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十四話 アニキ、必脳殺技を使う
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体毛をなでまわされた獅子の怪人は、気持ち良さげに喉をゴロゴロと鳴らしていた。
必死に理性を保とうとしているようだけど、ボクのモフりに耐えられるフレンズはいない。
自慢じゃないけど、これだけは自信がある。
ドウナングリーンが植物と会話できるように、イエローには動物と心を通わせる力がある。
徐々に怪人の力が抜けてゆく、絶頂するまで、あともう少しだ。
「この操縦桿に触れられた時のようなハンドタッチ。オマエ……まさか、ヒサカズなのか!? いや、アイツはメタボで二階級特進したはず……オマエは何者なんだ?」
「き、君は! もしや、ガゥライザーなのか? そんな……廃棄処分されたって。それに、その姿は!?」
ボクたちは互いに動きを止め固まっていた。
お互い、相手が何者であるのか気づいてしまったからだ。
むろん、ボクの知るガゥライザーは、人型の怪人ではなく四つ足の獅子型の巨大マシーンだ。
かつての姿の面影すらないけれど、確信はあった。
彼がガゥであるのは、共に長い時間を過ごしてきたボクだからこそ分かる。
理屈なんかじゃない……フィーリング。
それは、ガゥも同じで明らかに戸惑いの色をみせていた。
「本当に、ヒサカズなのか? だとしたら……くっ、こんな姿を見られたくなかったぞ。それに、性転換しているなんって正直ショックだ! どうして、相棒のオレに悩みを打ち明けてくれなかったんだ?」
「ご、誤解だ! ボクだって、セコイヤに姿を変えられていなければ、男の姿だったんだよ。断じて、女の子になりたかったわけじゃないんだよ!」
キッパリと言い切ると、妙な間ができた。
まさかとは思うけど、ボクの性癖は疑われている……の?
『いやだなぁ~。今のシーン、編集で音声カットしなければいけないじゃないか。君たち、発言にはくれぐれも注意してくれよ。特に身バレするようなことは厳禁だから、いいね!?』
「って! 何をしているんですか?」
『最高の撮れ高を狙っているのさ……シシシッ』
ドブさんが良からぬことを企んでいる。
魔法少女に変身した時点でボクは、このベルトの罠に掛かってしまった。
なんとかしなければ、本当にノルマとか言うヤツを要求されてしまう。
女優としてデビューするか、風俗に身売りされてしまうか……いずれにしろ、ここで鎖を断ち切ってやる。
「ガゥ、頼みがある。ボクのガーターベルトを破壊してくれ」
「そんな趣味はないガゥ?」
「そうじゃない! ベルトさえ壊れれば元に―――「戻れんぞ」
「へっ……?」水を注すような言葉に息がつまった。
振り向くと口ひげ弄りながらサガワ博士が悟りの境地に至ったような眼でコチラを見ていた。
たんに眠気で目蓋が重いだけだと思うけど……彼の一言はボクを絶望の淵へと追いやった。
「ハッピーバッピィは、再生誕ベルトじゃからのう~。別の存在に変わることはあっても元には戻らんのよ」
「つまり……ぼぼぼぼぼお、ボクは知らない内に転生してしまったとおぉぉぉ」
「性的な意味でもな。第二の人生、せいぜい楽しむのよい」
血の気が引いて、頭がクラクラする。
人を好き勝手に改造しておいて、何が「楽しめ」なのだ。
こんなの笑えるわけがない……いくら、自分の見た目がダメダメでも、ボクがボクでなくなることを受け入れられることは…………んんん? なくもないかな?
心の中に残るヒサカズの部分が、こう告げる。
「どうしてしまったんだと、男であることを忘れたのか」と。
しかし、冷静になって考えれば考えれるほど、男だった時が幸せだったと思えなくなっていた。
スリムだった全盛期の頃でさえ、特徴がないとモブキャラのような扱いを受けていたし、地味な性格だったから尚のこと目立たなかった。
そう見ると女の子の姿は、まったく持ってチガウ。そこにいるだけで周りが見て来る。
構ってちゃんじゃないけど、それはそれで新鮮味がある。
恥かしいっ、けれど妙に惹かれるものがあると感じてしまっていた。
『ふっ……どうやら性の悦びに目覚めたようだね。さすがは吾輩が見込んだ逸材だ』
「そ、そんな事は……というか、褒められているような気がしないんだけど」
『まぁまぁ、ついでに一発、必悩殺技でも使ってみなよ。コレを喰らった奴はタチマチ、君にメロメロさぁーん』
ガチャリとガーターベルトが音を鳴らした。
目をやると手が勝手にベルトのレバーを操作していた。
そんなつもりは微塵もないのに、身体が言う事をきかない。
『ファイナルフィニッシャー! ピュアコスモブレイド』
「何それぇぇ!? ちっとも魔法少女らしくない」
「ひ、ヒサカズ! オレの身体がぁぁあ、おかしい―――!!」
「ガゥ!? へ、変形している」
必殺技らしき何かが、発動したのと同時にガゥライザーの身体が輝いた。
黄金みたいに眩い光を発しながら怪人だった彼は、元となった機械の姿に戻っていた。
とはいっても、以前のようなドデカさはなく、自転車ほどのスモールサイズに変わっていた。
そこから後ろ脚部に取り付けてあった曲刀が外れ、ボクのリストバンドと一体化した。
『よっしゃー! これで爺ともオサラバだぁぁぁぁあ――――!! 必脳殺技、エスカレーションスマッシュぅぅぅぅ!!!』
狂ったようにドブさんが叫ぶと前方へと突き出た曲刀がサガワ博士の身体を貫いた。
必死に理性を保とうとしているようだけど、ボクのモフりに耐えられるフレンズはいない。
自慢じゃないけど、これだけは自信がある。
ドウナングリーンが植物と会話できるように、イエローには動物と心を通わせる力がある。
徐々に怪人の力が抜けてゆく、絶頂するまで、あともう少しだ。
「この操縦桿に触れられた時のようなハンドタッチ。オマエ……まさか、ヒサカズなのか!? いや、アイツはメタボで二階級特進したはず……オマエは何者なんだ?」
「き、君は! もしや、ガゥライザーなのか? そんな……廃棄処分されたって。それに、その姿は!?」
ボクたちは互いに動きを止め固まっていた。
お互い、相手が何者であるのか気づいてしまったからだ。
むろん、ボクの知るガゥライザーは、人型の怪人ではなく四つ足の獅子型の巨大マシーンだ。
かつての姿の面影すらないけれど、確信はあった。
彼がガゥであるのは、共に長い時間を過ごしてきたボクだからこそ分かる。
理屈なんかじゃない……フィーリング。
それは、ガゥも同じで明らかに戸惑いの色をみせていた。
「本当に、ヒサカズなのか? だとしたら……くっ、こんな姿を見られたくなかったぞ。それに、性転換しているなんって正直ショックだ! どうして、相棒のオレに悩みを打ち明けてくれなかったんだ?」
「ご、誤解だ! ボクだって、セコイヤに姿を変えられていなければ、男の姿だったんだよ。断じて、女の子になりたかったわけじゃないんだよ!」
キッパリと言い切ると、妙な間ができた。
まさかとは思うけど、ボクの性癖は疑われている……の?
『いやだなぁ~。今のシーン、編集で音声カットしなければいけないじゃないか。君たち、発言にはくれぐれも注意してくれよ。特に身バレするようなことは厳禁だから、いいね!?』
「って! 何をしているんですか?」
『最高の撮れ高を狙っているのさ……シシシッ』
ドブさんが良からぬことを企んでいる。
魔法少女に変身した時点でボクは、このベルトの罠に掛かってしまった。
なんとかしなければ、本当にノルマとか言うヤツを要求されてしまう。
女優としてデビューするか、風俗に身売りされてしまうか……いずれにしろ、ここで鎖を断ち切ってやる。
「ガゥ、頼みがある。ボクのガーターベルトを破壊してくれ」
「そんな趣味はないガゥ?」
「そうじゃない! ベルトさえ壊れれば元に―――「戻れんぞ」
「へっ……?」水を注すような言葉に息がつまった。
振り向くと口ひげ弄りながらサガワ博士が悟りの境地に至ったような眼でコチラを見ていた。
たんに眠気で目蓋が重いだけだと思うけど……彼の一言はボクを絶望の淵へと追いやった。
「ハッピーバッピィは、再生誕ベルトじゃからのう~。別の存在に変わることはあっても元には戻らんのよ」
「つまり……ぼぼぼぼぼお、ボクは知らない内に転生してしまったとおぉぉぉ」
「性的な意味でもな。第二の人生、せいぜい楽しむのよい」
血の気が引いて、頭がクラクラする。
人を好き勝手に改造しておいて、何が「楽しめ」なのだ。
こんなの笑えるわけがない……いくら、自分の見た目がダメダメでも、ボクがボクでなくなることを受け入れられることは…………んんん? なくもないかな?
心の中に残るヒサカズの部分が、こう告げる。
「どうしてしまったんだと、男であることを忘れたのか」と。
しかし、冷静になって考えれば考えれるほど、男だった時が幸せだったと思えなくなっていた。
スリムだった全盛期の頃でさえ、特徴がないとモブキャラのような扱いを受けていたし、地味な性格だったから尚のこと目立たなかった。
そう見ると女の子の姿は、まったく持ってチガウ。そこにいるだけで周りが見て来る。
構ってちゃんじゃないけど、それはそれで新鮮味がある。
恥かしいっ、けれど妙に惹かれるものがあると感じてしまっていた。
『ふっ……どうやら性の悦びに目覚めたようだね。さすがは吾輩が見込んだ逸材だ』
「そ、そんな事は……というか、褒められているような気がしないんだけど」
『まぁまぁ、ついでに一発、必悩殺技でも使ってみなよ。コレを喰らった奴はタチマチ、君にメロメロさぁーん』
ガチャリとガーターベルトが音を鳴らした。
目をやると手が勝手にベルトのレバーを操作していた。
そんなつもりは微塵もないのに、身体が言う事をきかない。
『ファイナルフィニッシャー! ピュアコスモブレイド』
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「ひ、ヒサカズ! オレの身体がぁぁあ、おかしい―――!!」
「ガゥ!? へ、変形している」
必殺技らしき何かが、発動したのと同時にガゥライザーの身体が輝いた。
黄金みたいに眩い光を発しながら怪人だった彼は、元となった機械の姿に戻っていた。
とはいっても、以前のようなドデカさはなく、自転車ほどのスモールサイズに変わっていた。
そこから後ろ脚部に取り付けてあった曲刀が外れ、ボクのリストバンドと一体化した。
『よっしゃー! これで爺ともオサラバだぁぁぁぁあ――――!! 必脳殺技、エスカレーションスマッシュぅぅぅぅ!!!』
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