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十八話 アニキ、自己紹介する
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登校時間になり、ようやく校舎内に入れるようになった。
カルタ先生が門を開けてくれれば、済んだことなのだけど……よほど、急いでいたんだろう。
見事にスルーされてしまった。
あの先生は変体なのか?
ボクの問いに「ドブちゃん、わかんなぁ~い」と言っちゃってくれたベルトは、今日も不親切設計なままである。
いずれにしろ、登校初日から面倒事は起こしたくない。
普段からステルス機能つきのボクには、目立つことへの免疫ができていない。
イエローだった時は、バトルコスチュームで顔が隠れていたから戦闘時は平気だった。
それ以外は、皆さんイエローが誰か? 興味がなかったらしく、気づいて貰えることもほぼなかった。
「WOW! レンニュウセイが入ってくると聞きましたが、こんなにプリティガールとは……先生、スタンディングオベーションでーす!」
「えええ、エクスキューズミー? 練乳じゃなくて編入生でふっ」
担任の先生がパツキン、ショートボブの 米人女性だった。
出だしから、強烈なインパクトをもろに喰らったボクは、早くも平常心を保てそうなかった。
自分は畑のカカシだと念じながら、無心を貫く。
プロポーションが良過ぎて本当に目のやり場に困る……童貞を殺すセーターみたいな上着にタイトなスカート。
それらのせいで、余計にボディラインが際立っている。
この先生は、今までどれぐらいの男子生徒を手玉に取ってきたのだろうか? などとつい邪推してしまうのはボクの悪い所だ。
「ソーリィ、先生はイドロ・マクスウェル言います。以後、お見知りおきを」
「あ、はい……新庄キュイです。よろしくお願いします」
律儀にお辞儀をしてきた彼女に少し驚いてしまった。
単なるセクシー系かと思えば、妙に礼儀正しいというか……奥ゆかしい所もある。
イドロ先生は、まったく掴み処がない人だ。
「教室に案内しまーす」と言われて二階に上がった。
廊下にそって一年の教室がずらりと並ぶ中、イドロ先生は一番奥のF組のドアを開けた。
この向こうにまだ見ぬ、猛者たちがいる。
そう思うと緊張で唇が震えてきた。
「リラークス、リラークスよ、キュイさん。ドンウォリィ! 先生がいるから大丈夫ですっ! それ、レッツゴー」
先生に先導されボクは教室の中に入る、それと同時に懐かしい感覚が甦ってきた。
目の前を慌ただしく、移動する生徒たちの姿。
始業のチャイムはとうに鳴っているのに、クラスメイトとの会話に夢中になって一向に席につかない者たちがいる。
いつの年代でも変わらない、それに少しだけ緊張が和らいだ。
そう感じたのも束の間、ガシャン!! 窓ガラスが割れ飛び散っていた。
全力疾走しながら窓側の席に座ろうとした男子生徒が、勢いをつけすぎて窓に突入してしまった。
「先生ぃ! 鴨川君がぁあぁああ―――!! エライことになってます!」
「オーマイガッシュ……」
女子生徒たちが顔面蒼白になって悲鳴を上げていた。
なんか……ボクの自己紹介などしている場合ではない空気なっていた。
教室入って、早々にサスペンス劇場みたいなことになっている。
鴨川君とか言ったけど彼は無事なんだろうか……。
「ふぅ……今日も一段と太陽の光が眩しいぜ!」
存外、元気だった……鴨川君は教室超過した上半身を一度、起こすとガラスのない窓枠で頬杖をつきながら、外の景色を眺めだした。
強がる必要などないのに、何が彼をそうさせるのか……清々しい笑顔で顔面の血を拭う姿に狂気を感じる。
おそらくは、現実逃避を計ることで、何事もなかったように誤魔化し押し切るつもりだ。
往生際が悪いどころか、何の解決にもなっていない。
額から流血しているせいで、顔半分がトマトのように赤く染まったままだ。
「イドロ先生、少し眩暈がするので保健室に行ってきます」
「ウェイト、ミスター鴨川! 今日は皆さんにニューフレンドをイントロデュースしまぁすー」
んなっ……鬼畜じみたイドロ先生の発言に場が凍っていた。
たしかに、窓ガラスにダイブした鴨川君が悪いのだが……席に座りながらソワソワしていいる彼を見ると本当にヤバイことが分かる。
クラスメイトたちが一斉にボクの方を向き、耳を傾けていた。
早くしないと、今度は一人お別れする奴が出てくる。
クラス全体がボクに無言の圧力をかけてきた。
もう、恥ずかしいとか怖いとか言っている猶予はない。
ボクが言葉を選んでいる間にも、鴨川君が痙攣を起こし始めている。
「初めまして新庄キュイです! まだ、不慣れところはありますが、皆さんと一緒に学校生活を楽しめたらなぁ~って思います。よろしくお願いいたします」
言えた! 一度も噛まずに自然に挨拶できた。
これで彼も心置きなく、保健室で手当を受けられる。
窓側を見ると、すでに真っ白く燃え尽きた鴨川君が椅子にもたれかかった状態で発見された。
急いで男子生徒たちが彼を担いで、保健室へと向かって行く。
「新庄さんの席は、鴨川君の斜め後ろです」
窓側から二列目の最後尾、そこがボクに与えられた席だ。
隣は誰もいないけれど、むしろその方が気分的にも楽チンではある。
「災難だったわね。本当に変なのばかり……」
席に着こうとすると、何処からともなく声がした。
幻聴でなければ、前の席に座る女子生徒が確かに今、ボクに話しかけてきた。
カルタ先生が門を開けてくれれば、済んだことなのだけど……よほど、急いでいたんだろう。
見事にスルーされてしまった。
あの先生は変体なのか?
ボクの問いに「ドブちゃん、わかんなぁ~い」と言っちゃってくれたベルトは、今日も不親切設計なままである。
いずれにしろ、登校初日から面倒事は起こしたくない。
普段からステルス機能つきのボクには、目立つことへの免疫ができていない。
イエローだった時は、バトルコスチュームで顔が隠れていたから戦闘時は平気だった。
それ以外は、皆さんイエローが誰か? 興味がなかったらしく、気づいて貰えることもほぼなかった。
「WOW! レンニュウセイが入ってくると聞きましたが、こんなにプリティガールとは……先生、スタンディングオベーションでーす!」
「えええ、エクスキューズミー? 練乳じゃなくて編入生でふっ」
担任の先生がパツキン、ショートボブの 米人女性だった。
出だしから、強烈なインパクトをもろに喰らったボクは、早くも平常心を保てそうなかった。
自分は畑のカカシだと念じながら、無心を貫く。
プロポーションが良過ぎて本当に目のやり場に困る……童貞を殺すセーターみたいな上着にタイトなスカート。
それらのせいで、余計にボディラインが際立っている。
この先生は、今までどれぐらいの男子生徒を手玉に取ってきたのだろうか? などとつい邪推してしまうのはボクの悪い所だ。
「ソーリィ、先生はイドロ・マクスウェル言います。以後、お見知りおきを」
「あ、はい……新庄キュイです。よろしくお願いします」
律儀にお辞儀をしてきた彼女に少し驚いてしまった。
単なるセクシー系かと思えば、妙に礼儀正しいというか……奥ゆかしい所もある。
イドロ先生は、まったく掴み処がない人だ。
「教室に案内しまーす」と言われて二階に上がった。
廊下にそって一年の教室がずらりと並ぶ中、イドロ先生は一番奥のF組のドアを開けた。
この向こうにまだ見ぬ、猛者たちがいる。
そう思うと緊張で唇が震えてきた。
「リラークス、リラークスよ、キュイさん。ドンウォリィ! 先生がいるから大丈夫ですっ! それ、レッツゴー」
先生に先導されボクは教室の中に入る、それと同時に懐かしい感覚が甦ってきた。
目の前を慌ただしく、移動する生徒たちの姿。
始業のチャイムはとうに鳴っているのに、クラスメイトとの会話に夢中になって一向に席につかない者たちがいる。
いつの年代でも変わらない、それに少しだけ緊張が和らいだ。
そう感じたのも束の間、ガシャン!! 窓ガラスが割れ飛び散っていた。
全力疾走しながら窓側の席に座ろうとした男子生徒が、勢いをつけすぎて窓に突入してしまった。
「先生ぃ! 鴨川君がぁあぁああ―――!! エライことになってます!」
「オーマイガッシュ……」
女子生徒たちが顔面蒼白になって悲鳴を上げていた。
なんか……ボクの自己紹介などしている場合ではない空気なっていた。
教室入って、早々にサスペンス劇場みたいなことになっている。
鴨川君とか言ったけど彼は無事なんだろうか……。
「ふぅ……今日も一段と太陽の光が眩しいぜ!」
存外、元気だった……鴨川君は教室超過した上半身を一度、起こすとガラスのない窓枠で頬杖をつきながら、外の景色を眺めだした。
強がる必要などないのに、何が彼をそうさせるのか……清々しい笑顔で顔面の血を拭う姿に狂気を感じる。
おそらくは、現実逃避を計ることで、何事もなかったように誤魔化し押し切るつもりだ。
往生際が悪いどころか、何の解決にもなっていない。
額から流血しているせいで、顔半分がトマトのように赤く染まったままだ。
「イドロ先生、少し眩暈がするので保健室に行ってきます」
「ウェイト、ミスター鴨川! 今日は皆さんにニューフレンドをイントロデュースしまぁすー」
んなっ……鬼畜じみたイドロ先生の発言に場が凍っていた。
たしかに、窓ガラスにダイブした鴨川君が悪いのだが……席に座りながらソワソワしていいる彼を見ると本当にヤバイことが分かる。
クラスメイトたちが一斉にボクの方を向き、耳を傾けていた。
早くしないと、今度は一人お別れする奴が出てくる。
クラス全体がボクに無言の圧力をかけてきた。
もう、恥ずかしいとか怖いとか言っている猶予はない。
ボクが言葉を選んでいる間にも、鴨川君が痙攣を起こし始めている。
「初めまして新庄キュイです! まだ、不慣れところはありますが、皆さんと一緒に学校生活を楽しめたらなぁ~って思います。よろしくお願いいたします」
言えた! 一度も噛まずに自然に挨拶できた。
これで彼も心置きなく、保健室で手当を受けられる。
窓側を見ると、すでに真っ白く燃え尽きた鴨川君が椅子にもたれかかった状態で発見された。
急いで男子生徒たちが彼を担いで、保健室へと向かって行く。
「新庄さんの席は、鴨川君の斜め後ろです」
窓側から二列目の最後尾、そこがボクに与えられた席だ。
隣は誰もいないけれど、むしろその方が気分的にも楽チンではある。
「災難だったわね。本当に変なのばかり……」
席に着こうとすると、何処からともなく声がした。
幻聴でなければ、前の席に座る女子生徒が確かに今、ボクに話しかけてきた。
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