38 / 59
三十七話 アニキ、再会する
しおりを挟む
公園にある滑り台の傍に子供たちが集合していた。
さして珍しい光景でもないが、その中心にいる人物をどこかで見たような気がする。
「お姉さん、触らせてよ、ねぇ~、お願いだから」
「落ち着けよ。そんなに激しくしたら暴れるだろっ!」
真っ昼間から、小学生に何を言わせているんだ。
聞き捨てならない台詞に、元ヒーローとしての血が騒ぐ。
そんなけしからん事を覚えるには、十年早い。
憤りを通り越した興奮を感じながら、ボクは彼らに言ってやった。
「おせちも良いけど、やっぱカレーだね!!」
はっ! ボクは何を言っているんだ。
ついイエローだった時のノリが出てしまった。これでは、おせちとカレーが隠語みたいじゃないか!!
突如、背後から現れたボクを見る少年たちの眼は何とも冷めていた……。
まるで、溜まりにたまった仕事をようやく終えた残業帰りのリーマンのようだ。
潤いがなく若さとは無縁の表情が、彼らを取り巻く環境がいかに厳しいものか訴えているように見える。
「パンツみせろや! オラ!」
訳の分からないセクハラを小学生から受けるとは想像もしていなかった。
最近の子供はこんなにも乱れ切っているのか、少年たちはボクを性的な眼で見ている。
嫌すぎる……こんなのボクが知っている子供たちではない。
「お前ら、ふざけんのも大概にしろよ! 向こうの女の子も怖がっているだろう」
「けどさ、アイカねぇちゃん。まんざらでもなさそうだぜアレ」
―――アレとか言うなっ! 可愛くない、全然可愛げがない。
内心、怒り心頭となりながらもボクは、自分を抑えた。
子供というのは、思ったことをよく考えもせず口走るものだ。
ヒーローとしては、どんなガキでも公平に扱わないといけないし、常に彼らの味方でなければならない。
それに、迂闊に叱りでもしたらバックに潜むモンペ(モンスターペアレンツ)が出てくるかもしれない。
できれば厄介事を避けたい身としては、子供らと対立したくない。
「もう良いから帰れよ。お前ら、これから塾なんだろ?」
「ええ――――!! もう少し居てもいいじゃん」
「はぁ? むしろ地球上から消えろよ。お前らみたいなのが将来、人様に迷惑かけるんだからさぁ~」
「わぉ―――!! アイカねぇちゃん、シンラツゥ―――――!!」
「早くいけよ、粗大ゴミ。これ以上、私の邪魔すんなよ」
一体、どんなプレイなんだ? あんだけ罵倒されても喜んでいる。
公園を走りさってゆく少年たちを見て、この国の行く末が不安になってきた。
不安といえば、容赦なく厳しい言葉を投げつけてくる、このお姉ちゃんは間違いなく、この間モールで出くわした魔法少女のアイカちゃんだ。
「ん? アンタ、どっかで見たような……? あっ! 色々とアウトな魔法少女じゃん! オッスゥ~元気してたぁー?」
即行で身バレした、変身していたというのに……相手も魔法少女だから認識阻害が上手く働かないのか?
ボクは返事に困ってしまった。
アイカちゃんとの距離感がまったくつかめない。
彼女自身の他者との接し方が遠かったり、近すぎたりする独特なもののせいで正解を見出せない。
それよりも、さっきから気になるのは彼女の手にする毛皮の正体だ。
猫のように首根っこを指先で摘まんでいるけど、どう見てもレッサーパンダ、サガワ博士だ。
「アイカちゃん、そのレッサーパンダは逃げだしたウチのペットなんだ。ちょうど、今捜索していたところで……。見つけてくれてありがとう」
「ふふん、礼には及ばないしょ。とりあえず、アンタの家に行けばいいカンジ?」
「ふぇ? いや……ここで手渡しでも」
「まさか、ペットを拾ってもらって、ありがとうだけとかアリエーナイ!?」
何かと厚かましいとしか言い様がなかった。
頼んでもいないのに、アイカちゃんはボクが間借りしている麺次郎にまでついて来てしまった。
断わってみせても勢い任せに押し切りボクのほうが根負けする始末だ。
だとしても博士を捕まえてくれたのは、彼女であることは変わらない。
その親切心を無碍にすることはできない。
「へぇー、ラーメン屋かぁ。それで、そんなウェートレスみたいな恰好しているんだ!」
合点のいったようにしみじみと頷くアイカちゃん。
これで満足であろう。そろそろ博士を渡して欲しい。
ボクの願いは、即座に音を立てて崩れてゆく。
あろうことか、今度は勝手に店のドアを開き店内へと入っていった。
「らっしゃい!! 」奥から大将の活きのいい声が響いてきた。
「あのぉ、外でコイツを捕まえたんですけど。お店の子に聞いたら、ここで飼っているペットだと聞いたんですけどぉ~」
「おうよ、サガワじゃねぇか! ウチの婆さんがイナイイナイバアア! って叫んでいたぞ」
「マジっすか!? じゃあ、返しますね」
「スマンな。サガワを見つけてくれた礼に、ラーメンでもどうだい? 腹減っているだろう?」
「あざーす!! チソウになりますぅ!!」
何を考えているのか知らないが、順応力が高過ぎる。
一瞬にして大将と打ち解けていないか?
これがリア充という奴なのか……コミュ力のお化けだ。
到底、真似はできない。
さして珍しい光景でもないが、その中心にいる人物をどこかで見たような気がする。
「お姉さん、触らせてよ、ねぇ~、お願いだから」
「落ち着けよ。そんなに激しくしたら暴れるだろっ!」
真っ昼間から、小学生に何を言わせているんだ。
聞き捨てならない台詞に、元ヒーローとしての血が騒ぐ。
そんなけしからん事を覚えるには、十年早い。
憤りを通り越した興奮を感じながら、ボクは彼らに言ってやった。
「おせちも良いけど、やっぱカレーだね!!」
はっ! ボクは何を言っているんだ。
ついイエローだった時のノリが出てしまった。これでは、おせちとカレーが隠語みたいじゃないか!!
突如、背後から現れたボクを見る少年たちの眼は何とも冷めていた……。
まるで、溜まりにたまった仕事をようやく終えた残業帰りのリーマンのようだ。
潤いがなく若さとは無縁の表情が、彼らを取り巻く環境がいかに厳しいものか訴えているように見える。
「パンツみせろや! オラ!」
訳の分からないセクハラを小学生から受けるとは想像もしていなかった。
最近の子供はこんなにも乱れ切っているのか、少年たちはボクを性的な眼で見ている。
嫌すぎる……こんなのボクが知っている子供たちではない。
「お前ら、ふざけんのも大概にしろよ! 向こうの女の子も怖がっているだろう」
「けどさ、アイカねぇちゃん。まんざらでもなさそうだぜアレ」
―――アレとか言うなっ! 可愛くない、全然可愛げがない。
内心、怒り心頭となりながらもボクは、自分を抑えた。
子供というのは、思ったことをよく考えもせず口走るものだ。
ヒーローとしては、どんなガキでも公平に扱わないといけないし、常に彼らの味方でなければならない。
それに、迂闊に叱りでもしたらバックに潜むモンペ(モンスターペアレンツ)が出てくるかもしれない。
できれば厄介事を避けたい身としては、子供らと対立したくない。
「もう良いから帰れよ。お前ら、これから塾なんだろ?」
「ええ――――!! もう少し居てもいいじゃん」
「はぁ? むしろ地球上から消えろよ。お前らみたいなのが将来、人様に迷惑かけるんだからさぁ~」
「わぉ―――!! アイカねぇちゃん、シンラツゥ―――――!!」
「早くいけよ、粗大ゴミ。これ以上、私の邪魔すんなよ」
一体、どんなプレイなんだ? あんだけ罵倒されても喜んでいる。
公園を走りさってゆく少年たちを見て、この国の行く末が不安になってきた。
不安といえば、容赦なく厳しい言葉を投げつけてくる、このお姉ちゃんは間違いなく、この間モールで出くわした魔法少女のアイカちゃんだ。
「ん? アンタ、どっかで見たような……? あっ! 色々とアウトな魔法少女じゃん! オッスゥ~元気してたぁー?」
即行で身バレした、変身していたというのに……相手も魔法少女だから認識阻害が上手く働かないのか?
ボクは返事に困ってしまった。
アイカちゃんとの距離感がまったくつかめない。
彼女自身の他者との接し方が遠かったり、近すぎたりする独特なもののせいで正解を見出せない。
それよりも、さっきから気になるのは彼女の手にする毛皮の正体だ。
猫のように首根っこを指先で摘まんでいるけど、どう見てもレッサーパンダ、サガワ博士だ。
「アイカちゃん、そのレッサーパンダは逃げだしたウチのペットなんだ。ちょうど、今捜索していたところで……。見つけてくれてありがとう」
「ふふん、礼には及ばないしょ。とりあえず、アンタの家に行けばいいカンジ?」
「ふぇ? いや……ここで手渡しでも」
「まさか、ペットを拾ってもらって、ありがとうだけとかアリエーナイ!?」
何かと厚かましいとしか言い様がなかった。
頼んでもいないのに、アイカちゃんはボクが間借りしている麺次郎にまでついて来てしまった。
断わってみせても勢い任せに押し切りボクのほうが根負けする始末だ。
だとしても博士を捕まえてくれたのは、彼女であることは変わらない。
その親切心を無碍にすることはできない。
「へぇー、ラーメン屋かぁ。それで、そんなウェートレスみたいな恰好しているんだ!」
合点のいったようにしみじみと頷くアイカちゃん。
これで満足であろう。そろそろ博士を渡して欲しい。
ボクの願いは、即座に音を立てて崩れてゆく。
あろうことか、今度は勝手に店のドアを開き店内へと入っていった。
「らっしゃい!! 」奥から大将の活きのいい声が響いてきた。
「あのぉ、外でコイツを捕まえたんですけど。お店の子に聞いたら、ここで飼っているペットだと聞いたんですけどぉ~」
「おうよ、サガワじゃねぇか! ウチの婆さんがイナイイナイバアア! って叫んでいたぞ」
「マジっすか!? じゃあ、返しますね」
「スマンな。サガワを見つけてくれた礼に、ラーメンでもどうだい? 腹減っているだろう?」
「あざーす!! チソウになりますぅ!!」
何を考えているのか知らないが、順応力が高過ぎる。
一瞬にして大将と打ち解けていないか?
これがリア充という奴なのか……コミュ力のお化けだ。
到底、真似はできない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる