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十三話 アニキ、モフる
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初めての魔法少女変身はちょっとドキドキする。
消費者金融で返済する時のドキドキとは、また別の緊張感だ。
羞恥心や漢らしさを捨て去り、ボクは新たなるシンデレラステージへと駆けあがる。
一体、どんなコスチュームにチェンジするのだおう~、期待で胸が膨らむ………胸!?
『いやあー、あのさ……キュイちゃん、どうしてオッサンの名前を叫んで変身できると思ったんだい? 正直、ドブちゃん的には、何たらワクリスタルパワーでもオッケーだったんだけど……オッサンの名前はキツイわ』
「だって……仮面ラ『ああああああ――――――聞こえないな! 何も聞こえない。そういう人がいたら、君たちは戦隊ヒーローとして活躍できないんじゃないかなぁ~!』
「別にいいじゃん! ヒーローが多ければ世界は平和なんだし……」
『本当にそう思う? キュイちゃんは世界の平和って何なのか知っているのぉぉぉ?』
何かを含みを持たせた言い方をしてくるけど、悪党によって虐げられる人が居なくなる。
それがボクたちの願いだったはずだ。
その理想は本気で実現しようならば無理なことなのは、百も承知だ。
だとしても、何もせずに、ただジッとしていても誰も幸せにはなれない。
それどころか、悪事を見過ごせば模倣され増長してゆく。
「なぁ、魔法少女はまだかのぅ~。ワシ、もう帰りたいんじゃが……朝から町内会の清掃に参加しなければならないのじゃよ」
「オレもタイムリーで次のバイトに行けなればならない。さっと変身して、さらっと刺身になってくれないと困るガゥ!」
こっ! コイツら……普通に諸事情を持ち出されても困るですけど。
なんか、流れ的にボクが悪いみたいな事になっていない?
ぼ、ボクだって慣れない女の子になっているんだ。
そこに魔法少女という付加価値が出てくれば、どうしていいのか分からなくなるのも当然だ。
『今できないって思ったろ? これだから元ヒーローなんだよ』
「何が言いたいんだよ! ヒーローだって完璧じゃないはずだろっ」
『それでもだ。それでも愚直に進んでゆく奴が、真のヒーローになれるのさ!』
「じゃあ! ボクが魔法少女らしく可愛い変身呪文を唱えられれば、ヒーローとして認められるという事に……なるんだ?」
『どうなるかは……キュイちゃんが一番良く知っているんじゃないの? で……やるんだよね?』
すっかり、易い挑発に流されてしまった……。
そう気づいた時には遅く、可愛い変身呪文を叫ばないといけない状況を自ら作ってしまった。
やはりドブさんは、やり手だ。
確実にこちらの動揺を誘ってボロを出すのを狙っている。
悔しいが、もう後には退けない。
ボクにだって意地がある。ここまで、馬鹿にされてはドウナッテンジャーの名が廃る。
「……ピュアセレクト!」
『てゅららあら~ずんちゃずんちゃ、てゅらっららあ~ららあ!』
その瞬間、世界が弾けた。どこからともなく、変なBGMが流れ込み、ボクの着ていた制服が身体ごと光り出しカタチを変えてゆく。
サンダルがブーツに変わり、手首足首にリボン型のバンドが装着される。
リユちゃんからもらったウサギの髪留めが巨大化し帽子のような感じになっていた。
そこまでは、まぁ許容できる範囲だった……問題は肝心の服装だ。
「なななあああなっ、なんで競泳水着みたいな恰好なんさぁ!! 肌の露出が多すぎじゃないの!?」
ハイレグの上にガーターベルトのニーソ、性癖の塊みたいなバトルスーツは自分で直視できない。
顔から火が噴き出すかと思うぐらい、ボクの顔は熱を帯びていた。
高鳴る鼓動とゾクゾクとする背筋、博士や怪人の視線が気になって仕方ない。
男だった自分が内側からどんどん壊れてゆく。
魔法少女というより魔法痴女のような姿は、ボクが想像していた崇高なイメージ(フリル付きのスカートドレス)とは方向性が違い過ぎて、早くも解散の危機を迎えていた。
『おやおや、どうしてお胸を隠すのですかなぁ?』
「ボクの勝手でしょ! ま、魔法少女なんて言っておいて、こんなハレンチな恰好させるなんて……酷いよ!」
『言っただろう? それはエントリーモードだって君が完全なる姿になるには、もっと力をつける必要があるのさ』
「取り敢えず、変身は分かったから! 元に戻してよ!」
『パドゥン? 吾輩がいつ戻すなんて約束したのかな? その姿を解除するには、敵を退治しないと駄目だよねえええ――――』
騙された……そう思っている合間にも、獅子の獣人が再攻撃を仕掛けてきた。
わざわざ、ボクの変身姿をみる為だけに律儀に待っていた彼は、それまで溜めていた野生の本能をむき出しにしてボクを辱しめようとしている。
「捕まえたガゥ! 博士、早く捕獲檻を持ってこい」
背後から抱きしめられて、逃げ出すことができない。けれども、顔や身体に押し当てられる、ふんわりとした柔らかな感触は、本物の毛皮だ。
これは是非に――――したい……ボクの中にある衝動が抑えきれずに暴走していた。
身体を締めつけていた獣人の腕を押し退けて、彼の喉元に両手をそえた。
「コイツ、いきなり力が増したが…………」
「ワシャシャワシャワシャシャシャ、ワシャワシャアシャワシャワシャワシャアア――――!!」
「や、やめろぉぉぉぉ!! オレをモフるんじゃないぃぃぃ」
消費者金融で返済する時のドキドキとは、また別の緊張感だ。
羞恥心や漢らしさを捨て去り、ボクは新たなるシンデレラステージへと駆けあがる。
一体、どんなコスチュームにチェンジするのだおう~、期待で胸が膨らむ………胸!?
『いやあー、あのさ……キュイちゃん、どうしてオッサンの名前を叫んで変身できると思ったんだい? 正直、ドブちゃん的には、何たらワクリスタルパワーでもオッケーだったんだけど……オッサンの名前はキツイわ』
「だって……仮面ラ『ああああああ――――――聞こえないな! 何も聞こえない。そういう人がいたら、君たちは戦隊ヒーローとして活躍できないんじゃないかなぁ~!』
「別にいいじゃん! ヒーローが多ければ世界は平和なんだし……」
『本当にそう思う? キュイちゃんは世界の平和って何なのか知っているのぉぉぉ?』
何かを含みを持たせた言い方をしてくるけど、悪党によって虐げられる人が居なくなる。
それがボクたちの願いだったはずだ。
その理想は本気で実現しようならば無理なことなのは、百も承知だ。
だとしても、何もせずに、ただジッとしていても誰も幸せにはなれない。
それどころか、悪事を見過ごせば模倣され増長してゆく。
「なぁ、魔法少女はまだかのぅ~。ワシ、もう帰りたいんじゃが……朝から町内会の清掃に参加しなければならないのじゃよ」
「オレもタイムリーで次のバイトに行けなればならない。さっと変身して、さらっと刺身になってくれないと困るガゥ!」
こっ! コイツら……普通に諸事情を持ち出されても困るですけど。
なんか、流れ的にボクが悪いみたいな事になっていない?
ぼ、ボクだって慣れない女の子になっているんだ。
そこに魔法少女という付加価値が出てくれば、どうしていいのか分からなくなるのも当然だ。
『今できないって思ったろ? これだから元ヒーローなんだよ』
「何が言いたいんだよ! ヒーローだって完璧じゃないはずだろっ」
『それでもだ。それでも愚直に進んでゆく奴が、真のヒーローになれるのさ!』
「じゃあ! ボクが魔法少女らしく可愛い変身呪文を唱えられれば、ヒーローとして認められるという事に……なるんだ?」
『どうなるかは……キュイちゃんが一番良く知っているんじゃないの? で……やるんだよね?』
すっかり、易い挑発に流されてしまった……。
そう気づいた時には遅く、可愛い変身呪文を叫ばないといけない状況を自ら作ってしまった。
やはりドブさんは、やり手だ。
確実にこちらの動揺を誘ってボロを出すのを狙っている。
悔しいが、もう後には退けない。
ボクにだって意地がある。ここまで、馬鹿にされてはドウナッテンジャーの名が廃る。
「……ピュアセレクト!」
『てゅららあら~ずんちゃずんちゃ、てゅらっららあ~ららあ!』
その瞬間、世界が弾けた。どこからともなく、変なBGMが流れ込み、ボクの着ていた制服が身体ごと光り出しカタチを変えてゆく。
サンダルがブーツに変わり、手首足首にリボン型のバンドが装着される。
リユちゃんからもらったウサギの髪留めが巨大化し帽子のような感じになっていた。
そこまでは、まぁ許容できる範囲だった……問題は肝心の服装だ。
「なななあああなっ、なんで競泳水着みたいな恰好なんさぁ!! 肌の露出が多すぎじゃないの!?」
ハイレグの上にガーターベルトのニーソ、性癖の塊みたいなバトルスーツは自分で直視できない。
顔から火が噴き出すかと思うぐらい、ボクの顔は熱を帯びていた。
高鳴る鼓動とゾクゾクとする背筋、博士や怪人の視線が気になって仕方ない。
男だった自分が内側からどんどん壊れてゆく。
魔法少女というより魔法痴女のような姿は、ボクが想像していた崇高なイメージ(フリル付きのスカートドレス)とは方向性が違い過ぎて、早くも解散の危機を迎えていた。
『おやおや、どうしてお胸を隠すのですかなぁ?』
「ボクの勝手でしょ! ま、魔法少女なんて言っておいて、こんなハレンチな恰好させるなんて……酷いよ!」
『言っただろう? それはエントリーモードだって君が完全なる姿になるには、もっと力をつける必要があるのさ』
「取り敢えず、変身は分かったから! 元に戻してよ!」
『パドゥン? 吾輩がいつ戻すなんて約束したのかな? その姿を解除するには、敵を退治しないと駄目だよねえええ――――』
騙された……そう思っている合間にも、獅子の獣人が再攻撃を仕掛けてきた。
わざわざ、ボクの変身姿をみる為だけに律儀に待っていた彼は、それまで溜めていた野生の本能をむき出しにしてボクを辱しめようとしている。
「捕まえたガゥ! 博士、早く捕獲檻を持ってこい」
背後から抱きしめられて、逃げ出すことができない。けれども、顔や身体に押し当てられる、ふんわりとした柔らかな感触は、本物の毛皮だ。
これは是非に――――したい……ボクの中にある衝動が抑えきれずに暴走していた。
身体を締めつけていた獣人の腕を押し退けて、彼の喉元に両手をそえた。
「コイツ、いきなり力が増したが…………」
「ワシャシャワシャワシャシャシャ、ワシャワシャアシャワシャワシャワシャアア――――!!」
「や、やめろぉぉぉぉ!! オレをモフるんじゃないぃぃぃ」
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