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三百四十八話
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悪魔エゼルキュ―トの背が隆起し翼へと変わる。
取り込んでいた者の肉体を変化させ徐々に本来の姿へと戻そうとしていた。
もはや、このアークデーモニアを止める術はない。
悪魔を討伐する……これまた星の導きなのだろう。
聖歌隊四人の攻防戦が幕を開いた。
「聖火に焼かれ、消し炭となれ! 炎帝サン・ファージャ!!」
火炎を這わせクドの双剣が猛威を振るう。
「浄化の風よ、雄風の支配者たるキュピテレスの名において、その澄み渡る息吹で悪しき者に枷をつけたまえ! ベルゼビュート・フォーン」
クドの動きに合わせ、エルビアンカもオリジナル魔法で応戦する。
デバフの一種である、この魔法は対象の動きを短時間、鈍くすることができる。
アークデーモニア相手に生半可な攻撃は通用しない。
空気の重さを利用し、敵の隙をつくカタチで攻撃に転じるつもりなのだろう。
パァ―――ン!!
双剣の放つ炎が、悪魔に触れる寸前で何かが破裂した。
エルビアンカの魔法だった。
彼女が作りあげた風の層をエゼルキュ―トが破壊してしまっていた。
それが意図的なものなのか? はともかく、吹き付ける風が炎を消し飛ばそうとしていた。
あと、もう一歩のところで刃がエゼルキュ―トに届かない。
歯軋りするクドに対し悪魔の反撃が始まった。
その手に漆黒の光を収斂させ、魔力を抽出し塊をこしらえてゆく。
さしずめ、魔の砲弾とでもいうべきか、クドの脇腹に命中しその身を大きく揺らす。
「がはあぁあ―――!!」
「クドッ!! 間に合って!! セイクリッドチェーン」
光の鎖がシルクエッタの手から放出される。
対悪魔特化用の代表格とされる、この魔法は使い勝手が良い。
チェーンにより魔の砲弾がクドの身体から突き離された。
そこからシルクエッタはさらに魔力を込めて遠隔操作を行う。
セイクリッドチェーンが連動し直角に方向転換すると、エゼルキュ―トへ攻撃を開始した。
むろん、悪魔の方も黙って様子見をするわけもない。
影である特性を活用して聖法から逃れるべく床の中へと消えてゆく。
「エルビアンカ!」
ギデオンが叫びに、その意図を組んだエルビアンカが咄嗟にしゃがみ込んで床に手をついた。
敵の姿が見えなくとも、敵がどこにいるのかは音で察知できる。
「こっちに来ている……ギデオン、奴は私の方へと向かってきているわ!!」
動揺しながらもエルビアンカが答えた。
その直後、彼女の背後からエゼルキュ―トが飛び出てきた。
どうして悪魔はシルクエッタではなく先にエルビアンカを狙ってきたのか?
答えは簡単、捕食して彼女の魔力を取り込もうとしているからだ。
大口を開けて少女に覆い被さろうとするエゼルキュ―トだが、そのタイミングを見計らい聖水の入った瓶が投げこまれた。
「ンギッ――――――!!」影が全身を震わせ暴れていた。
飛来してきた、その一つを誤飲してしまったせいで苦しんでいる。
その隙に、三人が一斉に攻撃を加える。
エルビアンカが髪留め外して風の矢で悪魔を射抜く。
矢じりとなった髪留めのピンには加護の呪文が刻まれていた。
浄化の力により、アークデーモニアは抵抗することもできずに地に伏せている。
「オーダー! ホーリースマイト!!」
エゼルキュ―トの四方を囲うように光の杭が床に突き刺さた。
そこから魔法式が発動し邪悪なる者へと制裁を与える。
聖属性に干渉攻撃が悪魔の全身を打ち付けている。
完全に身動きが取れなくなったところに聖水を瓶を握りしめたギデオンが駆け込んできた。
再度、中身をエゼルキュ―トにぶちまけると雷鋼糸のグローブから雷撃を照射し一気に斬り裂いた。
聖水と雷により発火するアークデーモニア。
流れは確実に聖歌隊へと向いている――――
そうカン違いしてしまうほど、彼らの連携は上手く取れていた。
炎につつまれながらも、口角を吊り上げ立ち上がる悪魔はしぶとかった。
出し惜しみなく彼らの持てる力を発揮して攻撃を行った結果、動きを止めるばかりでダメージが通っているのかもさえ分からない。
天に向かって片手を上げる、その挙手が意味するところとは―――――
殲滅の一撃だった。
「クド、今の内に回復を」
「逃げろ、シルキー! あの構えは不味い! 大技がくるぞ」
クドがしきりに空を見上げていた。
真っ赤に染まるオーロラの中から黒い点が見え始める。
「何なのよ……何かが地上に向かって落下しているの?」
「剣だ! 無数の剣がボクたちを狙って降下してきている……エルビアンカ、防御魔法の準備を!!」
「こんなのって……本当に私たちに勝ち目はあるの?」
「諦めないで! 今が踏ん張りどころなんだ!! それにボクたちには彼がついているから大丈夫だよ」
心が折れそうになるエルビアンカ。
その姿を見てシルクエッタは懸命に言葉をかける。
虚偽でもブラフでもなく、言葉通りの意味だ。
シルクエッタの視線の先には、未だアークデーモニアと相対しているギデオンの背中があった。
取り込んでいた者の肉体を変化させ徐々に本来の姿へと戻そうとしていた。
もはや、このアークデーモニアを止める術はない。
悪魔を討伐する……これまた星の導きなのだろう。
聖歌隊四人の攻防戦が幕を開いた。
「聖火に焼かれ、消し炭となれ! 炎帝サン・ファージャ!!」
火炎を這わせクドの双剣が猛威を振るう。
「浄化の風よ、雄風の支配者たるキュピテレスの名において、その澄み渡る息吹で悪しき者に枷をつけたまえ! ベルゼビュート・フォーン」
クドの動きに合わせ、エルビアンカもオリジナル魔法で応戦する。
デバフの一種である、この魔法は対象の動きを短時間、鈍くすることができる。
アークデーモニア相手に生半可な攻撃は通用しない。
空気の重さを利用し、敵の隙をつくカタチで攻撃に転じるつもりなのだろう。
パァ―――ン!!
双剣の放つ炎が、悪魔に触れる寸前で何かが破裂した。
エルビアンカの魔法だった。
彼女が作りあげた風の層をエゼルキュ―トが破壊してしまっていた。
それが意図的なものなのか? はともかく、吹き付ける風が炎を消し飛ばそうとしていた。
あと、もう一歩のところで刃がエゼルキュ―トに届かない。
歯軋りするクドに対し悪魔の反撃が始まった。
その手に漆黒の光を収斂させ、魔力を抽出し塊をこしらえてゆく。
さしずめ、魔の砲弾とでもいうべきか、クドの脇腹に命中しその身を大きく揺らす。
「がはあぁあ―――!!」
「クドッ!! 間に合って!! セイクリッドチェーン」
光の鎖がシルクエッタの手から放出される。
対悪魔特化用の代表格とされる、この魔法は使い勝手が良い。
チェーンにより魔の砲弾がクドの身体から突き離された。
そこからシルクエッタはさらに魔力を込めて遠隔操作を行う。
セイクリッドチェーンが連動し直角に方向転換すると、エゼルキュ―トへ攻撃を開始した。
むろん、悪魔の方も黙って様子見をするわけもない。
影である特性を活用して聖法から逃れるべく床の中へと消えてゆく。
「エルビアンカ!」
ギデオンが叫びに、その意図を組んだエルビアンカが咄嗟にしゃがみ込んで床に手をついた。
敵の姿が見えなくとも、敵がどこにいるのかは音で察知できる。
「こっちに来ている……ギデオン、奴は私の方へと向かってきているわ!!」
動揺しながらもエルビアンカが答えた。
その直後、彼女の背後からエゼルキュ―トが飛び出てきた。
どうして悪魔はシルクエッタではなく先にエルビアンカを狙ってきたのか?
答えは簡単、捕食して彼女の魔力を取り込もうとしているからだ。
大口を開けて少女に覆い被さろうとするエゼルキュ―トだが、そのタイミングを見計らい聖水の入った瓶が投げこまれた。
「ンギッ――――――!!」影が全身を震わせ暴れていた。
飛来してきた、その一つを誤飲してしまったせいで苦しんでいる。
その隙に、三人が一斉に攻撃を加える。
エルビアンカが髪留め外して風の矢で悪魔を射抜く。
矢じりとなった髪留めのピンには加護の呪文が刻まれていた。
浄化の力により、アークデーモニアは抵抗することもできずに地に伏せている。
「オーダー! ホーリースマイト!!」
エゼルキュ―トの四方を囲うように光の杭が床に突き刺さた。
そこから魔法式が発動し邪悪なる者へと制裁を与える。
聖属性に干渉攻撃が悪魔の全身を打ち付けている。
完全に身動きが取れなくなったところに聖水を瓶を握りしめたギデオンが駆け込んできた。
再度、中身をエゼルキュ―トにぶちまけると雷鋼糸のグローブから雷撃を照射し一気に斬り裂いた。
聖水と雷により発火するアークデーモニア。
流れは確実に聖歌隊へと向いている――――
そうカン違いしてしまうほど、彼らの連携は上手く取れていた。
炎につつまれながらも、口角を吊り上げ立ち上がる悪魔はしぶとかった。
出し惜しみなく彼らの持てる力を発揮して攻撃を行った結果、動きを止めるばかりでダメージが通っているのかもさえ分からない。
天に向かって片手を上げる、その挙手が意味するところとは―――――
殲滅の一撃だった。
「クド、今の内に回復を」
「逃げろ、シルキー! あの構えは不味い! 大技がくるぞ」
クドがしきりに空を見上げていた。
真っ赤に染まるオーロラの中から黒い点が見え始める。
「何なのよ……何かが地上に向かって落下しているの?」
「剣だ! 無数の剣がボクたちを狙って降下してきている……エルビアンカ、防御魔法の準備を!!」
「こんなのって……本当に私たちに勝ち目はあるの?」
「諦めないで! 今が踏ん張りどころなんだ!! それにボクたちには彼がついているから大丈夫だよ」
心が折れそうになるエルビアンカ。
その姿を見てシルクエッタは懸命に言葉をかける。
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