超絶転身少女 インフィニティアニキ 特撮ヒーローから魔法少女系νtuberに転職します

心絵マシテ

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三十一話 アニキ、共闘する

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会計を済ませるボクの隣でカルロスと名乗った彼は、一人で勝手に盛り上がっていた。
「パナンじゃない、パナンじゃない」と連呼しているが、問題はそこではない。
ボク自身が彼にまったく興味を持てないということが状況的に厳しいのだ。

「名前ぐらい、いいじゃないか? まさか、こんな場所で地上に降りた天使に出会えるとはぁぁああ――――!」

クッサァアアア―――!! 言っていることが臭過ぎて鼻が曲がるわ。
あと、大声だすのは止めてほしい。他のお客さんが迷惑そうにコチラを見ているじゃないか……。

「分かった! 僕に名前を当てて欲しいんだね。なんて、きわどいアピールの仕方なんだ!!」

こういう輩は基本、相手にしない方がいい。
一つでも、話に応じてしまえば、グイグイと引っ張られて相手の術中にハマってしまう。
ボク一人だったら、この場から逃走すれば済むけど今は都合が悪い。
田宮さんを一人にするわけにもいかないし、この男が彼女にチョッカイをかける可能性もある。
弱ったぞ……中々、諦めてくれそうにない。
どんだけメンタルモンスターなんだよ。

「どうしたの? 新庄さん」

そうこうしているうちに、田宮さんが戻ってきてしまった。
なるべく、コチラに近寄らないでと視線で訴えっているんだけど、伝わっていない。
難しい顔をしながら、逆に駆け足でやってきた。

「ふぉおぉお――――うう!! これまた、お連れの娘もエレガンツ!! ボクの名前はカルロス、少子高齢化問題を解決するために現れた救世主さ。よろぴくね~」

「…………フェザータッ「待って待て!! 怪人じゃないから、この人。変態だけど変体じゃないから」

出会い頭に変身バックルを取り出そうとした田宮さんを辛うじて止めた。
カルロスのナンパな態度を見れば、そうしたくなるけど悪党でもない限り、魔法少女に変身して戦うのは厳禁である。

「そうだよ! 僕は変態なんかじゃないよ。上から呼んでも下から読んでも、恋愛マスター。略してアイマスのカルロスだよぉぉぉ!」

「どこをどう読もうが、アンタのしていることはセクハラじゃないの? 私の友人にチョッカイださないでよ! 困っているでしょ、彼女」

おおっ! さすがは田宮さんだ。
カルロス相手に毅然とした態度で、言い返している。
けれど、それでどうにかなる奴だったら、ボクも困りはしない。
むしろ、強い言い方するのは、この男にとっては御褒美みたいなものでしかない。

「嫌いじゃないよ、そのストロングスタイル!」

「アルコール飲料みたいに言わないでよ! そろそろ引いてくれないかしら、でなけば――――」

「でなければ? 警察でも呼ぶのかい? 別に僕は何もしていないよねぇぇ~。せいぜい、注意されて終わりだよぉぉぉん」

「もしもし、奈美宗なみむね? 私だけど、今から人を寄こして頂戴。そう……分かったわ」

突然、スマホを取り出して彼女はどこかに連絡を取っていた。
警察ではなさそうだけど……。
口を半開きしたまま呆然とするカルロスを見ながら、田宮さんは肩をすくめて妖艶ようえんに笑う。
頬にふれるサイドテールの髪が、その美を際立たせていた。
ボクには真似できない魅力がそこあった。
カルロスは、当然ならが大ハシャギするのだろうと思っていた。
しかし、意外にも彼の反応は素っ気なく、どこか怯えているようにも見えた。

「誰を呼んだのかな? 警察ではなさそうだけどぉ」

「専属のボディーガードよ。あと、三十秒でアンタを捕まえるから覚悟なさい」

「はぁ? ハッタリだろぉぉぉぉぉ! えっ? えっ? 何だ!? お前ら、どこから出てきた!?」

カルロスを包囲するべく、田宮さんの言った「ボディガード」が続々と駆けつけてきた。

ある者は観賞用植物に擬態し、またある者はショップの店員に扮していたり、買い物にきた家族に触れられているペットを演じていた。
よくよく考えてみれば彼女は令嬢なんだ。
一人勝手に行動できることなんてあり得ない。
常に大勢の付き人に守られているんだ。
抵抗、虚しく連行されるカルロスを見ながら、自分と田宮さんとでは住んでいる世界が違うことを実感させられてしまった。
過保護というよりも、そうせざるを得ない環境にある彼女が、父親に対してあまり良い印象を持っていないのも納得できてしまう。
おそらく、親子ありながもその距離感は遠い。
彼女が否定した通り、ボクは上辺だけで物事を判断していたのかもしれない。
そう痛感すると何だか、申し訳ない気分になってくる。

「お嬢様……また、こんなに買ったのですか!?」

「いいじゃない。小遣いで買ったんだから! 私じゃあ、運ぶの大変だから、誰かに運ばせておいてね」

レジカウンターの前で田宮さんと会話しているのは、グレイのスーツを着た女性だった。
間違いなく、田宮家の関係者だろう。
二人して、親し気にあーでも、こーでもないと言い合っている。

カウンターの上に置かれた三つの大袋には、ベルゼットグッズがぎっしりと詰まっていた。
いきなり、ここまで買うとは恐るべし、令嬢。

「大人買いかぁ~」

思わず呟くボクに、さきほどの女性が、ひざまずいて名刺を差し出してきた。
奈美宗 千穂と名が刻まれている、ソレをボクは戸惑いながらも受け取った。

「メルナお嬢様がお世話になっております。ワタクシ、専属執事の奈美宗と申します。新庄様には挨拶もせず、突然押しかけてしまうカタチとなってしまい申し訳ありませんでした。どうか、我ら一同の非礼をお許しください」

女性の執事さんとは珍しい。
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