シスコン、異世界へ行く。〜チート能力かと思ったら、七つの大罪を押し付けられた件〜

ゆーしー

文字の大きさ
6 / 19
Chapter.1 シスコン、異世界へ。

1-6:シスコン、依頼をこなす。

しおりを挟む
 さて、早速受けた依頼を終わらせるとしようか。
 えっと、一件目は商店通りのハーストス商会か。詳しい場所までは分からないけど、それは周りの人にでも聞けばいいだろう。
 俺は冒険者ギルドを出て商店通りまで歩き、そこで道行く人にハーストス商会の場所について尋ねる。

「ハーストス商会? ああ、あの店か。そこの商店通りをまっすぐ行って、左手に見える建物がそうだよ」
「ありがとうございます」
「いやいや、気にする事はないさ。人生は助け合いだよ」

 俺はその人に礼を言って、教えてもらったハーストス商会の建物へと向かう。
 そこには、瓶のようなものが描かれた看板に、ハーストス商会の文字が書いてあった。
 俺は扉を開けて店の中へと入る。
 店内は落ち着いた木製の雰囲気で、商品と思われる液体が瓶に入った状態で棚に置いてある。瓶の前には値札が貼ってあるようだ。それも、リカルドから聞いていた以上に安い。

「これは……ポーションか」

 どうやらハーストス商会は、ポーションなどの魔法薬と呼ばれる薬を取り扱っている商会のようだ。
 魔法薬の作り方は秘匿されていて、許可された錬金術師と薬師のみが作ることを許されているとかなんとか。
 ここは、そんな錬金術師や薬師から薬を買い取って売っているのだろう。
 地球には無かった物珍しさにちらちらと商品を見ていると、カウンターの方から人好きのするような笑顔を浮かべた、おばあさんが話しかけてきた。

「おや、ポーションにご興味が?」
「ええ。先ほど冒険者になったばかりで、こういったものも揃えておいた方がいいのかなと」
「そうですか。確かに、危険な討伐依頼に向かう時なんかは、持っていった方がいいかもしれませんね」
「失礼ですが、あなたは?」
「おっと、これはいけない。私、ハーストス商会の会頭、ジュリアンヌ・ハーストスと申します」
「商会のトップの方でしたか。俺、いえ、私は……」
「ふふ、楽にしてくださっていいのですよ。いつもの口調で」
「……助かります。俺はルト。ジュリアンヌ会頭の依頼を受けてこちらにやって来ました」
「依頼……というと、あの塩漬け依頼になってしまった依頼を受けて来てくださったのですか?」
「ええ、まあ」
「あらあら。助かります」

 素敵な笑顔を浮かべるジュリアンヌ会頭が、深々と頭を下げる。
 はて。確かに塩漬けの依頼ではあったが、そこまで礼を言われるような内容なのだろうか?
 依頼書には、倉庫の整理としか書いていなかったのだが……。

「では早速、お願いしてもいいですか?」
「ええ。どちらの倉庫を整理すれば?」
「こちらです。どうぞ」

 俺はジュリアンヌ会頭に連れられて、ハーストス商会のカウンターの奥の扉を開けて中へと入っていく。
 どうやらこの店は奥行きのある構造になっているようで、カウンターの奥の部屋はポーションの在庫などで溢れていた。
 だが、別に汚れているとか整理が出来ていないとか、そんな感じは見受けられない。
 俺が疑問に思っているとジュリアンヌ会頭は、部屋の隅にひっそりと取り付けてある階段から二階へと向かった。

 ギィ、ギィと、木製の踏板を踏む度に音が鳴る。どうやらこちらの階段の方はあまり手入れがされていないようだ。
 ジュリアンヌ会頭について階段を登っていき、二階へ着いた俺を待っていたのは、見渡す限りの汚部屋だった。
 ゴミなどが散乱しているわけではない。置いてあるのは、全て商品であろうポーションなどの魔法薬の数々。しかもそれらが、絶妙なバランスを保って四方八方に散っている。
 足の踏み場もないほどに、薬が散乱しているようだ。それに、かなりの期間放置されていたのか、ホコリが積もっているようにも見える。
 まさに惨状、と言っても差し支えないレベルには散らかっていると思った。

「これは、また」
「こんなに汚くて、さぞ驚かれたことでしょう」
「いえ、まぁ……」
「お恥ずかしい話、私は薬作り以外はてんでダメみたいで……下の倉庫は、他の従業員が整理してくれているのでなんとかなっているのですが……」
「っ、あのポーションは会頭が?」
「ええ。これでも薬師の端くれですので」

 ポーションを錬金術師や薬師から仕入れているのではなく、そもそも会頭自体がポーションを作れる薬師だったとは。通りで、置いてあるポーションの値段が思った以上に安いと思った。

「それで、この部屋……倉庫? を整理すれば?」
「ええ。出来ればポーションを種類ごとに棚に入れていただけると、ありがたいです。出来栄えに応じて報酬を追加させていただきますので」
「分かりました。ここの整理は任せてください。終わった後はどうすれば?」
「私は下で店番をしておりますので、そちらに来ていただけたら」
「分かりました。では早速取り掛からせていただきます」
「よろしくお願いしますね」

 そう、申し訳なさそうに言ったジュリアンヌ会頭は、ギィギィ踏板を鳴らしながら一階へと戻っていった。
 ……さて、やるか。

「グラ」
『はいはーい!』

 俺はグラを呼び出し、籠手で近くにあった棚に触れる。

「この部屋のもの全部を一旦収納して、ホコリを取り除いて、一つ一つ取り出すことは出来るか?」
『もち! 出来るよ!』
「ありがとう。じゃ、収納してくれ!」
『ほいほーい!』

 瞬間、部屋にあった全てのものが一瞬にして消え去った。ホコリも全て消え去ったので、一瞬にして空気が綺麗になったな。
 俺はまず、棚のホコリを落として元あった場所にセットしていく。そして、その棚一つ一つに、種類を合わせたポーションを置いていった。
 グラの収納は本当にチートじみていて、フィルタをかけたりソートをかけたりすることも出来、なおかつリストをピックアップすることも出来る。

「さすがだな、グラ」
『えへへー! これくらいならお安い御用だよ!』

 ポーションの種類をフィルタにかけて、同じ種類のポーションをランクごとに分けて整理していく。
 よく分からない器具などは、テーブルの上に置いておくことにした。恐らくジュリアンヌ会頭が作業する時に使う器具なのだろう。こちらも綺麗にホコリを落としておいた。
 気付けば一時間ほどの作業で、あの汚かった部屋から元の綺麗な部屋に戻っていた。まさに、劇的ビフォーアフターって感じだな。
 俺はグラを紋章に戻すと、部屋の整理が終わったことを知らせるために一階へと降りていく。
 音を鳴らして降りてきた俺に気付いたのか、ジュリアンヌ会頭がカウンターの方から歩いてきているのが見てた。

「あら、ルトさん。どうしたんですか? 何か分からないことでも?」
「いえ。部屋の整理が終わったので、報告しようかと」
「……今、何と?」
「ええ。部屋の整理が終わったので、報告しようかと思って降りてきました」
「……終わったのですか? この短時間で?」
「ええ、まあ。そこはちょちょいっと」

 俺の言葉に信じられないという表情を浮かべたジュリアンヌ会頭を連れて、俺は再び二階の部屋と戻った。
 一時間ほどで元の綺麗な状態を取り戻した部屋を見て、ジュリアンヌ会頭は目と口を大きく開いて驚いている。

「本当に一時間で……」
「これで、依頼は達成だと思うのですが……」
「ええ、ええ。ここまで綺麗に、種類を分けて整理してくださったのですから、本当に、ありがとうございます」
「それが、受けた仕事ですから」
「ふふふ。では、依頼書を出していただけますか?」

 俺はジュリアンヌ会頭に言われた通りに依頼書を取り出して手渡す。
 ジュリアンヌ会頭は依頼書の達成後の氏名記入欄に名前を書いて、俺に渡してきた。

「これで依頼は達成です。本当に、ありがとうございました」
「お礼を言われるようなことはしていませんよ。では、次の依頼がありますので」
「ああ、ちょっと待ってください。追加の報酬をお持ちしますので、一階までついてきて貰えませんか?」

 そう言うとジュリアンヌ会頭は足早に一階へと降りていく。まぁ、くれると言うなら貰っておくかと、俺もその後ろをついて行った。

「冒険者になりたてということで、このポーションを贈らせていただきます。本当はこんなもの、使う機会がないといいのですが」
「いえいえ。とてもありがたいです。それでこのポーションはどんなポーションなのですか?」
「これは、私が一つだけ作れたポーション……蘇生薬リザレクトポーションです」
「……ッ、リザレクト、ですか」
「ええ。効果は、死後一分以内の人間に振りかければ、蘇生してくれるというものです。幻のポーションとも言われていますが、素材さえあれば私の手でも作ることが出来るくらいには、簡単なポーションなんですよ」

 その素材が幻と呼ばれるくらいには貴重なのですが、とジュリアンヌ会頭は続けた。
 蘇生薬。ゲームによっては、世〇樹の葉やフェ〇ックスの尾などと呼ばれている、ファンタジーゲーム御用達のアイテムだ。
 だがそれが、現実の世界に存在しているなんて……。

「老衰にはききませんが、それ以外の死因であればたちまちその者を癒してくれます。これを、ルトさんに」
「……何でこんな貴重なものを、俺に?」
「何ででしょうね。私にもよく分からないんです。でも、これはあなたが持っているべきだと、そう思ったんですよ」
「……ありがとうございます。救える命が目の前にある時、使わせていただきます」
「そう言って貰えると、私も嬉しいです。今日は本当にありがとうございました。次は、お客さんとして来てくださいね」
「分かりました。ポーションが必要になったらこちらに買いに来ることにします」

 俺はジュリアンヌ会頭に軽く頭を下げて、店から外に出ていく。その際、周りに見られているか確認しながら、リザレクトポーションをグラの中へとしまった。
 ……とんでもないものを、貰ってしまった気がする。これはしばらく、封印だな。
 ふぅ、と軽く息を吐いて、二枚目の依頼書を取り出す。

「さて次の依頼者は――」

 こうして俺は一日にして、塩漬け依頼のいくつかを達成するのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...