超絶転身少女 インフィニティアニキ 特撮ヒーローから魔法少女系νtuberに転職します

心絵マシテ

文字の大きさ
47 / 59

四十六話 アニキ、好みを当てる

しおりを挟む
田所さんは人柄の良い温厚なオジサンだった。
しかしながら、変体に対しては血も涙もなかった。
ヘッドロックをかけたままの状態でヤキンバが暴れようとする度に顔面に田所パンチが炸裂する。
その拳はいうまでなく真っ赤に染まっている。

清々しい顔をしながら「ついて来たまえ。今回の強化合宿について説明しよう」というけど変体を引きづったまま移動する背中は猟奇的だ。

着いた先に見えたのは一台のキッチンカーだった。
車体側面にはステラバーガーとポップな感じで書かれている。
ヤキンバが恨みを募らせていた元凶がここにあった。

ボクには、あまり馴染みのないファストフード店だが、ステラバーガー(通称、ステバ)は今、女子高生を中心に人気急上昇中のお店らしい。
おそらく、そこはかとなく感じられるファンシーさがウケたのだろう。
ファンキー世代の僕には、未知の領域にも思われる。

「いやぁ~遅かったね、T!」

「スマンな。皆を連れてきたぞ、ドブえもん」

ドドドドドドドオ、ドブさぁああ―――― ん!?

キッチンカーの周りの設置されたビーチパラソル。
下がテーブルとなっている、そこにムニーのプラモが椅子に座っていた。

「というか! ホテルの部屋からどうやってここに移動したんだ!?」

「嗚呼っ、君か。人脈っていう君には備わっていないモノを駆使したまでさ」

チクショウ、コイツ……どこかの社長みたいなことを口走っていやがる。

「まぁ、そう睨むな睨むな。キュイちゃんにもお得な情報を用意してあるからさ」

悲しいかな。人は、お得という言葉に弱い。
損得勘定ばかりが、すべてだとは言いたくないけど特があるのなら興味は出てくる。

「やぁ、チーム田所魔法技研の皆。初めまして、吾輩はチーム【危機裸々】のドブさんこと、ドブさんだよ」

なんだ!? その赤裸々みたいなチーム名は!! 相談すらなかったよね? 僕や田宮さんに一言も告げずに独断で決めるとか……ありえねぇし。サン〇オに訴えられるぞ!

「店長、この生物は一体!?」

ほら、レネ子さんも未知との遭遇みたいな顔をしている。

「ああ、ドブえもんは我々のスポンサーだ。君たちの変身チョーカーやイヤリング、指環などの開発にも携わっているんだぞ」

「そんな、大物がここに居るということは!?」

何やら勝手な思い込みが始まっているけどドブさんを連れてきたのはボクだ。
ドブさんがここに居るのは偶然であり、特に大きな意味があるわけでもない。
というか、スポンサーって……高性能AIの呼び名は伊達じゃないということか。

たーしは知っているよ。キュイの家に潜り込んでいる妖精さ」

うん。チガウよ、アイカちゃん……色々な部分でね。

「ムニーだ。これ、カーペンターズの羊のムニーだよ! くわぁいい~」

さすが、フィグちゃん。そちらにも造詣が深いとは、また今度カーペンターズの話題で花を咲かせようじゃないか!

「浮かれているトコロ悪いけど、これ合宿なのよね」

ドブさんが無表情のまま、手厳しいことを言ってきた。
確かにこれは強化合宿、ボクたちは海に遊びにきたわけじゃない。
それなりに成果がなければ合宿をした意味がない。

「ん? だから何?」

「……パードゥン?」

ドブさんが言葉を失うほど強烈なスパイクを返してきたのは、言うまでなくアイカちゃんだった。

「愛子く―――ん!! それを言ってしまえば終わりだろう!」

「いや……真剣にやれって言いたいのはわかるけどさ。そもそも私ら、そのつもりで来ているわけだしぃー。つーか、田所のおっちゃんもいい加減、私の名前を覚えろよな?」

「ぐぬぬぬ……すまん! バーガー作ってくるわ」

田所さんが助け船を出すも、あえなく撃沈した。
おそるべくはギャルパワーだ。彼女を言い負かせる存在はこの世界にいるのだろうか?

「あのぅー」申し訳なさそうにフィグちゃんが手を上げた。

「何だい? 吾輩は今、すこぶる機嫌が悪いんだ」

そこはオブラートに包もうぜ。
妙な威圧感を放つドブさんに怯えながら彼女は話を続けた。

「よ、要件は何でしょうか? 単なる陣中見舞いではないですねよ……すみません」

「フッ、最初からそう聞いてくれれば吾輩だって答えるモノを」

「別に聞く必要あんの?」

「ちょっと、アイカ!!」

なかなか話が進まない。さすがに、今度はアイカちゃんの口をレネ子さんが手で塞ぐ事態になった。
そこそこプライドが高いドブさんのことだ、今ので完全に拗ねてしまったはずだ。
かくなる上は―――――

「ドブさん、このままだと動画の撮影ができなくなるよ? それでもいいの? ボクたちのチームと田所さんのチームでの共同作戦とか、熱い展開だよね~」

それとなく、大胆に促す。ドブさんにとって一番大切なことは動画の再生数であり魔法少女の強化だ。
理由は聞いていないけど、ボクたちの動画を上げることは大事なことらしい。
こう言えばきっと反応する、ボクの期待に添うようにドブさんは告げた。

「吾輩としたことが目的を見失っていたようだね。ありがとう、キュイちゃん。おかげで、踏ん切りがついたよ! 諸君、我々はこれから大規模な討伐戦を行うこととなる。敵は一体のみだが……これまで数々の魔法少女を返り討ちにしてきた強敵だ! この変体の討伐を本合宿の目標とする!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...