新ヒロインが推しを狙っています~なので根性叩きのめしてやりました~

明石 莉々

文字の大きさ
37 / 58
第一部 聖女編

新ヒロイン対ライバル令嬢

しおりを挟む

星が煌くこの夜に不気味な光が輝いている。
それは高速で聖女に襲い掛かる。しかし聖女はそれを打ち消し、時には返していく。

「くっ」
「…何なのよ」

私たちの修行は無駄ではなかったようだ。
「何故相殺できるのよ!」

彼女の放つ無数の魔法弾をアリナはすべて中和させていく。最初こそ駆けつける際に息が切れていたが、徐々に神経を研ぎ澄ませ、レイア嬢の攻撃を防いでいた。
私たちはというと、彼女の防護魔法に囲われていて、守られてはいるものの、下手に手出しをすればそれも壊れてしまうため、見守ることしかできない。

もともとアリナには魔法の素質はあったのだ。それを伸ばす機会を持たなかっただけ。それはゲームでも彼女も感じていたはずだ。しかしそれは彼女の思い通りに進んでいるとたかをくくっていた。そして自分の実力に絶対的な自信をもっているのだろう。
その結果がこれだ。

「さあ。貴方の実力が鈍ったんじゃない?」
「貴様ああ!」
操っていたと思っていたアリナに馬鹿にされたのが、よっぽど屈辱的だったのか、激昂した。
しかし魔法の精度は劣っておらず、正確にアリナを狙っている。

「リュカ、今のうちに騎士団へ連絡できる?」
「わかった」
怒りに囚われている彼女が気づくかはわからないが、一応唇だけ動かし、彼へ指示した。この騒動だからおそらく待てば彼らは来るだろう。その前に「最悪」が起きた場合のため、状況報告を兼ねていた。

「埒があかない。時間がもったいないですわ」
彼女はいったん攻撃の手を止めて、アリナに吐き捨てた。
そして詠唱を始める。彼女ほどの実力になれば無詠唱でもある程度も魔法を使えるはず。しかしそれではアリナに防がれると思ったのだろう。彼女はアリナの捕縛魔法をよけながら、ただひたすらに強い魔法の生成の呪文を詠唱していく。

「アリナ!今がチャンスだ」
「…」
ディンが叫ぶもアリナは彼女へ飛び込むのをためらっている。うまくいけば彼女をとらえ、止めることができるだろう。しかしそれはリスクも高い。至近距離で彼女の強大な魔法を受けてしまえばさすがのアリナでも、無事では済まない。

「行ってください、アリナ!私たちを信じて」
アリナは負けない。彼女にも秘策がある。

アリナの目が大きく開き、加速させていった。
そして彼女の懐に入った瞬間


「とこしえの闇、安らぎの闇。彼のものをとらえ悠久の眠りを」
アリナの体の何倍もある大きな赤紫の光が包む。
「アリナっ」


「アハハハハハハ!残念だったわね。今度こそ終わりよ」
彼女は勝ち誇った笑みを見せた。彼らはアリナの敗北に驚き、そしてアリナの無事を確かめようとした。


「今よ!」



◇◇◇

「仮に人と戦うことになった場合、魔物とは違う点がある。魔物はよほど知能を持つ者以外は常に全力で戦う。戦闘中は常に神経を研ぎ澄ませているので、終盤になっても油断してはいけないんだ」
「しかし人は相手に対し、力の調節をする。相手によっては術を変えたり、魔力の量を調整できる。これは戦いが長引いた場合も想定し、余力を残すということになる。人間だからできることだ。そして人間は、勝ちを確信した時、集中が途切れる。一筋縄ではいかないとき、相手に油断をさせる手段として有効だよ」
ニール様の授業。それはゲームでは得られなかった知識である。とわきらは基本的に平和な世界であり、戦闘を行うのは魔物、それから過去の怨念である。しかし彼はそれとは別の人と戦う心得を教えてくれた。


◇◇◇




「なっ…」
彼女の懐に、アリナが飛び込む。
肘鉄を食らわせ、物理的に彼女の動きを封じた。と同時に私たちを囲っていた檻がなくなる。
「アリナっ」
ディンが聖女のもとへ、ユーミールは魔法を使いレイア嬢を拘束する。

お祭りのためにおめかししたドレスの端は破れ、セットした髪もぐちゃぐちゃになっている。でも私は今の彼女がとてもかっこよく、素敵な女性だと思った。

「アリナ…ありがとう」
「あはは…私、役に立てましたかね」
「何を言ってんだよ。守れなくてごめんな」
「ディン様、気にしないでくださいよ。私、少しは返せたから満足してるんですから」
へらっと笑う彼女にはそれまでもっていた気品や誰もを虜にする愛嬌などはなかったが、私はそれが本来の彼女だろうと安心した。






駆けつけた騎士団によって、彼女レイア・コンスタンは移送された。
魔法を封じる拘束具を使い、術を封じられた彼女は譫言のように「私が女王」「計画は成功した」などと言っていて、瞳はうつろだった。彼女の幻想は解けるのだろうか。


アリナ嬢は魔力を著しく消費しているため、ヘイムの医院へ搬送されることになった。
傍にはディンがいる。私も着いていこうとしたが、リュカに止められた。こんなに大勢で行ってもアリナ嬢の気が休まらないか。また日を改めて行くとしよう。




大きな問題が一つ解決に向かう、安堵した私たちは迎えに来ている馬車へと向かった。


「…ママ、デハ…イゾ…」
「…陛下?」
遠くから声が聞こえた気がした。しかし、気配も何も感じない。
気のせいだったのだろうか。
「何でもないわ、行きましょう」

私は帰路についた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

ヴァイオリン辺境伯の優雅で怠惰なスローライフ〜転生した追放悪役令息が魔境でヴァイオリン練習していたら、精霊界隈でバズってました〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
「お前を追放する——!」 乙女のゲーム世界に転生したオーウェン。成績優秀で伯爵貴族だった彼は、ヒロインの行動を咎めまったせいで、悪者にされ、辺境へ追放されてしまう。 隣は魔物の森と恐れられ、冒険者が多い土地——リオンシュタットに飛ばされてしまった彼だが、戦いを労うために、冒険者や、騎士などを森に集め、ヴァイオリンのコンサートをする事にした。 「もうその発想がぶっ飛んでるんですが——!というか、いつの間に、コンサート会場なんて作ったのですか!?」 規格外な彼に戸惑ったのは彼らだけではなく、森に住む住民達も同じようで……。 「なんだ、この音色!透き通ってて美味え!」「ほんとほんと!」 ◯カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました。 ◯この話はフィクションです。 ◯未成年飲酒する場面がありますが、未成年飲酒を容認・推奨するものでは、ありません。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

処理中です...