超絶転身少女 インフィニティアニキ 特撮ヒーローから魔法少女系νtuberに転職します

心絵マシテ

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四十二話 アニキ、注意報

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カルロスが卑猥ひわいな眼でボクを見てくる。
あれは、絶対にエロいことを妄想している時の顔だ。男だった経験上、イヤでも分かってしまう。
それにしても……海パンの中にサンオイルを挟んでいるのは何故だろう……。
疑問以上に、彼を遠ざけたい気持ちが湧いてくる。

「ハァ~、この前のストーカー。まだ、新庄さんに付きまとっているの!?」

「なになに、知り合いなんの? タミちゃん」

「た、タミちゃん? ちょっと藍島あおしまさん」

面白がって出てきたのは、レネ子さんだった。
聞き慣れない呼び名に、クールビューティーな田宮さんも素っ頓狂な声を出していた。
藍島レネ、それが彼女の名前だ。
誰とでも分け隔てなく接することができるのは、彼女の強みでもあり欠点でもある。

「ほぉう~、これはまた贅沢な物をお持ちで」

割りばしが置けそうなほど鼻の下を伸ばしながら、鴨川君がレネ子さんの胸元をガン見していた。

「おら! どこ見てんのよ、このエロザルが!」

あまりにドストレートすぎるエロさ加減に、ほとほと呆れた茜音ちゃんが顔をしかめる。
けれど、鴨川君の頭の中は煩悩だらけだ。聞く耳など持っていなかった。

「まぁ、レネ子のミサイルは破壊力が違うからなぁ~、同性であるウチらも凝視しちゃうし」

「もう、アイカったら。はしたない言い方しないでよ、せめて乳袋って言ってよね」

ホントにそれで良いのかい? ボクにはどちらでもイヤらしく聞こえるけど……まぁ、彼女のビキニはまるで果物がはいったスーパーのビニール袋にしか見えないのも、また事実である。

「たわわか……フッ」自身の胸を眺めてみると、何故だか乾いた笑いがこみ上げてきた。

男だった時の方が胸囲があった気がする……それが女の子になって縮んでいるんだから、ショックが隠せない。
胸が無いということではなく、有ったことに男として悲しくなった。

ウィンウィンウィンウィンウィンウィィンアイ―ンンン!!

突如、電動工具を動かした時のような、耳をつんざく音がビーチ全体にこだました。

『お知らせします。只今、海上保安庁より怪人警報が発令されました。付近にいる皆さんは慌てず、落ち着いて、速やかに避難するようお願いします! また、近隣に住むヒーローの皆さんは緊急出動の準備をお願いします』
          
やはり、海と言えば怪人だ。久々に聞いた怪人警報は相も変わらず騒音被害でしかなかった。
テンプレートみたいなお知らせも、ヒーロー連中にとっては脅迫に近いものがある。
何が悲しくて、無理くり怪人の処理をしなければならないのか?
しかも、危険を伴う仕事だというのに、個人では割に合わないほど薄給である。
それこそボクらのように政府の天下り先のような機関に所属していなければ、とてもではないがヒーロー職一本では食ってはいけない。
近頃では、νtuberニューチュウバーと同様にヒーローサイドも独自の動画を投稿して資金を調達していると聞く。
はやり、セコイヤのような強大な悪の組織がなくなってしまったのが響いているらしく、ヒーローの需要は年々、低下していた。

「ほら、皆! 急いで避難しないとヤバイよ!! 俺について来い!」

周囲が慌ただしく非難しているのを見て、鴨川君も率先して指揮を取っていた。
残念な話、その後に続く者は誰一人としておらず、彼は孤立したまま人の流れに飲まれて消えていった。
許せ、鴨川君。これもまた魔法少女の宿命なのだから、逃げるわけにはいかないのだ。

「あれか……敵さんは? 今回は私らに任せてもらおうか?」

「いいや、俺が何とかしよう!!」

誰も期待していないのに、何故かカルロスがしゃしゃり出てきた。
アイカちゃんの目つきが怖い。何を言っているんだコイツはと無言で訴えてきている。
常人なら、すぐに気づくんだけどカルロスには、その法則は通用しない。
周りの空気が読めないのも困ったものだ。

「うおおおおおお! 俺たちのパラダイスに土足で踏み込みやがって許さんぞ!」

「うおぃ! 一般人が戦って勝てる相手じゃねぇぞ!?」

「心配は無用さハニー。君のような優しいギャルも守備範囲だから安心してくれ」

「お前は自分の頭を心配しろよ! って、聞いてねぇぇ――――」

「じゃっ、行ってくるよ! アデュ――」そんなことを勝手にほざきながらカルロスは海に飛び込んでいった。

沖の方からやってくる怪人は、サーファーだった。
サーフボードを巧みに操作しながら、波に乗って徐々に海岸へと接近している。
負けじとカルロスもバタフライで海上を進んでゆく。
意外と泳ぐフォームが綺麗なのだが……そんなトコロに感心していても意味がない。
渓流をさかのぼる鮭のように波間を抜けるカルロスだが、その真上から怪人のサーフボードが下降してきた。

「ぎゃああああ―――――」という小さな悲鳴と共に激突した両者は海の藻屑となった。
彼らのせいで、コチラの気分はぶち壊しである。
せっかく、ボクたち以外の魔法少女の活躍が見られるチャンスだったのに……今回はもう終わりなの?

「油断したらダメ。新庄さん……」

耳下でかすれた声が聞こえた。変身用の指環リングを装着したフィグちゃんがボクの隣で身構えていた。
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