異世界アウトレンジ ーワイルドハンター、ギデ世界を狩るー

心絵マシテ

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神器争奪編

四百六十二話

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 バァーツ街の片隅にある資材倉庫にエイルは保管されていた。
 美術館にてブラックバカラの青年ピブロスにより、全身を石化されてしまい機能は完全停止状態になっていた。
 オートマタの彼女の重量は人の比ではない。
 動きを止めた彼女をここまで運ぶのに、大人四人でもかなり大変だったと聞く。
 ギデオンが加わっていれば、少しは楽に進めることができたのかもしれないが、それは出来なかった。
 彼女に触れるの騎士団によって止められていたからだ。

 エイルの身柄を騎士団に預ける際、彼らは条件をつきつけてきた。
 ギデオンがオートマタを悪用し、自分たちを襲ってくる場合を危惧してエイルとの接触を絶てと言ってきた。
 さらに、美術館の敷地の置いていたクロオリも回収されてしまった。
 
 不満だらけでも、連中の要望を飲まざるを得なかった。
 石のままのエイルを放置している方がよほど恐ろしい。
 ちゃんと、保管できる場所がなければ彼女は容易く壊されてしまう。

 騎士団は彼女をくまなく調べ上げるつもりだったようだが、石になっている状態では、上手く検査することができなかったようだ。
変に弄られたような形跡が見当たらないのは幸運だった。

 エイルを一目見たラスキュイが、無言のまま彼女の周囲をグルと一回りしていた。
 すかさず「状態はどうだ?」と口をついて出てしまう。

 友人は口元をへの字しながら返事を返してきた。

「どうもこうもない。これはオートマタだろっ? 生命がなければ、私ではどうすることもできないぞ。
それに、この石化は不可解だ。
身体が石になるのではく、まるで石の膜で全身をラッピングされているようだ」

「元に戻すのは完全に無理なのか? 引き戻し以外にも彼女を救う方法はあるだろう! 頼む、答えてくれ!」

 できないと断言されてもギデオンは懸命に頼み込んだ。
 その瞳には明らかな不安が溢れ出ていた。

「いつもなら冷静なお前がここまで取り乱すのは、初めてのことかもしれないな。
私としてもスッキリとしないのは好ましくは思わない。
今から話すことは可能性でしかない。
これは私個人の考えであり……何の確証もない。
それらを踏まえて進言すれば、この術をかけた相手を始末することで術の解呪は成されるかもしれない」

「相手を消せばいいんだな……なら、簡単な話だ。
 マリーヴェンシルに傍にいれば、あの男は必ず出現する。
 その時に捕まえて、裁いてやる」

 意気込むギデオンだが、ラスキュイの言う通り、それで問題が解決するのかは別の話だ。
 憶測推測だけでブラックバカラの幹部とやり合うのは、健全な思考とは言いにくい。
 当人たちだけで被害が済むのなら、まだしも。
 確実に甚大な災いが周囲へと及んでしまうのは、目に見えている。

 気づくと、絵も言われない気不味な余韻だけが残っていた―――――


 魔女の処遇が決定したのはそれから三日後のことだった。
 あまりの急展開に、ギデオンは即座に騎士団の本館へと赴き詳細を求めた。

 他の騎士の制止を振り切り、奥の部屋にいるレイナードのところへ真っ先に向かう。
 最初こそは急な訪問に面を食らう騎士団長だが、すぐに事情を飲み込むと鞘から刃を引き抜いた。

「いったい何の真似だ? ゲストは大人しくしていて貰おうか。
それが出来ないのなら、ここで斬り刻んでやろう」

「マリーヴェンシルたちの処遇が決まったことが伝えられていた。
連中がどうなるのかは知らないが首都まで護送するというのなら、僕も同行させて欲しい。
残されたブラックバカラの幹部が動くのなら、まずこの時を狙ってくるはずだ」

「フッ、我々がカルト教団に後れをとるとでも? 
奴らがどのように襲撃してきてこようが、つけ入る隙は与えない。
魔女の護送程度なら、騎士団だけで充分足りると思っている。
悪いがお引き取り願おう」

 両者、断固として譲ろうとはしない。
 ピブロスを探すギデオンと騎士団の名誉を守ろうするレイナード。
 彼がギデオンの参加を拒むのはルディーナの一件があったからではない。
 本来ならば、魔女を捕えるのは彼ら騎士団の仕事だ。

 今まで所在すら突き止められなかった。
 そんな相手をギデオンたちはあっさりと見つけ出し、黒薔薇の最高先導者マリーヴェンシルをも捕らえてしまった。
 そのせいでバァーツ支部の面目は丸つぶれとなっていた。
 これ以上は手柄を奪われるわけにはいかないとレイナードも躍起になっていた。

 なんとも愚かしい話である……。
 そもそもブラックバカラと激闘を繰り広げていたのはギデオンたちの方だ。
 今回の大勝はそれなくしてありえなかったものだ。
 ブラックバカラの案件は、何をしても騎士団が称賛されることはないはず。
 しかしながら、事の真意を知る者はごくわずかしかない。

 そこを上手く利用し、彼らは自分たち手柄にしようと企んでいた。
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