミザリーさんの話してくれた内容をまとめると、以下の通りになる。
リカルドに聞いた通りに冒険者はランク制になっており、GからAまでのランクが存在しているという。
また、Aの上にはSというランクもあるみたいだが、Sランクとは人間を軽く超越するような人が至ることの出来るランクだそうだ。つまり、実質Aランクが人間としての最高到達点ということだろう。
ランクは依頼をこなしたり、モンスターの素材を納品したりすることで上がっていくようだ。ランクポイントというのを貯めていき、それが一定の水準に達したら次のランクに上がれる……といった感じだ。
ギルドカードには俺が記入した情報と、現在のランクや討伐記録なんかが載っているらしい。これだけやけにオーバーテクノロジーな気もするが、ファンタジーの世界にヤボを言うものじゃないな。きっと、大昔の錬金術師がなんやかんやして作り上げたのだろう。
ギルドカードは身分証の代わりにもなるようで、失くした場合の再発行には1ゴル銀貨ほどかかるらしい。
受けられる依頼は、自分のランクの1つ上まで。ただし何回も依頼を失敗するとランクの降格、あるいは冒険者登録を抹消される可能性があると。
だから、身の程に合った依頼を受けてくださいねと、ミザリーさんは言う。
聞きたいことはあらかた聞けたので、礼を言ってギルドカードを受け取って依頼ボードの前に移動する。どうやら俺に向けられていた視線は消えたようだ。恐らくミザリーさんのファン、だったのだろう。仕事をしないでいいのかは甚だ疑問だが。
「さて、これがGランクの依頼か」
そこにあったのは、ほとんどが街の中で完結する依頼だった。ものを探してほしいとか、片付けてほしいとかだな。
そのほとんどが依頼を出してから受けられてないみたいで、いくつかの依頼にいたっては数年、十数年単位で貼られているものもある。塩漬けにしても少し漬け過ぎではないだろうか。
俺はその中から、ものを片付けてほしいという依頼書を片っ端から取っていき、受付カウンターへと持っていく。
そこにいたのは、ミザリーさんとは毛色が違うものの、赤い髪で顔立ちのいい美人な女の人だった。ギルドの受付嬢というのは、美人であることが条件なのだろうか。それにしては、男性の方は筋骨隆々のマッチョメンばかりなのだが。
「こんにちは。依頼をお受けですか?」
「ええ。これらの依頼を受けたいのですが」
俺が持ってきた依頼書を確認した赤い髪の受付嬢は一瞬、驚いたような表情を浮かべてこちらに向き直った。
「こちらの依頼を受けてくれるのは、ギルドとしてはとても助かりますが……その、大丈夫でしょうか?」
「ええ、まあ。とりあえず、Gランクの依頼がどんな感じかを確かめたかったので」
「大丈夫ということであれば、よろしいのですが……」
赤い髪の受付嬢は心配そうな表情を浮かべて、それぞれの依頼書にスタンプのようなものを押していく。聞けば、このスタンプを押してある依頼書は、既に受けている冒険者がいることを指しているらしい。
「では、ギルドカードの提示を」
俺が先ほど作ったばかりのギルドカードを渡すと、なにやら四角い板のような物の上に置かれた。
その板が魔法陣のような、文字と図形が合わさった光を浮かべ、ギルドカードに吸い込まれていく。
「はい。これでギルドカードにあなたがこの依頼を受けたと登録されました。それでは、気をつけて行ってらっしゃい。……えっと」
「俺はルト。よろしく」
「はい、よろしくお願いします! 私はモニカって言います!」
「モニカさん、よろしく。では、行ってきます」
俺はモニカさんからギルドカードと依頼書を受け取り、ポケットに入れるように見せかけてグラの中に収納する。
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