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三十二話 アニキ、人の流れに飲まれる
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「ごめんね、イヤな思いさせたくなかったから内緒にしていたけど、かえって逆効果だったわね」
「ん? ああっ……そのこと」
イエローだったボクにとってオーディエンスから見られることは、さして気にはならない。
田宮さんは、ボクを普通の女子だと思って気遣っているんだろう。
確かに誰かの監視下あるというのは、あまり気分の良い話ではない。
ただ、彼女の場合はそれなりの事情がある。
だから、そんなに悲しそうな瞳で見ないで欲しい。
「ボクは田宮さんと一緒に出掛けられてスゴク楽しいよ! 今まで、こんな風に誰かと好きな物について語り合うことはなかったから。田宮さん、さえ良ければまた一緒にお出掛けしたいな~」
「本当に? ボディーガードとか毎回ついて来るのよ。嫌じゃないの?」
「むしろ、安心じゃない! こっそり隠れられていると気になっちゃうから、その辺りは改善して貰えると助かるんだけどね」
「新庄さん……」
うつむきながら顔を横にそらす田宮さんは、小刻みに身体を震わせていた。
ボクがヘンなこと言って泣かせてしまったと不安になったけれど、近くにいた奈美宗さんが彼女をなだめていたので、任せることにした。
というか、ボクがあの中に入る余地はあるのだろうか?
「か、怪物だぁああ――――!! 上の階で怪物が暴れているぞ!」
一難去ってまた何とやら、どうやら次は本物の魔法少女の出番らしい。
田宮さんの方を見ると、彼女もボクを見ながら頷いていた。
「奈美宗。私のことはいいから、貴女たちは買い物客の避難を優先させなさい」
「ですが……お嬢様」
「聞こえなかったの? 私なら一人でも平気よ! 子供じゃあ、あるまいし新庄さんだっている。さぁ、早く!」
「お嬢様! この奈美宗、感動いたしました。ワガママばかりで人に対して素っ気ないお嬢様が、いつのまにか社会貢献を意識するようになるとは……。承知いたしました! ここは我々にお任せください」
「結構、言うわね……。いい? 私たちは適当な場所に避難するから、モールの安全が確保されるまでこっちには戻らなくていいわ」
奈美宗さんは両手で口元を多いながら、本気で感激していた。
おかげで、厄介だと思われた人払いがスムーズに進んだ。
『そこまで心配する必要はないのに。もし、君たちが変身するところを目撃した人がいても消せばいいんだから』
消す? えっ? 一体、何を消すの? 言い方が怖いんですけど……
「出たわね。変態ベルト、また新庄さんに良からぬことを吹き込むつもり!?」
『おやおや、吾輩がいつキュイちゃんに悪いことを教えたと言うのかな? むしろ、キュイちゃんの助けになっているんだけどなぁ~』
「新庄さん……どうなの?」
「うーん、当たらずも遠からずみたいな。それより二人とも、言い争って場合じゃないよ。今は、変体をどうにかしないと!」
「そうね、行きましょう!」
上階へと移動しようとするも、すでにエスカレーターには行列が並び、エレベーター付近も人々がひしめきあって、とてもじゃないが進めない。
ならば階段だと、人だかりを掻き分けて行こうとすると、体重の軽いボクでは流れ飲まれドンドン別方向へと押し出せてしまう。
「た、助けてぇぇくり―――!!」
「捕まって、新庄さん」
「ハェ、ハァハァ~。もう少しで下りのエスカレーターまで運ばれる所だった。田宮さん、ありがとう」
田宮さんが手を伸ばして引っ張ってくれたおかげで、何とか人の流れから脱することができた。
にしても、上に行くためには別の方法を考えないといけない。
建物構造上、エスカレーター近辺は上階まで吹き抜けになっている。
変身できればスラスターレグルで飛んでゆけるんだけど、変身できる場所がない。
「いったい、どうしたら……」
『ふふん。どうやら、お困りのようだね。今こそドブデバイスを使用するのだ! デバイスを天にかざし、こう叫ぶだけでいい』
「KUSAI KEMURI!! って! 何をさせるんだよ!?」
またしても、勝手に身体を操作されてしまった。
ドブさんによって挙げらたボクの手にはドブデバイスがにぎられていた。
デバイスからプシューっと空気が出てくる音が聞こえると、周囲にいた人々が苦しそうに藻掻きながら卒倒してゆく。
「臭い! 臭過ぎるぅぅぅるるう!!」
ボクと田宮さんは互いに顔を見合わせていた。ボクたちには、悪臭の臭いなどまったく分からなかった。
魔法少女だからなのかは知らないけど、身を丸めて屈んだ人たちは皆「ドブ臭い」と……言いながら失神していた。
ある意味、テロ攻撃みたいなもんだ。
いくら毒性がないとは言え、何をどうすれば、そこまで臭い物ができるのか? はなはだ疑問だ。
そして、今度からそれを持ち歩くには、いささか抵抗が出てきてしまうだろう。
『君たちには見えていないが、今、この辺りには魔法の煙から立ち込めている。変身するなら、今だよ』
「らしいわね……皆、臭いだけではなく視界も見えづらそうしているわ」
「それなら安心かな? ピュアセレクト!」
「酷い有様だけど、一応ね。フェザータッチ!」
混乱、渦巻く中でボクたちは魔法少女に変身した。
「ん? ああっ……そのこと」
イエローだったボクにとってオーディエンスから見られることは、さして気にはならない。
田宮さんは、ボクを普通の女子だと思って気遣っているんだろう。
確かに誰かの監視下あるというのは、あまり気分の良い話ではない。
ただ、彼女の場合はそれなりの事情がある。
だから、そんなに悲しそうな瞳で見ないで欲しい。
「ボクは田宮さんと一緒に出掛けられてスゴク楽しいよ! 今まで、こんな風に誰かと好きな物について語り合うことはなかったから。田宮さん、さえ良ければまた一緒にお出掛けしたいな~」
「本当に? ボディーガードとか毎回ついて来るのよ。嫌じゃないの?」
「むしろ、安心じゃない! こっそり隠れられていると気になっちゃうから、その辺りは改善して貰えると助かるんだけどね」
「新庄さん……」
うつむきながら顔を横にそらす田宮さんは、小刻みに身体を震わせていた。
ボクがヘンなこと言って泣かせてしまったと不安になったけれど、近くにいた奈美宗さんが彼女をなだめていたので、任せることにした。
というか、ボクがあの中に入る余地はあるのだろうか?
「か、怪物だぁああ――――!! 上の階で怪物が暴れているぞ!」
一難去ってまた何とやら、どうやら次は本物の魔法少女の出番らしい。
田宮さんの方を見ると、彼女もボクを見ながら頷いていた。
「奈美宗。私のことはいいから、貴女たちは買い物客の避難を優先させなさい」
「ですが……お嬢様」
「聞こえなかったの? 私なら一人でも平気よ! 子供じゃあ、あるまいし新庄さんだっている。さぁ、早く!」
「お嬢様! この奈美宗、感動いたしました。ワガママばかりで人に対して素っ気ないお嬢様が、いつのまにか社会貢献を意識するようになるとは……。承知いたしました! ここは我々にお任せください」
「結構、言うわね……。いい? 私たちは適当な場所に避難するから、モールの安全が確保されるまでこっちには戻らなくていいわ」
奈美宗さんは両手で口元を多いながら、本気で感激していた。
おかげで、厄介だと思われた人払いがスムーズに進んだ。
『そこまで心配する必要はないのに。もし、君たちが変身するところを目撃した人がいても消せばいいんだから』
消す? えっ? 一体、何を消すの? 言い方が怖いんですけど……
「出たわね。変態ベルト、また新庄さんに良からぬことを吹き込むつもり!?」
『おやおや、吾輩がいつキュイちゃんに悪いことを教えたと言うのかな? むしろ、キュイちゃんの助けになっているんだけどなぁ~』
「新庄さん……どうなの?」
「うーん、当たらずも遠からずみたいな。それより二人とも、言い争って場合じゃないよ。今は、変体をどうにかしないと!」
「そうね、行きましょう!」
上階へと移動しようとするも、すでにエスカレーターには行列が並び、エレベーター付近も人々がひしめきあって、とてもじゃないが進めない。
ならば階段だと、人だかりを掻き分けて行こうとすると、体重の軽いボクでは流れ飲まれドンドン別方向へと押し出せてしまう。
「た、助けてぇぇくり―――!!」
「捕まって、新庄さん」
「ハェ、ハァハァ~。もう少しで下りのエスカレーターまで運ばれる所だった。田宮さん、ありがとう」
田宮さんが手を伸ばして引っ張ってくれたおかげで、何とか人の流れから脱することができた。
にしても、上に行くためには別の方法を考えないといけない。
建物構造上、エスカレーター近辺は上階まで吹き抜けになっている。
変身できればスラスターレグルで飛んでゆけるんだけど、変身できる場所がない。
「いったい、どうしたら……」
『ふふん。どうやら、お困りのようだね。今こそドブデバイスを使用するのだ! デバイスを天にかざし、こう叫ぶだけでいい』
「KUSAI KEMURI!! って! 何をさせるんだよ!?」
またしても、勝手に身体を操作されてしまった。
ドブさんによって挙げらたボクの手にはドブデバイスがにぎられていた。
デバイスからプシューっと空気が出てくる音が聞こえると、周囲にいた人々が苦しそうに藻掻きながら卒倒してゆく。
「臭い! 臭過ぎるぅぅぅるるう!!」
ボクと田宮さんは互いに顔を見合わせていた。ボクたちには、悪臭の臭いなどまったく分からなかった。
魔法少女だからなのかは知らないけど、身を丸めて屈んだ人たちは皆「ドブ臭い」と……言いながら失神していた。
ある意味、テロ攻撃みたいなもんだ。
いくら毒性がないとは言え、何をどうすれば、そこまで臭い物ができるのか? はなはだ疑問だ。
そして、今度からそれを持ち歩くには、いささか抵抗が出てきてしまうだろう。
『君たちには見えていないが、今、この辺りには魔法の煙から立ち込めている。変身するなら、今だよ』
「らしいわね……皆、臭いだけではなく視界も見えづらそうしているわ」
「それなら安心かな? ピュアセレクト!」
「酷い有様だけど、一応ね。フェザータッチ!」
混乱、渦巻く中でボクたちは魔法少女に変身した。
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