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二話 アニキ、再変身する
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考えたくはないが、ありえない話ではない。
まさか、ボクはキンニクモメンにワカラされてしまうのではないのか……?
そう考えるだけで胃痛と胸やけが波状攻撃をしかけてくる。
二十八歳にもなると、気分を害する程度では収まらない。
肉体が弱っているのは明らかだ。
普段、パンと水ばかりの偏った食生活を送っているから、なおのこと酷い。
「バエルねぇ! その絶望に満ちた表情……。一目見たときから感じておったわ、君はきっとイイ声で哭く豚だって」
「ぶ、豚を馬鹿にしゅるな……あ、あれでも綺麗好き――――」
「硬いなぁ~。僕の全身もカチコチやけど、君の硬さは脆いねん。人と話すのが苦手なん? OKEEEEEEE――!! その初々しさがマニアに受けするのよ」
マニアつった、マニアって…………。
やはり、如何わしい事に巻き込まれているんじゃないか。
すきあらば、ボクのケツを引っ叩いてくる。
このままでは世界どころか、自分の貞操すら守れない。
「なんで、こんな事をするのかって? 顔をしとるね」
ぇえ……思ってないけど? こんな人も寄りつかない廃工場でやることなんて決まってんじゃないの?
「せやで。僕は、君たちドウナッテンジャーに復讐を果たすために禁断の扉を開いたんよ」
「開いちゃらめめえぇぇえぇ―――!! その扉ァァアァァッァア―――!!」
自分でも何を言っているのか、分からなくなってきた。
ただただ、この場から逃げ出したくて奇声を上げていた。
拘束具で身体に自由を奪われたまま、涙を流し泣き叫ぶ。
変身できないヒーローなんて、ただの一般人でしかない。
ボクが正義の力を保持できるのはドカグイイエローになった時だけだ。
マスタードソードで駆使して敵にツライ思いをさせていたのも、今では懐かしい思い出になりつつある。
「豚は豚らしく、ぶひひいいぃぃぃと哭いておけよ。さもなきゃ、わざわざ動画用に撮影している意味がないじゃなぁぁあ―――い!?」
「ボクはじぇったい……オマエの穴にはならな、いぞ」
「強情やな。君を穴埋め要員だなんて思ってはいないよ。しっかりと稼いで貰わな……そのためには、ボクがあじわった苦痛をドウナッテンジャー全員に与えてやらなきゃな! その足掛かりとして近所に住んでいる新庄君を狙うことにしたんよ。どうだい、僕からのプレゼント受け取ってくれる?」
指パッチンをしようとしたのだろう、奴の指先からスカッと乾いた音が聞こえた。
普段、やらないことをカッコつけてやろうとするからだ。
八回ほど挑戦した後で、鳴らせないと判断し手のひらを叩いていた。
「ようやく、ワシの出番じゃな」
そう言いながら、パーテーションの向こうから白衣を着た老人がさっと出てきた。
スモークすら焚かない、このチープさがイベント主催者のやる気のなさを感じせてくる。
まったくもって出会ったことすらない老人は、壮絶な哀愁を漂わせていた。
彼もまた秘密結社の一員なのだろうか?
「紹介しよう。元セコイヤの技術顧問、サガワ博士や」
「キンニクモメンよ。ワシのことなんぞ、どーでもよいわ! コイツが噂の被験者か……本当にしまりのない肉づきをしているのう……今まで多くの怪人を生み出してきたが、今日日、怪人だって、コレよりはマシな造形をしておるぞ」
忖度すらない罵倒が聞こえたような気がした。
僕だって現役の頃は、ここまでぶくぶくだったわけじゃやない。
世の中が平和になったことで、身体を動かす機会がめっきり減った。
運動不足以外の何者でもないが、戦う相手がいない以上は、トレーニングで身体を鍛えるよりもゲームやアニメなどに時間を費やしたほうが有意義だ。
そう思っているうちに、いつしか負のループから抜け出せなくなった。
「さあ、このガーターベルトを身につけるのじゃ。嫌とは言わせんぞ」
話をする間もなく、サガワ博士は一方的な要求を突き付けてきた。
趣味なのか知らないが、持参したガーターベルトをボクに無理やり履かせようとしてくる。
こんな、情けない姿を動画配信されたら、もう人前には出られない。
身体をくねらせて、必死に抵抗してみせた。
が……戦闘員たちによって押さえつけられ身動きが取れない。
「ヒーローは辛いのぅ~。こんな惨めな思いをしても、人々の模範にならなぁ。新庄君、君が僕らに屈したら、かつてドウナッテンジャーに期待し憧れを抱いていた人々は、どう思うかなぁ~」
キンニクモメンが、悪意を込めってボクを挑発してきた。
もう、ヒーローとは縁遠い一般人として生きてきたのに……今更、ヒーロー扱いされてもいい迷惑だ。
「よし、完成じゃ。早速、起動テストしてみるぞ」
どうやって装着させたのか?
腹の肉に食い込んだガーターベルトの様を見て、ボクは言葉を失った。
終わった……なにかも……けれど、今の自分に守り通さないといけない物などあったのだろうか?
地位と名誉、プライドもすべて底に尽きていた。
ボクが持っていると勘違いしていた物は、すべて過去の幻影にすぎない。
下腹部が熱い……いつの間にかガーターベルトが眩く発光し始めている。
サガワ博士の趣味だと思っていたズリネタは、単なるセクシーランジェリーではなさそうだ。
まさか、ボクはキンニクモメンにワカラされてしまうのではないのか……?
そう考えるだけで胃痛と胸やけが波状攻撃をしかけてくる。
二十八歳にもなると、気分を害する程度では収まらない。
肉体が弱っているのは明らかだ。
普段、パンと水ばかりの偏った食生活を送っているから、なおのこと酷い。
「バエルねぇ! その絶望に満ちた表情……。一目見たときから感じておったわ、君はきっとイイ声で哭く豚だって」
「ぶ、豚を馬鹿にしゅるな……あ、あれでも綺麗好き――――」
「硬いなぁ~。僕の全身もカチコチやけど、君の硬さは脆いねん。人と話すのが苦手なん? OKEEEEEEE――!! その初々しさがマニアに受けするのよ」
マニアつった、マニアって…………。
やはり、如何わしい事に巻き込まれているんじゃないか。
すきあらば、ボクのケツを引っ叩いてくる。
このままでは世界どころか、自分の貞操すら守れない。
「なんで、こんな事をするのかって? 顔をしとるね」
ぇえ……思ってないけど? こんな人も寄りつかない廃工場でやることなんて決まってんじゃないの?
「せやで。僕は、君たちドウナッテンジャーに復讐を果たすために禁断の扉を開いたんよ」
「開いちゃらめめえぇぇえぇ―――!! その扉ァァアァァッァア―――!!」
自分でも何を言っているのか、分からなくなってきた。
ただただ、この場から逃げ出したくて奇声を上げていた。
拘束具で身体に自由を奪われたまま、涙を流し泣き叫ぶ。
変身できないヒーローなんて、ただの一般人でしかない。
ボクが正義の力を保持できるのはドカグイイエローになった時だけだ。
マスタードソードで駆使して敵にツライ思いをさせていたのも、今では懐かしい思い出になりつつある。
「豚は豚らしく、ぶひひいいぃぃぃと哭いておけよ。さもなきゃ、わざわざ動画用に撮影している意味がないじゃなぁぁあ―――い!?」
「ボクはじぇったい……オマエの穴にはならな、いぞ」
「強情やな。君を穴埋め要員だなんて思ってはいないよ。しっかりと稼いで貰わな……そのためには、ボクがあじわった苦痛をドウナッテンジャー全員に与えてやらなきゃな! その足掛かりとして近所に住んでいる新庄君を狙うことにしたんよ。どうだい、僕からのプレゼント受け取ってくれる?」
指パッチンをしようとしたのだろう、奴の指先からスカッと乾いた音が聞こえた。
普段、やらないことをカッコつけてやろうとするからだ。
八回ほど挑戦した後で、鳴らせないと判断し手のひらを叩いていた。
「ようやく、ワシの出番じゃな」
そう言いながら、パーテーションの向こうから白衣を着た老人がさっと出てきた。
スモークすら焚かない、このチープさがイベント主催者のやる気のなさを感じせてくる。
まったくもって出会ったことすらない老人は、壮絶な哀愁を漂わせていた。
彼もまた秘密結社の一員なのだろうか?
「紹介しよう。元セコイヤの技術顧問、サガワ博士や」
「キンニクモメンよ。ワシのことなんぞ、どーでもよいわ! コイツが噂の被験者か……本当にしまりのない肉づきをしているのう……今まで多くの怪人を生み出してきたが、今日日、怪人だって、コレよりはマシな造形をしておるぞ」
忖度すらない罵倒が聞こえたような気がした。
僕だって現役の頃は、ここまでぶくぶくだったわけじゃやない。
世の中が平和になったことで、身体を動かす機会がめっきり減った。
運動不足以外の何者でもないが、戦う相手がいない以上は、トレーニングで身体を鍛えるよりもゲームやアニメなどに時間を費やしたほうが有意義だ。
そう思っているうちに、いつしか負のループから抜け出せなくなった。
「さあ、このガーターベルトを身につけるのじゃ。嫌とは言わせんぞ」
話をする間もなく、サガワ博士は一方的な要求を突き付けてきた。
趣味なのか知らないが、持参したガーターベルトをボクに無理やり履かせようとしてくる。
こんな、情けない姿を動画配信されたら、もう人前には出られない。
身体をくねらせて、必死に抵抗してみせた。
が……戦闘員たちによって押さえつけられ身動きが取れない。
「ヒーローは辛いのぅ~。こんな惨めな思いをしても、人々の模範にならなぁ。新庄君、君が僕らに屈したら、かつてドウナッテンジャーに期待し憧れを抱いていた人々は、どう思うかなぁ~」
キンニクモメンが、悪意を込めってボクを挑発してきた。
もう、ヒーローとは縁遠い一般人として生きてきたのに……今更、ヒーロー扱いされてもいい迷惑だ。
「よし、完成じゃ。早速、起動テストしてみるぞ」
どうやって装着させたのか?
腹の肉に食い込んだガーターベルトの様を見て、ボクは言葉を失った。
終わった……なにかも……けれど、今の自分に守り通さないといけない物などあったのだろうか?
地位と名誉、プライドもすべて底に尽きていた。
ボクが持っていると勘違いしていた物は、すべて過去の幻影にすぎない。
下腹部が熱い……いつの間にかガーターベルトが眩く発光し始めている。
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