294 / 545
二百九十四話
しおりを挟む
魔銃から魔装砲、そして極天により天の闘気がスコルの身を包む。
ギデオンだけが使える魔法――――
それは五導五術うち、それぞれ一つずつ召喚魔法と気功術を組みわせた物だった。
魔導と魔術、双方を使いこなせる人間は、この世界において一人もいない。
必ず、どちらか一方に属することになる。
ギデオンもまた、魔導を操作する術を持たない。
自力での適性があったのは、気功術である練功の方だ。
ただし、未修得のスキルを身につけても実践レベルになるまでは、相応の鍛錬が必要だ。
いかにギデオンのバトルセンスが高くとも、練度は補えないほど不足していた。
自分に足りないモノ、それは魔法だと彼は強く確信していた。
ところが、実際に彼の成長を妨げていたのは、できない事を無理にやろうとするギデオン自身の考え方にあった。
極天に至ったのは、本当に幸運だったとしか言いようがない。
体内に直接未熟なエンチャントを流し込み続けたせいで、その肉体は大きく負傷してしまった。
たまたま強敵と遭遇し、生存本能が自身を窮地から引っ張り上げただけだ。
ナンダとの戦いの最中、ギデオンはそこに気づいた。
同時に自分の中にある命の灯は一つではないと強烈に感じ取ったときに、あの白銀の魔獣は生まれた。
自分の魔術とスコルの魔導、それらを一つにまとめれば新しい自分だけの魔法が誕生する。
さしずめ、進化召喚とでもいったところだ。
今、ギデオンがやろうとしていることは進化召喚の応用であり、スコルが持つ自己進化能力にギデオンの闘気を上乗せすることだ。
これにより、スコルの進化が促進され、さらなる段階へと成長する。
極天の気を充分に吸い込んだスコルは、本来の魔獣の姿へと変わり、急速度で巨大化してゆく。
獣の毛皮が硬化し鱗となる。角が生え、背骨がカタチを変えて翼を形成する。
マナシの前に現れたのは、限りなく龍に近い超生物。
バハムートの名を冠するがごとく、主の成長とともにスコルもまた成長を遂げた。
「スコル、あの赤子を橋から遠くへと引き離すんだ!」
翼の生えた背に飛び乗ると、ギデオンは命じた。
即座に頭部を前面に押し出して敵を威嚇しながら、超魔獣は刃のような爪を立てる。
気圧を圧縮したような足蹴りが結界ごと、マナシを突き飛ばした。
一瞬で、溜め池の奥方へと赤子は押しやられ、ギデオンたちの猛追を受けることなった。
呪いは効いていていないが、金属化は進んでいる。
しばらくすれば、剣璽橋の上に黄金のオブジェクトが多数、並ぶだろう。
余り時間はかけられない。
「噂以上にあり得ない存在だ。この自分を追い詰められるのはリュウマぐらいかと思っていたぞ」
まだ何かを企んでいるのか? マナシはギデオンを賞賛し出す。
確かに北の都をナンダから、解放し今度は、王位継承者として舞台に上がってきた。
目覚しい活躍とも言えるだろう。
冷静でありつつも豪胆である、彼は多少無茶をしても兵士たちを納得させるほどのモノを持っている。
簡潔にいえば、それはカリスマ性だ。
もし、西の守護代が王位継承者としてフキ姫ではなく、彼を擁立していたのならば……この西地域を周囲の脅威から守りきれるのではないのか?
言葉にはださないが、それをマナシ自ら望んでしまうとなれば西はもう持たない。
水面で停止した赤子へ爪牙による連撃を放つ。
「イビルバインド!!」
マナシが闇属性の拘束魔法を唱えるも、対象となる生物は巨大すぎて上手く機能していない。
せいぜい、前足一本分の拘束の影を出すことしかできないことに歯痒そうな表情を見せる。
着実にダメージが通蓄積している。
爪での攻撃は、斬撃に近い。
いくら超再生するからと言っても、次第に回復が間に合わなくなっている。
ここから、さらに攻撃の手を増やせば確実に追い込められる。
勝機を見出しかけたところで、混沌の王からの反撃が始まる。
一番、気を抜きやすいタイミングでの動きはどことなく、いやらしさを感じる。
「コイツは…………増殖しているのか!? マズイぞ、迂闊に近寄れば取り込まれてしまう」
それまで、赤ん坊のカタチを取っていた肉塊がバターのように溶けだし、ギデオンたちを飲みこもうとする。
即座に回避しようとしても、変幻自在にカタチを変えて執拗に迫ってくる。
スコルが翼を羽ばたかせ、突風を起こす。
気流により一時的にしのいだソレは、液状化したマナシの一部。
汗や血のような体液のようなものである。
むろん、触れれば無事では済まない。混沌の肉体は無限に拡がり、すべてを己が一部に取り込むという……。
ギデオンだけが使える魔法――――
それは五導五術うち、それぞれ一つずつ召喚魔法と気功術を組みわせた物だった。
魔導と魔術、双方を使いこなせる人間は、この世界において一人もいない。
必ず、どちらか一方に属することになる。
ギデオンもまた、魔導を操作する術を持たない。
自力での適性があったのは、気功術である練功の方だ。
ただし、未修得のスキルを身につけても実践レベルになるまでは、相応の鍛錬が必要だ。
いかにギデオンのバトルセンスが高くとも、練度は補えないほど不足していた。
自分に足りないモノ、それは魔法だと彼は強く確信していた。
ところが、実際に彼の成長を妨げていたのは、できない事を無理にやろうとするギデオン自身の考え方にあった。
極天に至ったのは、本当に幸運だったとしか言いようがない。
体内に直接未熟なエンチャントを流し込み続けたせいで、その肉体は大きく負傷してしまった。
たまたま強敵と遭遇し、生存本能が自身を窮地から引っ張り上げただけだ。
ナンダとの戦いの最中、ギデオンはそこに気づいた。
同時に自分の中にある命の灯は一つではないと強烈に感じ取ったときに、あの白銀の魔獣は生まれた。
自分の魔術とスコルの魔導、それらを一つにまとめれば新しい自分だけの魔法が誕生する。
さしずめ、進化召喚とでもいったところだ。
今、ギデオンがやろうとしていることは進化召喚の応用であり、スコルが持つ自己進化能力にギデオンの闘気を上乗せすることだ。
これにより、スコルの進化が促進され、さらなる段階へと成長する。
極天の気を充分に吸い込んだスコルは、本来の魔獣の姿へと変わり、急速度で巨大化してゆく。
獣の毛皮が硬化し鱗となる。角が生え、背骨がカタチを変えて翼を形成する。
マナシの前に現れたのは、限りなく龍に近い超生物。
バハムートの名を冠するがごとく、主の成長とともにスコルもまた成長を遂げた。
「スコル、あの赤子を橋から遠くへと引き離すんだ!」
翼の生えた背に飛び乗ると、ギデオンは命じた。
即座に頭部を前面に押し出して敵を威嚇しながら、超魔獣は刃のような爪を立てる。
気圧を圧縮したような足蹴りが結界ごと、マナシを突き飛ばした。
一瞬で、溜め池の奥方へと赤子は押しやられ、ギデオンたちの猛追を受けることなった。
呪いは効いていていないが、金属化は進んでいる。
しばらくすれば、剣璽橋の上に黄金のオブジェクトが多数、並ぶだろう。
余り時間はかけられない。
「噂以上にあり得ない存在だ。この自分を追い詰められるのはリュウマぐらいかと思っていたぞ」
まだ何かを企んでいるのか? マナシはギデオンを賞賛し出す。
確かに北の都をナンダから、解放し今度は、王位継承者として舞台に上がってきた。
目覚しい活躍とも言えるだろう。
冷静でありつつも豪胆である、彼は多少無茶をしても兵士たちを納得させるほどのモノを持っている。
簡潔にいえば、それはカリスマ性だ。
もし、西の守護代が王位継承者としてフキ姫ではなく、彼を擁立していたのならば……この西地域を周囲の脅威から守りきれるのではないのか?
言葉にはださないが、それをマナシ自ら望んでしまうとなれば西はもう持たない。
水面で停止した赤子へ爪牙による連撃を放つ。
「イビルバインド!!」
マナシが闇属性の拘束魔法を唱えるも、対象となる生物は巨大すぎて上手く機能していない。
せいぜい、前足一本分の拘束の影を出すことしかできないことに歯痒そうな表情を見せる。
着実にダメージが通蓄積している。
爪での攻撃は、斬撃に近い。
いくら超再生するからと言っても、次第に回復が間に合わなくなっている。
ここから、さらに攻撃の手を増やせば確実に追い込められる。
勝機を見出しかけたところで、混沌の王からの反撃が始まる。
一番、気を抜きやすいタイミングでの動きはどことなく、いやらしさを感じる。
「コイツは…………増殖しているのか!? マズイぞ、迂闊に近寄れば取り込まれてしまう」
それまで、赤ん坊のカタチを取っていた肉塊がバターのように溶けだし、ギデオンたちを飲みこもうとする。
即座に回避しようとしても、変幻自在にカタチを変えて執拗に迫ってくる。
スコルが翼を羽ばたかせ、突風を起こす。
気流により一時的にしのいだソレは、液状化したマナシの一部。
汗や血のような体液のようなものである。
むろん、触れれば無事では済まない。混沌の肉体は無限に拡がり、すべてを己が一部に取り込むという……。
0
あなたにおすすめの小説
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
不要とされる寄せ集め部隊、正規軍の背後で人知れず行軍する〜茫漠と彷徨えるなにか〜
サカキ カリイ
ファンタジー
「なんだ!あの農具は!槍のつもりか?」「あいつの頭見ろよ!鍋を被ってるやつもいるぞ!」ギャハハと指さして笑い転げる正規軍の面々。
魔王と魔獣討伐の為、軍をあげた帝国。
討伐の為に徴兵をかけたのだが、数合わせの事情で無経験かつ寄せ集め、どう見ても不要である部隊を作った。
魔獣を倒しながら敵の現れる発生地点を目指す本隊。
だが、なぜか、全く役に立たないと思われていた部隊が、背後に隠されていた陰謀を暴く一端となってしまう…!
〜以下、第二章の説明〜
魔道士の術式により、異世界への裂け目が大きくなってしまい、
ついに哨戒機などという謎の乗り物まで、この世界へあらわれてしまう…!
一方で主人公は、渦周辺の平野を、異世界との裂け目を閉じる呪物、巫女のネックレスを探して彷徨う羽目となる。
そしてあらわれ来る亡霊達と、戦うこととなるのだった…
以前こちらで途中まで公開していたものの、再アップとなります。
他サイトでも公開しております。旧タイトル「茫漠と彷徨えるなにか」。
「離れ小島の二人の巫女」の登場人物が出てきますが、読まれなくても大丈夫です。
ちなみに巫女のネックレスを持って登場した魔道士は、離れ小島に出てくる男とは別人です。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
優の異世界ごはん日記
風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。
ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。
未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。
彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。
モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる