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十六話 アニキ、学校へ
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ボクが麺次郎に来てから一週間ほど経った。
前回の拉致事件以降、博士はレッサーパンダのままこの店で飼われることになった。
それもボクがワガママを言って、大将たちにお願いしたからなんだけど……。
二人は不思議そうな表情をしていたものの何も聞かずに了承してくれた。
ガゥライザーの方は、女将さんが、ここで働かないかと勧誘していた。
どうやら、持ち前の機動力を生かして出前をさせようと目論んでいたようだけど……バイトが忙しいという理由と家が遠いからという事でやんわりと断られてしまった。
凄まじく残念そうな顔をしていたが、それが女将さんの演技だというのは、そこにいた誰もが把握していた。
ラーメン屋での仕事はまだまだミスが目立つ。
けれども、それなりに要領はつかめてきたし、常連さんにも顔を覚えてもらえるようになった。
仕事のほうはそれなりに進歩しているだと思う。
しっかし、ボクの抱える悩みのベクトルは別の方向にある。
サガワ博士の身柄は抑えた。にもかかわらず、元の姿に戻す手立てが見つからない。
ドブさんに聞こうにも、あの戦い以降、一度も声が聞こえない。
壊れていなければ、実にあの人らしく身勝手な対応だ。
やはり、博士が最後に言っていたように元の姿には戻れないのだろうか?
もしそうならば、ボクはとんでもないバードマンになる。
確認もしたくはないけど、バードマン違いで、能力を設定してしまったというオチとかはないよね?
うん、なければ良いんだ……。
「キュイちゃん、餃子を三人前追加で! あとは―――――」
「あっ、はい!」
メモ用紙片手に、オーダーを聞きにゆく。
今日は昼休みの合間にやってきた田宮建設の社長さんたち、御一行がきているから特にいそがしい。
三日前のボクなら、さばききれずに逃亡していた。
社員さんたちは当然ながらガテン系、筋肉自慢の猛者たち。
ラーメンもチャーハンも彼らに吸い込まれるようしてテーブルの上から消えてゆく。
「そういや、キュイちゃんって学校いかないのかい?」
「えっ? 学校ですか……」
「ここ連日、この店に厄介になっているんだけどよう。キュイちゃん、いつも店にいるだろう? 学校とか、どうしてんのかなぁーと思ってさ」
田宮さんに指摘されて気づいた。まぁ、高校には行かずに就職したとでも言っておけばいいんだろうけど……。
ついつい、カウンター越しに立つ大将と目が合ってしまった。
大将の方は別段、気にもしない感じだった。
気にしているのはボクの方だった……すぐに視線を逸らし逃げに入ってしまっていた。
「コイツは、コッチに越してきてまだ日がが浅いんだよ。学校には身の回りが落ち着いたら……な」
「そうかい、大将。そいつは野暮なことを聞いちまったな、ハハハッ……キュイちゃん、もしオジサンの娘と同じ学校に通うことになったら、あの子のトモダチになってくれないか?」
「も、モチロンです……」
まさか、大将の口から学校に行く許可が出るとは思いも寄らなかった。
学校か……もう二度と行くことのない無縁の場所だと思っていたけど、女子高生生活とはドウナッテンジャーろ?
便所でご飯を食べる羽目になったらイヤだなー。
でも……上手くいけば、リユちゃんと学校で会えるわけだ―――――
「キュイ、入るぞ」
その日の夜、女将さんが大量の高校パンフをもってボクの部屋に入ってきた。
多分、昼間の話の続きだろう。
店の二階になる客間を間借りすることになったとは言え、酒の入った一升瓶を畳の上にジカ置きしないで貰いたい。
「ゲンジさんは絶対に行かせると言っているけど、私はアンタの考えを一番にしたいと思っている……もし、この中で気に入った学校があるのなら、店のことは気にせず選びな。無ければ、それもアリだ」
選べと申されても、お婆ちゃま……入学試験には学力が必須でして、ここから受験対策するとなると目も当てられないことになる。
「安心しな。この私が頼み込めば、何処だろうが、地元の学校連中はフリーパスで編入受理するからよ」
それが一番の不安材料です……。何をどうすれば、教育員会を手なづけられるというのだ!
「女将さん、ボクはリユちゃんが通っているトコロがいいです」
「フッ……そう言うと思って既に手配はしてあるわ」
早い……早すぎる。今のは、たまたまや。もし、違う場所を選んだらどうなっていたことか!?
まぁ、自力で勉強して編入試験に合格するつもりですけど……なんせ、ブランクが空き過ぎて、どこから手をつけていいのか分からない。
「ほら、参考書だ。リユの奴がつかっていた奴さあね。自分の実力のこだわるのもいいけれど、困ったら私らを頼りなよ」
女将さんたちの気遣いを有難く受け取りながら、ボクは久しぶりの勉学に挑んだ。
昼間は仕事をし、夜は勉強……我ながらハードルを高く設定してしまったと泣きそうになった。
その度にリユちゃんとのスクールラーフを想像しながら、ついにボクはやり遂げた!
流聖高等学校の編入試験を合格した。
過去の履歴とかは女将さんの圧力で握り潰したけど、それ以外は自分の力で得たものだ。
前回の拉致事件以降、博士はレッサーパンダのままこの店で飼われることになった。
それもボクがワガママを言って、大将たちにお願いしたからなんだけど……。
二人は不思議そうな表情をしていたものの何も聞かずに了承してくれた。
ガゥライザーの方は、女将さんが、ここで働かないかと勧誘していた。
どうやら、持ち前の機動力を生かして出前をさせようと目論んでいたようだけど……バイトが忙しいという理由と家が遠いからという事でやんわりと断られてしまった。
凄まじく残念そうな顔をしていたが、それが女将さんの演技だというのは、そこにいた誰もが把握していた。
ラーメン屋での仕事はまだまだミスが目立つ。
けれども、それなりに要領はつかめてきたし、常連さんにも顔を覚えてもらえるようになった。
仕事のほうはそれなりに進歩しているだと思う。
しっかし、ボクの抱える悩みのベクトルは別の方向にある。
サガワ博士の身柄は抑えた。にもかかわらず、元の姿に戻す手立てが見つからない。
ドブさんに聞こうにも、あの戦い以降、一度も声が聞こえない。
壊れていなければ、実にあの人らしく身勝手な対応だ。
やはり、博士が最後に言っていたように元の姿には戻れないのだろうか?
もしそうならば、ボクはとんでもないバードマンになる。
確認もしたくはないけど、バードマン違いで、能力を設定してしまったというオチとかはないよね?
うん、なければ良いんだ……。
「キュイちゃん、餃子を三人前追加で! あとは―――――」
「あっ、はい!」
メモ用紙片手に、オーダーを聞きにゆく。
今日は昼休みの合間にやってきた田宮建設の社長さんたち、御一行がきているから特にいそがしい。
三日前のボクなら、さばききれずに逃亡していた。
社員さんたちは当然ながらガテン系、筋肉自慢の猛者たち。
ラーメンもチャーハンも彼らに吸い込まれるようしてテーブルの上から消えてゆく。
「そういや、キュイちゃんって学校いかないのかい?」
「えっ? 学校ですか……」
「ここ連日、この店に厄介になっているんだけどよう。キュイちゃん、いつも店にいるだろう? 学校とか、どうしてんのかなぁーと思ってさ」
田宮さんに指摘されて気づいた。まぁ、高校には行かずに就職したとでも言っておけばいいんだろうけど……。
ついつい、カウンター越しに立つ大将と目が合ってしまった。
大将の方は別段、気にもしない感じだった。
気にしているのはボクの方だった……すぐに視線を逸らし逃げに入ってしまっていた。
「コイツは、コッチに越してきてまだ日がが浅いんだよ。学校には身の回りが落ち着いたら……な」
「そうかい、大将。そいつは野暮なことを聞いちまったな、ハハハッ……キュイちゃん、もしオジサンの娘と同じ学校に通うことになったら、あの子のトモダチになってくれないか?」
「も、モチロンです……」
まさか、大将の口から学校に行く許可が出るとは思いも寄らなかった。
学校か……もう二度と行くことのない無縁の場所だと思っていたけど、女子高生生活とはドウナッテンジャーろ?
便所でご飯を食べる羽目になったらイヤだなー。
でも……上手くいけば、リユちゃんと学校で会えるわけだ―――――
「キュイ、入るぞ」
その日の夜、女将さんが大量の高校パンフをもってボクの部屋に入ってきた。
多分、昼間の話の続きだろう。
店の二階になる客間を間借りすることになったとは言え、酒の入った一升瓶を畳の上にジカ置きしないで貰いたい。
「ゲンジさんは絶対に行かせると言っているけど、私はアンタの考えを一番にしたいと思っている……もし、この中で気に入った学校があるのなら、店のことは気にせず選びな。無ければ、それもアリだ」
選べと申されても、お婆ちゃま……入学試験には学力が必須でして、ここから受験対策するとなると目も当てられないことになる。
「安心しな。この私が頼み込めば、何処だろうが、地元の学校連中はフリーパスで編入受理するからよ」
それが一番の不安材料です……。何をどうすれば、教育員会を手なづけられるというのだ!
「女将さん、ボクはリユちゃんが通っているトコロがいいです」
「フッ……そう言うと思って既に手配はしてあるわ」
早い……早すぎる。今のは、たまたまや。もし、違う場所を選んだらどうなっていたことか!?
まぁ、自力で勉強して編入試験に合格するつもりですけど……なんせ、ブランクが空き過ぎて、どこから手をつけていいのか分からない。
「ほら、参考書だ。リユの奴がつかっていた奴さあね。自分の実力のこだわるのもいいけれど、困ったら私らを頼りなよ」
女将さんたちの気遣いを有難く受け取りながら、ボクは久しぶりの勉学に挑んだ。
昼間は仕事をし、夜は勉強……我ながらハードルを高く設定してしまったと泣きそうになった。
その度にリユちゃんとのスクールラーフを想像しながら、ついにボクはやり遂げた!
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