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三百二十九話
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声をの主と目が合うと、ギデオンの表情がパッと明るくなった。
「オッド!! 無事だったのか!? それに、その着物姿の子はアウラウネだな」
「おうよ! ギデと別々になった後、俺たちはずっと南に滞在していた。ガリュウのおっさんには、ずいぶん世話になっていたんだが……こんなことになろうとはな」
神妙な面持ちで言葉を交わすオッドの背後から、ウネがヒョイと顔を出す。
ギデオンの視線が彼女の方へと移ると、すぐにオッドの背に隠れてしまう。
「お、覚えていないのか? ……僕のことを。わりとショックなんだが」
「なぁに、照れているだけさ。ウネは頭が良いから一度、覚えたことは滅多なことでは忘れないんだぜ!」
「そうなのか……覚えているような素振りではない気がするんだが?」
「とにかく、話はカナッペの容態を見てからにしようぜ! いいだろう、先生!?」
オッドの提案に数分の間ならという条件つきで面会が許可された。
ベッドに横渡る彼女は、未だ意識が戻らないまま眠っていた。
大元の話のよると出血がひどく、一時的なショック状態に陥っていたそうだ。
名医がいたことにギデオンたちは感謝しつつも、フキ姫を危険にさらしてしまったことを悔やんでいた。
「カナッペ……」いつになくオッドの声が沈んでいた。
「すまない、僕の判断が甘かったせいだ」
気休めにもならないが、パスバインがいたことを理由にフキ姫から離れてしまったことには変わりない。
謝っても済まされないことだと知りながらも、謝罪することしかできない。
「お前のせいじゃねぇ。カナッペならきっとそう言うはずだ! 何事にも慎重なコイツがそう簡単に敵の攻撃を喰らうわけがない。悪いのは俺だ……足止めするって言っておきながら、クドとかいう奴を押さえることができなかった」
親指の爪を噛みながら、オッドは鼻筋に苦悩のシワを浮かべていた。
「オッド……」彼の背に貼りついたウネも悲しそうな声を上げていた。
「二人とも、悔やむのはそこまでだ。未だ、東軍の進軍は終わっていないぞ! 我々がやるべきことを怠れば、すべてが奪われてしまう。そうなる前に、東軍の連中を止めないと」
「どういう事だ?」大元の発言にオッドは小首をかしげていた。
「北の都にも東軍の魔の手が及んでいるということだ。先生はそんな状況にも関わらず来てくれたんだ。本当、感謝に尽きないよ」
「大丈夫なのかよ!? こうしている内にも、北がヤバイことになっているんじゃないのか?」
「オッド!」
ギデオンに一喝されたオッドは小さく声を漏らし慌てて口を閉じた。
不安を煽るような発言は無神経すぎるということだ。
「エイル君たちが奮闘してくれているおかげで、何とか持ちこたえているが正直、このままでは持たないだろう。できれば戦力が欲しい、君たちの協力も必要だ。何だかかんだ言っても所詮、私も人の子だ。打算的に動いてしまっている……もちろん、人命救助は第一だとは思っているが、すべてがすべてそうとは言い切れないのだよ」
北の戦況を聞き、二人の心は揺らいでいた。
シンプルに「助けに行く」と言えたら良かったのだが、やはりクドたちの行動が気になる。
フキ姫呪いを解き、シルクエッタたちを救出しないといけない。
やるべきことがある以上、迂闊には動けない。
南から東軍を退けたとはいえ、オッドにしても満願の安全が保障されるまでは動くことは厳しい。
「先生、僕は迷宮遺跡に行こうと思います」
「迷宮遺跡? どうしてそんなところへ?」
不可解な表情をする大元だが、元から沈着冷静な彼だ。
ギデオンの言葉の心意をすぐに汲み取った。
「そこに解決の糸口があるということなんだね」
「ええ、クドがそこで待っていると言っていました。アイツは現在、東の将を務めています。チルルというホビット族の女とヒューズという男の話によるとクドは元々、傭兵団を率いていた。奴らの仲間も北の侵略にも一枚かんでいる、そう見て間違いないでしょう。クドを説得するのは難しいですが、奴を取り押さえれば北の進軍を止めざるを得なくなる可能性は充分にあると思います」
「クド……東の将軍だね。彼の武勇は北にも轟いている…………ギデ君のいう通り戦力差を考えれば、そこに賭けてみた方が現実的ではある」
「そもそも、アイツは何者なんだ? 聞いた感じ、ギデの知り合いようだが……」
オッドの疑問に、うなづくとギデオンは答えた。
「アイツは幼少の頃、友と呼んでいた存在だ。いい機会だ、少し過去の話をしよう。僕たちがどう出会い、どんなことをしてきたのか……皆も知っておいた方がいいのかもしれない」
「オッド!! 無事だったのか!? それに、その着物姿の子はアウラウネだな」
「おうよ! ギデと別々になった後、俺たちはずっと南に滞在していた。ガリュウのおっさんには、ずいぶん世話になっていたんだが……こんなことになろうとはな」
神妙な面持ちで言葉を交わすオッドの背後から、ウネがヒョイと顔を出す。
ギデオンの視線が彼女の方へと移ると、すぐにオッドの背に隠れてしまう。
「お、覚えていないのか? ……僕のことを。わりとショックなんだが」
「なぁに、照れているだけさ。ウネは頭が良いから一度、覚えたことは滅多なことでは忘れないんだぜ!」
「そうなのか……覚えているような素振りではない気がするんだが?」
「とにかく、話はカナッペの容態を見てからにしようぜ! いいだろう、先生!?」
オッドの提案に数分の間ならという条件つきで面会が許可された。
ベッドに横渡る彼女は、未だ意識が戻らないまま眠っていた。
大元の話のよると出血がひどく、一時的なショック状態に陥っていたそうだ。
名医がいたことにギデオンたちは感謝しつつも、フキ姫を危険にさらしてしまったことを悔やんでいた。
「カナッペ……」いつになくオッドの声が沈んでいた。
「すまない、僕の判断が甘かったせいだ」
気休めにもならないが、パスバインがいたことを理由にフキ姫から離れてしまったことには変わりない。
謝っても済まされないことだと知りながらも、謝罪することしかできない。
「お前のせいじゃねぇ。カナッペならきっとそう言うはずだ! 何事にも慎重なコイツがそう簡単に敵の攻撃を喰らうわけがない。悪いのは俺だ……足止めするって言っておきながら、クドとかいう奴を押さえることができなかった」
親指の爪を噛みながら、オッドは鼻筋に苦悩のシワを浮かべていた。
「オッド……」彼の背に貼りついたウネも悲しそうな声を上げていた。
「二人とも、悔やむのはそこまでだ。未だ、東軍の進軍は終わっていないぞ! 我々がやるべきことを怠れば、すべてが奪われてしまう。そうなる前に、東軍の連中を止めないと」
「どういう事だ?」大元の発言にオッドは小首をかしげていた。
「北の都にも東軍の魔の手が及んでいるということだ。先生はそんな状況にも関わらず来てくれたんだ。本当、感謝に尽きないよ」
「大丈夫なのかよ!? こうしている内にも、北がヤバイことになっているんじゃないのか?」
「オッド!」
ギデオンに一喝されたオッドは小さく声を漏らし慌てて口を閉じた。
不安を煽るような発言は無神経すぎるということだ。
「エイル君たちが奮闘してくれているおかげで、何とか持ちこたえているが正直、このままでは持たないだろう。できれば戦力が欲しい、君たちの協力も必要だ。何だかかんだ言っても所詮、私も人の子だ。打算的に動いてしまっている……もちろん、人命救助は第一だとは思っているが、すべてがすべてそうとは言い切れないのだよ」
北の戦況を聞き、二人の心は揺らいでいた。
シンプルに「助けに行く」と言えたら良かったのだが、やはりクドたちの行動が気になる。
フキ姫呪いを解き、シルクエッタたちを救出しないといけない。
やるべきことがある以上、迂闊には動けない。
南から東軍を退けたとはいえ、オッドにしても満願の安全が保障されるまでは動くことは厳しい。
「先生、僕は迷宮遺跡に行こうと思います」
「迷宮遺跡? どうしてそんなところへ?」
不可解な表情をする大元だが、元から沈着冷静な彼だ。
ギデオンの言葉の心意をすぐに汲み取った。
「そこに解決の糸口があるということなんだね」
「ええ、クドがそこで待っていると言っていました。アイツは現在、東の将を務めています。チルルというホビット族の女とヒューズという男の話によるとクドは元々、傭兵団を率いていた。奴らの仲間も北の侵略にも一枚かんでいる、そう見て間違いないでしょう。クドを説得するのは難しいですが、奴を取り押さえれば北の進軍を止めざるを得なくなる可能性は充分にあると思います」
「クド……東の将軍だね。彼の武勇は北にも轟いている…………ギデ君のいう通り戦力差を考えれば、そこに賭けてみた方が現実的ではある」
「そもそも、アイツは何者なんだ? 聞いた感じ、ギデの知り合いようだが……」
オッドの疑問に、うなづくとギデオンは答えた。
「アイツは幼少の頃、友と呼んでいた存在だ。いい機会だ、少し過去の話をしよう。僕たちがどう出会い、どんなことをしてきたのか……皆も知っておいた方がいいのかもしれない」
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