310 / 545
三百十話
しおりを挟む
悪魔が杖をついて口元を拡げた。
それを合図に双方が前へと駆け出す。
死を司る輪がギデオンの首を狙う。
輪を頭部に通すのではなく、ダイレクトに輪っかの外側のエッジを刃代わりに使用してきた。
「ミラージュショット!!」
二つ目の神威は白き輝きを放つライフルだった。ところどころに銀の細工が施されている。
特に白葡萄の彫金がスコルの紅と対照的で目を見張る。
頑強な造形というよりも、まるで女性のような繊細さを持つ細身を銃身であるが、その一撃は闘気弾を鋭く噴き上げる。
「むっ、消えただと……ブワアアアアアアア――――――!!」
左右にブレながら、闘気弾が消失した。
相手の攻撃が見えなくなったことでガイサイの動きが止まった。
歩を止めることは、戦闘時において決してやってはいけない。
止まった瞬間、的になり撃ち抜かれる。
一発の銃弾は、姿をくらました間に増殖し銃撃を雨を飛ばしていた。
ハチの巣にされるガイサイの全身が激しく震動してのたうち回っている。
マリオネットダンスと呼ばれる動きだが、その人形の糸は常に手中にある。
黒ずんだ闘気を放ちながら、宿主の肉体に厚い層を形成してゆく。
ギデオンの放ったミラージュショットは、すべて寸前のところで受け止められてしまっていた。
与えられたのはせいぜい打撲程度のダメージだ。
首の関節を鳴らしながら、再度突進してくる。
「ちぃ、猛牛かよ……これだから呪具は厄介なんだ。動きが不規則すぎて読み切れない」
「ハハハッ! アァ八ッハハハハア!! さぁ、惨たらしく喚いて、散らされ許しをこえ!! 情けなく命乞いする無様な姿を余に晒してみなさぁーい」
「少しは、本気を出したらどうだ? でなければ、お前は即行でこの銃に撃ち落とされるぞ!!」
「やれぇぇばいいじゃなぁああい!?」
「その言葉、覚悟しろよ……ブリンク・バル・エフェクト!!」
頭上に銃口を向けるとギデオンは何発か射撃した。
ほぼ音もなく、空へと吸い込まれる蒼の弾丸。
その最中で、ガイサイが首狩り鎌を素振りすると、空を切り裂く線状の一撃が発生しギデオンを狙った。
「他者の忠告は聞くんだな。思っていたよりも慎重な呪具だな」
迫り来る異物を排除するかのように空から蒼い閃光飛んできた。
一閃ではなく列を成したソレらは、邪悪なる力を打ち消してゆく。
その様子を目の当たりにしたガイサイが一気に腰を引いて後退していた。
厳密に言えば、ブリンク・バル・エフェクトを拒絶したのは、首狩り鎌のほうだ。
怨念という猛毒をもった武器にとって、今の攻撃はもっとも恐れ忌み嫌う清浄の力、審判の光である。
「何でだ……神官でもないのに、どうして退魔術が扱える」
「元は神徒だからだ。この聖銃ハーティは僕の中に燻っていた善の感情をベースとして新たに生み出した神威だ。お前のような物理が通らなさそうな奴を想定していたんが、さっそく試せる機会がくるとはな」
「少々、肝を冷やしもしたが、なんてことはないですね。当たらなければ問題ないし、直撃したところで余を打ち消すことなど到底、不可能ぞ」
「だったら、どうして逃げようとした? 対策が不十分だったからじゃないのか?」
「ホーリーオーダークラスかと、警戒したまでよ。首狩り鎌を弱体化させるのは、余の望むところではないからな」
ここに来て面倒なことにギデオンは気づいた。
すでに首狩り鎌に意識を支配されていると思われたガイサイが自我を失っていなかった。
おそらく、半々だ。彼は呪いと共存し人格を共有しているのだと考えられる。
それゆえ、言動がチグハグだ。
「……まさか、人格が残っているとはな。謝罪するつもりは微塵もない。すべては、お前が決めたことの延長線の上にある」
「何を囀っている? 小鳥のように騒いでも百鬼夜行は止められんぞ」
「分かっていないのはお前のほうだ、ガラクタ。本気で来いと言ったのに逃げた時点で結果は出ている」
パン……パン! パパン!! と弾ける音が聞こえた。
それはガイサイの皮膚が内から突き破られた音だった。
「ガアアアア――――!! な、内部から破壊されているだとぉぉぉ!!! あり得ない……余の練功を無視して内部から弾丸が出て来るなどとは……断じてあってはならぬことだぁああああ」
切羽つまったガイサイは、自身の身体を腕で包む。
それでも、肉体を破壊してゆく攻撃は止まず全身流血しながら、その場で倒れ込んだ。
呆気なく崩れおちてゆく体躯は首狩り鎌でもどうにもできないようだ。
虫の息となったドルゲニアの第一王子の傍に寄るとギデオンは告げた。
「教えたはずだ。ハーティの攻撃は物質的なものじゃないって……いや、言ってなかったか?」
それを合図に双方が前へと駆け出す。
死を司る輪がギデオンの首を狙う。
輪を頭部に通すのではなく、ダイレクトに輪っかの外側のエッジを刃代わりに使用してきた。
「ミラージュショット!!」
二つ目の神威は白き輝きを放つライフルだった。ところどころに銀の細工が施されている。
特に白葡萄の彫金がスコルの紅と対照的で目を見張る。
頑強な造形というよりも、まるで女性のような繊細さを持つ細身を銃身であるが、その一撃は闘気弾を鋭く噴き上げる。
「むっ、消えただと……ブワアアアアアアア――――――!!」
左右にブレながら、闘気弾が消失した。
相手の攻撃が見えなくなったことでガイサイの動きが止まった。
歩を止めることは、戦闘時において決してやってはいけない。
止まった瞬間、的になり撃ち抜かれる。
一発の銃弾は、姿をくらました間に増殖し銃撃を雨を飛ばしていた。
ハチの巣にされるガイサイの全身が激しく震動してのたうち回っている。
マリオネットダンスと呼ばれる動きだが、その人形の糸は常に手中にある。
黒ずんだ闘気を放ちながら、宿主の肉体に厚い層を形成してゆく。
ギデオンの放ったミラージュショットは、すべて寸前のところで受け止められてしまっていた。
与えられたのはせいぜい打撲程度のダメージだ。
首の関節を鳴らしながら、再度突進してくる。
「ちぃ、猛牛かよ……これだから呪具は厄介なんだ。動きが不規則すぎて読み切れない」
「ハハハッ! アァ八ッハハハハア!! さぁ、惨たらしく喚いて、散らされ許しをこえ!! 情けなく命乞いする無様な姿を余に晒してみなさぁーい」
「少しは、本気を出したらどうだ? でなければ、お前は即行でこの銃に撃ち落とされるぞ!!」
「やれぇぇばいいじゃなぁああい!?」
「その言葉、覚悟しろよ……ブリンク・バル・エフェクト!!」
頭上に銃口を向けるとギデオンは何発か射撃した。
ほぼ音もなく、空へと吸い込まれる蒼の弾丸。
その最中で、ガイサイが首狩り鎌を素振りすると、空を切り裂く線状の一撃が発生しギデオンを狙った。
「他者の忠告は聞くんだな。思っていたよりも慎重な呪具だな」
迫り来る異物を排除するかのように空から蒼い閃光飛んできた。
一閃ではなく列を成したソレらは、邪悪なる力を打ち消してゆく。
その様子を目の当たりにしたガイサイが一気に腰を引いて後退していた。
厳密に言えば、ブリンク・バル・エフェクトを拒絶したのは、首狩り鎌のほうだ。
怨念という猛毒をもった武器にとって、今の攻撃はもっとも恐れ忌み嫌う清浄の力、審判の光である。
「何でだ……神官でもないのに、どうして退魔術が扱える」
「元は神徒だからだ。この聖銃ハーティは僕の中に燻っていた善の感情をベースとして新たに生み出した神威だ。お前のような物理が通らなさそうな奴を想定していたんが、さっそく試せる機会がくるとはな」
「少々、肝を冷やしもしたが、なんてことはないですね。当たらなければ問題ないし、直撃したところで余を打ち消すことなど到底、不可能ぞ」
「だったら、どうして逃げようとした? 対策が不十分だったからじゃないのか?」
「ホーリーオーダークラスかと、警戒したまでよ。首狩り鎌を弱体化させるのは、余の望むところではないからな」
ここに来て面倒なことにギデオンは気づいた。
すでに首狩り鎌に意識を支配されていると思われたガイサイが自我を失っていなかった。
おそらく、半々だ。彼は呪いと共存し人格を共有しているのだと考えられる。
それゆえ、言動がチグハグだ。
「……まさか、人格が残っているとはな。謝罪するつもりは微塵もない。すべては、お前が決めたことの延長線の上にある」
「何を囀っている? 小鳥のように騒いでも百鬼夜行は止められんぞ」
「分かっていないのはお前のほうだ、ガラクタ。本気で来いと言ったのに逃げた時点で結果は出ている」
パン……パン! パパン!! と弾ける音が聞こえた。
それはガイサイの皮膚が内から突き破られた音だった。
「ガアアアア――――!! な、内部から破壊されているだとぉぉぉ!!! あり得ない……余の練功を無視して内部から弾丸が出て来るなどとは……断じてあってはならぬことだぁああああ」
切羽つまったガイサイは、自身の身体を腕で包む。
それでも、肉体を破壊してゆく攻撃は止まず全身流血しながら、その場で倒れ込んだ。
呆気なく崩れおちてゆく体躯は首狩り鎌でもどうにもできないようだ。
虫の息となったドルゲニアの第一王子の傍に寄るとギデオンは告げた。
「教えたはずだ。ハーティの攻撃は物質的なものじゃないって……いや、言ってなかったか?」
0
あなたにおすすめの小説
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
修学旅行のはずが突然異世界に!?
中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。
しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。
修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!?
乗客たちはどこへ行ったのか?
主人公は森の中で一人の精霊と出会う。
主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる